32
I’m one with the Force, and the Force is with me.
ダースベイダーかっこよすぎぃ!!
母さんや姉さん、明里からのメールを読みながら、この前のライブの録画やニュース映像を見ているのだが、なんというかむず痒い思いをしながらも嬉しいという感情に襲われていた。
「さて…先日行われた秋のミュージックフェスはとても盛り上がったようですね。」
「そうですね!なんと…最近話題沸騰中のあのグループも登場したようですよ!」
アナウンサーのいうあのグループとは俺たちのことだろう。
映像が流れていき、ナレーションやアナウンサーがちょいちょい言葉をはさみつつ進行していく。
そして、急な暗転から俺たちの登場にはバッチリとSunrise初主演のテロップが出されていた。
そこから一気にサンライズ特集が始まった。
「突如現れた謎の実力派男性ユニット!
所属事務所はどうやらあの鮎川瑞穂が設立した事務所だそうで、顔はもちろんのこと年齢などの個人情報は完全に隠された謎のユニットです!
白い仮面の男性がジュン、黒い仮面の男性がカズといい、2人ともかなりの歌声をもっているのでこれからの動向に目が離せません!!」
テンションがぐんぐんあがりながら説明しているのを見ると、あのかわいいアナウンサーはファンになってくれるんじゃないかと思うほどだ。
「私決めましたっ!サンライズをガッチリ応援したいと思いますっ!!」
数少ないサンライズグッズであるタオルを掲げて叫ぶ女子アナを見ていると、こうしてファンは増えていくのだろうかと笑えてくる。
その後も軽くサンライズの話題を出しながら今回のライブの話は終わった。
「んふふふふ…一也さんもこれで大人気になりましたね…。」
「そうですね!これからぐんぐん人気が出てきますよ!」
明日香さんは悪い笑みを浮かべ、綾奈さんは普通に応援してくれている。
どこまで人気が出るかは分からないけれど、このままトップに食い込むくらいの所に行ければ幅が拡がる。
そうなれば伊織さんと一緒に歌えるだろうし、何より向こうの名曲を気にせずにリリースできるのだ。
力を手に入れることができたなら…そのときはどんどん名曲を放出する予定だ。
「それにしても…一也さんが考えた曲はいい曲ですね…。」
「本当にそう思いますっ!男の人が書いたとは思えません…。」
まぁ…俺が書いたわけじゃないですからねっ!とは言えるわけもなく、ただただ謙遜と苦笑いをして切り抜ける。
次は大黒摩季のあの名曲でいこうと思っているので、2人に聴かせて感想を求めようと思い相談してみた。
「次の曲も考えてみてはいるんだけど…聴いて感想もらえませんか?」
「はいっ!もちろん聴きますっ!」
「もう聴く準備は万端です!」
聞くやいなやソファに正座になる2人を見て軽く笑ってしまったが、すぐに気を取り直して歌い始める。
この曲は女性にはかなり沁みてくるものがあると思うのだが、聞き終わった2人はソファの上でぽけー…っとしている。
「どうでしたか?」
2人を再起動するべく目の前で手を振りながら声をかける。
「はっ!あっ…とてもいい曲でした!なんでそんなに女目線な歌作れるんですか!?」
「感情移入は得意なほうだから…。」
苦肉の策とも言える言い訳を使ったのだが、中々に苦しいとは我ながら思う。
ゴーストライターを使って曲を出す作曲家の気持ちがよく分かる…。
それでもやめるつもりないし、この罪悪感をがっぷり四つで受け止めるつもりだ。
「それでもこんないい曲作れるなんて凄いですねっ!」
明日香さんは興奮ぎみに詰め寄ってくるが、あんまりほめちぎられるのもアレなので笑って誤魔化した。
「それじゃあ事務所に行きましょう。」
強引に話題を切り替えて乾さんに電話をかけて事務所へと向かう。
「今回のライブ成功おめでとうございます。」
乾さんが珍しく話しかけてきた。
あまり話しかけてくることのない人で、どちらかというと話しかけるのはこちらからなので、乾さんから話を振られるのは意外だった。
「ありがとうございます。まだまだこれからですけど…頑張ります!」
話かけられたことが嬉しくて少しテンションが上がってしまった。
事務所に着いても事務員の人たちから声をかけられ、ライブの成功を祝ってもらった。
やっぱり嬉しそうに笑う人を見るのはいいもんだ。
「改めて…ライブの成功おめでとう。話は純も来てからにしようか…そこに座っててくれ。」
言われるがまま座って待つこと数分で純がやって来た。
「ん…揃ったみたいだな…一先ずはおめでとう。これからは一也の作った歌のレコーディングもあるし取材も何十件ときてる。それに新曲を幾つかだしたら次はワンマンライブだ…今まで以上に忙しくなるからな。」
嬉しいのやら悲しいのやら…複雑な表情を浮かべる純だったが、忙しくなるのは仕方ないし売れた証拠とも言える。
売れだしは忙しいけれど売れてしまえばこっちのもの…自由に仕事も選べるしいつ曲を出してもいいのだ。
それを考えれば少し忙しくなることなんてわけない。
「とりあえず新曲のリリースに向けて仕上げていき、その後は取材対応だな…もちろん桜子と相談した上で頼む。それじゃあ後はよろしく。」
社長室を出ると桜子さんがすでに待機しており、恐らくこれからの予定が書かれた手帳を開いている。
「それではこれからのスケジュールを調節していきましょう。」
桜子さんに個室に連れていかれてすぐに話し合いが始まる。
「レッスンは今まで通りにこなしてもらいます。その中で新曲の調節を行い、空いた時間を使って取材対応して貰うんですが…これだけ集まりました。」
桜子さんがバサリと置いた紙束はそこそこの枚数があるように見える。
女性誌、男性誌、週刊誌…本当にたくさんあるが、とりあえずゴシップ系は弾いておく。
「う〜ん…純は何個くらい受けるのがいいと思う?」
「日時指定ができるみたいだし…5個くらいでいいんじゃないかな?」
それじゃあ…と、適当に女性誌、男性誌、週刊誌から1枚ずつ選ぶ。
あと2枚は純に選んで貰い桜子さんに渡す。
「それではこの5社で…1日2つ受けていくペースでいいですか?」
「それでお願いします。」
日時などは桜子さんたちと相談して決めることにし、新曲リリースに向かってレッスンを始めた。
宍戸さんからライブ映像を見せられ悪かったところを指摘され、指摘された場所を重点的に鍛えていった。
レッスンが終わり、桜子さんから鮎川さんが呼んでいると伝えられたのですぐに向かう。
「ん…来たか…。そこに掛けてくれ。」
純とともにソファに沈み込むと、目の前に鮎川さんが真剣な表情をして座ってきた。
「呼んだのはほかでもない…2人の結婚相手についてなんだが…良い人がいるならトップ層に行く前に済ませておいたほうがいい。」
鮎川さんの突っ込んだアドバイスに純は嫌そうな顔をし、不満そうに聞いた。
「どうしてですか?」
「もちろんトップ層に行く前に結婚しておかないと、人気のベクトルがおかしな方へと行きかねない。
それに、そろそろ2人とも結婚しなければならない時期だ。
もちろん良い人がいればの話だから無理にとは言わないが、テレビに出たりしたときの共演者たちのアプローチは凄まじいぞ?」
要は今の内に結婚しておかないとこれから先が大変ということだ。
テレビで売れている女性タレント、どこぞの権力者の娘などに目をつけられかねない。
最低5人という数が空いていれば空いているほど女性たちは燃え、結婚していれば他に気になる人がいるかもしれないという牽制にもなる。
あまり打算的な意図を持って結婚なんてしたくはないが、年齢的にも自身の手で稼げようになったということを考えても結婚は視野にいれてもいいだろう。
もちろん後ろに控えている男護官たちがそわそわしているのは言うまでもない。
「考えておきます…。それだけですか?」
純が珍しく深刻そうな顔をしてソファから立った。
「それだけだ。今言ったことは頭の片隅にでも留めておいてくれ。別にフリーだということを言うつもりはないがすぐにバレるからな。」
こうして事務所を出たのだが、純の様子も男護官たちの様子も明らかにおかしい。
もちろんこれを機会に3人との距離をぐっと縮めようとは思っているが、ここまで意識されるとこっちの調子まで狂う。
「それじゃあ一也…今日はここで…。」
最後まで真剣に考えていたようだが、今回のことで純も少しは女性に対して考え方を変えてくれるといいのだが…。
「かっ…一也さんっ!こ…今夜のご飯はどうしまっすか!」
明らかに同様している明日香さんに今夜は唐揚げを作ると伝える。
「かるっ…唐揚げですか…美味しいですよねっ!」
もう見てられないほど意識してしまっている…。
わたわたしているのは可愛いのだが、あんまりこの状態が続かれてもきつい。
綾奈さんは神妙な面持ちで口を開かないし、どうしたものかと考える。
ぼんやりとだが自分がどうしたいかが浮かんでくる。
『そろそろ真剣に向き合わないとな………うしっ!かっこをつけるかっー!』
そういえば…感想に対する返信は基本的に全て行ってるんですが、返信したやつって見てますか?
見てるんなら腕立て30回してください。
あざっす。
あと…書き分けとしては明日香さんは〜ですっ!みたいに"っ"をよくつけます。
元気っ娘風に喋ってるのが明日香さんで、ある程度抑えの効いたというか…落ち着いてる風なのが綾奈さんです。
変なキャラ付けしていない書き分けって難しい…。
ナルトみたいに特徴つけたろうか…!
最後…綾奈さんに告白させようか迷った…しこたま迷った挙句の保留!
鷲巣戦かな?




