7話 おいテンプレはどうした
賞金を手に俺はうきうきした気持ちでいると、ティナがこの世界の貨幣について教えてくれた。 そういえば、まだ知らなかったな。
知らないのに喜んでいたとか........少し恥ずかしいな。
ティナの説明によるとこの世界の貨幣は木貨、鉄貨、銅貨、銀貨、金貨、大金貨、黒金貨とあり単位はコルクという風になっている。
それぞれの価値は
木貨10枚で鉄貨1枚
鉄貨10枚で銅貨1枚
銅貨10枚で銀貨1枚
銀貨10枚で金貨1枚
金貨10枚で大金貨1枚
大金貨10枚で黒金貨1枚
となっていて、日本で言うと木貨1枚が1円で黒金貨が100万円となっている。
因みに俺が貰ったのは金貨10枚だ。
結構な高額だな。
一通り説明を受けた俺はいざ何か買おうと辺りの屋台を見回っていると、1つの屋台が目に入った。
その屋台は何かの肉を串に刺して香ばしい匂いを放ちながらその肉を焼いていた。
見ると屋台の上には「コブリン焼き」と看板があり、俺はその匂いにつられながら店の方に吸い寄せられた。
「おっちゃん、2本くれ」
「あいよ!2本で600コルクね!」
俺は代金を支払うと2本の串を両手に持ちながらティナの下に帰り片方をティナに渡した。
「ほら、やるよ」
「え、いやでも悪いですよ」
「いいんだよ。折角買ったのを無駄にする気か?」
俺がそう言うと流石にティナも悪いと思ったのか串を受け取った。
「あ、ありがとうございます」
そう言ってティナは少し嬉しそうにしていた。
俺はそれに少し微笑むと手に持っていた串を食べた。
うま!これがゴブリンの肉なのかよ!まるっきり豚と変わんないな!
味付けが塩で何か薄い感じはするがそれでもこの肉から溢れるジューシーな肉汁がこれまた旨いな。
「旨いなこれ!」
「そうですね」
俺が旨そうに串を頬張る姿にティナはクスクスと笑いながら俺と一緒に串を食べた。
ティナの美味しそうに食べる姿に俺は少し微笑んだ。楽しんで貰えて何よりだ。
ティナと二人で串を食べながら歩いていると
「おうおう、そこの兄ちゃん。随分と可愛いの連れてるじゃねぇか!」
がたいのいい男達が声を掛けてきた。
男達はにやにやしながら俺とティナを見ている。
うわ、何かテンプレだな。
流石異世界本当にこんなことあるんだな。
俺は仕方ないと思い魔法の準備をすると
「可愛いだなんて、口が上手いですね」
ティナが少し恥ずかしそうにしながら言った。
ちょっとティナさん!?そこは怖がる所じゃないの!?
俺はティナの反応に驚いていると、
「いやいや、本当の事だぜ。なっ?兄ちゃん」
「え、あ、うん、そうだな」
男達はまたまたぁっといった感じで言いながら俺に話を振ってきた。
突然振られ俺は少しキョドりながら言った。
おい、テンプレはどうした。
「ははは!!可愛い彼女を大切にしろよ!」
「はい、大切にされます」
笑いながら言う男にティナは俺の腕に抱きつきながらにっこりと言った。
急に抱きつかれ腕に当たる胸の感触に俺は内心ドキリとしながらも平静を保った。
「かぁ!!見せつけてくれるな!!それじゃあ兄ちゃん。しっかりと彼女をエスコートしろよ!」
そう言って男達は手を振りながら去っていった。ティナも男達に手を振る。
あぁ、そうだった。この世界の魔族は基本良い奴なんだった。
若干テンプレ展開に期待していた俺は魔族の優しさに少しガッカリ感を感じた。
「カゲ様」
少しガッカリしている俺にティナが声を掛けてきた。
そういえばまだティナは俺の腕に抱きついたままだった。
俺は思い出したかのように段々と恥ずかしくなった。
「こうして見ると私達は恋人同士に見えるんですかね?」
「ど、どうなんだろうな?」
ティナの言うことに俺は少し恥ずかしがりながら言った。
俺の反応を見てティナはクスクスと笑いながら楽しんでいた。
めっちゃからかわれてるな。
俺は若干の悔しさを覚えながらも手に持っていた残りの串を食べる。
やっぱり旨いな!
串も食べ終わり俺とティナはまた屋台巡りを再開したが、俺はさっきからあることが気になってそれどころではなかった。
「なあ、ティナ」
「何ですかカゲ様?」
「........何時までくっついてるんだ」
男達と別れてから俺は今だティナに抱きつかれたままだ。
腕に柔らかい感触が当たり少し嬉しい気持ちだが周りの目線がとても痛い。
さっきからめっちゃ見られてるんだけど。
これじゃあカチューシャ着けた意味がない。
「別にいいじゃないですか。減るものでもないですし」
「いや、周りから凄い見られてるしな」
「私は気にしませんよ。それにこうしていた方が先程の様な男性は寄ってきずらいので」
「そ、それに、さっきから胸が当たってる」
「あら、そういうのはお嫌いですか?」
若干の上目遣いで聞いてくるティナの可愛さに俺は嫌と言えずこのまま抱きつかれた状態で街歩きは続行した。
ふふっと微笑むティナに俺はまたしてもやられた気持ちになりこのままでは癪なので何かやり返そうと策を練っていると、一人の男性が慌てるように何かを叫びながら走っていた。
「大変だ!!魔物の大群が攻めてきたぞ!!」
次回、テンプレの予感?
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