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特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。  作者: 黄玉八重
第09章 -奇跡の生還!蒼き王国アスペラルダ編Ⅲ-
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†第9章† -16話-[土精の里、ノイティミル加入]

 契約の花が咲き誇り、その魔力の花が姿を薄めていき還元が始まり、

 その光景に釘付けになる土精王ティターン様と土精二人組。

 そして、自我の薄いはずの浮遊精霊(ふゆうせいれい)までもが同じくフヨフヨと動き回らずにじっとしている様子は少しおかしかったが、

 無事に俺とノイティミルの契約は完了して、

 胸の奥に互いの存在を感じながら花が散りきるまで見つめ合っていた。


「これでノイはこの先ずっと俺の家族だ」

『なんだか初めの仮契約の時と契約に対するマスターの認識が違うです?』

「あの頃は精霊使い1ヶ月程度だったし、

 今は契約精霊もアクアだけじゃなくてクー・ニル・アニマが居て、

 そこにノイが加わるんだぞ?

 元から大きい精霊と契約すればそんな認識にはならなかっただろうが、

 全員が浮遊精霊(ふゆうせいれい)からの加階(かかい)組だからなおさら、な」

『そうですか。一応報告はしていますけど、

 こちらに戻ってからは核を気にして思い切った修行は難しかったです。

 遅れた分を早めに取り戻さないといけないです!』

「近いうちに一度実戦があるからそれまでに調整していこう。

 ひとまず、これからよろしくな。ノイ」

『はいです。よろしくおねがいします、マスター』


 互いの挨拶も終わり、ノイが浮遊状態でスィーと近づいて来てそのまま肩に乗ってくる。

 それを確認してから改めてティターン様の前に跪き、

 しかし今度は顔を上げたまま先の再会を行う。

 周囲のメンバーも俺の動きに合わせて跪き土精二人は顔を伏せた。


「お時間を頂戴しましてありがとうございます」

『うむ、こちらとしても貴重な物が早くに見れたのだ。

 互いに損はしていないのだから気にしないでいい。

 では、話を戻すぞ』

「はい、よろしくおねがいします」


 流れは多少変わってしまったが、

 改めてティターン様は話を再開した。


『まず、報告に受けていたアスペラルダにて起きた、

 土精を利用したキュクロプスからよくぞ我が眷属を救い出してくれた。

 感謝する。

 他にも戦士が幾人も協力したことは聞いているが、

 感謝を伝えるにはお主が適任を判断した』

「はっ!ありがたき幸せ!

 協力した戦士も顔見知りですのでティターン様のお言葉はしかとお伝えいたします」


 ここも精霊の隠れ里なのだろうから、

 一般人を招くよりも精霊使いを招くのは合理的だと俺も思う。

 遠い他人より近い他人だ。


『こちらからも各戦士に包みたいところではあるが、

 如何せん世に出る機会も少なく金も持たぬでな・・・。

 言葉だけですまなくは思っている。

 もし、希望者がいれば鉱石などでよければ譲れるとも伝えておいてくれ』

「わかりました」


 鉱石かぁ。俺は加護をもらいたいからどんな鉱石ですかとは聞けんな。

 残念ではあるけれど、魔石ではない鉱石だと俺の思惑とは異なるし、

 気にしないようにしよう。

 ティターン様からの続く言葉はアルシェ達にも視線を向けたものとなった。


『後ろに控える者達はその時にいた者達か?』

「一人は当時一緒に対処に当たり、もう一人は首謀者の捜索、

 残る一人はまだ仲間に加わっておりませんでした」

『対処した者、捜索した者。名を聞かせてくれ』

「はい。私の名はアルカンシェ=シヴァ=アスペラルダと申します」

「私はアルカンシェ様と宗八(そうはち)様の従者をしております、

 メリー=ソルヴァと申します」

『うむ。其方(そなた)たちは何か希望があれば言ってみると良い』


 どうしますか、お兄さん?という意思と、

 どう致しましょうか、ご主人様?という2つのを背中にビンビン感じる。

 好きにせい、欲しいものとかあれば言ってみれば良い・・・、

 ってな俺の意思を纏う雰囲気で伝える。


「では、失礼ながら先に質問をよろしいでしょうか?」

『申してみよ』

「私はご主人様の従者ですので、

 報酬に関しても受け取り先を変更してもよろしいでしょうか?」

『それがメリーの希望ならば問題ない』

「ありがとうございます。

 では、私の希望は高品質の魔石を希望致します」

『それは何に使うのか聞いてもよいか?』


 メリーにも今後の強化案として話していたので、

 一旦踏み台としてこの話を持ち出したのであろう。

 メリーの隣でアルシェもハッ!と理解をした空気に変わる。

 視線と質問が俺に向かってきたものだったため、すぐさま答えた。


「私の攻撃方法が多少特殊でございまして、

 剣に魔法を吸わせ中に含まれる精霊石の粉末で魔力を増幅させて、

 それを圧縮して放射するのですが、

 剣を介さずに自力でもっと自由に扱えないかと考えております」

『では、魔力を増幅させられる精霊石の粉末の代わりが出来る魔石ということか・・・』


 思いの外真摯に対応してくださるティターン様に内心感動しつつ、

 どんな回答が出てくるかと期待も高まる。


『大きさなどに希望はあるか?』

「魔石の加工が可能で防御力も期待できるのであれば、

 邪魔にならない籠手かグリーヴでしょうか」

『なるほどな・・・・。

 まず魔石だが、その大きさとなると龍の魔石しかないだろう。

 もしくは天然でも存在はするであろうが、

 人間の間で取引されている多くは魔物の石という点から入手はまず不可能だ』


 出た、龍。シヴァ様と同じ四神のティターン様が言うのだから、

 共通見解であることからも他の手段はなさそうか・・・。

 まぁ、他の魔石を探し回る手間が減っただけでも重畳とするべきだな。


『次に加工だが、そこらの鍛冶師だけでなくドワーフにも出来ない

 。

 龍の住む地にて共生している龍とドワーフの混血一族であれば加工は可能なはずだ』

「はず、というのはどういう意味でしょうか?」

『龍の長命が受け継がれていて時間にルーズだ。

 奴らは絶対数が変わらない限りほとんど寝ているような種だからな、

 多少働き者のドワーフの血が入ったところで仕事に取りかかるのはいつになることか・・・』


 そういう意味で難しい顔をされておられたのか。

 まぁ、そこは頼んでみないとわからないからティターン様も責任でもないんだけど。

 情報だけで十分おつりが来るレベルの話が聞けて感謝である。


「ありがとうございます。その情報だけでご主人様には十分かと」

『手元に残る物ではないぞ?情報だけでは意味がないだろう?』

「いえ、ひとまずシヴァ様と同じ見解という事がわかりましたから、

 無駄な時間を取る必要がなくなったのはとても有益なものです」

『シヴァと同じ?私はお会いしたことは無いが、

 人の身で四神の二名と顔を合わせるとは・・・なかなか面白い人生を歩んでいるようだ』


 いえ、アルカトラズ様ともお会いしておりますので、

 四神ではなく大精霊という括りであれば三人・・・。

 別に言う必要はないから言わないけどね。


『まぁいい。では、次はアルカンシェだな』

「私たちの行動の主導はお兄さんですので私も報酬をお譲りします。願いは先の続きとなりますが、土属性のドラゴンの生息域を教えてもらえますでしょうか」

『それはアンバーやアースの事か?』

「我が国のブルーやアイスと同じ意味であれば正しいかと」

『・・・・・、ノイティミル。

 お前のマスターとなった男は少々波瀾万丈が過ぎるようだぞ』

『知っていたです。

 これからもマスター達と付き合いはあるのですから、

 ティターン様もこの程度で驚いていては精神的に持たないです』

『そうなのか・・・。命が短い分精一杯生きると知ってはいたが、

 外の者達とはずいぶんと生き方が違って驚いた。

 すでにブルー・ドラゴンに接触は済ませているのか?』

「いえ、これからとなります。

 現在はシヴァ様の眷属が様子を伺うこととなっておりますので、

 その報告次第向かおうかと考えております」


 正確な位置やどんな環境下もわからないのだ。

 近くに水精もいないらしいから、

 少し離れたところにいる水精に様子を見に行かせると言ってたからいまは情報待ちの状態だ。


『その様子ならば龍の魔石がどう精製されるかも知っているな。

 あいわかった。こちらも同じく確認次第伝えることとしよう!如何か?』

「ありがとうございます、ティターン様。

 伝達はギルドからアスペラルダのアインス宛てに送ってくだされば私に届きますのでよろしくおねがいします」


 やったぜ!これで二属性分の龍情報が手に入った。

 話をしてみないと協力してくれるかもわからないけど、

 やれるだけのことはやってみないとな。



 * * * * *

『さて、最後となったが・・・』


 二人の話を聞き終えてしばし目を瞑って黙り込む時間が生まれていた。

 おそらくは念話で周辺調査を指示したのだと予想が出来るのだが、

 目の前にずっと跪いている土精の事を思い出すと少々気の毒に思えてきた。

 何せ念話での指示に関しては情報にムラがあるらしいから、

 対応する方は大変だと愚痴っていたくらいだ。

 目の前の二人はひと仕事終えたわけだけど、

 今指示を受けた土精には申し訳ないことをしたかもしれない。


『精霊使い、水無月宗八(みなづきそうはち)。以後、宗八(そうはち)と呼ばせてもらうが、

 ノイティミルが成長するためにはお主に加護を授ける必要がある。

 ノイティミルとそこの二人からは加護を希望すると聞いているのだが、

 それに間違いは無いか?』

「ございません。

 私に必要な物はティターン様の加護のみでございます」


 いや、まぁね。

 正直に言えば欲しいものなんて先の魔石も含めればありますけどね。

 欲張って心象を悪くするのもアレじゃないか。

 これからは親戚みたいなものなのだしさ。

 オタクは人の評価を無駄に気にする自意識過剰なモノなのだ。


『あいわかった。

 加護は私が分御霊(わけみたま)であることともう一つの理由から亜神の加護となる』

分御霊(わけみたま)は理解しますが、もう一つとは何でしょうか?」

『端的に言えば真なる加護と亜神の加護は同時に受けられないのだ』


 つまり、俺は亜神の加護を初めに受けたからそれしか受け付けられないが、

 アルシェやセーバーなどの真の加護持ちであれば他属性の真なる加護も得られるのか?

 背後でアルシェの顔色が悪くなったのを心配するマリエルとメリーの気配を感じるが、

 それは時期尚早かもしれないぞ。


「では、アルカンシェのような真の加護持ちであれば、

 他四神やティターン様の加護も受けられるのですか?」

『それもまた不可能だ。真の加護は名に変化をもたらす。

 勝手ながら寵愛(ちょうあい)を受けている状態なのだから、

 他の愛など受け入れる事は無い』

「その逆に亜神の加護は寵愛(ちょうあい)者の祝福になるわけだから、

 その分他属性も受けられるというわけですか?」

『そうなるな。しかし、私も宗八(そうはち)のような精霊使いは初めて見聞きした。

 そこまでの亜神の加護を受けて何を成す』


 何を成す・・。

 いや、答えはないのだから無理に考える必要もないか。


「私は何も致しません」

『どういうことだ?』

「現在人間サイドではプルメリオ=ブラトコビッチという勇者が居ります。

 異世界から召喚されたのですが、用件は魔王を倒すことです。

 それとは別件で聖女様がとある破滅に関する預言を致しまして、

 私はそれを調査する立場にあります」

『つまり、誰かと戦うなどで名声を受けたいわけでもなく、

 調べ事をするために加護を受けたいと?』

「いいえ、ティターン様。調査がメインとはいえ、

 先日はフォレストトーレ王都での救出作戦にも参加いたしました。

 行く先々にはどんな困難があるかもわかりません。

 しかし、それでも調べなければならない事がある時は、

 戦力があるに越したことはありません。

 縁もあり精霊と契約するに至りましたが、

 その成長を促す食料となる魔力が必要になりますので加護を求めさせていただきました」


 実際ソレよな。

 土精の加護がないとノイの今後の食料問題が解決しない。

 ここまで待たせておいて加護なしは絶対に避けなければならない。


『では、現在の加護が水精・風精・闇精とあるようだが、

 宗八(そうはち)の契約精霊は現在ノイを合わせて四人ということか?』

「いえ、五人です」

『・・・同じ属性の精霊と二人契約したのか?』

「いいえ、ティターン様。アニマ、出てきて挨拶を」


 意味がわからないという困惑の表情を浮かべるティターン様。

 当初のゴーレムのような姿を先に見たからかイメージはもっとお堅く、

 言葉も途切れ途切れで感情も動かないと思っていたのに完全に裏切られた。


 ティターン様の問いかけが若干面倒だなと思い始めた俺の呼び出しに、

 仕方が無いと言うように分離して姿を現すアニマ。

 俺の読んだ名前を聞いたティターン様の困惑顔は混迷を極めている様子だ。


『お初にお目にかかります、土精王』

「う、うむ。其方(そなた)は無精か?」

『えぇ、無精王アニマと申します。以後お見知りおきを。

 普段は宗八(そうはち)の護りをするために浮遊精霊(ふゆうせいれい)と共に纏っています。

 それでは、ワタクシはこれで失礼致します』


 言いたいことを一方的に言ってアニマはすぐに鎧業務に戻ってしまった。

 正面に座っていたティターン様は呆気に取られたようで、

 鳩が豆鉄砲のことわざをその身で体現されておられた。


宗八(そうはち)、今の無精。無精王アニマと名乗ったがどういう意味だ?』

「無精の王という意味ですね」

『無精の王は遙かな昔に姿を消して伝承に出てくるようなお方だ』

「この度加階(かかい)するに中り、

 無精の意識を自分と入れ替えられ復活されたようです」

『・・・・はぁ~』


 簡潔な俺の回答でも理解したのか、

 頭を抱えて俯かれるティターン様。

 そろそろ加護くださいませんかね。


「(ノイ、なんで土精王はあんなに頭を抱えてるんだ?)」

『(本人じゃ無いからわからないです。

 大方、無精王が復活したなら四神はいずれ必要なくなるとか先の事を悩まれているのではないです?)』


 ティターン様。それは杞憂民というものですよ。


「ティターン様。アニマは復活しましたがまだ幼いです。

 世界を護ることはしばらく出来ませんし、

 何より本人が現状を変える必要がないのであればそのまま任せたいと仰せでしたよ」

『あぁ・・・そうなのか・・・。

 ちと想像だにしていなかった邂逅だったからな・・・。

 ろくな挨拶も出来ずに姿を消されてしまったし』

「すぐに世界に影響出来るわけでもないので、

 積極的に復活を宣伝するつもりはないようです。

 いまは(もっぱ)ら我々のアドバイザーのような役割を担ってくれています」

『・・・あいわかった。

 しばし時間はかかるだろうが、なんとか自分を納得させる。

 ひとまず今日来てもらった用件は済ませてしまおうか』

「よろしくおねがいします」


 王座に座ったままのティターン様はそう言うと、

 手を下に向けたまま水平に前へと出す。

 俺はアルカトラズ様やセリア先生から加護を頂いていた時の事を思い出して、

 前進して王座の前に再び跪くと手を上向きにしてティターン様と手を合わせた。


『《(われ)大精霊(だいせいれい)ティターン分御霊(わけみたま)(ねが)(たてまつ)る。土の聖壁(せいへき)、重力の(くさび)()(もの)に土の加護(かご)(あた)(たま)え》』


 詠唱と共に感じる魔力の高まりは、

 目の前に居られるティターン様の体から吹き出すように出てきた黄色のオーラが原因だ。

 そのオーラがいつも通りに腕から重なりあった手を通して俺へと伝染してくる。

 俺の体に黄色のオーラが浸透するに対して、

 ティターン様の体を覆っていた黄色のオーラは、

 俺へと移り変わるように真反対の背中からオーラが消失しているようだ。


 やがて、すべてのオーラが俺へと譲渡されると、

 続いて体へと溶け込み始めた。

 すべてが溶けきる頃には、

 目の前に称号の獲得ウィンドウが久々に現れた。


[称号:ティターン亜神の加護が付与されました]


『これで本来の目的は達成した』

「ありがとうございます」

『そうだ。近々フォレストトーレでの戦争と眷属から聞いているが、

 お前達はそれに参加するのか?』

「参加はしますが、我々は集団戦闘に慣れておりませんので、

 加わると逆に足を引っ張ってしまいます。

 ですので、魔法による支援を遊撃のように行う予定です」

『ならばノイティミルの活躍は出来そうに無いな』


 防御特化である上に創作(クリエイト)が得意な土精であるノイは、

 武器精製魔法の枠組みを超える事が出来る。

 通常は俺が手に入れた事があり要求ステータスを満たす条件があるのに、

 ノイの創作(クリエイト)はその二点を無視した挙げ句、

 氷で作るガントレットなどの規格をも操作出来る。

 つまり、人の体に合わない巨人のガントレットを精製し、

 重力で制御して待機時は周囲を浮遊させ、

 戦闘時は腕の動きに合わせて超重撃を行うことが可能なのだ。


 故に戦闘は前線でも素晴らしい活躍が出来るらしい。


「廃都フォレストトーレは瘴気に覆われて居りますし、

 現在なにやらを企む魔神族も背後にいるために、

 オベリスクという魔力を減滅(げんめつ)させる柱がいくつもあります」

『オベリスクは我々にとっても危険であることは風精セリアから伺っている。

 上位精霊の魔法は消され直接攻撃も無効かされるのであろう?』

「その通りです。

 水精ボジャノーイの攻撃でも壊すことは叶わず、

 人間が破壊するしかない厄介な特性を持っております」


 この町は自然魔力の噴出ポイントはないと事前にノイに調べてもらっていた。

 なので、この隠れ里の存在がバレない限りはオベリスクもそう立たないと信じたい。


「もしも、魔力が減り始めましたらすぐにご連絡ください。

 土精からの情報もできる限り集めるようにしていただければ、

 我々も破壊作業がしやすくなります」

『破滅の呪いか・・・。危機の認識や原因への意識が出来なくなると聞いた』

「ですから、ティターン様には一点だけを覚えておいて頂きたいのです。

 土の守護エリア内で魔力が減ったら連絡をお願いします。

 対処しようとかオベリスクがあるのかとか、

 そこへたどり着こうとする思考は駆逐されますので、

 私たちに連絡をするという一点のみを記憶に刻んでくださいませ」

『あいわかった。しかし、連絡はどう取れば良い?』

「どこで魔力が減ったかの大まかな情報だけ押さえて頂き、

 町に住む土精を召喚(サモン)で呼び出して、

 アスペラルダのギルマスであるアインス宛てに連絡をする指示を与えてください」

『情報は大まかで良いのか?』

「破滅はオベリスクだけではないのですが、

 破滅に繋がる事件や事故は真相に近づこうとすればするほど意識を誘導されます。

 ですので、起こった町やその内容だけを大まかに教えて頂ければあとは我々が動きます」

『魔力と事件だな。

 心当たりがある眷属からの話はまとめておこう』

「ありがとうございます」


 この眷属を使った調査はすでにアスペラルダでは導入されており、

 水精たちがシヴァ様のからの要請を受けて調べているところらしい。

 それでも初めての試みということからも、

 現地の水精たちは手にした情報が本当に渡すべき情報かわからない不安からか、

 今のところは情報らしい情報は集まっていないとのことだ。


 そりゃそうだろう。

 俺たちは小さな情報でも他の情報と合わせて考える柔軟性を持つうえに、

 危機意識を保てる精霊使いだ。

 しかし精霊の眷属は他種族の事件や事故が、

 実際自分たち精霊にどんな影響を及ぼすか理解も危機意識も持つことは無い。

 それだけ人間との交流が少ないのが現状。


 町でどんなことが起ころうとも町に住まない自分たちに害はない。

 そういった深層の意識が、

 本当に報告が必要な情報なのかという疑問を植え付け、

 俺たちが欲している情報が集まらないのだ。


 土精ならパラディウム氏やネルレントさんのように創作(クリエイト)をしながら旅商人のような生活も少なくない。

 その特性を生かして土の国内を動き回らずとも調べたい。


「本日はお招きいただき誠にありがとうございました」

『こちらもようやっと返礼することが出来て安堵している。

 ノイティミルのことはよろしく頼むぞ、宗八(そうはち)

「承知しております。

 他の契約精霊同様に大事に扱わせていただきます」

『また寄る機会があればノイティミルが案内する事が出来る。

 人目だけは気にするように。では、また会おう!』

『お世話になりましたです!またお会い致しましょう!』

「はい、またノイを連れて参ります。失礼致します」

「失礼致します、土精王」

「「失礼致します」」

『私が外までご案内いたします』


 来たときと同様に部屋の出口に先回りして先導の意思を伝えるパラディウム氏。

 その動きに合わせて俺たちも挨拶を済ませた者から立ち上がって背を向ける。

 一番最後にネルレントさんが付いたのは、

 念のため王を護るための動きであろう。


 通路に出てからも俺たちは一切口を開かずに案内に従い、

 やがて来たときの行き止まりから上方へ同じ移動を行い外へと出てきた。


「はぁ・・・やっぱあそこは魔力濃度が違うなぁ」

『当然です。分御霊(わけみたま)とはいえ精霊の王なのですから。

 その住まいもまた特別なのです』

「そのおかげでノイちゃんも成長出来たようですし、

 幼い精霊は王の近くが一番生活しやすいのでしょうね」


 外は陽も完全に落ちた状態だったので、

 時間的には19時くらいかな?


水無月(みなづき)さん、皆様、お疲れ様でした。

 私たちの案内も終わりとなりますが、

 このあとは街へ戻られますか?』

「お二人こそ、お疲れ様でした。

 俺たちは隠れ里に寄る機会も作りたいので、

 人の目に触れづらい近場にゲートを作って帰ります」

『本当にお疲れ様でした。

 私たちの同胞をよろしくお願いします』

「ネルレントさんも楽器の開発頑張ってください。

 個人的に大変期待をしていますので」

『ありがとうございます!』

『では、またお会いしましょう』

「はい、今日はありがとうございました」


 わりかし呆気ない別れで再び里帰りをした二人を見送り、

 俺たちは周辺を見回す。


「お兄さん、光量を落としましょう。

 人目に着きづらいとはいえ少し目立ちますから」

「あぁ、そうだな。閉鎖されてないから漏れるか・・・。

 メリー、マリエル。周辺を見て回って良さそうなところを見繕ってくれ」

「はぁーい」

「かしこまりました」

『さっそく人使いが荒いです』

「このくらいは普通だっての。

 とりあえずノイと契約出来たから、城に帰ったらさっそく核を作ろう。

 加階(かかい)後の姿は考えついてるか?」

『方向性はばっちりです!

 一応最終決定はアクア達を見てからにしますです』


 その後はさほど時間もかけずに設置に適した場所を見つけてきた二人に案内され、

 そこからポルタフォール→死霊王の呼び声を経由してアクアとクーを回収。


 城まで戻ると部屋の床に本日の夕食の招待状がいつも通りに滑り差されており、

 アルシェに参加を伝えて本日はマリエルもそのまま参加が決まる。

 メリーにも目を向けるがフルフルと首が振るわれる。


「流石に王族の食事に混ざることは出来かねます。

 旅をしている時の食事とは違いますので・・・・」


 それもそうかと素直に引き下がったけど、

 じゃあ移動手段や情報収集の手配が整い始めている今、

 拠点として城を利用する現状はメリーと食事を取ったりと顔を合わせる機会もほとんどなくなってしまっている。


 ずっと一緒に行動していただけに、

 どうにも寂しさを感じている。

 アルシェは勉強だったり城の中で行動するのにもメリーは側仕えとして一緒しているだろうけどな。


 俺は外回りばかり・・・。

 出張する奴の気持ちを今理解した気がする・・・。

 三人が部屋を出て行ったあとは、精霊達と風呂に入る。


「あ”あ”あ”あああ~~~~~・・・・んき”も”ぢい”~~~・・・」


 8時間の何も運動の出来ない時間で凝り固まった体に染み渡るお湯の気持ちよさよ・・・。

いつもお読みいただきありがとうございます

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