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 伊織さんに連れられてやってきたのはとある料亭で、部屋に案内されるとすぐ料理が運びこまれ始めた。


「ここの料理は最高なんだっ! 期待しててくれっ!」


 目をキラキラと輝かせているのをみれば、ここの料理がどれだけ美味しいかがよくわかる。


「ここにはよく来るんですか?」


「もちろんよく来るけど、マネージャーとか社長とだ……」


伊織さんが遠い目をしている……どうやらそういったこととは縁遠いようだった。


「男の人とは一緒にならないんですか?」


「二度ほどあるけど、フェスの打ち上げという場だけなんだ……」


 やはり、芸能人といえど出会いの場には相当苦労しているようだ。 


「やっぱり芸能人になっても出会いは少ないものなんですか?」


「そうだなぁ……おそらく出会いの場の多さなら芸能人は多いんだろうが、私の容姿では中々……」


 はぁ……とため息をつく伊織さんだが、どこからどう見ても可愛い。

 やはりこっちでは美人な人の需要は少ないようだ。


「こんなに可愛いのに……」


 ポロリと言葉が漏れてしまった…。


 自分ではその呟きに自覚はなく、料理を食べながら見た伊織さんの顔が真っ赤になっているのを見て気がついた。


「あはっあははっ……か、可愛いなんて、はじっ初めて言われったよぉ?」


 明らかに動揺しており、箸を持つ手が震えてポロポロと料理を取りこぼしている。


 美人が女の子になる瞬間は可愛いとは聞いていたが、ここまで可愛いとは思わなんだっ。


 少し俯いてちびちびと料理を食べる姿は小動物のようで、思わず抱きしめたくなるほどだ……。


「そ、そういう一也さんはどうなんだ?」


 どうなんだとはまたアバウトに来たもんだ。

 やはり女性関係のことなんだろうけど、自分モテてますっ!とは中々言い辛いものだ。


 モテているのは明らかに分かるし、男ならば基本的にモテる。


 中の上……よく見積もっても上の下くらいの容姿なのだが、こっちでは相当なイケメンとして見られている。


 身体が引き締まっているところもポイントが高いらしい。


「そうですねぇ街を歩いているときの視線とか、それくらいじゃないですかね」


「やっぱり見られるのは嫌かな?」


「あんまりジロジロ見られるのは良い気がしませんね」


 そうかぁ……と言って項垂れる伊織さんだが、伊織さんも男性をジロジロ見てしまっているのだろうか。


 さすがにチラチラと見られるまではいいのだが、ガン見してくる人がかなりの数いるのだ。


 不特定多数にジロリと見られるのがあんなに不快だとは、こっちに来るまで全く気付かなかった。


「伊織さんもやっぱり見ちゃいますか?」


「それは……もちろん目の前に良い男がいたら目を奪われるというかなんというか」


 うぅ……と項垂れる伊織さんだったが急に顔をあげ


「よしっ! もうこれからはあんまり見ないようにしようっ! そう決めたっ!」


 声高らかに宣言した。

 そんな微笑ましい伊織さんに癒され、懐石料理を再び食べようとしたときだった。


「ところで、一也さんは芸能界には興味はないのかな?」


 唐突に伊織さんから質問が飛んできた。


「芸能界は荷が重いというか、流石にテレビの前であんなこんなするのはちょっと恥ずかしいと言いますか……」


「一也さんならトップをとるのも簡単だろうに……。それに今日のイベントにカメラが来てたろう? 一也さんも今頃テレビにバッチリ映ってる頃だと思うけれど」


「へぁっ!?」


 変な声が出てしまった。


「そんなに驚くことかな? 一也さんほどの……そのぉイケメンがあの場にいたら、私よりも一也さんのほうがメインになるくらいだけど……」


 時折カメラがこっちを撮っているのは見えてはいたが、そこまで大々的に放映されないと高を括っていた。


「そんなにですか?」


「もちろんだとも。明日からは芸能事務所からデビューの打診に関するものが届くだろうな」


 伊織さんからの無慈悲な宣告に、今度はこちらがガックリと項垂れてしまう。


 働く場所がなかったとき、最後の最後、最終手段としての選択肢だった。


「そ、そんなに嫌かな?」


 不安そうな視線をこちらに向けているが、芸能界が特別嫌というわけではなく、向こうでの常識というか固定概念が邪魔をしてなどとは言えるわけもなく……。


「嫌というか、分不相応だと思ってまして……」


「正直に言おう。一也さんは必ず芸能界で成功すると言っていい。それもこれまでにないくらいに」


 伊織さんの目は真剣そのものだった。


「プライバシーの問題もありますし……」


「男のプライバシーを暴こうものならその会社は倒産だ。一也さんが思っている以上に芸能界は不自由はないぞ?」


「考えておきます……」


 今の伊織さんに対して、正直なにも言い返せる気がしなかった。


 何を言っても丸め込まれそうで、出た言葉は逃げの選択肢とも取れる言葉だった。


「んふふ……一也さんが芸能界にデビューする日が待ち遠しいな。もしデビューしたら一緒に歌ってはくれないか?」


「もし芸能界に入って、伊織さんと同じ高さに立てたとき、その時は一緒にやりましょう」


 ニコニコ笑顔からにまにま笑顔に変わり、見るからに喜びが、幸せのオーラが噴き出している。


 これがアニメなら、ピンクの花びらが五光のように溢れていることだろう。


 それからは他愛のない話に花を咲かせ懐石料理を食べ終えた。


「今日は楽しかったよ。また一緒に……そのぉ食事にでもいかないかな?」


「そうですね! 今度は洋食を食べに行きましょう!」


 伊織さん的には一世一代の大勝負くらいの気持ちで誘ったのだが、伊織さんには好印象、どちらかといえば一目惚れに近いくらいの状態なので、伊織さんからの提案はとてもうれしかった。


「こ、これが連絡先です……」


 ぷるぷると震えながら差し出してきた小さな紙には、電話番号とメールアドレスとLINEのIDが書かれていた。


「ありがとうございます。それじゃ後で連絡しますねっ!」


 伊織さんから貰った紙を財布の中に入れ、なくさないようにしっかりと持つ。


「あと、俺のことは一也で構いませんよ? さん付けはしなくてもいいです。」


 そう言うと伊織さんは顔を真っ赤にして慌て始めた。


「そっそんなっ! 呼び捨てなんてっ……あっうぅ……」


 伊織さんが俯いたとき、丁度のタイミングでタクシーがやってきた。


 別れ際に再度呼び捨てにすることを伝え、結局顔をりんごの様にしたまま帰っていった。


 そして、帰って一番にしたことは伊織さんに無事に家に帰り着いたかの挨拶メールだった。


 伊織さんからはすぐに返事があり、それを心配するのはこちらだと逆に心配されてしまった。


 それからは軽くやりとりをして、またデートしましょうということで終わりとなった。


 実は伊織さんにメールをするのに3回くらい書き直し、送信ボタンを押すのに少し時間がかかったことは内緒である。



 次の日の朝のニュースを見ていると、昨日のチャリティーコンサートの話題となった。



“チャリティーコンサートに謎のイケメン現るっ!!”



「!?」


 流石に驚きを隠しきれなかった。


 伊織さんの歌やチャリティーの成功の話題が終わると、興奮ぎみの女子アナが紹介し始めた。


「チャリティーコンサートで超イケメンが募金活動をしてたんですよっ!」


 これにはキャスターやゲストからも大きな声が上がった。


「なんとっ! この様に笑顔を振りまいて、しかもっこんなに無防備な姿を曝け出しているのですっ!」


 くーっ!と声を上げる女子アナだったが、ゲスト陣からも声が上がっていた。


「こんなことなら仕事をほっぽっても行けばよかったぁ! ……という人も少なくないはずですっ!」


 明らかに自身の気持ちが前に出すぎていたが、最後の最後でなんとかフォローすることに成功していた。


 実際にこのニュースを見た人からすると、この女子アナと同じ感情を抱いた人は少なくなく、むしろほとんどの女性たちは女子アナの心の叫びに賛同していた。


「そしてなんとっ! 相楽伊織さんがこのチャリティーコンサート後に、男性と二人っきりのデートをしていたとの噂もあるようですっ! もしもこの男性とデートしていたとしたら……うらやましいっ!」


 いよいよ女子アナの感情は爆発してし、ゲストからも羨ましいぞぉ!と女子アナの言葉に同調していた。


 この報道と反応には苦笑いしかでなかったが、女子アナが最後に言っていた“これは芸能事務所が放ってはおきませんねっ!”の言葉に、昨日の伊織さんからの言葉がフラッシュバックしてきた。


「これは昨日の話にも現実味が……」


 はぁ……とため息をつくとインターホンがなり、モニターに映る明日香がニッコリ笑顔で死の宣告をしてくれた。


「芸能事務所からこんなにお便りが届きましたっ!」


 ガックリと項垂れたことは言うまでもないだろう。

女性芸能人とのデートはスキャンダルされません。

わざわざスキャンダル報道して外堀から埋めていく…的な手伝いをするほど男に余裕はありません。


なので、基本的にはゴシップスキャンダル報道はこちらほど苛烈ではありません。


逆にデートなんかしてないなどの報道をするときもあります。


可愛いアイドルとかは確実にデートしていない報道になります。




さて、そろそろ筋肉つけようかぁ…。


懸垂しようやぁ…。


みんな大好き上腕二頭筋と三角筋がバッキバキになる上に、僧帽筋や広背筋にベッコリ効くいい筋トレやでぇ…。


下半身を使わずに上げることが重要で、筋トレは反動を使ってやるんじゃなく静と動が重要なんやぁ…。


ゆっくり動かしピタリと止めてゆっくり戻す。


これを心がけるだけで回数こなすよりも充実した筋トレライフを送れるんやぁ…。


筋トレは量より質。


これは絶対であり不変なんやぁ…。


間違ったフォームで回数こなしても中々筋肉がつかない。

筋肉がつかないとやる気も落ちる。


モチベーションの低下を招くだけ。


間違った腕立て軽く五十できると自慢する前に、しっかりとしたフォームで二十、三十とできたほうが筋トラーからの評価は高いでぇ…。


自分のために筋トレをするのであって、筋トレを自慢しているようじゃまだまだですわぁ…。


結果を見せてから過程を見せないとなぁ…。


過程を誇っているだけではまだまだやぁ…。

過程を誇るのは心の中で…結果が出てから表に出さんとなぁ…。


がんばりやぁ…。


似非関西弁ってむずいね。

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