第五話「笑顔を」
桜ノ丘小学校に転校した佐伯理玖だったが、転校初日にテンションの高い朝比奈流樹からカラオケに誘われる。
―カラオケBonBon―
「うーん。あ。湊人ー!!こっちこっちー!」
「流樹くーん!お待たせー!!ごめんね、HRが延びちゃって。」
そんな二人の他愛のない会話をみて理玖は腑に落ちない気持ちでいた。
「流樹君。隣の方は?」
「あぁ!忘れてた!今日からうちのクラスに転入してきた佐伯理玖君。」
「そーなんだ!初めまして。流樹君の友達の西園湊人です。よろしくね!理玖君!」
「・・・うん。よろしく・・・制服?」
理玖は湊人が着ていた服装に疑問を持った。
「そうだぜ!!湊人は都内でも名門の私立校に通ってるエリートなんだぜ!」
「や、やめてよぉ~流樹君。そんなに頭よくないってばぁ~」
(そうか・・・だから制服。)
―5号室―
「おぉ!LIVE DUMじゃん!好きな曲入ってんだよね!」
と、ハイテンションな流樹とは裏腹にこれといってテンションが上がってない理玖は
「・・・僕は聴くだけだからね。」
と言った。
「えぇ~。ま、今日が初対面だしね。緊張もあるか。分かった。」
「流樹君。好きな曲歌うの?それともレッスンの課題曲の練習?」
(・・・課題曲?)
理玖は湊人の発言に疑問を持った。
「あ。課題曲練習しなきゃだ!それ最初に歌おうぜ!」
「・・・待って。課題曲って?」
理玖は耐え切れず聞いてしまった。
「あ、理玖には言ってなかったな。俺たち、実はアイドルなんだ!といってもまだデビューしてなくて課題曲も既存の曲だけどね。」
(・・・嘘だろ。この二人がアイドル?)
理玖は唖然としてしまった。
「流樹君!曲入れたよ!なんかライブみたいだね。」
「よっしゃあ!これ、理玖が初めてのお客さんだ!!」
(・・・お客さんって・・・全くどういうっ・・・)
「・・・!?」
理玖は驚いた。未完成ながらも一生懸命歌い踊るその二人の姿はまるで太陽のようで、さっきまでの二人ではなかったからだ。
(なんだろう。この心のモヤモヤが晴れていくような、この不思議な力が湧いてくるようなこの気持ちは?)
(・・・あれ?涙が自然と・・・なんでだ?)
「よし!!今までで一番の出来だったよな!?」
「えへへ。そーだね!でも、流樹君相変わらず振り付け同じところ間違ってたけどね。」
「や、やめろよ湊人ぉ~。自分でもわかってるから~。それより理玖!どうだっ・・・えぇ!?」
流樹が驚くのも無理がない。理由は今まで無表情だった理玖の目からは大粒の涙が溢れていたからだった。
「理玖、なんかごめん!そんなにカラオケ嫌だった?ごめん!」
すると理玖は、
「ちがっ・・・違う・・・その・・・なぜか分からない・・・けど・・・二人が歌う姿みてたら・・・なぜか涙が・・・
アイドルって・・・すごいな。笑いたくなくても・・・・・・笑顔になるよ。」
と、理玖は満面の笑顔で言った。
「あっ・・・理玖君笑ったぁ。」
「なんだ理玖、笑顔のほうがかっこいいじゃねーか!」
「そうかな・・・へへっ。」
笑顔が一番。
投稿が遅くなりすいませんでした。