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いい感じにできた気がする。



 ハンバーグにナイフを入れると中からとろりとチーズと肉汁が溢れてくる。

 熱を冷まして頬張れば、肉の旨みとチーズの濃厚な味がソースが絡み合っており、濃過ぎずクドくない仕上がりになっている。


 そして、そのとろけ出たチーズとソースにバケットをつけて食べるとこれがまた……。


 あまりにも美味しそうに食べているので、みんなが手を止めてこちらを凝視している。


「ん? 食べないんですか?」


 そう言うとみんなは手を動かし始め、美味しそうに食べ始めた。

 そして、そんな美味しそうに食べるのを見ていると、一口貰いたくなってしまう……。


「ハンバーグ一口あげるからパエリア少しちょうだい」


 隣に座る綾奈にハンバーグを乗せたフォークを近づけながら言う。

 顔を紅くしてあうあう言ってる綾奈の口元まで持っていくと、観念したのかパクリとハンバーグを食べてくれた。


 すると、すぐにパエリアをスプーンですくってこちらへと向けてくるので、それをパクリと食べて堪能する。


 魚介の風味がしっかりと聞いているが、貝系のザ・魚介な味は抑えられていた。


「妬けるね……」


「一也っ! 私のはどう?!」


 結局、物欲しそうな眼差しを向けてくる二人とも一口交換をした。

 パスタもカルドッソも最高に美味かった。


「ふぅ……次はどこか行きたいところはあるかな?」


 そう言われても、別にこれといって行きたいところはなかった。

 伊織さんが決めていると思っていたので、完全に伊織さん任せにしていた。


「そうか。それなら少し行きたいところがあるんだが、付き合ってくれるかな?」


 もちろん断るわけもなく、柑那さんに挨拶をして店を出る。

 そして、すぐにタクシーを呼んで向かった先は水族館で、まさかのチョイスに全員が驚いた。


「最近ここで深海魚がたくさん展示されてるらしいから見たくて……」


 少し恥ずかしそうだが、深海魚には興味が惹かれるので結構ワクワクしている。

 空気のない宇宙……月に到達しているのに、地球の中にある海の底には未だ到達していない。


 そんなロマン溢れる世界に興味が湧かないわけがない!


「俺も深海魚見たかったんですよ! 行きましょ行きましょ!」


 完全にテンションが伊織さんよりも上がっている。

 少し引かれてないか心配だが、深海魚好きならばわかってくれるだろう。


 世界最大の淡水古代魚のピラルク、世にも珍しい金色うなぎ、クサビフグなど様々な魚たちがおり、四人できゃいきゃい言いながら見て回った。


 そして、遂にやつらのゾーンへとやってきた。

 お出迎えするのはもちろんリュウグウノツカイの剥製……からのダイオウグソクムシ。


 明日香はひゃーひゃー言って先に行こうとするのだが、本日のメインはここからなのだ……まだまだグソクムシは堪能させてもらう。


 普通のオオグソクムシは動き回るので動きの観察はこちらでして、フォルムや顔を見るのはダイオウさんだ。


 他にもコロザメ、ヒメコンニャクウオ、キングクラブ、オウムガイ、ラブカと見ていった。

 中々お目にかかることのできない深海生物たちが展示されており、伊織さんと俺だけが無駄に興奮していた。


 綾奈は普通に見ていたものの、明日香だけは気持ち悪そうな目で深海生物たちを見ていた。


「よくこんなの見てテンション上がるよ……」


 そうボヤいていたが、ヒメコンニャクウオだけは可愛いと言ってテンションを上げていた。

 確かにヒメコンニャクウオは深海のアイドルたと思う。


「まさか一也くんがこんなに喜んでくれるとは思わなかったよ」


「いやぁ深海はロマンがあふれてますからね!」


 深海生物を堪能し、ついでにイルカショー、セイウチショーを見にいく。

 あまりにも子供向けだったのであまり楽しめなかったが、お姉さんがイルカタッチをさせてくれた。


 なんだかんだいってこういうのは嬉しい……。


 そうして時間も過ぎていき、そろそろ夕方も近づいてきた。


「さて、そろそろ出ようか。次は普通に買い物にいこう」


 またもや伊織さんの案内でお店に向かったのだが、到着したお店は高級服飾店だった。

 

 予想以上にいいお値段がする服を見て、三人で目をパチクリさせる。

 母さんが買うような値段の服ばかりで、一般庶民には手の届かない領域の服だった。


 早い話が0の数が5個はあるものばかりなのだ。

 一番安いもので50000円以上のもので、金銭感覚が麻痺してしまいそうになる。


「これとかどうかな?」


 服の値段に固まっていると、服を自分の体に当てて聞いてくる。

 もちろん最高に似合っている。


「いいと思うんですけど、伊織さんはもっと可愛い格好しましょうよ。 絶対似合いますよ!」


 そう言って可愛らしい服を選んでは伊織さんに合わせていく。

 可愛らしい服を当てられて頬を染め、もじもじとする伊織さんの可愛さならばキュート系もバッチリのはずだ。


 "これは似合わないんじゃないかな……?"、"も、もっと落ち着いたほうがいいんじゃないかな……?"などと言いながらも体に服を当てていく。


 なんとも可愛いことてあろうか!


 ベージュの少しもこもこしたコートを選び伊織さんに勧める。

 トレンチコートなどを合わせてばかりだった伊織さんのチョイスとはかなり違う。


 かなり恥ずかしそうにしているが、強引に試着させてみてみるとかなり可愛らしく仕上がっていた。


 いつもの大人なファッションではなく、最近の大学生感が少し出た気がする。


「に、似合ってるかな? おかしくはないかな?」


「最高っす……!」


「そ、そうか……一也くんが言うのなら間違いないかな」


 そう言って考え込む伊織さんの隙をついてパチャリと一枚写真に収める。

 すると、おかしな音に気づいた伊織さんが、スマホを持っている俺を見て慌てだした。


「ちょちょっ! な、何をやってるんだ!」


 今の今まで試着室を囲んでたおかげで周りからは見えていなかったのに、スマホを奪取しようと近づいてきたおかげで周りに素顔を見られてしまった。


「え……? あれ相楽伊織じゃない?」


「あんなイケメンとデートとか……羨ま死い……!」


 そんな声が周りから聞こえ始めてしまった。

 慌てて試着室に入って着替え直すが時すでに時間切れだった。


 一気に相楽伊織が謎のイケメンとデートの話題が広がっていく。

 すぐに着替え終えた伊織さんと服屋を出て、足早にこの場から離れていく。


「やばいですね……もうTwitterに情報が回ってますよ……」


 十分に離れたところで綾奈がスマホを見せてくれた。

 そこにはガッツリと服屋の名前と伊織さんの名前が載せられており、RT数がどんどんと増えている。


「す、すいません! 俺があんなお巫山戯をしなければ……」


「いや、あそこで軽率な行動をした私が悪かったよ……少し舞い上がり過ぎてた……」


 二人でペコペコ頭を下げあっていると、いつの間にか明日香がタクシーを捕まえていてくれた。


「とりあえず変装しなおしましょう。このままじゃすぐにバレちゃいますよっ!」


 明日香の言ってることも尤もだ。

 すぐにタクシーに乗り込んで伊織さんの自宅へと向かう。


 タクシーの中では終始無言で、気まずい空気が到着まで流れていた。

 着いたのは都心の高級ビル街で、タクシーから降りて伊織さんの後に続く。


「と、とりあえず今後について話し合おう……」


 成り行きで伊織さんの家に上がったが、なんという不幸中の幸い。

 なんだかいい香りがするが、この雰囲気で部屋の匂いを堪能したりベッドに飛び込むわけにはいかない。


 ソファに腰掛けて出されたお茶を一口飲む。


「今の状況ってどれくらいやばいですか?」


 かなりヤバイことは分かっていたが、それでも聞かずにはいられなかった。


「熱愛報道はされるだろうね。もちろん一也くんには何もないから安心していて大丈夫だ。」


 全く安心なんかできない。

 矢面に立つのは伊織さんだし、これからの芸能活動に支障が出かねないのだ。


「でも、これで伊織さんは結婚できなくなりましたね。一也さんが貰わない限り……」


 綾奈が爆弾を放り投げてきた。

 確かに綾奈の言う通りで、他の男と付き合ってたという女と結婚する男はほぼほぼいないのだ。


 言い方は悪いが、幾らでも選べるのに誰が他の男にアーッ!された女を選ぶのか。

 それがこの世の男の考えなのだ。


 噂になってしまえばそれが嘘だと言っても男は信じないし、伊織さんは選ばれにくい美人系だ。

 チャンスは限りなく0に等しくなっただろう。


 申し訳なさそうにこちらを観る伊織さん。

 申し訳ないのはこっちのほうだ。


 本来ならば、ベタに夜景の見えるレストランでディナーを食べて告白の流れだった。

 しかし、こんな二択を迫られるとは思わなんだ……。


 告白をするかされるかもしくは……。

 もしくはの方はないのだが、せめて告白だけはこちらからしたい。


 口を開こうとする伊織さんを止める。

 伊織さんから出る言葉は二種類で、その両方とも聞くつもりはない。


 一つは別れ話。

 もう一つは一世一代の告白。


 このどちらかが来るのはわかっているので、それを口に出させるわけにはいかない。

 左手で喋ろうとする伊織さんを制して立ち上がる。



「こうなっては仕方がありません!


 本当ならキレイな夜景の見えるレストランでディナーでも楽しみながら、口元についたソースを拭ったりなんかして伊織さんが恥ずかしがるのを堪能していい雰囲気に……。


 そして、食べ終わるころに寂しそうに帰ろうとする伊織さんにサプライズ告白をするつもりでしたけど、こうなったらそんな悠長なこともしてられません!


 伊織さん好きです! 付き合ってください!」



 予定とは大きく異なる告白に伊織さんはポロリと涙をこぼした。

 しかしその顔は笑っており、なんとか幸せの涙にすることができた。


「そんなことを考えててくれたんだ……嬉しいよ……」








この長い前フリからの跳躍失敗!

割りとこういうのが好きです。


普通の展開を期待していた人には申し訳なかっ!

許してヒヤシンス。


ホントは三編構成でいこうと思ってたんですけと、この詰め込みよ!

ほんとに頭をヒヤシンス。


うひゃひゃひゃひゃひゃ!



なんでそれまでバレてなかったの?的なやつはノーでよろしゅう!


細けえこたぁいいんだよぉ!



追伸

最近ちょこちょことあべこべが増えてきて嬉しいのですが、男女比2/100など約分できる数のまま書いてるのを見かけます。


それを見るたびに自分もやってないか確認してしまいます。



とぅいしん

この話はあとで手を加えるかもしれません。

このあとの展開の仕方を模索しているので、少し変更アル・カポネ。


かしこ

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