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そろそろ魔法にケモ耳出すか……。
エルフぅ〜!
「みんなぁ!!元気ですかぁ!!!」
舞台裏のモニターを見ながらステージで叫ぶMCを見ているのだが、会場の熱気が凄まじいことになっている。
初っ端から男性アイドルの歌から始まるので、会場からは早く聴かせろオーラが立ち昇っている…。
「ハハハ…会場もすでに温まってますね…それじゃあ早速いってみましょうか!」
MCの声に合わせて出てきたのはKARTという男性アイドルグループだ。
出てきた瞬間の会場の黄色い声が凄まじすぎて気圧されてしまう。
「どうかな?カズ…くん。中々盛り上がってると思わないか?」
伊織さんが仮面をつけた俺に話しかけてきた。
よく見つけられたもんだと言うと、ガタイの良い男なんて君くらいさというありがたい言葉を頂いた。
「それにしても似合ってるねその仮面。ジュンくんは白でカズくんは黒なんだね。」
「ジュンが歌うことのほうが多いし、ジュンのキャラクターには白のほうが合ってるんですよ。」
仮面をつけた俺たちに話しかけてくるのはマネージャーの桜子さんしかおらず、かなりのアウェイ感を感じていたのだが、伊織さんのおかげでそこそこ落ち着くことができた。
実際は、声をかけようにも純のピリピリしたオーラのおかげで話しかけづらかっただけなのだが、そんなこと気づくわけなかった。
それから4人で他愛のない話を続けていると、グループが変わったようだ。
黄色い声ではないものの、かなりの声援を浴びているので人気は確かなのだろう。
というか、ここに出る人たちは全てが人気があるわけで、デビューしたての俺たちが出るのはおかしいのだ…。
鮎川さんの人脈というかなんというか…どうなっているんだろうか…謎だ…。
目の前をKARTの4人が通っていく。
何人かがこちらをチラリと見たのだが、相手にするまでもない…的な冷たい視線を受けて純は軽くお冠だ。
「怒髪天だよ一也…。」
「おいジュン…カズだぞカズ…。」
「いつか目にもの見せてやる…。」
メラメラと燃え上がるジュンだったが、あんなアイドルグループなんてすぐに超えるそこらの石ころのような存在なのだ。
あんなのに蹴躓いているようじゃ俺たちの夢は果たせないからな。
それからは様々なグループが歌っていき、順番が近づいてきたので控室にもどって歌の確認をしていく。
しっかりと確認を終え、新曲のほうもしっかりと歌えるのがわかったので一安心だ。
「2人とも…もうすぐ出番なので舞台裏にきてください。」
桜子さんから呼ばれたので椅子から立ち上がり舞台裏に戻る。
ドキドキが止まらず手汗も凄いことになってきている。
一曲…また一曲と終わるたびになんともいえないものがこみ上げてき、一旦ゲボでも吐いてきたい気分だった。
「それではサンライズのお二人はこちらに…あの人たちがはけていって、MCがサプライズアーティストの登場です!って言ったら行ってください。」
ADの人にそう言われ、いよいよ緊張がピークに達してきた。
純もカタカタと震えている…。
「ジュン…気楽にな。」
「カズこそ…。」
肩を抱き合って軽く頭突きをして気持ちを落ち着かせる。
「さぁさぁ…皆さん毎度お待ちかねのサプライズアーティストに登場していただきましょう!!こちらの方々でぇす!!」
一気に照明が落とされ舞台に駆け出していく。
テープで立ち位置が示されているので、大体その辺りになるように立ってから5秒ほど…急にライトアップされる。
仮面をつけた男が2人…静かな客席から1人の女性の声が聞こえてくる。
「きゃー!サンライズ!!」
おそらく高月さんだろうか…そう思うとクスリと笑えてきたのだが、それは純も同じようでクスクスと笑っている。
「俺たちはサンライズっていうグループなんですけど…この前デビューしたばっかりなんですよね。」
俺たちのデビュー曲はかなり売れたのだが、オリコンは6位くらいで落ち着いたのだ。
なので歌を聴けばピンとくる人も多いと思い、すぐに歌い始めることにした。
「とりあえず歌わせてもらいます。」
そう言って右手をあげると演奏者たちが一気に音を出し始める。
すると、観客からポツリポツリ歓声が上がり始めた。
観客は恐らくひそひそ話をしていることだろう。
それが聞こえないのは残念だが、大体どんなことを言っているのかは想像できる。
ひとしきりクスクスと笑い、イントロが終わると同時に歌い始める。
観客はライトの光で全くと言っていいほど見えないが、それでも1人でも多くの人に届くように声を上げて歌った。
間奏に入ると歓声が爆発のように起こり確かな手応えを感じる。
『もっとだ…もっともっとぉ!』
こんなものでは満足出来ない。
俺たちの目指す場所はまだまだ遥か先なのよ!
1曲目を歌い終わると汗が噴き出してきた。
歓声をシャワーのように浴びて立つステージはかなり気持ちがよかった。
純とアイコンタクトをし、新曲の準備はオッケーか合図を送り合う。
この曲の歌い始めは俺の担当なので気合いを入れていく。
「ふぅー……次はまだリリースしてない新曲です。ラストなんですけど…まぁ…楽しんでください!」
そうして2曲目…向こうでの名曲という反則技を発動させた。
男が歌う少し変化球の効いたラブソングは効果テキメンだろう…。
サビに入って2人で歌うところなど特に効いたようで、1曲目よりも歓声が大きかった。
流石は名曲だ…これはどんどん名曲をカバーという名のパクりをしていくしかない…そう決めた瞬間だった。
2曲目を歌いきり汗を拭うと、終わったという気持ちが一気に押し寄せてくる。
歓声は大きくなる一方だが、それには片手を上げて応えてステージからはけていく。
基本的に3曲ほど歌うのだが、俺たちには曲が2曲しかないためここで終わりなのだ。
観客的にはまだ聴きたい足りないといったようすなのだが、これは仕方ないだろう…。
もう少し曲が増えたときに、もう少し満足させるものが出来ればいいなと思っている。
「お疲れ様でした。最っ…高のライブでした!!」
桜子さんからありがたい感想とと共にタオルを貰う。
一度控室に戻り、汗を拭いて衣装を替えて仮面を再びつける。
流石に汗を大量にかいたまま長時間いるのは辛いので、しっかりと体のケアをしておくのだ。
舞台裏に戻ると次のグループが2曲目を歌っていた。
「中々上手くいったね…少なくともアイツらよりは…。」
後ろからそこそこの毒を含ませながら純が声をかけてきた。
「そりゃぬるま湯に使ってるだけのやつらに負けるつもりはないだろ?」
ニシシと笑いながら肩を組む。
純としても今回のライブは満足のいく出来だったようだ。
伊織さんのアドバイスだったステージの上を移動するというのは、全くと言っていいほど活かすことができなかったが、これはまぁ仕方ないだろう。
今回は知ってくれてる人も少なかったろうし、初めてのライブでそこまで気が回らなかった。
しっかりとステージ下にいる綾奈さんに明日香さん…それに男護三姉妹たちを確認できたし、それだけで嬉しかった。
悲しいことに母さんたちは眩しくて確認することができなかったが、きっと見ていてくれたことだろう。
それでも初めとしては最高のデビューになったので、スタートはいいきり方ができた。
「次は今日歌った新曲の録音ですよ!ここから忙しくなりますからね!」
桜子さんはウキウキワクワクといった様子でそう叫ぶが、今の余韻にひたる俺たちにはまったく届いていなかった。
我思故我在
ライブの描写ってあんまりしたくない…。
既存の曲は以外使ったときポエムを書かなきゃでしょ?
はずかちぃー!
最近、そろそろ恋愛させなきゃなと思う頃ごろなんですけど…どぅ?
誰かをくっつけたらあの2人は確実にくっつけなきゃですし…くっつけるタイミングとシチュエーションなどなどを考えるのが大変です。
あの時綾奈さんを強引にでもいっとくべきだったかなぁー!と、かる〜く後悔ぎみな今日この頃。
まぁキャラは大切にするタイプの私としては今の状態でいいのですがね。
そういえば…登場人物まとめを作ったんですけど…アレの管理を他人に任せたいよぉー!
30話も振り返るのしんどー!
君が好きだと叫びたいー!




