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ときは進んで一月下旬の設定でござっ!
時間はちゃっちゃと進めましょう!
その間デートしたり家族サービスしたりしているのです!
あれから超特急で新曲を作り上げた。
寝る間も惜しんで作っていたおかげでみんなにかなり心配されたが、出来上がりを聴いたみんなの反応は上々だ。
やはり名曲三連発は効果てきめんだったようで、"ひとりじゃない"の評価が一番高かった。
「やっぱり一也は天才だねっ! 泣けてきちゃったよ!」
「そうですね! 一也さんは最高の歌手です!」
二人にべた褒めされてこっ恥ずかしいが、名曲たちが認められたのが誇らしかった。
こんなに認められると、まだまだ貯まっている名曲のことを思いわくわくが止まらないっ!
すぐに桜子さんに新曲たちを送り、20分程経ったころに返信が来た。
『今回の曲も素晴らしい出来栄えです! 早速ネットにショート版を公開しますね!』
この返信が来てからが早かった。
三時間も経たぬうちにショート版がネットにアップロードされ、ぐんぐんと再生数と評価が伸びていく。
それを明日香が嬉々として伝えてくるのだが、俺からすると異常なまでの伸びに少しビビってしまう。
「見て見てっ! もう50万再生超えたよっ!」
いくらなんでも早すぎる……。
まだアップロードされて一時間も経っていないというのに……。
「SNSではお祭り騒ぎみたいですよ。これならすぐに広まるのも頷けますね」
綾奈がスマホの画面を見せてくれたのだが、そこには#Sunriseと新曲の名前が所狭しと並んでいた。
「こんなに伸びるとMステの視聴率はどうなるんだろうね……」
物の数十分でこれなのだから、フルが聴けるMステとなれば視聴率において、インドのクリケット放送を超えるのではないか。
想像するだけで恐ろしい……。
しかし、他の男性アーティストたちもこの騒動にただただ指を咥えてるわけもなく、数時間後に新曲のショート版をアップロードしていた。
しかも、結構いい歌だった上に再生数の伸びがこっちのときよりも早いのだ。
これはかなり悔しかった。
現状ではネットを見ている人がかなり多いので、伸びやすい状況にあるとはいえ抜かれるのは癪に障る……。
歌の上手さや歌詞の深みなどは圧倒的に勝っているのにどうしてか……と、考えたが結局答えが出ることはなかった。
Mステでは必ず声援を多く貰ってやると意気込み純に連絡する。
純もこの状況に苛立ちを覚えており、文面からも並々ならぬ意気込みを感じる。
そうしてネットでの前哨戦は惜敗という形で終わり、いよいよ本番が近づいてきた。
「それではMステのリハを行いましょう。何か不満などがあればスタッフに言ってくださいね」
桜子さんに連れられ収録現場にやってきたのだが、初めて見る生のステージに軽く感銘を受ける。
向こうでは名だたる面々が立っていたと思うと、身体が震えてきた。
「二人に紹介しておきます。こちらが司会の田森京花さんで、こちらがプロデューサーの重永芽衣子さんです」
桜子さんに紹介された二人と挨拶を交わし名刺を貰う。
そして、こちらのタモさんはサングラスをかけておらず、オールバックでもなかった。
「何か要望などがあれば重永さんに直接伝えてください」
そうして桜子さん促されてステージへと上ると、すでにバミリがしてあった。
その位置に立つとカメラや出演者たちの座る場所がよく見える。
全く不満に感じる所がないので純にもどうかと訊ねると、純も何も不満に思うことはないようだった。
問題ないことを重永さんに伝えると、次は出演者席に案内され座る位置の確認をする。
最初はタモさんからそこそこ遠い位置にいるが、結局は移動するのでそこまで問題ではなかった。
が、なんと隣に座るのがやつらだ……。
それに気づいた純も眉間にシワを寄せている。
二人で眉間にシワを寄せてしまったので、重永さんにいらぬ心配をかけてしまった。
すぐさま誤解を解いて次へと進む。
次は、バンドや音響確認のために歌を軽く歌うことになった。
ステージの上にたち合図とともに演奏が始まる。
それに合わせて歌い、音と歌を噛み合わせていく。
しかし、さすがは長寿番組を担当しているバンドマンたちだ……少しの合わせだけでピッタリ決めてくる。
気持ちよくリハを進めていき、今度はタモさんとの打ち合わせを始める。
俺たちの出番はトリの一つ前で、トリはやつらが担当するらしい。
前は女性シンガーソングライターの方で、その人が終わってCMを挟んでから軽いトークを行う。
その後歌い始め終わったら少しのトーク後やつらの番となり、それも終われば締めということらしい。
トーク内容は当たり障りのないことを聞くが、もしもの時はフォローは任せてほしいらしい。
さすがはタモさんだ……。
それから緊急時のサインを決め、一通り流れを辿ってみる。
問題なく受け答えは出来たのだが、本番ではアドリブも来るかもしれないので気は抜かないでほしいらしい。
もちろん本番中に気を抜くつもりはない。
というか、初のテレビ出演で気を抜くやつなんているのだろうか……。
タモさんとの打ち合わせも終わり、最後にステージなどの状態をもう一度確認しておく。
男護官は番組が用意しているので、こちらで増員する必要はないらしい。
そうして全ての打ち合わせを終える頃には陽が完全に落ちていた。
「今日はお疲れ様でした。本番まで数日なので、体調を崩さないように気をつけてください」
テレビ会社を出たところで純と桜子さんとは別れ帰路につく。
道中Mステに行けたことでテンションの上がった明日香に絡みつかれ一騒動。
嫉妬した綾奈にも絡みつかれ、周りの女性からは刺すような視線バシバシ貰う。
それでもしっかりと男護官としての仕事は果たしているので、されるがままになっていた。
その状態のまま美味しそうな料理屋を見つけ、そこで晩御飯を済ませ家に戻る。
お腹も一杯になって満足したのか、先程までの興奮状態からうってかわり猫甘えする状態へと変わった。
ソファの上でうにゃうにゃと甘えてくる明日香に、少し恥ずかしそうにうにゃうにゃしてくる綾奈。
それをまた可愛がってしまうからいけないのかもしれないが、こんなかわいい生物を愛でないわけない。
しかし、こんなにも癒やされるのならそれはそれでいい気がしてきた。
俺ってばMステほとんど見たことないからどんなのか分かんないんだよな……。
まぁしゃーなしですな。
忙しい毎日を送っていますが、筋トレは欠かしていません。
どんなに疲れててもやっちゃうんだよな〜……もはやルーティンと言っても過言ではない。
次回はいよいよテレビ初主演です。
しーやー!




