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あいやしばらく
世間を賑わせている大河ドラマに続き、KARTのメンバーも映画撮影に取りかかったとの情報を得た。
押されつつある現状を打開しようとしたのだろう。
大河ドラマには話題性は劣るものの、演技力自体は悪くないらしい。
どうやらKART側も中々意識しているようだ。
間接的にバチバチと火花を散らしており、今回は視聴率で勝負することになるだろう。
ドラマ自体のネームバリューのおかげでかなりのアドバンテージがあるが、芸能活動が遅い分トントンということで1人納得する。
KARTのおかげで演技にかける熱もさらに熱くなっており、なんだかんだでいいライバル関係になっている。
さて、今日はいよいよ戦のシーンを撮る。
初陣は隣国の佐々木家家臣の佐渡楓との戦で、兼綱の力が遺憾なく発揮された戦だそうだ。
兼綱は500の兵と800の伏兵をつかい、5000もの佐渡軍を壊滅させるのだ。
作戦は狭い戦場にて500の兼綱率いる部隊が佐渡軍と小競り合い、頃合いを見て撤退する。
兼綱が前線に出ることによってより釣れやすくするのが狙いだ。
狭路により細く伸びた佐渡軍の背後から落石と矢を射掛け、混乱したところを3方面からの挟撃。
兼綱を追って冷静さを失いつつある佐渡軍は、流れ矢にて落馬した佐渡楓を見て瓦解。
兼綱の圧勝で終わり、5000の兵と佐渡楓を失った佐々木家は怒り狂い再度一条家へ向けて進軍。
無理な徴兵と兵糧不足によりやる気のない兵たち。
数は8000と多いのだが、士気が低ければなんの意味もない。
そこに兼綱の策謀がハマり、佐々木家から坂東日向と鹿目藤が離反。
兼綱と離反した2人によって佐々木家は崩壊し一条家へと降るのだ。
その第一戦である。
エキストラの応募も数え切れないほど沢山来ており、第一戦は派手に演出できると監督は喜んでいた。
目の前には300人ほどのエキストラと佐渡楓役の木下智がいる。
流石に演出規模としてはこの場ではこの数が限界だったようだが、300人もの熱気ある女性たちは圧巻だ。
「ハッハッハ! 男子が戦場に出てきてくれるとは棚からぼた餅よなぁ!」
下卑た笑い声が聞こえてくる。
流石に口汚い言葉都合上聞こえてくることはないが、兼綱はどんな言葉をかけられていたのかと思うと寒気がする。
馬上で槍を振るいながら叫ぶ木下は中々様になっていた。
「戦場で男子に負ける女を間近で見れるのだ! 確かに棚からぼた餅! 日ノ本初の愚将じゃ!」
木下に負けじ声を張り上げる。
向こうでは挑発に乗った木下が号令をかけている。
勝った暁にはあの美丈夫を好きに出来ると嘯いていた。
監督からの評価はここまでは上々。
次はいよいよ戦闘シーンで、法螺貝と木下の声とともにこちらへと駆け出してくる。
300人が一気に走ると砂埃が凄いと暢気なことを考えていると、そろそろ頃合いの距離にまで近づかれていた。
「作戦通りにやるぞ。槍衾をつくれ!」
佐渡軍を正面から受けつつジリジリと後退していく。
押されつつも狭路へと誘い込めている。
餓狼と化した佐渡軍を止めるのは苦労しているが、狭路で戦えているので数の有利は今の所でてはいない。
ある程度戦っていると佐渡楓の姿を捉えた。
釣り野伏を成功させるため再度佐渡を煽り戦い、前がかりになってきたところで一気に後退を始めた。
「くそっ、逃がすな! なんとしてもあの男を捕まえろ!! あんな上玉中々いないぞ!」
こちらは少数。
大軍の佐渡軍がこの狭路を早く抜けようとすれば伸びる。
段々と前と後ろでギャップが生じ始めていた。
「よし……ここまでくればいいだろう。岩を落とさせろ!」
鉄砲を担いだ2人の兵に指示を出し空に2連発と法螺貝を吹き鳴らす。
崖の上から巨大な岩が転がり落ち、拳大の石や矢が浴びせかけられている。
後方は完全なパニックになっており、佐渡はそれをおさめようも声が届くことはない。
横の森からも一条家の精鋭たちが遅いながらも襲いかかる。
上からは石と矢、横からは矢と長槍によって阻まれ先には兼綱たちが蓋をしている。
激戦を予想して兼綱の部隊か放った矢は佐渡楓に命中し落馬。
佐渡軍が混乱したところを一気に突撃し戦闘シーンが一通りおわった。
何度か佐渡側からカズという叫び声があがり監督からカットされてはいたが、向かってくる時の表情などは高く評価されていた。
正直チビリそうになるほど迫力があったことは言うまでもないだろう。
みんな目が血走っていた気がする。
初めての戦のシーンにしては迫力のあるものになると監督は喜んでいた。
監督自身もKARTの配役を蹴ってわざわざ素人の一也を配したので、KART主演ドラマに負けるわけにはいかないらしい。
ホクホクした顔でテープチェックしている姿を見て少し安心した。
兼綱は美丈夫だったという資料がしっかりと残っているので、筋肉がしっかりとついて身長もそこそこなければならなかったのだ。
戦いの最中も馬上から槍で突き飛ばしたり払い飛ばしたりするシーンがあり、いい説得力が生まれたと筋肉を褒められた。
悪い気はしない。
撮影も恙なく終わりあとは放映されるのを待つばかりだ。
今の所話題性などでKART主演ドラマには視聴率で勝ってはいるが、KART主演ドラマは脚本がとても面白いので油断はできない。
演技力もまだまだおよばないので、何とか話題性や兼綱人気に頼ってしまっている。
流石に数年の経験値差がものをいう。
負けるわけにはいかないのはどちらも同じことなのだが、どうやらKARTにも火がついているようだ。
ここ最近は真面目にレッスンをこなし教えも乞うているらしい。
一也に憧れる男の子も多いらしく、どうやらまだまだ俳優やアイドルが出てくる可能性があると聞いた。
すでに大手事務所ではカッコいい男の子を何人か抱え込んでいるらしい。
負けてはいられない。
いつも以上にレッスンに打ち込む一也は翌日熱で寝込んでしまうのだった。
足に筋肉がつきづらいどうも私です。
さて、筋トレを1年も続けると筋トレをしない日が不安になってくると思います。
かく言う私は3日ほど筋トレをしていませんが、おそらくパワーはダウンしていることでしょう。
しかし、嘆いてはいけません。
筋肉は1年の努力をちゃんと覚えててくれます。
少しの間筋トレをしなくとも、数日で休む前の状態に復活してくれるのです。
私は昔1ヶ月筋トレして1ヶ月筋トレしないという狂ったトレーニング状態になったことがあります。
しかし、1ヶ月で鍛えあげた肉体は1ヶ月で半分ほどまで落ちますが、半月もしない内に元通りになるのです!
私だけかもしれませんが……。
なので安心してください。
筋肉は裏切らないということを。
筋肉はしっかりと自分自身を見てくれているということを。
LOVE&MUSCLE。
愛と筋肉だけが友達さ。




