第四話「笑わない転校生」
前回のあらすじ
一度、アイドルの誘いを断った湊人だったが、
流樹の賢明な歌とダンスに心を惹かれ、湊人はアイドルをする決意を固めた。
こうして、少しずつだが地道に進んでいるのであった。
「理玖・・・ ほんとに大丈夫?」
「大丈夫だから。いってきます。」
そういって無表情で家を出るのは、佐伯理玖だ。
今日から東京の小学校に通う6年生だ。
「・・・毎日疲れるな。」
理玖はそう呟くことにはもう慣れてしまっていた。
―桜ノ丘小学校―
「えぇ~今日から新しくこのクラスに転入してきた子を紹介します。」
「理玖くん。自己紹介お願いします。」
そう先生に言われた理玖は颯爽と教卓の前に行き自己紹介をした。
「佐伯理玖です。よろしくお願いします。」
「・・・」
一回もニコリともせず、理玖の自己紹介は終わった。
すると、クラスの子たちの話し声からは、
「おい、なんかアイツ不気味じゃね?」
「緊張しているって感じじゃねぇな。」
「なんで笑わねぇんだよ。」
「怖。」
と、なんともこれから馴染めなさそうな空気が漂った。
それもそのはず、理玖には誰とも仲良くする気もされる気も無い。
「こら!皆さん。個人で話すのはやめなさい。理玖くん、きっと緊張してるのよね。」
先生は苦し紛れのフォローをした。
「じ、じゃあ。席は一番窓際の後ろね。」
「そうそう、理玖くんはまだこの学校の事よく知らないから・・・ 委員長さんおしえてあげてね。」
するとクラスの一人が。
「お、お仕事来たじゃねぇか、アイドル委員長の朝比奈流樹さ~ん。」
「その呼び名や~め~ろ~よぉ~。よろしくな!理玖!」
言い忘れていたが、今回理玖が転入したのは流樹がいるクラスで、しかも流樹はクラス委員長をしている。
「はぁ・・・」
明らかにクラスの中心であろう流樹の姿を見て、深いため息をついた。
―昼休み―
「よし、ここの保健室が最後かな。」
「はぁ・・・長かった。」
流樹の昼休み9割を使った学校紹介が終わり、疲れからか理玖は深いため息を漏らした。
「ごめんな~。うちの学校大きいからさー。」
「・・・たぶん、大きさ関係なく朝比奈くんの無駄話が多いだけだった気が。」
「ん?あぁ俺のことは流樹でいいぜ!遠慮なく下の名前で呼んでくれ!」
「じゃあ、遠慮して朝比奈くんで。」
「えぇ~。つれないなぁ~。」
そんな他愛のない会話していると、流樹はある提案を思いついた。
「あ、そうだ!理玖、今日暇?」
「暇だけど?」
「よし!決定!カラオケいこーぜ!」
あまりにも唐突な提案だった。
無表情キャラ。えぇ。