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特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。  作者: 黄玉八重
閑話休題 -フォレストトーレ奪還戦争までの1か月-

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閑話休題 -34話-[魔法ギルド、カティナ研究室]

〔アニキ-!交渉は決裂したデスケドォ!

 あちしのチームで確保している奴はいいデスカラァ!〕


 カティナからのそんな連絡がある日突然やってきた。

 つまり魔法ギルドで確保しているアーティファクトの一部を俺に開示してくれるという話な訳だが。


〔ただデスネェ・・・、

 他のチームの幹部がアニキの見識を見てから判断するって言ってるんデスケドォ。

 うまくすれば他のチームが確保しているアーティファクトも見られるかもしれないデスカラァ!〕


 それは願っても無いことだ。

 全部が全部わかるわけじゃないだろうけど、

 俺の世界から流れてきたアーティファクトがあれば研究のベクトルが定められて他の作業にも手を裂けるようになる。


〔というわけでいつがお暇デスカラァ!?〕

「すぐいけるぞ。

 今はあっちこっちに魔法剣の指導や手配とかに飛び回っていて、

 暇を見つけて迷宮に潜ろうと考えていたところだから、

 丁度良いと言えば丁度良いタイミングの連絡だったわ」

〔わかりマシタァ!

 迎えに行きますから待っててくださいデスカラァ!〕


 ポロン♪という音と共に揺蕩う唄(ウィルフラタ)は沈黙した。

 さて、アルシェ達に俺の今日の予定を伝えておこうか。


「ってことで、俺は魔法ギルドに顔を出してくる」

「・・・それって着いて行っちゃ駄目っぽいですよね?」

「まぁこの世界の賢い連中が研究してわからない物とかを見て当たりを付けるわけだからな。

 アルシェが来ても結果は変わらないから難しいかなぁ」

『アクア達も~?』

「アルシェが駄目でなんでお前が大丈夫だと思うんだ・・・。

 実際のところはカティナに聞いてみないと分からないけどな」


 そんな話をして数時間も経たぬうちにカティナは迎えに現れた。


「思ったよりも早かったな」

『すぐ戻るデスカラ引き継ぎとかはあまりなかったデスカラァ!』

「あの・・・カティナ様、

 私たちも着いて行く事は可能でしょうか?」

『ん~~、基本的に魔法ギルドに関係者以外が立ち入るのは禁止デスカラァ。

 今回アニキを特別に招待するのに結構無理を言ったデスヨネェ・・・』

「わかりました。無理を言って申し訳ありませんでした」

『じゃあアクア達も~?』

『ごめんデスヨォ、アクア』


 わかりやすく言えば、

 持ち出し厳禁とか取扱注意とかの部類だ。

 泣く泣くアルシェもアクアも引き下がらずを得なかった。


『アニキ・・・その子も駄目デスケドォ』


 気付けばフラムが俺の背中にへばり付いていた。

 こらこら、契約がないからどこにいるのかわからんかった。

 連れて行けないからね。ごめんね。


「フラム、今回は駄目なんだ」

(あるじ)・・・置いていく?』

「置いていく。

 お姉ちゃん達と大人しくお留守番しておくんだぞ」

『わかった』


 初の男の子なので少し面食らってはいるが、

 少々甘えん坊が過ぎる気がする。

 本当にアクア以上の甘えん坊なのだ。

 男はマザコン。

 異世界ではファザコンなのか?


 でも素直に言うことを聞いてくれてよかった。

 よしよし。


『そろそろ出発するデスヨ、アニキ』

「じゃあ、ちょっと行ってくる。

 どのくらい時間掛かるかはわからないからな。

 夜まで掛かったら先に寝てて良いから」

「わかりました。

 行ってらっしゃい、お兄さん」


 アルシェ達のお見送りを受けた俺とカティナは、

 彼女が作った移転魔法の先へと出発した。

 いざ行かん!前人未踏の魔窟へ!



 * * * * *

『散らかってマスケドォ、どうぞアニキ』


 足を踏み入れた先は、THE研究所って言って差し支えない造りになっていた。

 材質は石っちゃ石だけどタイルみたいにテカテカと光を反射している。

 ってか、室内なのに強い光がある。

 こっちの世界は基本的に外からの光かランタンを利用して灯りを確保している。


「これどうやって光を確保してんの?」

『あー、それは光属性の天然魔石を利用してるデスヨ。

 便利デスケドォあまり量産出来ていないデスカラァ流通出来ないデスヨネェ』

「へぇ」


 天井には光を放つ板が嵌まっていた。

 流通出来ないのはエネルギーの問題かな。

 うちの世界じゃ電気という便利なエネルギーがあるんだけどね。


「お疲れ様です、室長」

「「「「「お疲れ様です!」」」」」

『あぁ、そのままでいいデスカラァ!

 例のアーティファクトのお目通しってやつデスカラァ!』

「ではその方が・・・」


 ギラリ。

 あはは・・・あまり歓迎されていないらしい。

 まぁ、思い返してみれば揺蕩う唄(ウィルフラタ)然り魔導書然り色々とカティナ経由で無理をさせた。

 彼らはカティナの部下だから命令に従わざるを得なかったのだろう。

 その恨み辛みを産む元凶が目の前に現れた。

 文句を言うべきか我慢を続けるべきか、それが問題だ。


「いつもご協力いただき助かっております。

 本日はお邪魔してしまいますがよろしくお願いします」


 だから俺は謝ることにした。

 見て、この綺麗な頭の下げ具合。

 負け戦も先手必勝が有効なのだ。

 謝れば相手も文句を言いづらくなる。

 そして!


『ア、アニキが頭を下げることはないデスカラァ!

 言ってしまえばここはあちしの城デスカラァ!』

「顔を合わせる機会があれば感謝を伝えたいとは思っていたんだ。

 本当にありがとうございます」


 カティナの援護射撃は強力であった。

 研究員達は俺の真摯な態度を前に文句を言う度胸は無いらしい。

 いや、文句のひとつ位なら聞いてもいい。

 これからもカティナを通して依頼はさせて貰うことになるのだから。

 出来れば良好な関係を築いておきたいのだ。


「いずれ何かお返し出来ればとは考えておりますので、

 今後ともご助力いただければと・・・」

「私は幹部補佐のジャスパーと言います。

 本来我々魔法ギルドはどこかの国へ肩入れすることは出来ません。

 ご協力の範囲はカティナ研究所の我々だけという事は努々忘れませんよう。分を弁えた対応を願います」

「ありがとうございます」

『アニキもジャスパーも律儀デスカラァ!

 さあ、もう行くデスケドォ!!』


 カティナが限られた時間を確保して作ってくれた機会だ。

 他の研究員との交流はまたの機会と考えて俺はカティナの後に続いた。

 カティナ室長の研究室から通路に出るとそこも同じ材質と光量を確保していた。


「これの材質って教国で使われている石材か?」

『おぉ~流石はアニキデ~ス!

 ご明察の通り教国で使っている白石デスケドォ、

 あっちはレンガのように積み上げて家の材料として使っていマスケドォ、

 ここでは薄い一枚板にして敷き詰めているデスカラァ!』


 あとはちゃんと磨いて光沢も出している。

 ヤスリに近い何かも使っているな。

 アーティファクトの中に電動ヤスリとかあるのかな?


「あらあら、あらららカティナ室長。

 こんにちわこんにちわ、どこへ行くのかしら?」

『うげぇ・・・こんなところで何をしているデスカァ、キティエラ室長?』

「丁度丁度、貴女が通りがかっただけの話よ」

『そりゃ良かったデスカラァ・・・』


 あのカティナがウザそうに見つめる先。

 声を掛けてきた人物は女性。

 そして香ばしいポーズで壁に寄りかかりながら喋り掛けて居た時点で待ち伏せはわかりきっている。


『あーアニキ、こちらキティエラ室長デース。

 幹部の1人デスケドォ今日の視察に付き合う1人デスカラァ』


 見た目年齢はカティナより歳はいっている。

 でも彼女が長命種であれば見た目年齢は当てにならない。

 というわけでとりあえず低姿勢で行こう。


「初めまして、キティエラさん。

 アスペラルダ国に属している水無月宗八(みなづきそうはち)と申します。

 以後お見知りおきを」

「そう、そうそう貴方が例の・・・。

 所長が許可を出すくらいだしそれなりの人物なのでしょうね」

『アニキ、ここで時間を食う意味がないデスカラァ、

 さっさと進むデスケドォ!』

「はいはい」

「ちょっと、ちょちょちょ置いていかないでよカティナ室長。

 行き着く先は同じはずでしょう?」

『そのウザ絡みがウザイだけデスカラァ』

「ひどいわぁ!」


 なんだかんだで仲が良いのかも知れない。

 どうやら魔法ギルドは各所に拠点を構えるギルドとは違い、

 一カ所にデカい組織を集めているっぽいな。

 本来はギルマスという立場が所長に変わって、

 下っ端との間に幹部、つまりは室長などを挟んだ組織図になっているらしいな。


「やぁ、カティナ所長。キティエラ所長も一緒かい」

『チャンドラー室長!助かったデスカラァ!

 キティエラ室長の世話を任せたいデスカラァ!!』

「ふははは、そう言わずに相手をしてあげるといい。

 女性室長は君たち2人だけなのだから仲良くしたいんだよ」

「何、何を何を言っているのチャンドラー室長!

 私は別にカティナ室長と仲良くしたいなんて思っていません!」

「じゃあここで分かれるデスカラァキティエラ室長。

 あちし達は別√で行くデスヨ」

「ひどいわぁ!」

「ふははは」


 なんだこれ。

 新たに登場したチャンドラー室長とやらはお爺さんだった。

 これは人間だ、間違いない!

 とにかく彼は彼女たちから信頼を得ている人物であり、

 包容力もあって2人を見守っている様子も見受けられる。

 魔法ギルドのお父さんみたいな?


「で、そちらが?」

「初めまして・・・」


 これが目的地に辿り着くまでにあと3回続いた。

 なんだかんだでアーティファクトの未知が少しでも発展する事に肯定的な為、

 気が急いて通路で待ち受けるような事をしていたとのこと。

 結局全員が研究馬鹿であることは嫌というほど理解した。

 なんでカティナ室から移動を開始して40分も時間を要して辿り着いていないんだよ!


 ぞろぞろと某白いドラマの様な回診を彷彿とさせるその光景は、

 通りがかる研究員を驚かせた。

 そしてその中心に見覚えの無い人物を目にするとさらに困惑した顔になるのだ。

 わかるよ。わからないけどわかるよ。

 心中はThey(ゼェイ)Their(ザァ)Them(ザム)Theirs(ザァズ)ってところだろう。

 英語よく覚えてないけど。

 シーハーハーハーズ。


『ここはあちしの所で管理しているアーティファクト保管室デスカラァ!』

「これって・・・インスタントルーム?」

『流石はアニキ!ご明察デスケドォ!』


 流石も何もギルドで見るインスタントルームそのものだもの。

 入り口に霧が発生して先が見えなくなっているからそうかなって思っただけだもん。


『本来は他の研究室の者は足を踏み入れるのは御法度デスケドォ、

 アニキの検分の判断をする為にこいつらも入れるデスカラァ・・・』

「それぞれの研究室で分野が違うんじゃ無いのか?」

「それは、それそれ。

 私たちの役割はアーティファクトの構造や効果を調べることなのよ。

 だから研究資料とかもこっちにまとめているのよ」

「ふははは、一応競争相手として私たちは居るからね」

「ヒントを与える事に繋がるから御法度ね」


 ただ、入ろうと思えばいつでも入る事は出来るとのこと。

 中には管理をしている人員も数名いるから、

 バレた場合は最悪下っ端に降格されかねないから今日はチャンスなんだと。


「いやいや、見る気満々じゃん」

『だから入れたくはないんデスケドォ・・・。

 アニキの検分内容次第では同じ条件でこいつらの保管室にあちしも入れるデスカラァ!』


 確定では無いけどカティナにもメリットがあるなら頑張ろう。

 頑張ってカティナもヒントを盗もうな!


 中はギルドのルームとは違って完全に倉庫って感じだった。

 とにかく広いのだ。

 海岸沿いの倉庫って感じ。

 左右にアーティファクトと思われる大小のアイテムが並んでいて、

 真ん中に人が通れる程度の道を確保している程度にぎゅうぎゅう詰めだった。


「これって普通のことですか?」

「「「「「普通」」」」」


 さいですか・・・・。


『アニキ!こっちからお願いしたいデスケドォ!

 ここら辺は使い方がわからず動かないアーティファクトを置いてるデスヨ』

「はいはい」


 ズラズラズラ。

 カティナが手を上げて位置を伝えてきたので移動を始める。

 ただ、この狭い通路を6人が通るってめちゃくちゃ邪魔なんだよなぁ。

 誰か諦めて入り口で待っててくれよ・・・。


 カティナが示したアーティファクト群。

 ざっと見た感じは電化製品と思われるものがちらほらあった。


「これは掃除機、これは洗濯機、これはテレビだな。古い」


 この異世界は電気というエネルギーを生活に活用出来ていない。

 だから電気で物が動くという常識もないわけだ。


「カティナ!メモか付箋はないのか?」

『メモならあるデスケドォ!』

「効果と使い方を書いてやるから貸してくれ」

「あら、あらあらメモくらいなら私が持っているわよ」

『キティエラ室長偉いデスカラァ!

 たまには役に立つデスカラァ!』

「ひどいわぁ!」


 起動エネルギー:電気(レイボルトより格段に弱い電流から扱うこと)

 効果     :床を掃除する

 使い方    :電源でON\OFF切り替え


 カティナが奪い取って渡してきたメモに走り書きをしてポンポンと置いていく。

 付箋ではないので粘着性がないからカティナがわたわたと背後で動いているけど俺はどんどんと検分を進める。


「これ武器じゃん。

 なんでここに置いてあるんだ?」

『あーそれはデスネェ、

 手元に変な機構があるデスケドォ何の為かわからなくてデスネェ』


 武器は見た感じガンブレードだった。

 F○8の主人公の武器だ。

 かませ犬の魔女の騎士殿も使っていたかな?


 といってもアレって攻撃した時に爆発が起こっていたし、

 実際に弾が出る訳では無くて火薬っで起こした爆発で威力アップを図るわけで・・・。


「ん?弾を入れるシリンダーが開かない?」

『魔法に反応するデスケドォそれだけデスカラァ!』

「魔法に・・ほうほう・・・・属性は無いんだな?」

『無いデスカラァ!』


「《ヒール》セット:ガンブレード」


 煌めく回復の光が詠唱によって発生し、

 それはそのまま手に納まっている武器へと吸い込まれていく。

 変化はすぐに訪れ、

 手元のシリンダー部分には7本の白い光の線が輝いている。


「普通の武器と違って精霊石は含まれていないな。

 反復で剣の魔力は増幅しないけど・・・」


 ボカンッ!

 軽く振るうと同時にトリガーを引いてみると剣が魔力爆発した事がわかった。

 つまり俺達が使う攻撃の瞬間に加速させ威力を上げる[氷の波撃フローディングインパクト]と同じ効果を武器自身が持つアーティファクトって事か。

 爆発は只の魔力爆発なので俺が使う[魔力縮地(まりょくしゅくち)]と同じ色の無い見えない爆発となっている。


「リボルバーの光も1本減っている。

 これは7発限定で威力を上げる武器だな。

 無精使いなら十分使える代物だから普及すれば戦力を上げられる」

『なるほどなるほど~』


 正直これは掘り出し物だ。

 増幅がないから半永続使用は出来ないので魔力量次第で回数も変わるが、

 増幅しないという事で武器の許容量を超える魔力にならないのは武器破壊に繋がらないので助かる。


 その後も次々と判断を下してはメモを残す作業を繰り返した。

 とは言っても俺に分かる範囲もそこまで広くなく、

 全体の一部だけの協力しか出来なかった。


「これは原付、これはルンバ、これはガスコンロ」

『ガスコンロというのはあちし達が開発した魔石調理台と似た見た目デスケドォ、

 魔石を填める部分には謎の物体が嵌まっているデスカラァ』

「まぁガスもないからなぁ・・・。

 入手しやすいのはオナラだけどたぶんオナラじゃ動かないよ」

『オナラで動くデスカ?』

「動かねぇつってんだろ。

 オナラを解析してガスがどういう物か理解しないと普及は出来ないな。

 可燃性で爆発するから扱いには気をつけること。

 天念ガスに匂いを付けて危険を察知出来るようにすること」

『合点デスカラァ!』


 はぁ・・・疲れた。

 とりあえずはこんなもんかな?

 ぱっと見でわかるのはメモも残したし、

 わからない奴も形とかから研究の方向性だけでもアドバイスしておいた。


「カティナ、こんなもんだ。

 もう他のやつは検討も付かないよ」

『いやいや、かなり発展する目が見えたデスカラァ!

 これでうちの研究室も評価をグゥ~ンと上がるデスヨォ!』

「評価が上がると給料が上がるとかか?」

『まぁそれも1つデスケドォ、

 食堂での料理が豪華になったり品目が増えたり、

 アーティファクトの研究権が優先して貰えたり、

 我が儘が通りやすくなったりするデスカラァ!』


 我が儘の部分で目をパチクリしてアピールしてくるカティナ。

 くっ!精霊はみんな美人だからそういうのは止めてくださいお願いします。

 おそらく我が儘には俺達への協力が含まれているのだろう。

 そういうことであれば今回今までの恩を返す機会を設けられて良かった。


『あちしは所長に報告してくるデスカラァ!

 もしもそっちの誰かがアニキに協力して欲しいなら同じようにアニキにも協力して欲しいデスケドォ!』

「ふははは、協力とはどんな内容かな?」

「不要な戦闘用アーティファクトを数点譲って欲しいんです。

 武器でも防具でもアクセサリーでも」

「ふぅむアスペラルダは戦争でも仕掛けるのかい?」

「いやいや、フォレストトーレの包囲戦はもうだいぶ前から公表していますよね?」


 なんでこの人達は一様に首を傾げているんだ?

 2ヶ月前から世界中の連中が知っている情報だぞ?


『こいつらは研究しか興味ないデスカラァ!

 外で何が起こっているかなんて魔法ギルド職員にとっては些事デスヨォ!』

「それはまた研究者に向いておられる・・・」

「「「「「いやぁそれほどでもぉ~!」」」」」


 褒めてねえよ馬鹿共がっ!

 全員揃いも揃ってだらしない顔をしやがってっ!

 魔法ギルドってどこにあるか誰も知らないし、

 攻められたことが無いって話だから危機感とかが無いのかな・・・。


「では、ではではカティナ室長の友人として私が立候補致しましょう」

『キティエラ室長は友人じゃないデスカラァ!』

「ひどいわぁ!」

『チャンドラー室長はいかがデスカァ?』

「ふははは、では私の保管庫に招待しようかな。

 所長のご意見は聞いてきてくれよ」

『わかってるデスヨォ!』


 そう言ってカティナは所長とやらの元へと旅立っていった。

 残された俺達は今し方決定したチャンドラー室長の保管庫へと移動をした。

 中身としては同じような感じではあった。

 メーカーが違うだけの電化製品もゴロゴロ置いてあり、

 珍しい武器としては某モンスターを狩る武器のライトボウガンによく似たものがあった。


「これ構造わからないんですか?」

「いまのところは3割といったところかな。

 何かを撃ち出す武器って事はわかっているんだがねぇ、

 何かがわからないし何かがおそらく大量に必要なのにそれを持ち歩くには少々何かは大きすぎるんだよ」


 下部にはカートリッジがブッ刺さっている。

 外して中身を確認してみたけれど確かに空だ。

 これでは何かが弾とはわからないか・・・。


「先ほどのガンブレードをみて同じ機構だとは思うんだがなぁ」

「トリガーを引いて撃ち出すところまではご想像の通りだと思います。

 弾はたぶんこんな・・・感じでカートリッジに入っていたんじゃないかと」


 メモに絵を描いてわかりやすく伝える。

 バネで押し上げつつ弾を次々と発射するイメージで描き上げてみたけど、

 久々ながらイメージさえあればそれなりに描けるもんだ。


「ふむふむ、参考にさせてもらうよ」

「解析が終わったら小型化とか魔法特化に出来ますかね?」

「小型化はわかるけれど、

 魔法特化というのはどういうことかな?」

「弾にガンブレードに施したみたいに魔法を封じ込められたらなって思いまして。

 例えば戦士が上級魔法(じょうきゅうまほう)を覚える為の要求ステータスを満たすことは出来ません。

 ですが、弾に封じ込めた場合はトリガーを引くだけで上級でも1発だけ扱えるようにならないかなって」

「それは面白い考え方だね」


 俺の意見はチャンドラー室長に気に入られたようだ。

 興味深く俺の話に耳を傾けてくれる。


「ただし問題点もあります」

「どのようなものかな?」

「現在の魔法剣の技術では制御出来る者が常にその場に居る必要があります。

 制御しなくても術者の遠くに持ち運び出来るよう研究が必要な事と、

 素材集めも困難を極めると思われます」


 一番相性がいい素材はもちろん属性魔石だろう。

 しかし、それでは魔力が内部反復をして増幅されてしまい、

 最悪町中で暴発して被害を出してしまう。

 であれば魔石ではなくガンブレードと同じ性質を持つ素材を探さなければならないのだ。


「カティナと協力して・・・って規則上出来るのかはわかりませんけど、

 現状はガンブレードの素材から調べるのが効率的だと思います。

 もし材質で近い物が分かればカティナ経由で依頼をしてください。

 俺達が動きますので」

「まぁ調整はしてみるかね。

 他にも仕事は山のようにあるからね」


 そりゃそうですよね・・・。

 研究対象のアーティファクトはいくらでもありますしね。

 各研究室でそれぞれこの保管室を所有しているなら全然手が足りていないっぽいし。


『おぉ~い、アニキぃ~!

 あちしの所のアーティファクト渡す準備完了デスケドォ~!』

「カティナ、いくつだい」

『3つデスネェ。

 本当は5つを予定していたデスケドォ、

 ガンブレードを優先希望を出したら3つに減らされたデスカラァ!

 所長は本当に器が小さいデスカラァ!』


 その場合は懐じゃないかな?

 器が小さいはただの悪口になっちゃうぞ。


「ではこちらも協力するとして・・・同じく3つでいいかね?」

『協力ってどんな話になったんデスカラァ!』

「こいつの可能性を教えて貰ったのさ。

 ついでにカティア室長のところにあったガンブレードの研究の手伝いもすることになりそうだ」


 面食らうカティナ。

 事情を伝えるチャンドラー室長。

 一緒に研究出来なくて頬を膨らますキティエラ室長。


『そういうことなら研究も捗るデスケドォ、

 流石に次には間に合わないデスカラァ!』

「それはわかってるよ。

 材質がわかってもこの世界にあるかもわからないし、

 鍛冶師も鍛える必要がありそうだからな。

 こっちも時間は掛かる」


 鍛冶師合同研修は夏を予定している。

 研究が先に済んだとして普通の鍛冶師で対応出来るかどうかだな。


「カティナはどのアーティファクトを渡すのかね?」

『あちしは[ブライニクルエスト]と[黒曜]と[アクアマリン]の3点デスカラァ!』

「なるほど、[杖]と[手甲]と[アクセサリー]かね。

 ならこちらは[精霊の兜]と[ヴァルキリーメイル]と・・・。

 水無月(みなづき)殿、武器は必要かな?」

「あー、弓か短剣に空きがあればですね」

「なら[グラグオルク]でいいかな?」


 聞いたこともない武器防具のオンパレードだ。

 カティナの事だから杖はアルシェに、

 手甲は俺かマリエルに、

 アクセサリーは誰でもって感じで選んだのだと思う。

 チャンドラー室長の方は、

 俺を基準に兜と鎧を選んだらしいな。


 アーティファクトって事だから基本激レア以上かな?

 聞いたこともないって部分も期待が上がる。

 まぁ古くは[マウスピース]なるレアリティだけが高くて何の効果もないと判断されたアクセサリーもあった様だが・・・。

 本当にゴミを渡された訳じゃありませんように祈るばかりだ。


「この度はお世話になりました」


 用事が済めば帰るのが道理。

 俺も今からカティナに送って貰い帰るのだが、

 室長達もほとんどが興味を失いさっさと自分たちの研究室に帰って行った。


「また、またまた顔を見せて頂戴。

 次は私の保管庫を見て貰いたいわ」

「カティナ室長とは合同研究となるからね、

 全部が全部そちらに情報は流せない事は十分に理解しておいて欲しい」


 見送りは2人の室長だけだ。

 片や自称カティナの友人キティエラ室長。

 片やみんなのお父さんチャンドラー室長。


『しゅっぱ~つデスカラァ!!』


 カティナの魔法でアスペラルダの城に戻る。

 振り返り2人から視線を切った時点から俺の頭は残り日数でやらなければ成らないことを考え始めていた。

いつもお読みいただきありがとうございます

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