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  作者: 西村蓮
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 沙也加と出会ったのも大学で、最初は塚原の友達という関係だった。ふとしたタイミングで塚原が学食に連れてきたのがきっかけだ。少しウェーブのかかった茶髪のロングヘアと、アーモンド形の大きな瞳が印象的で、一瞬で恋に落ちた。


「もしもし、遅いよ和樹」

 

「悪い、塚原の家で夕飯を食べてたんだ」


 出会いからデートに至るまで、そこから先の告白まで、何もかもが怖いくらいにとんとん拍子に進んでいった。後から話を聞いたところ、どうやら沙也加も俺に一目惚れをしていたらしく、最初の段階で相思相愛だった訳だ。気立ても良く、身体の相性も良かった。束縛癖なところが玉に瑕だが、それを除けば自慢の彼女だ。


「本当に塚原君と仲いいね。そっちが本命だったりして」


「そんな訳あるか、気色悪い」


 心底嫌そうにそう言い放った後に、同じタイミングで笑う。いくら塚原が美形とはいえ俺に男色の趣味は無い。自他共に認める女好きだ。沙也加もそれを承知で冗談を飛ばしたのだろう。


「でも、塚原君のお姉さんかなり美人だからな心配だな。そっちになびかないでね?」


「やっぱり美人なのか!」


「何なの、その嬉しそうな反応は」


「いや、今日塚原のお姉さんも家に居たみたいだけど、寝込んでたから会ってないんだよな。塚原似なら美人だろうなと予想していただけで深い意味はない」


「ふーん、どうだか」


「本当だよ、俺は沙也加一筋だ」


 今まで何人の女にこの言葉を投げ掛けたかわからないが、今は沙也加一筋なのは事実だ。美人を見るのは相変わらず好きだが、恋愛対象として見ている訳ではない。


 その後もまあ、聞くに堪えないカップルらしいやり取りを数十分ほど、たっぷりと交わしてから通話を切った。来週の土曜日に沙也加が家に泊まりに来る事になったので、部屋の掃除をしておかなくては。乱雑に畳まれた服の山を眺めつつ、まあそれは来週でいいかと結論づけてそのままベッドに倒れ込む。



 目覚ましのセットをしていると、塚原からのメッセージを受信した。


『今日は来てくれてありがとうな。母ちゃんも姉ちゃんもお前の事を凄く気に入ったみたいだから、また近いうちに食べに来いよ! 給料日前でしんどい時期だろ? 明後日はどうだ?』


 確かに給料日前で食費を削りに削っていたので、この誘いは心底嬉しかった。二つ返事でオッケーを出す。だが、少し引っかかる点があった。塚原のお姉さんが俺を気に入ったとはどういう意味だろう。扉の隙間から俺の姿が見えていたのだろうか。


 まあ美人に気に入られるのは悪くないし、あの料理をまた味わえるのは願ったり叶ったりだ。明後日がとても楽しみになった。



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