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スカッと爽快!
白木がストーカー事件を担当することになり、事件解決へ一気に進み始めた。
メールの送ってくる時間やエリアを割り出し、フェイクなどを見破り的確に行動範囲を絞っていく。
近場にいるのかどうすらわからなかったのに、圧倒的なスピードで進めていく白木はやはり優秀だったようだ。
身バレを避けるために警察官たちも本領が発揮されていなかったとはいえ、それを差し引いても白木の能力は素晴らしい。
3日時点で、犯人は単独犯で協力者がいる可能性大、サンライズとはかなり近しい所にいることまでわかった。
そして、割り出した行動範囲、パターンなどから怪しいところに小型カメラを設置し、インターネットの監視まで行う。
すると、2日後の夕方に犯人と思わしき女性を見つけることに成功した。
そして、すぐに綾奈たちがその場へと急行し、白木の指示のもと女性を拘束した。
パソコンに刺さっていたUSBから証拠が見つかったことが決め手だったらしい。
完全に無作為に思えた犯行場所も、ストーカー心理に詳しい白木にとってはなんのこともなく、しっかりとパターン化されているらしかった。
犯人はテレビ局のスタッフで、ラジオなどのスタッフにも顔が明るい優秀な女性だったらしい。
優秀で真面目な娘だったとプロデューサーたちは嘆いており、この不始末のお詫びは後ほどしてくれるとのことだ。
犯人が捕まって嬉しそうにしていると思いきや、綾奈はどこかどんよりとしている。
そのことを明日香に訊ねてみると、白木から冷静になれば私の力なんて借りなくても普通に解決できた……と、言われたらしい。
解決のヒントは多く散りばめられていたらしいが、綾奈は今回の事件では意固地になり過ぎていたようだ。
前回の囮のときには完全成る失態を演じ、一也に協力をしてもらうという選択が消えていたこと。
身バレを恐れ過ぎていたこと。
汚名返上するために気合が入りすぎていたこと。
様々な要因が重なってしまい、綾奈はポテンシャルの全てを発揮できなかったのだ。
それを白木に指摘され、どんよりモードになっている。
「まぁこれで私は名実ともに一也の側にいれるし、ありがと綾奈!」
ひしっと抱き着いてきながら綾奈にいい笑顔を向ける。
そして、そんな白木のほっぺを挟むようにして引き剥がす。
いやぁんなど言いながら引き剥がされる白木をよそに、どんより綾奈のフォローをしておく。
どんよりモードからナイーブモードくらいまでは回復したのだが、これは後々ガッチリフォローをしておかなければならないだろう。
しかし、いくら白木が優秀だからといって、あそこまで早いスピードで解決するのは異常だと思う。
不思議に思ったので再度訊ねてみると、衝撃の事実を教えてくれた。
「あぁ……実はあいつってあの時の私の仲間だったんだよね。
一也の写真も何枚か送ってたし、我慢の限界が来ちゃったんたんじゃない?」
衝撃のカミングアウトもいいところだ……そりゃすぐに見つかるわけだ。
「別に他のやつがやっててもすぐに見つける自信はあったけどね。
でも、あんな大掛かりなことさせといて言うのもなんだけど、実はあいつってことは3日目にはわかってたんだよね」
またもや爆弾を放り投げてきた。
あんまり早くも見つけたので不正を疑われるのを嫌った結果、敢えて遠回りをしたらしい。
しかし、どんな過程があろうとも期間内に解決すれば側に置くと約束している。
なので、約束を反故にすることなく物置きだった部屋を白木専用部屋にしてあげた。
すぐに高性能パソコンやわけの分からない機材が運びこまれていき、我が家の一室にサイバー感満載の異空間が出来上がった。
綾奈と明日香は嫌々ながらも白木とはよくやっているようで、安心しているといえば安心している。
綾奈も添い寝などの強攻策により以前の様子を取り戻し、明日香も相変わらず元気だ。
しかし、そんな平和になりつつ日常に白木が一握りのスパイスを加えてくれた。
ある日……白木の部屋の機材に興味を持ち、面白そうな物を見せてくれと頼んだ時のことだ。
白木がやってきて数日経ち、問題行動もなくいたって真面目にやってくれていたので油断していた。
白木の部屋に一人で乗り込んでしまったのだ。
綾奈は料理を作っており、明日香はクイズ番組に夢中になっていた。
白木と二人っきりになってすぐに行動を起こしてこなかったのも原因の一つだろう。
白木に機材の説明を一通り受け、パソコンでやってる仕事を見させてもらっていた。
完全に油断しきっていたとき、白木がトイレに行くと言い席を立った。
もちろん油断しているので返事をしてパソコンを見ていたら、ガチャリガチャリとおかしな音が聞こえる。
何事かと音のした方へ振り向いてみれば、白木がにんまりしながら部屋の鍵をかけていたのだ。
「やっと二人っきりになれたね……」
はぁはぁと熱い息をこぼしながらこちらへゆらりゆらりと近づいてくる。
「明日香ぁ!! 発作がでたぞぉ!!」
襲いかかってくる白木をなんとか食い止めながら助けを呼ぶ。
すると、すぐに扉を激しく叩く音が聞こえてきた。
よく見ると、扉には三つも鍵がかけられているではありませんか……。
「あいつらが入ってくるまでに、一つになろ? ね?」
拘束していた腕を振りほどかれ、一気に体勢が逆転された。
グヘヘと笑いながら手錠を取り出してくる白木をなんとか押しとどめつつ、この状況を打破できないか考える。
考え抜いた結果……逆にこっちから攻めることにした。
上に跨がる白木を思いっきり抱き寄せる。
そのまま転がりまたもや体勢を入れ替えると、キスするように顔を近づけていく。
白木もキスしてくれると思い目をゆっくりと閉じた。
しかし、ここでキスするほど甘くはない。
ゴチンと頭突きをかまして立ち上がり、悶絶する白木をよそに扉の鍵を開けていく。
扉開く寸前で復活した白木が飛びついて来たが、時すでに時間切れ……般若を宿した綾奈と明日香によって連行されていった。
「少々教育を施しますので、当分はこの部屋に入らないでください」
目が笑っていないデビルモードの綾奈に頷くことしかできず、ゆっくりと閉まっていく扉をただただ見ていることしかできなかった。
最後に白木と目があったのだが、殺されかけの小動物のような目をしていた。
ご愁傷様だ……。
完成していたご飯を明日香と食べながら、時折聞こえてくる指導の音や声に手が震える。
その時の明日香のにこやか笑顔も、中々に恐怖を感じさせてくれた。
そうして、ご飯も食べ終わりテレビでも見ながらだらりとしていると、綾奈と白木がリビングに戻ってきた。
綾奈はイキイキといておりどこかすっきりとしており、逆に白木は感情を失っているように見える。
「ふふふ……これでもう馬鹿なことをすることはないでしょう」
ニコリと笑う綾奈に対して震えている白木。
どういう教育をしたのかは聞かないほうがいいだろう。
「まぁ暴走しなくなったんならいいけど……ほどほどにね?」
あまり綾奈にはバイオレンスにはなってほしくはない。
なので、頭を撫でるという強行手段とともに声をかける。
すると、今までの雰囲気が嘘のように霧散し、いつも通りの綾奈が帰ってきた。
そして、白木の目に若干の光が戻ってきた。
空気も良くなったところで、白木の足りない生活用品などを買い足しに出かける。
ここで綾奈を連れて行くと白木の買いたいものが買えなさそうなので、綾奈にはお留守番をしてもらった。
ぶーぶーと文句を垂れていたが、明日香に頑張ってもらうことで渋々納得してもらい、解放された白木は意気揚々と必要な物を買い揃えていった。
こうして優秀なブレインを手に入れたことを、今は素直に喜んで置くことにした。
白木を出したいだけだった件について!
許してちょんまげ!
あと、コメディ感強めてみたけど失敗!
うまくはいかないものです。
次回からはアーティストとして奮闘していくパートです。




