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10話 明らか普通じゃないな

 魔物の大群(もとい)出会いの場から数日が経ち、俺は一人無駄にデカイベッドで寝転んでいた。

 あれから何度か街に出たことがあったが、道行く人にすれ違う度に「カゲト様!」と呼ばれるようになり、街に出るのに少し抵抗が生まれた。


 

 いや、俺もやり過ぎた感はあるが俺より魔族達の方がやり過ぎな気がする。

 一度影魔法を見せただけなのにこの反応はないだろ。魔族どんだけチョロいんだよ!



 俺は内心一人で突っ込んでいると不意にあることが頭の中を過った。

 


「あいつら......どうしてるかな?」



 あいつらとは勿論卓也と美咲の事だ。

 勇者として人族に召喚された二人だが、魔族と違って人族は裏がありまくりだからな。

 あの二人なら大丈夫だろという懸念もあるがやはり心配なものは心配だ。



 魔王様は何かあれば直ぐに知らせてくれると言っていたがまだだろうか。

 早く二人を助けたい。そんでもってあの王様一発ぶん殴る。それだけは絶対だ。



 俺がそう思っているとドアからノックが聞こえた。俺は「どうぞ」と言うと、ドアからティナが真剣な顔をして入ってきた。  

 ティナの顔を見たと同時に俺は悟り同じ様に真剣な顔になった。



「カゲ様、人族が勇者達を率いてやって参りました」



 その言葉に俺は「分かった」とだけ言うと、ベッドから起き上がり顔をにやつかせた。 

 等々来たか...........。






ーーーーーーーーーーーーーー



  



 俺はティナと共に城壁の門の前に行くと、既に兵士の人達が門の前で待ち構えていた。



「ウィリアムさん」



 俺は近くにいたウィリアムさんに声を掛けた。



「来たかカゲト。等々勇者達がやって来たぞ。しかも人族の兵士を連れてな」


「数は?」


「おおよそ一万だ」



 俺はその数を聞いて目を見開いて驚いた。

 一万ってどんだけ連れてきてるんだよ。

 そうまでして滅ぼしたいのかよ。

 俺は自然とこの事に怒りを覚えた。  

 この世界に来てまだ日が浅いが、俺はこの国の魔族達に充分過ぎる程の優しさと恩を感じた。

 そんな魔族達を滅ぼそうとする奴を俺は許さない。



「勇者達はもう少しでこちらに着く。その時は交渉は頼む」  


「はい、任せて下さい」


 

 俺はそう言うと門の先をじっと見つめた。

 よく見るとずっと先に人影らしきものが横にずらっと並んでいるのが見える。

 あれが美咲達がいる所..........。



「勇者達が近くまで来たらお前の出番だ。それまで待っていてくれ」


「はい」



 俺はそう言うと美咲達が来るのを待ち続けた。

 暫くすると先程まで見えていた人影が鮮明に見え始め、俺は目を凝らしてよく見ると、卓也と美咲が手に剣と杖を持ちながら最前線で歩いていた。



 俺は二人の姿にホッとしたのと同時に違和感に思った。何か様子がおかしい......。

 二人の歩き方がちゃんと歩いているが何処か生気を感じない。まるで操られている様な感じだ。

 俺はその事に嫌な予感がし、段々不安になっていった。 



 美咲達が直ぐ近くまで来ると、ウィリアムさんが合図をした。



「カゲト!行ってくれ!」  


「はい!」



「カゲ様!!」



 俺はそう言って門の外に向かおうとするとティナが心配そうな顔をしながら俺に声を掛けてきた。


 

「カゲ様、どうか無理をなさらず」


「あぁ、行ってくる」



 心配そうな顔をしているティナに俺は笑顔で返すと再び真剣な顔に戻り美咲達の所へと向かった。



 



ーーーーーーーーーーーーーーーー






 俺は美咲達と十メートル位離れた位置で立ち止まり二人に呼び掛けた。



「卓也!!美咲!!」



 俺の声に二人は立ち止まるが返事が返ってこない。やっぱり何かされたのか...........。

 俺は二人を暫く観察していると二人の近くにいた普通の兵士とは違う格好をした男が声を上げた。



「私はこの隊の指揮を任されているアルベルト・ロマイエス騎士団長だ!!貴様は何者だ!!」


「俺は宮野影斗!!美咲達と同じ異世界人だ!!」



 俺の言葉に兵士達は驚きざわめいていた。  



「その異世界人が何故魔族といる!!」


「俺は魔族に召喚された!!今日まで魔族と一緒に生活してきた!!」 



 その言葉に兵士達は更にざわめきだし、騎士団長が「静まれぇ!!」と一喝し黙らせると俺に質問を投げ掛けてきた。  



「ではその異世界人が何の用だ!!」


「今すぐ手を引いてくれ!!」


「ふざけるな!!そんなこと出来るか!!それに貴様も人族なら何故魔族の味方をする!!」


「俺は魔族にこれまで散々良くして貰った!!だからその恩を返すだけだ!!後美咲と卓也に何をした!!明らかに普通じゃないぞ!!」



 俺がそう聞くと騎士団長は得意気に笑った。



「この二人は我ら人族に忠誠を誓わせる為に少し手を加えた!今では実に忠実な犬になってくれたよ!こんな風にな!!」



 そう言って騎士団長は卓也を蹴った。

 卓也は蹴られても何も反応せず只蹴られてるだけだった。

 俺はそれを見て怒りが込み上げてきた。

 あの野郎!!...........。  



「そして貴様が我々の敵であることも判明した!!よって貴様を排除する!!おい、やれ」



 騎士団長がそう言うと美咲が杖を持つ手とは逆の手をを上げた。



「..........フレイムアロー」



 突如手から放たれた炎の矢は俺へと真っ直ぐ向かってきた。


 

「!!影盾!!」

 


 俺は影を操り盾の様に俺の前に出すと、美咲が放った炎の矢を防いだ。



「ちっ、厄介な魔法を使うな。これも異世界人の力か。だが相手が一人なのに対しこちらは二人。充分勝てる。お前達!あいつを殺せ!」



 騎士団長がそう命令すると卓也と美咲は前に出てきて手に持っていた剣と杖を構えた。

 


「卓也、美咲..........」



 俺は武器を構えている二人を見て少し辛そうに呟くと少し間を開け決心を付けたかのように俺も両手を構えた。

 待ってろよ!必ず正気に戻してやるからな!

 

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