表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

2016年/短編まとめ

ボクと中性的な幼馴染み

作者: 文崎 美生

「オミくんはお人形さんみたいだね」


日誌を書く幼馴染みに顔を寄せてそう言えば、はぁ?と怪訝そうな声を出され、目が合う。

キューティクルのしっかりした青みがかった黒髪は、男の子にしては長めで、ボクから見て顔の右半分を覆い隠すように前髪が伸ばされている。


髪と同じ色をした左目がボクを映し、眉毛がぐっと眉間の方へと引き寄せられた。

怒っているわけではなくて、何言ってんだコイツ、というような顔。


「男の子なのに凄く綺麗」


「それ、男からしたら別に褒め言葉じゃねぇからな」


はぁ、と面倒そうに吐かれた溜息に首を竦める。

個人的には褒め言葉なんだけど、という呟きは完全に無視されてしまい、視線は日誌に向けられていた。

実際に幼馴染みの中で唯一の男の子でもあるオミくんは、とても綺麗な容姿をしている。


青みがかった黒髪も黒目も綺麗で、年頃の男の子に比べれば肌ツヤも良く色も白っぽい。

中性的とも呼べる顔立ちの割には高身長で、それに見合っただけのしなやかな筋肉を持つ。

幼馴染みだから分かることだが、実は腹筋なんて指先で撫でるとその硬さがしっかりと伝わるのだ。


綺麗な男の子、それはとてつもないステータスであり、お人形さんみたい、と呼ぶに相応しいと、ボク個人としては思う。

伏せられた睫毛だって、下手したら女の子よりも長くて、綺麗だ。


ぼんやりと見つめる姿だが、本人はその視線を鬱陶しく思うらしく、時折顔を上げてはボクを睨む。

眉間にシワが刻まれ、薄い唇が突き出される。

そんな顔のオミくんと目が合う度に、ボクは首を竦めたり、肩を竦めたり。


「お前、自分が人形みたいって言われてんの忘れたのかよ」


溜息混じりの言葉に、目を見開いて、瞬く。

それから直ぐに「そう言えばそうだね」と、思ったよりもすんなりと言葉がこぼれ落ちた。

実際のところ、オミくんの言ったことは間違いではなく、特にMIOちゃんなんて、ボクをお人形さんみたいに可愛い綺麗、と連呼する。


心の奥底から言ってくれているのは分かっているが、ハッキリ言って同性の目からの話だが、MIOちゃんの方が可愛くて、文ちゃんの方が綺麗だ。

異性的な目だと、オミくんだって綺麗だが。


「でも、ボクのこれはお人形さんみたいに表情がないってことで、自分の中の解決が出来たから」


そう言って、オミくんの瞳の中に映り込む自分の姿を見れば、表情筋がピクリとも動かない無表情だ。

オミくんもボクの顔を見て、まぁ、そうだな、と濁した答えを吐き出した。


「だから、生傷もなくなると良いね」


つい、と指先でシャーペンを握る指をつつく。

すると途端に顔を歪めたオミくんが、持っていたシャーペンを机の上に転がす。

赤の滲んだ大きな絆創膏を見て、ボクはね、と言うしかない。


綺麗綺麗と言った顔には傷も絆創膏もないものの、その手にも学ランで隠れた足にもきっと傷は多いのだろう。

先日は足首に包帯を巻いていた。

男の子らしく外ではそれなりにヤンチャをしている証拠だ。


「放っとけ。……日誌も終わったから帰るぞ」


転がしたシャーペンを筆入れに入れて、開いたままだった日誌を閉じる。

チラリと見えた罫線の上に並ぶ文字は、これまた綺麗で整っていた。

性格出るなぁ、と思いながらボクも鞄を持つ。


「職員室だよね、ボクも行く」


「分かったから、服を掴むな」


鞄を肩に引っ掛けつつも、日誌を持ったオミくんの学ランの裾を掴めば、呆れたように目を細められた。

お人形さんはこんなに表情豊かじゃないよね、なんて心中で笑い、オミくんの隣で歩き出す。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ