6話 めっちゃ見られてる
「え、街に行っていいのか?」
「はい、大丈夫ですよ」
ティナの言葉に俺は驚いていた。
え、いや俺人族だよ。道中襲われたりしない?
「いや、人族の俺が魔族の街に行ったら騒ぎになるだろ」
「それなら心配ありません。この国の国民達は全員カゲ様の事を知っていますよ」
「え!?」
知ってんの!?やばい、俺命狙われるのか!?
いや、てか待て、皆知ってんなら何で暴動とか起きないんだ。
「私達魔族は基本的温厚なんです。お父様が敵ではないと言えば国民達は全員納得してくれるんです。兵士達がカゲ様を見ても誰も何も言わなかったのもそのせいなんです」
ティナの言葉に俺はあ~っと思った。
確かに兵士達は俺を険悪の目で見ることはなかったな。
むしろ何か好意的な目をしてた。
にしてもそれ温厚って言葉では済まないだろ。
人族に皆殺しにされているのに、それで良いのか魔族。
「でも皆が皆納得している訳ではないんだろ?」
「はい、そうなんです。この国はまだ被害が出ていないのですが、違う国や集落では家族や友人を殺された魔族達が今だ人族を殺そうと躍起になっています」
ティナは悲しげに言った。
流石に家族や友人を殺されればそうなるよな。
ここまで来ると人族本当にクズだな。
俺も人族だけど。
「そうか。それでティナ。街の方なんだけど」
「あ、はい!直ぐ準備しますので門の前で待っていて下さい」
俺は何か湿っぽくなったので話を変えようとティナに言うと、ティナは思い出したかのようにパタパタと廊下を小走りしながら去っていった。
俺はそれを見送ると、あることに気づいた。
「門の前って何処?」
俺は誰もいない廊下で一人呟いた。
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俺は門の前でティナを待っていた。
門までは多少迷ったが取り敢えず下に降りて探していたら意外と楽に着けた。
しかし、ティナはまだだろうか。
俺が門に着いてからかれこれ10分以上は経っている。
「お待たせしました。カゲ様」
するとティナが俺に声を掛けながら来た。
ティナは何時も着ているドレスから只のワンピースに着替えていた。
何時もと違った格好に俺は何時もと違った魅力を感じていた。
「遅れて申し訳ありません。着替えるのが遅くなりました」
「いや、気にするな。に、似合ってるぞ」
「ふふ、ありがとうございます」
俺は若干恥ずかしそうに言った言葉にティナは微笑みながら言った。
にしても、本当に似合ってるな。
普段ドレスだから分からなかったけどティナはスタイルがいい。
細いくびれに大きな胸が強調されていて、何か刺激が強いな。
「?どうかしましたか、カゲ様?」
「い、いや何でもない。それより早く行くか」
「そうですね、行きましょうか」
俺はティナと二人で街の方へ歩いた。
街の方はやはり人族何て一人もいなく、皆角や翼が生えた魔族達が大勢いた。
だが変わっているのはそれだけで後は人族と変わらない。
普通に話をし、
普通に生活し、
普通に遊んでいる。
何処も険悪するところが全くない。
何で人族達は魔族を滅ぼしたがるのだろうか。
俺はそう思っていると何やら街の方を歩くと何やら周りの人達から視線を感じる。
しかもそれは一人や二人でなくすれ違う人全員にだ。
「なあティナ」
「何ですかカゲ様?」
「めっちゃ見られてるんだけど」
めっちゃ見られてるのは俺が人族なのとティナが可愛いからだろう。
それは仕方ないのは分かるがそれでも落ち着かないな。
「でしたら、これを着けますか?」
そう言ってティナは何処から出したのか、魔族のであろう角が付いたカチューシャを持ってきた。
いや、どっから出した。
「これがあれば少しはましになると思いますよ」
確かにましになるかもしれないが、何か抵抗があるな。
どっかの夢の国のネズミのカチューシャをしてるみたいで何か恥ずかしい。
だがこの状況もあれなので俺はカチューシャを着けることにした。
「まあ、とってもお似合いですよ」
ティナはそう言うがやはり何か気恥ずかしさがある。
だがこれで見られることはなくなっただろう。
「さて、それじゃあティナ、何かおすすめな所はあるか?」
「そうですね、では屋台通りに行ってみますか?あそこは色んな屋台が並んでいてとっても面白い所なんです」
異世界の屋台か。
何か色々なのがありそうで面白そうだな。
「じゃあ、そこまで案内してくれ」
「はい、こちらです」
俺はティナに案内されながら、屋台通りを目指した。
ーーーーーーーーーーーーー
ティナに案内されるとそこには大勢の人が行き交う通りがあった。
横には色々な屋台が並び何処からともなく美味しそうな匂いが漂ってくる。
「ここが屋台通りですよ」
「すごい人だな」
「それがこの通りの特徴です」
にしても本当に多いな。
下手したらはぐれるかもしれないな。
俺はそう思ってティナの手を握った。
「これならはぐれる事はないだろ」
「そ、そうですね」
ティナは若干恥ずかしそうにしていたが嫌がる事はなかった。
突然手を握って嫌がられたらどうしようかと思ったが、嫌がられなくて良かった。
俺はティナと手を繋ぎながら屋台を見て回っていると俺はあることに気がついた。
「俺金持ってない」
今までずっと城で養って貰ってたから失念していたな。
無一文で屋台に来るとは、何足ることだ。
「その心配はありませんよ。お金なら私が払いますから」
ティナはそう言うがそれは何か嫌だな。
女に払わせる男って見た目的にも悪いし、何かヒモみたいで俺の気持ちが許さない。
俺はどうしたもんかと考えていると何やら叫び声が聞こえた。
「さあ!!寄ってらっしゃい見てらっしゃい!!喧嘩一本勝負!!この俺に一撃を入れられたら賞金十万コルク!!参加料五百コルク!!」
何やらがたいの良い男が路上で叫んでいた。
俺は丁度いいと思い男の方に歩みよった。
おっとその前に。
「ティナ、お金貸してください」
「やるんですか?カゲ様?」
「あぁ、自分の金は自分で稼ぐ主義なんでな」
俺はティナに金を借りて男の再度歩み寄った。
「さあ!誰かいないか!!」
「俺がやる」
「おお!!そこの兄ちゃんが挑戦か!!参加料五百コルクな」
俺は男に金を渡すと、男はルールの説明を始めた。
「ルールは五分間の間に俺に一発でも殴れればお前の勝ちだ。魔法はありで武器はなしだ」
男は説明が終わると男の周りから風が吹き始めた。風の魔法か。
俺は不意に周りを見ると、何人かの人が見物で立ち止まっていた。
「さあ!どっからでも掛かってきな!!」
男は手を広げながらそう言った。
何かオーバーな奴だな。
俺は見物人が増えるのも面倒なのでとっととけりを着けることにした。
「それじゃあ行くぞ。影縛り」
俺の影は男の影を捕まえると、男は身動き出来なくなった。
「な、何だ!体が!動かない!」
「歯くいしばれよ」
「待て!!体が動かないんだ!!」
「問答無用!」
「ぐあ!!」
俺は拳で思いっきり男をぶん殴ると、男は影縛りのせいで吹き飛ぶ事なく鈍い音が響いた。
俺は影縛りを解くと男は意識を失う様にへたりこんだ。
「俺の勝ちだよな?」
「は、はい」
俺は男に賞金を貰うと周りから歓声が聞こえた。「すごーい!」「やるじゃねぇか兄ちゃん!」と聞こえたくる声に俺は若干照れながらもそそくさとティナの元に戻った。
「お疲れ様です。カゲ様」
笑顔で出迎えて来るティナに俺は微笑みながらまた手を繋ぎ屋台を歩いた。
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