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「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
現在、男と二人で山から猛スピードで飛び出しているのだが、なにが悲しくて夢の国で男と二人でこんなことしているのだろうか……。
ふと冷静になると、今置かれているこの現状は明らかにおかしいことに気づいてしまった。
大体、ネズミのマスコットよりも目立っており、パレードが行われている横を通ればこちらを見る人のほうが多いくらいだ……。
「たのしかったねぇ!!」
純はキラキラしているが、一也の心は西部劇の荒野のようだった。
「そろそろお昼でも食べようっ! 良いところ予約しておいたんだぁ!」
今の純は、109で服を物色する女性よりも引き留められないだろう。
「ここだよっ!」
そこは冒険家のアトラクション近くのハンバーガー店だった。
向こうではTDLに来た時に数回来たことがあるところだ。
「ここのお肉が美味しいらしいんだよねっ!」
店に入ると店内のお客や店員の動きがぴたりと止まったのだが、純はずんずんと奥の方へと進んでいく。
純が座った席は男性専用席らしく、あの冒険家の世界観がそこには広がっていた。
「ここで食べるハンバーガーは最高らしいんだっ!」
テンションが上がりきってる純をほぼほぼ放置して、オーソドックスなハンバーガーを注文した。
因みに純も一也と同じものをチョイスしている。
「食べ終わったらどこにいく?」
「そうだなぁ……このタワーなんてどうだ?」
「いいねっ! そこにしよう!」
一也が選んだアトラクションは、この夢の国でもトップクラスの人気があるらしい。
因みに男は完全フリーパスで待ち時間はほぼ0である。
さて、運ばれてきた目の前の大きなハンバーガーが肉汁を溢れさせながら早く食えと訴えかけてくるのだが、サイズがアメリカンな大きさで、まさかのナイフとフォークがついてくるほどだった。
純はナイフとフォークで食べようとしているが、一也はあえて素手で勝負することにした。
『バーガーは品よく食うもんじゃねーだろっ!』
バーガーを固定するために突き刺してあった串から抜き取り、大口をあけてバーガーにかぶりつく。
口の横から肉汁が溢れ出すがお構いなしだった。
「うめぇっ!」
ポテトを摘まみ炭酸で流し込み、再びバーガーにかぶりつく。
さすがの純も一也の行動に驚いてはいたが、すぐにナイフとフォークを動かし始めていた。
もちろん先に食べ終わったのは一也で、純はあと1/3のバーガーが残っている。
「まさかそんな食べ方をするとは思わなかったよ……」
「バーガーは素手で食べたほうがうまいからな! その料理に合った食べ方か一番おいしく食べれるのさ!」
そう言うと純はナイフとフォークを置いて素手で食べ始めた。
確かに美味しいねっ!と笑顔を振り撒いているのだが、その笑顔を遠巻きに見ている女性陣が蕩けてしまっている。
「じゃあそろそろいくか」
バーガーを食べ終わった二人は直ぐにエジプティーな場所へ赴いた。
色々なグッズをこれもいいあれもいいと見て回っていたのだが、ふと粘りつく様な視線を感じた。
なにか嫌な予感のする視線で、別にこれまで気持ちのいい視線というものを感じたことなどないのだが、この視線は特に不快感を感じる。
視線の主を探すためにきょろきょろと見回していると、一人の女性がニタァ……と笑みを深めていた。
一気に肝を冷やした一也はすぐに目線を外してその場を離れようとしたのだが、呼び止められてしまった。
「すみません……少し話を聞いてもらえないでしょうか……?」
俺にしか聞こえない程度の小さな声で語りかけてきたので、少しの寒気を覚えながらも声の方へ振り向くと、女性は名刺を手ににやにやとしていた。
「私はこういうものなんですが……」
そこに書かれていたのはテレビのプロデューサーということと、春川志歩という名前だった。
「テレビのプロデューサーがなんの用ですか?」
少し警戒心を強めながら訊ねた。
「いえいえ……芸能界には興味ないかと思いまして。お友達も大変かっこいいようですし」
キラリとめがねを光らせているが、生憎こちらにはその意思が全くないことを伝えると、春川さんは少しだけ眉を寄せた。
「そうですか……貴方でしたら確実にトップに立てるのに……気が変わったら電話してください」
一也の機嫌を損ねてチャンスを逃すよりは、大人しく引いて可能性を残す方にかけたようだ。
「最後に名前だけ……」
「国東一也です。」
春川さんに名前を伝えると、初めに会ったときの嫌らしい笑顔ではなく朗らかな笑みを浮かべて去っていった。
「どうしたの?」
お土産をがっつり持った買い物終わりの純がはなしかけてきた。
「いや、別になにも……なに買ったんだ?」
「ふふふ……もちろんこれさっ!」
純が自信満々に見せてきたのは魔神の顔がプリントされた枕だった。
一也はそれを見ると、何一つ言うことなくアトラクションのマンションに向かって歩き始めた。
「ちょ、ちょっとまってよぉ!」
後ろで声をあげる純を軽く無視して次のアトラクションへと向かう。
時折鋭い視線を感じることがあったのだが、あまり嫌らしさと敵意が感じられないので無視することにした。
そしてそれからは、マンションから勢いよく落ちたり人魚世界に行ってみたり、深海探索などをして夢の国を思う存分楽しんだ。
「今日はたのしかったねえ!」
両手にお土産を沢山抱えた純が目を輝かせており、一也はそんな純を見て若干引いてしまったがすぐに話を合わせた。
「それじゃあ今日はありがとっ! また遊ぼーねっ!」
そのまま純とは別れたのだが一也は完全に失念していた。
「あっ……仕事の相談すればよかった……」
夢の国で上がっていた気持ちが萎んでいくのがわかった。
家に戻ると、明日香さんが太陽のような笑顔で出迎えてくれたおかげで気持ちが上がってきていたが、頭の片隅に出てくる問題が気持ちを萎えさせる。
「明日香さん……少しいいですか?」
「はいっ! なんでしょう?」
「男にできる仕事ってなにか知ってますか?」
ダメ元で明日香さんに言ってみたものの、冷静になると明日香さんに言っても仕方がないと思いすぐに取り消そうとしたのだが、《男性なのに働きたいんですか?!》割りと食いぎみに反応してきた。
「難しいですね……基本的に男性が働くとなると沢山の女の中に男性が一人入ることなります。するとその男性取り合って崩壊しかねないんですよね。やっぱりテレビ関係しかないんではないでしょうか……」
明日香さんから聞くその話は説得力があり、妙に納得してしまった……恐らく実話なんだろう。
「ありがとうございます。もう少し考えてみますね」
明日香さんにお礼を言って別れ、部屋に戻るとソファに一気に倒れこんだ。
「テレビとか出たくねぇなぁ! あぁぁもうっ!!」
ソファの上でバタバタとしながらクッションに埋めて叫んでみた。
「はぁぁ……マジでどうすっかなぁ……」
携帯の電話帳を眺めていると、一人の女性の名前が目についた。
『綾奈さんかぁ……』
その名前を見つけると、別れるときに困ったことがあったら相談しろと言われたことを思い出した。
『しかしなぁ……急に働きたいんですぅとか言ってどうすんのか……』
という気持ちと、ただただ送ってもらっただけの女性に相談することなのかと自問自答してしまう。
「まぁいっか!」
最後は楽観的に考えて相談することにした。
プルピッ!
「もしもしぃ!!」
あまりの応答の早さに心臓が飛び出てくるほどの衝撃を受けた。
「もしもし……綾奈さんのk「綾奈です!」いたいで……えーと、相談事なんですけど」
「なんでしょうか?」
少し食いぎみな綾奈さんのテンションに若干引きながら単刀直入に訊ねた。
「アイドルとか以外で働ける場所ってないですかね?」
アレだけ食いぎみに、前がかりにきていた綾奈さんも、この質問には中々答えることができなかった。
「そうですねぇ……医者や弁護士などの特殊な職業以外のですと、男性のためのお手伝いさんとかそういうものしかないですね……」
この回答に一也はがっくりと肩を落とした。
「か、一也さんはかっこいいので……やっぱりアイドルとかがいいと思いますよっ!」
電話の向こうから鼻息すら聞こえてくるほどの勢いを感じた。
「でも正直、そういう仕事じゃないと社会崩壊を招きかねませんよ……」
先程軽くは聞いたことだったが社会崩壊にまでなるというのはよくわからなかった。
さすがにそこまでの力があるとは思えないのだ。
「そんなことあります?」
「一也さんのビジュアルで普通に働くと、飲食店とかだと他の店からお客さんが消える……営業をすれば契約は総ざらいとかそんなレベルですよ」
確かに男を取り合って崩壊など最悪にもほどがあるし、綾奈さんの言っていることが現実になりえるだろうな……とも思えた。
「ボランティア活動とかならどうでしょうか?」
綾奈さんの放った一言は一也にとって一筋の光となった。
「でも……ボランティアを精力的にやったらマスコミは黙ってませんし、ほとんどタレントと同じような扱いになると思うんですよね。ぶっちゃけると何をやってもマスコミは放っておきませんよ? 働く男性なんてシーラカンスよりも珍しいんですから。」
一筋の光は雲の後ろに隠れてしまったようだ。
「そうですか……ありがとうございました。またなにかあったら相談しますね」
綾奈さんとの電話を終え、ソファにバタリと倒れ込む。
結局、仕事面での解決には至らなかったがやることは決まった。
「まぁとりあえずはボランティアでもやってみますか!!」
なるようになる!それが一也の心のなかで一際大きくなっていた。
筋肉と脂肪…脂肪を燃焼させて筋肉変えているということがよく言われますが、別にそんなことはありません。
脂肪を落とすにはランニングがベストで、筋トレでは落ちるペースは緩やかでございます。
筋トレというのは筋肉を小さくしてしまう効果があるんです。
取り入れるエネルギーが足りないと判断されると、筋肉をエネルギーに変えようとするんですね。
これを止めようとして栄養を取ると中々痩せれないという状況になるわけです。
筋肥大とダイエットの両立ができないというのはこういうことなんですね。
まずはシェイプアップから始め、ある程度の脂肪を削ぎ落としてからバルクアップに励むというのがいいでしょう。
さて、走り込みについてです。
しっかりとストレッチをしましょう。
特に膝に関しては入念に行うことが肝要です。
いつも長い距離歩いているから大丈夫と侮ってはいけません。
膝に痛みを感じた時点で走り込みを行う気力は失せます。
最初のペースは8km/hくらいがいいでしょう。
ゆっくりとしていますが十分な速度です。
シャトルランなんかは何回までできたというのが分かりやすいのでおすすめです。
走るときは腿裏をしっかりと意識しましょう。
バタバタ音を立てながら走る走り方は非常に問題です。
足への負担がとても大きいのです。
軽く前へ飛ぶような気持ちで走ると上手く走ることができます。
シェイプアップ〜走り込み基礎編〜でした。