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再びやつが現れる!




 あれから数日……ラジオ反響が凄まじく、特に純の爆弾発言と俺の紳士トークが後押ししているらしい。


 事務所にはいつも以上にファンレターが届いており、桜子さんたちがヒーヒー言っているというのを聞いた。

 純の今までのイメージは男性らしい冷めたタイプだったのたが、今回の事件のおかげで大分印象が変わったようだ。


 それはファンレターなどに表れており、いつもはお堅いメールがフレンドリーというか、大分堅さがとれている。


 純は事件が広まりまくっていることに不満タラタラだったけれども、サンライズに対する印象はより良くなった。

 親しみやすいアーティストととして人気も鰻登りだ。


 伊織さんからもラジオ内容について連絡が来たのだが、初めて致すときには教師と看護婦どっちがいいかなどという悩ましいことを聞かれた……。


 もちろん二回目のそういうときは教師でお願いしておいた。

 そして、その内容を見た明日香がきゃーきゃー言っていたが、ベッドにスープレックスをすることで事なきを得た。


 幸せそうな顔でベッドに沈み込む明日香を見て、こっちも和んでしまったのは秘密だ。


 そういえば、付き合い始めて未だに事を済ませていない。

 三人の美人と付き合えているということ、しかも、ラブラブで順風満帆すぎてあまり考えてはいなかった。


 しかし、今すぐに致そうとは思わないが、こんな美人たちとそういうことをすると考えるとどうしてもニヤけてしまう。


 そんなニヤけ顔を綾奈に見られてしまったが、考えていることを悟られるわけにはいかない。

 適当に誤魔化して新曲作成に取り掛かる。


 が、こんな精神状態では進むものも進まず、結局なにもできなかった。

 そして、部屋から出てくるのを待ってましたと言わんばかりに明日香が飛びついてきた。


「ドン・キホーテにいこう!」


 明日香の言わんとしていることがすぐに分かってしまい、明日香は再びベッドにスパインバスターされた。

 またもや幸せそうにベッドで大の字になる明日香のほっぺたを突いておく。


「はぁ……明日香は相変わらずですね。まぁそんなことより、鮎川さんから電話ですよ」


 呆れ顔で明日香を見つつ電話を手渡してくる。

 鮎川さんがわざわざ電話で連絡を寄こすのは結構珍しい。

 電話をしてくるのは大抵桜子さんだ。


「実は困ったことになってな……。あのラジオの一件以来よろしくないメールが届いているんだ」


 そのメールの内容とはどうやら個人情報に触れるもので、あの時のストーカーを彷彿とさせるものらしい。


 綾奈にもその事を伝えると、明らかに怒り始めている。

 そして、いつの間にか復活していた明日香に至っては罵詈雑言を吐いていた。


 このまま放置していていいものかわからないので、鮎川さんと直接会って話し合うことにした。




「結構直接的というか、完全に一也のことを知っているなこれは」


 鮎川さんに見せてもらったメールを見る限り、確かにこっちのことを知っているようだった。

 一也の名前が書かれており、プレゼントを贈るやいつも見ているなど、あの時ことを思い出す。


 すぐに鮎川さんと綾奈によって対策が講じられたのだが、もちろんいい結果は得られなかった。


 あの時とは違い実害はないのだが、メールが日に日に気持ち悪くなっていくことだけは頂けない。


 完全に妄信しており、どうやら結婚までしていることになっているらしい。

 ご丁寧にこちらの名字まで知っているということがこの時わかった。


 そうして実害のないままラジオは二回目を迎え、初回とほとんど同じような放送となった。

 しかし、平和な日常に紛れ込む異物にストレスが溜まってくる。


 綾奈と鮎川さんは日々頭を悩ませているみたいだが、一向に足取りを掴めないようだ。

 自分だけならまだしも、周りにここまで迷惑をかけているというが一番許せなかった。


 この状況を打破するためにとっておきの作戦がひとつだけある。

 しかし、それをするのはかなり躊躇われる。


 蛇の道は蛇。

 軽いトラウマになりかけたストーカー事件を引き起こした白木由佳。

 あの変態美少女を頼るのだ。


 カズが一也であるということを隠しての捜査になっているので、人員が圧倒的に限られる。

 その中で有効な対抗手段を考えるというのはかなり難しい。


 そう考えると背に腹はかえられない……。


「あの……白木由佳を頼ってみるのはどうですか?」


 その言葉に綾奈は猛烈に反発した。

 自身の失態のこともあり、白木を頼るのだけは許せないらしい。


「噂の一也を襲ったというストーカーか……悪くないんじゃないか?」


「正気ですか鮎川さん!? あんな卑劣で姑息な女の力など借りなくと、すぐに突き止めてみせますよ!」


 烈火の如くお怒りになる綾奈を明日香とともになだめる。

 が、まさかの鮎川さんが燃料をさらに投下してきた。


「しかし、なんの成果もあげれていないどころか髪の毛一本すら犯人像を掴めていない。

数を頼れない今、事に詳しい精鋭ならば意見くらいは聞いてみたらどうだ?」


 この言葉に綾奈はグゥの音もでなかった。

 この一週間、男護官としての責務のほとんどを明日香に任せて調査していたのだが、本当に手がかりすら見つけることができなかった。


 もちろん信用できる精鋭の警察官の手を借りても……だ。


 現実的な鮎川さんと気持ちが先行する綾奈……どちらの判断が正しいかは火を見るより明らかだろう。


 しかし、綾奈の気持ちは痛いくらいわかる。

 それでも、最近心なしかやつれてきており、明らかに疲れ果てている綾奈を見るよりはマシだ。


 グッと拳を握りしめて震える綾奈を二日かけてなんとか説得し、なんとか白木を特別に呼び出すことに成功した。


 目の前には手錠をつけられた白木が座っており、そんな白木を人を殺せる眼差しで見つめる綾奈……。


 部屋の中の空気は最悪なのだが、当の白木はどこ吹く風といった様子で涼しい顔をしている。

 協力してもらいたいということだけを伝え、明日香がプリントアウトされたメールの数々を白木に渡す。


「はぁん……それで私を頼ったわけね……。男護官が聞いて呆れるね」


 挑発された綾奈が飛びかかろうとするのを手で制し、静かに明日香が要件を白木に伝える。


「一々癇に障ることを言わないで。あなたにはこれの犯人がわかる? わからない?」


「そうだなぁ……これだけ見て犯人がわかるとほざくやつがいるなら見てみたいな」


 明日香まで白木の挑発に乗りかけたので、綾奈と明日香にはご退室願った。

 事が事なだけに手短に済ませたいし、一々二人を抑えるのも簡単ではないのだ。


「二人っきりだね」


「部屋の外で二人がここの会話を聞いてる」


 二人を部屋の外に出し、椅子に座るやいなや妖艶な顔つきで白木が呟きかけてきた。

 しかし、白木の言葉に乗っかることもなく淡々と返すと、白木はつまらなそうにしている。


「面白くないなぁ……まぁこれを送ってきたやつがどういうやつなのかとかはわかるけど……」


 チラチラとこちらを見ながら勿体ぶってくる。

 あまりにも取引したいですオーラを纏っているので、とりあえず白木の要求を聞いてみることにした。


「それはもちろん自由の身にしてほしいのと、男護官としても伴侶としても永久雇用してほしいってこと」


 白木が言い終わるやいなや扉叩く音が部屋の中に響き渡る。


「正気で言ってるのか?」


「当たり前でしょ? あなた達の要求に対して私には全くメリットがない。好感度-100が-99に変わるだけ。

これで手伝ってもらえると思ってるならお笑いだね。

まぁ流石にさっきのは私の望む最高の結果だけど、そこまで高望みしてないよ?」


 確かに手伝わせるメリットが全くなかった。

 このままこちらの要求に応えても、精々毎食のご飯が美味しくなる程度だろう。


 別に白木き頼る必要はないのだが、このままでは時間がかかりすぎるのと、実害が出る可能性がある。

 故に白木が頼りになるならば白木を頼るのが一番なのだ。


「別に白木じゃなくても相談相手はいるんだ」


「それは嘘。いるにしてもこれだけじゃ分からなかったか正体をバラしたくないという点で落選。

わざわざ襲われた相手に助力を乞う時点でブラフは無理だよ。

それに、これを長引かせたくないってこともわかる。すでに私のところに来た時点で終わってるよ」


 白木は得意げに言うわけでもなく、さも当然のように淡々と事実だけを的確に突いてきた。

 

 そして、仕方なしに観念して正直に答えると、白木は嬉しそうに笑っていた。


「で、協力したらどうしてくれるの?」


「自由の身にしてやれるかな」


「断る。十分に魅力的な提案だけど、難癖さえつければまたここに戻せるしね」


「完全に身の保証をするって言っても?」


「可哀想な私を男護官として迎えてくれるくらい言ってくれてもいいのに……まぁいいや。

完全に自由の身になれるならそれでもいいよ」


 別に、一度出したらよっぽどのことでもない限りはまた入れることなどしないが、白木を本当に自由の身にしていいのか不安になってきた。


 次は万全の状態で拉致られる可能性もある……。

 ここで口約束したところで、緻密な計画のもとでやられたら意味をなさない。


 一番いいのは自分の手元に置いておくことなのだが、恐らく白木はそのことがわかっている。

 自分の協力を得たければ手元に置く以外の選択はないと……。


 事件の長期化や最悪のケースをとるか、白木を側に置くか……。


「私が協力したならすぐにでも犯人を特定してあげるよ。まぁあの娘の力を借りなきゃだけどね」


 こちらの心を見透かすように、一番心配しているところを突いてくる。

 出会いが最悪なだけで付き合っていけば良いところも見えてくるはずだ……。


「一週間でできる?」


「みんながちゃんと協力してくれるなら一週間で見つけれるよ」


「見つけられなかったらここに逆戻りだけどそれでもいい?」


「てことは、見つけれたら伴侶として認めてくれるってことね」


「男護官として置くだけだよ」


「まぁそれでもいいや……やったぁ!」


 とりあえず契約は完了した。

 部屋に戻ってきた綾奈の不満そうな眼差しは気にしなようにして、白木を釈放する手続きを済ませる。


 こういう時は被害者件男性のパワーを実感する。

 白木を連れて帰り鮎川さんに紹介し、ストーカー対策のエースとして活躍してもらうことになった。


 代償は大きかったもしれないが、得られるものはかなり大きい……と、思う。




再登場をさせようと思っていたので、ようやくご出演でござー。


白木ちゃんは性格以外はかなりのハイスペック女子なので、期待してほしいですね〜。

割りと強引に登場させちゃいました。


素敵やん?

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