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  作者: 西村蓮
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 沙也加と話し合い、塚原の家にはもう行かないという事で結論付けた。塚原はともかく、意図的にタブーを犯して絵を描いた父親には確実な悪意がある。


「生きている人がムカサリ絵馬に描かれると、あの世に連れていかれるって言われてるの」


「連れて行かれるって、そんな事‥‥」  


「まあそう言い伝えられてるだけで、流石にあり得ないけどね」


 だが、その言い伝えを知った上で俺をモデルにしたムカサリ絵馬を描くなんて、どう考えてもおかしい。その上、直接俺に送ってくるなんて狂っている。だが、もし塚原のお姉さんが生きているならこれはムカサリ絵馬ではなくなるはずだ。


「なあ、塚原のお姉さんって生きてるのか?」


「私も最後に会ったのが春だから、どうだろ‥‥。でも、塚原君はお姉さんは奥の部屋にいるって言ってたんだよね?」


 そう、確かに言っていた。奥の部屋にいると。塚原は食事を運んでいたし、弟は一目散に奥の部屋に入っていった。そして、あの部屋の中からまとわりつくような視線を感じていたのも事実だ。


 だが、塚原のお姉さんが生存しているという確信は持てなかった。


 その日はショックと恐怖で何もする気が起きず、そのまま眠りについた。本当なら絵も捨てたかったが、呪われそうでできなかった。その後も塚原からのメッセージは絶え間なく届いていたが、その頻度に恐怖を覚え、二度と会いたくないとさえ思うようになってしまった。




 それから数日後、塚原から今までとは文面が異なる一件のメッセージが届いた。




『お前、俺の家にサングラス忘れてるだろ。高そうなやつ。取りに来いよ』



 確かにこの数日の間、お気に入りのサングラスが見当たらなかった。奮発して買った物なので必死に探したが、どこにも無くて落胆していたのだ。まさか塚原の家にあったとは思いもよらなかった。だが、塚原の家には絶対に行きたくはなかった。


『悪い、大学まで持ってきてほしい』


 送った瞬間に、返信が届く。


『晩御飯、たべにこいよ』


『母ちゃんも、父ちゃんもお前を待ってる』


『隆人も楽しみにしている』



 異様とも言える執念を感じ、言葉を失う。

 

 そして、最も見たくない単語が送られてきた。






 


『姉ちゃんも楽しみにしてるから』






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