44
楽器は抑えとかなきゃだめでしょ!
そういうコンセプトで生まれたお話!
レッスン後、鮎川さんに呼ばれたので事務所にやってきたのたが、珍しく社長室ではなく広々とした部屋に鮎川さんはいた。
部屋の中には様々な楽器が置かれており、その中で鮎川さんは真剣な顔をして立っている。
「2人とも歌は上手くなってきたし体力もついてきた。そして、すでにそこいらの女性アーティストを超える程度には実力もついてきている。
なので次のステップにいこうと思うんだが、それがこれだ!」
両手を広げてアピールしているのだが、要はそろそろ演奏もやってみないかということだ。
正直いうと興味はある。
しかし、楽器の演奏は向こうで何度か挑戦しており、ことごとく挫折しているのだ。
それが理由で今回の挑戦を見送るということはないが、やはり楽器をやるとなると挫折した時のことを思い出す。
「へぇ楽器か……いいかもね! やるからにはとことんやりたいし、アーティストっぽくていいよね!」
どうやら純は演奏をやることには乗り気なようで、笑顔でエアギターをしながらこちらを見ている。
「一也のギター姿とか映えるんだろうなぁ……」
「純はキーボードが似合ってそうだな」
純はキーボードが似合うと言われたことがよほどうれしいのか、すぐにキーボードを手に取り鍵盤を押している。
しかし、歌いながらキーボードというのは中々大変そうだし、あまり動けないというのはマイナスポイントだと思う。
「正直に言うと、2人のどちらかにはギターをやってもらいたい。まぁ好きなのを選んでくれて構わないが……」
そうは言うが、実際問題歌いながら弾くとなると結局ギターに落ち着いてしまう。
それに歌を歌いながらとなるとピアノかギターになるだろう。
そして無難にギターをチョイスしたのだが、純は似合ってると言われたのが相当嬉しかったのかキーボードを選んでいた。
「さて、本当にギターとキーボードでいいんだな?」
鮎川さんが再度確認をとってきた。
もちろんこの選択を変える気はないので頷いて応える。
純に至ってはすでにキーボードを持って帰える準備をしていた。
「それならば明日からレッスンを始めようか。さらに大変にはなると思うが頑張ってくれ! あとは……変な癖がつくと悪いからレッスンが始まるまでは下手に触らないようにな」
初心者用教本などを見てコソ練でもしようかと思っていたのだが、確かに鮎川さんの言うことはもっともだ。
おそらくは俺がコソ練をするのが分かっていたのだろう。
そうして悶々とした夜を過ごした次の日、純とともにわくわくしながら事務所へ向かうと、鮎川さんの近くに見慣れない女性が2人いた。
「おっ来たな。この人たちが2人に楽器を教えてくれる人たちだ。それじゃあ自己紹介を頼む」
「わ、私の名前は鹿島恵子です! ピアノのほうを担当させていただきます! どうぞよろしくおねがいします!」
「私は葉山麻里。ギターを担当させてもらいます。よろしくおねがいします」
小動物のような鹿島さんとクールな印象を受ける葉山さん。
2人の第一印象は大体こんな感じなのだが、楽器を持つと性格が変わったりしないかな〜などと馬鹿なことを考える。
「2人にはすでにレッスンプランを考えてきてもらってるから、いつものレッスンが終わったらこの部屋にいってくれ」
そうして渡されたのが、別のレッスンルームの場所が書かれた紙だった。
そして、テンションが高ぶっている純と2人でいつも以上にレッスンに励み、新しい挑戦に対するわくわくはレッスンにもいい影響を与えていた。
いつものレッスンが終わり純とは一旦別れ、紙に書かれた部屋に入るやいなやすぐにレッスンが始まった。
「えぇ……一也さんはギターは初めてですよね? まずは持ち方からいきましょうか」
葉山さんに手伝ってもらいながら、バンドの位置を自分の持ちやすい位置にくるように何度か調節した。
そして次に、簡単なコードというものを教えてもらったのだが、これがまたうまくいかない。
指の関節がまだまだ固いようで、手首を思いっきり返さないと弦を押さえられないのだ。
「あんまり手首を返しすぎると腱鞘炎を起こすので、ゆっくりやっていきましょう」
そうして葉山さんの手本を見ては真似をするというのを繰り返していたのだが、全く上手くいく気配がない。
痺れを切らした葉山さんが、いよいよ手を触って形を教えだしたのだが、葉山さんの顔は真っ赤になって息が荒くなる。
そして、それを見た綾奈と明日香が、椅子から立ち上がって臨戦態勢をとるので大変なことになった。
ぷるぷると震えながらこちらを見上げてくる葉山さんは、かなり耐えているのがわかる。
「こっこっこうですぅ! こぉれでできるはずですぅぅぅ!」
何とか一線を越えずに離れて息を整えてはいるが、かなりギリギリだったのは2人の戦闘態勢を見れば明らかだ。
「ぬわぁぁぁぁぁ!!」
しかし、無理な形をとったせいで薬指がガッチリ攣ってしまい、情けない声を上げてしまった。
こうしてなんとか事件にならずに済みながら、ギターレッスンを終えることができた……。
「純はどうだった……?」
完全に意気消沈しているので純のほうもダメだったというのは分るが、一応聞いてみた。
「全くダメだったよ……。もう少し上手くできる自信があったんだけど……ね」
何でも卒なくこなす純が落ち込んでいるのは結構珍しい。
「まぁ初日から上手くいくほど甘くはないのはわかってたけどさ、ここまでどうにもならないと悔しさを通り越して悲しくなるね」
純の言う通り、最初っから上手くいくとは思ってはいないし、おぉ!センスあるね!位の出来を期待していたのだ。
しかし、ここまで鼻っ柱をへし折られるとぐぅの音もでない。
こっちに来てから基本的に何でもやれてきたので、精神的ピノキオになっていた。
いつも挫折していたものができるようになってるなんて、そんなに世の中甘くはない。
「これは家に帰って今日教えてもらったことを鬼練だな。」
「そうだね。これは少し本気でやらないと……ピアノくらいやってやるさ!」
こうして決意を新たに純と別れ、家に帰るやいなやすぐに貰ったギターをジャカジャカとかき鳴らした。
夕ご飯は綾奈に任せてひたすら習った所を弾けるように練習をし、ああでもないこうでもないとひたすらジャカジャカする。
夕飯を食べ終わってもジャカジャカ。
風呂から上がってもジャカジャカ。
こうして鬼のような練習をすることで、教えてもらった5つのコードをマスターすることができた。
そして、5つのコードを2回ずつ弾いて移行していくというのができるようになり、嬉しさのあまり2人に抱きついて喜んだ。
「やったぁ! ついに体得した!!」
「お、おめでとうござ……ひゃあ!」
「おめっ……うひぃ!」
抱きつかれた2人はビシリと固まって動かなくなってしまったが、気にせず力一杯抱きしめた。
あまりにも強く抱きしめたおかげで2人ともフリーズから戻らないので、2人をベッドに寝かせて寝室へ向かった。
伊織さん宛てにギターを習いはじめたという報告をする。
すると、いつか聴かせてくれる日を楽しみにしているという返信をもらい、一層ギターに対する熱が燃え上がった。
もちろん寝不足になったのは言うまでもないだろう。
楽器はピアノとカホンとハーモニカとオカリナをやっていたのですが、ギターなどはさっぱりです。
しかし、最近はニーアオートマタにハマって執筆活動が進みません…。
しかも、もうゼル伝ですよ!?
おわったー!
改稿もしなきゃいけませんし、やること多くて幸せだなぁ!?
くそったれぇぇえ!!(ベジータ風)
トリコもやらなきゃいけませんし、私はどうすればいいのだぁー!




