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今回は文字がちょっと多いです。



あれから少しだけぎこちない日々が続いている。


綾奈さんはどこかうわの空になっている瞬間があったり、明日香さんは今まで以上にあたふたするようになった。


冷静に考えてみると、綾奈さんは好きだし明日香さんも好きになってきている。


告白すれば幸せになれるのが確定的に明らかなのだが、果たして2人はちゃんと俺という人が好きなのかどうかが問題なのだ。


要は、他のイケメンから告白されたらそれに応えるのではないか…という疑いが胸の片隅に小さくある。


自分で言ってて悲しくはなるが、他の優しいイケメンがガンガンアプローチをしてきた場合にそれを断り、俺を選んでくれるのかが怖いのだ。


はっきり言って、今まで女性と付き合ったことは一度だけ。


それもこっ酷い振られ方をしてるのでどうしても臆病になってしまう。


たまに積極的なアプローチをしてはいたが、はっきり言ってかなり無理をして頑張っていたのだ。


2人が自分を好きでいてくれてるのはよくわかるのだが、果たしてそれは真実の愛なのかどうか…。


ここは強力な助っ人に依頼せねばなるまい…。


メールを送った相手は九条さんで、2人とも良好な関係を築いてる人だ。


九条さんに女子会を開いてもらって探りを入れてもらう。


そこで俺への好意が本物かどうかを確かめておきたいというわけだ。


我ながら狡いマネをするとは想うのだが、男であれば無条件でモテるという中であっても、本気で幸せな家庭を築きたいのだ。


付き合ってから生まれる愛もあるとは言うが、俺は断然しっかりと愛し合ってから結ばれたい派の人間だ。


もちろん純に九条さんへ協力を依頼したことは伝えてある。


九条さんからはオーケー、純からもオーケーが出たので計画を実行することにした。


「一也さん…九条さんから食事のお誘いが来たんですけれどどうしましょう…。」


綾奈さんの言葉に明日香さんが私も…と同調する。


「たまには女の子だけで楽しんできたどうです?俺は家から一歩も出ないんで安心しててください。」


そうは言っても悩む2人の背中を押して、半ば強引に女子会に向かわせる。


少しだけ不満そうに口を尖らせる2人は最高に可愛いのだが、ここは心を鬼にして背中をずいずいと押す。


久しぶりに部屋で1人になると、ぽかりと空いたなんともいえない気持ちが押し寄せてくる。


すっかり誰かしらが傍にいる状況に慣れきってしまっていたらしい。


少しの奥ゆかしさもありつつ芯のしっかりとした女性である綾奈さん。


元気という二文字をそのまま表したかのような、笑った顔が天使な明日香さん。


何故かどちらに告白しようか…などと考え始めていたが、冷静に考え直すと5人とは確実に結婚しなきゃいけない訳で…。


ハーレムやっほぅなんて思ってはいたのだが、いざ目の前にそれが転がってくると中々踏ん切りがつかないものだ。


ぼんやりとテレビを見ながら九条さんからの連絡を待つ。


テレビでは一番の人気を誇る男性アイドルグループがわいのわいのやっている。


こちらでは珍しいイケメンで、もしもこいつらのファンだったときのことを考えると少しだけジェラってしまう。


内心こいつらに勝つ…という想いすら芽生えてしまうほどに…。


ぼんやりとジェラっていると九条さんから連絡がきた。


『今2人と合流しました!これより作戦を実行します!安心してください…参謀は荒北ちゃんです。ぬかりはありません!』


荒北ちゃん…純の男護官で相当頭がキレるらしいのだが、あまり表に立つことがないので話したことはあまりない。


少しの不安を覚えつつハラハラしながら九条さんからの連絡を待つ。


意味もなく部屋を歩いてみたり筋トレをガッチリやってみたり、自分でもこんなに意識したのは初めてだった。


携帯が鳴ると秒もかからないうちに手に取り、腹筋をやめることなくメールの確認をする。


『どうやら2人とも一也さん一筋なようです!でも、一也さんの優しさや無防備さに少しの不安と不満があるそうです。そこがよくもあり悪くもあるそうです…。』


2人に愛されてることがわかり一気に自信がついたのだが、後者の方に関してはどうしようもない。


これでも20年以上生きてきたのだ。


培われてきた紳士なジャパニーズソウルは中々変えられるものではないし、変えるつもりもまったくなかった。


ここに関しては我慢してもらうしかないし、変えてしまったら今までの自分を否定している気がする。


俺があのアイドルグループに少しだけジェラったように、2人も他の女の子に優しくしたり無防備な姿を見せたことはないが…そういうのに多少はジェラってるということなのだろう。


そう考える嬉しくなってきた…興奮してきたな…。


興奮してきたおかげで腹筋が筋肉痛というなの悲鳴をあげることが確定してしまった。


しかし…2人の一番がわかった。

そして俺も好きだ。


それでも2人同時に告白するのは違う気がする。


1人1人デート誘って雰囲気を作り、指輪を買ってプロポーズというパターンでいくかどうか…。


想像するだけで顔がニヤけてしまう…が、ニヤけてる場合ではない。


そういえば…一緒に暮らしてるのに2人の好みとかまったく知らない…!


正直な所、美人な2人を直視することが未だにできず、そんな美人と一緒にいられるということに浮かれていた節がある。


美人も見れば3日で飽きるとかなんとか言うが、実際にはそんなことはない。


エプロンして朝ごはんを作ってくれる姿には朝の生理現象が長引いてしまうし、俺だけに向けられた微笑みは独占欲にかられる。


こうやってしっかりと向き合うと決めたら…どれだけ2人のことを見てなかったのかということ、どれだけ2人のことが好きだったのかが明確にわかってきた。


プロテインをグビグビと飲みながらテレビを見れば、まぁだあのアイドルグループがわいのわいのやっていた。


打倒するべき目標も定め、結婚する相手も決めた…。


やることが見えると清々しい気持ちになる。


『女子会終わりました!2人とも一也さんが好きすぎてカルピス原液よりも甘〜い話を聞かされました!まぁ…私が純さんを想う気持ちには負けますが…とりあえずよかったですね!!』


やはり男護官というものは護衛対象を好きになる確率は高いようだ。


結ばれる確率も圧倒的に高いのも頷ける。


それ故に一番人気の職業であることはわかるのだが、結ばれなかったときのことを考えると悲しくはなる。


さて…2人が帰ってきてもいいように心の準備をしておこう。


今は、今まで以上に2人の顔を直視できない気がする…。


直視すれば確実に顔が赤くなるだろうし、意識しすぎてしどろもどろになりかねない。


今の内から2人のことを考えて、実物を前にしてもいつも通りな一也君でいられる様に精神統一をはかる。


「ただいま帰りましたっ!」


明日香さんの元気な声に体がビクリと反応し、立ち上がろうとしたのだが足が痺れて不格好な体勢で転げる。


「ど…どうしたんですか?」


綾奈さんがえ…?みたいな顔で見ている気がする…死にたい…。


「あ…足が痺れてちょっと立てなくて…。」


「うりゃ!」


明日香さんが可愛らしい声とともに足を突いてくる。


その度凄まじい痺れが体を襲い悲鳴と笑いがこだまする。


「ひゃああああ!やめてぇ!明日香さんやめてぇ!!」


「うりゃうりゃ〜!」


「あっ…私もやります。」


何故か綾奈さんも参戦してきて俺は弄ばれてしまった…。


ここまで意識して手に入れた緊張感とかは何処へやら…。


「そ…そういえば女子会はどうでした?楽しかったですか?」


ボロボロの体をソファに預けて2人に問いかける。


「楽しかったですっ!色んな話が出来て、これからの心構えとか先輩にたくさん聞けましたっ!」


「私も相談したいこととか聞いてもらったので楽しかったです!」


2人が楽しめたのならよかった…。


しかし、告白までのプランを考えて糸を張っていたのに、さっきの仔鹿事件で糸が切れてしまった気がする。


どうしたものかと考えている内に晩御飯の時間となり、カレーを作って3人で美味しく食べた。


風呂に入ってる間も悩み続け、寝る間際まで悶々とした時間を過ごしていた。


すると、寝室がノックされたので開けてみるとそこには綾奈さんが立っていた。


「あの…お話があるんですけどいいですか…?」


どことなく憂いを帯びた妙に艶っぽい綾奈さんを部屋に入れる。


ベッドに綾奈さんを座らせ、その隣りにさりげなく座る。


「ありがとうございます…。今日は九条さんに相談を聞いてもらってたんです。」


「うん…楽しかったんですよね?」


「はい…。私…九条さんに一也さんのこと相談してたんですよ。」


上目遣いでこちらを見てくる綾奈さんの瞳は、暗がりだというのに潤んでいるように見えた。


「私…一也さんのことが好きです。鮎川さんが結婚の話をしたときに、一也さんの一番になりたいって思ったんです。


我ながら醜いとは思いましたけど、明日香さんや伊織さんでもなく私が一番に…。


一也さん…私を一番に…あっ…。」


気づけば綾奈さんを抱き寄せていた。


顔を近づければ綾奈さんが泣いていたことも分かるし、唇が瑞々しくぷるんとしているのもよく分かる。


じぃっ…と見つめていると綾奈さんはゆっくりと目を閉じ少しだけ唇を尖らせる。


俺はゆっくりと綾奈さんのそれに自分のを合わせ、綾奈さんの体をしっかりと抱き寄せる。


「あぁ…一也さぁん…。」


艶めかしい声をあげる綾奈さんと何度キスをしたかは覚えていないが、その日は2人で抱き合うようにして眠った。


思っていた告白とはかけ離れていたけれど、綾奈さんと遂にキスをしてしまったという喜びが大きく勝った。


身体の関係は自制したけれど、いずれはそういうことを致すのかと思うと興奮してくるが、そのときは高校生カップルのような初々しい感じになるのだろうなと笑えてくる。


それでも、この抱き寄せた身体を離すことは一生ないだろうと、心の中で固く固く誓った。



う〜ん…綾奈さんがやっぱりトップバッターになりました!


これでいいのかという不安などは残りつつも、ようやく1人目をくっつけることができた安心感。


皆さんの思っていた形とは大きく違ってたかもしれませんし、あれだけの前フリからの結局ね…という落としどころ。


私の文才では変に長引かせるよりは、こっちのほうが良かったような気がします。


明日香さんや伊織さんをどうやってくっつけるかはまだまだ未定です。


途中までは伊織さんがトップバッターで行く予定でしたが、やっぱり綾奈さんが好きなんですよね…私も。


綾奈さんを抱き寄せたときのイメージは少しだけ苦しいくらいの力強い抱き締めです。


今までの想いをぶつける抱き寄せにしたつもりです。


あざーっす!



この展開に関しての否は粛々と受け止めます。

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