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「ふぅ……こんなもんでいいか」


 一通りボランティアに関するパンフレットを集め終えた一也は、チャリティーイベントへの参加申込書を書き上げていた。


 とある神社近辺で行われるらしいそれは、ほとんどお祭りの様なもので売上金の一部を被災地に寄付するというものだ。


 そこで募金をお願いする役割に応募してみた。


 もちろん男である自分がやることにより、募金をする人を増やそうという目論見はもちろんのことある。


 ニュースで男性アイドルがチャリティーイベントに出演!というのを見て思い付いたのだ。


 申込書を出すべく部屋を出た一也は、一先ず明日香さんに近場でポストがないかを尋ねると、どうやらそういったことも明日香さんに任せていいらしい。


 明日香さんに郵便物を預けておけば、このマンションに郵便局員が来たときに渡してくれる寸法なのだ。


 わざわざ郵便局員が受け取りに来るというのも驚くことだが、明日香さんのオールマイティーっぷりにも驚かされる。



 因みにこの時明日香さんは一也の出した郵便物をしっかりと確認していた。

 特にチャリティーイベントの開催地を……。



「さて、これで一先ずやることは終わったな! 買い物にでもいきますかっ!」


 正直この家には調理器具というものが一切とまでは言わないがが、料理をするものとしてはまったく足りない。


 すぐ近くのショッピングモールに赴くと、ハーレム達がそこそこの数おり、サンリオショップで男を見る数くらいには男がいた。


 この近辺は多くの男が住んでるらしいのだが、この世界に来てからというものここまで男を見るのは初めてだ。


 少し気分が高揚してきた一也は調理器具売り場へ一直線に向かっていった。



 ピーラーや泡立て器、ミキサーやオーブンレンジなど、様々なものを見ては目星をつけていった。


「買うものが多すぎるなぁ……」


 ぼそりと呟いてしまい周りに聞かれていないかキョロキョロと辺りを見回すと、一人の女性店員と目があってしまった。


「どうかされましたかお客さま?」


 ペコリと頭を下げる店員さんは、とてもこの世界の女性とは思えないほど落ち着いていた。


「あの……買うものが多くなりそうなんですが、買ったものの配送ってやってますか?」


「もちろんやっていますよ。もしも荷物が多くなりましたらこの藤咲に連絡下さい。」


 藤咲に連絡下さいと言われてもどう連絡しろと……そう思う一也だったが、それは胸の奥の方へと押しやって商品物色を再開させた。


『さすがに男が沢山来るだけあってがっついてはこないけど、強かだなぁ』


 一也が思った通り、このショッピングモールでの女性スタッフの男性への対応は徹底されており、あんまり絡むとクビになるのだ。なのでこのような強かなアプローチへと変わっていたわけだ。


 しかし、男性に近付きたいがためにここで働いているのに、逆に遠ざかってしまっているのは本末転倒とも言える。


 ショッピングモールに来てから約1時間……ようやく買うものが大体決まった。


 オーブンレンジなどの電子機器にピーラーや泡立て器などの調理器具を買い漁った。


 そして買ったものが多かったので配達を頼んだのだが、なぜか藤咲さんが配達の手続きをしていて軽く恐怖を覚えた。



 買い物に来たのにほぼ手ぶらな一也は、適当な場所でご飯を食べて帰路についた。


 そして、家に戻ってすぐに筋トレで身体を鍛え上げていく。


 いくらニート万歳な生活が出来るからとはいえ、肌は白くてヒョロヒョロかデブデブなんて真っ平ごめんだ。


 ゆっくりと筋肉を使って筋肉へと負荷をかけていき、一気にバルクアップをはかっていく。


 男の汗と熱気が充満するこの部屋に女が入ろうものなら、たちまち野獣と化してしまうか蕩けきってしまうことだろう。


 そんな部屋で一也の荒い息遣いと器具の音が響いていた。


 筋トレを終えるとすぐにプロテインをキメ、冷たいシャワーで汗を洗い流していく。


 シャワーから出た一也はテレビをつけソファに座る。


『こんな広い部屋に一人はやっぱ寂しいな……』


 豆乳コーヒーを飲みながらテレビを見ていると、ふとそんなことを思った。


 1Kでの一人暮らしが染み付いていた一也にとって、こんなバラエティで金持ちのマンションとして紹介されるような部屋は、どうしてもアウェイ感を感じてしまう。


 初めはテンションが上がりこそすれ、慣れれば途端に空しくなってしまう。


 バラエティ番組できゃっきゃはしゃぎまわる女芸人を見ていると、彼女がほしいと切に思うようになってしまった。


『でもなぁ……肉食系過ぎるんだよなぁ……』


 バラエティ番組で女性の理想のデートを見たり、こういうことを男性としたいというのをみるとその願望は駄々漏れており、しかもそれに共感する人が多い。


 そんなことを考えながら部屋でだらだらとしているとインターホン鳴り、モニターには大量の荷物を持ってきている女性と明日香さんが立っていた。


 ショッピングモールで買ったものが届いたのですぐに部屋の鍵を開けて待つ。


 鍵を開けてからすぐに宅配業者は部屋に来て荷物をどんどんと廊下に置いていく。


 明日香さんの厳しい監視の下で作業が行われたため、アクションを起こすことができかった宅配業者さんは舌打ちをしていた。


 宅配業者さんたちとお別れをし、残った明日香さんに一つだけ聞きたかったことを聞いた。


「ここは明日香さん以外の職員はいないんですか?」


 いつ行っても明日香さんしかおらず、どのタイミングで帰ってきても明日香さんが出迎えてくれる。


 さすがに疑問にも思うだろう。


「え? 忘れちゃったんですか? 私は国東さんの専属ですよ? 対応は全て私が担当しています」


「いや、どんなタイミングで帰っても明日香さんがいるから…他に人はいないのかと思って……」


 苦しい言い訳っぽかったが、明日香さんは全く気にしている様子はなく笑顔を浮かべている。


「それはしっかりと職務に励んでいるからですよっ!」


 ふふんっと胸を張る明日香さんなのだが、全く様になっていなかったのは明日香さんが童顔なせいだろう。


「さすがですね。それじゃせっかく調理道具を買ったんでご飯でも食べていきませんか?」


「いいんですか?! ありがとうございますっ!」


 小躍りでも始めそうなほどテンションが上がっている明日香さんをソファに案内する。


「ふへへ……また皆に羨ましがられるなぁ……」


 明日香さんをソファに案内するとそんなことをいったので、どうしてなのか訊ねると……


「男の人の手料理を食べれるんですよ?! 全世界中の女が羨ましがりますよっ!」


 とのことだった。

 どうやら男の手料理というのは破壊力抜群らしい。


 こちらとしても、こんなに可愛らしい女性と二人っきりで食事ができて嬉しいくらいなのだが、それは秘密にしておいたほうがいいだろう。


 ダンボールのなかでも保冷と書かれているダンボールを開け、食材をどんどん冷蔵庫に入れていく。


 食材や調味料を買い込んでいるときに、食材まで配送してくれるとは思ってもみなかったので、試しに送ってもらうことにしたのだ。


 まさかここまでしっかりとした配達がされるは思ってなかったが。


 調理器具を並べるときに明日香さんが手伝おうとしてきたが、ゲストに力仕事をさせるわけにはいかないので、ソファの上で大人しくしててもらった。





「できましたよー」


 ソファの上から……というか座った位置からピクリとも動いていない明日香さんに声をかけると、ようやく解放されたとでも言わんばかりに立ち上がった。


 それもそのはずだ……ソファに倒れこんで色々堪能したかったのだが、同じ失態を犯すわけにはいかないと、ずっと煩悩との戦いを繰り広げていたのだ。


「唐揚げの南蛮漬けにしてみました」


 料理を並べるとすぐに食べ始めた。

 明日香さんは美味しい美味しいと連呼しては箸をすすめている。


 食事中はバラエティ番組を見て、明日香さんに芸能人の人気を聞いたりしながらご飯を食べ終えた。


 明日香さんは結構テレビ業界の事情に詳しくて、マイナーな芸人から番組の制作の意図まで教えてくれた。


「ご馳走さまでしたっ! 美味しかったですっ!」


「お粗末さまです。喜んでもらえてよかっですよ」


 明日香さんは例え全く美味しくなかろうとも、男の手料理を食べて喜ばない女なんていませんっ!と、声高らかに言っていた。


 一人でご飯を食べるのが寂しかったので明日香さんを誘ってたのだが、明日香さんが帰って一人洗い物し終えると寂しさが復活する。


「やっぱ広すぎるのが悪いんだっ!」


 虚しく一也の声が部屋に響き渡った。




ほぅ…引き締まった腹筋が欲しいとな…?


オーソドックスな腹筋だけじゃ腹直筋しか鍛えられませんからな…。


下腹部や腹斜筋には足のあげおろしや足をあげて左右に振ったり、自転車を漕ぐように足を動かせっ!


上体を起こして身体を捻るのも効果的だっ!


様々な腹筋トレーニングがあるが、やっぱり腹筋を鍛えるにはプランクだっ!


プランクは体幹トレーニングの王様と言っていいくらいに優秀なトレーニング方法だ。


腕立ての体勢で肩のしたに肘が来るように肘で上体をキープしてる状態だ。


腰を下げることはダメでも、腰の高さを高くするのはOKさ!


プランクを毎日やってれば腹筋はバキバキさ!


なれて来たら腹筋ローラーで腹筋を虐めぬけっ!

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