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多摩川とはいえ神奈川のほうですぜ…。

昔は新丸子で今は武蔵小杉に住んでるということでおねしゃー。


因みに一也君の年齢は22歳の大学4年ということでおねしゃー。


あと…『』このかっこの場合は心のなかの語りでおねしゃー。


おねしゃー言いたいだけですおねしゃー。




「はぁぁぁ……」


 長いため息がただただ広いこの部屋に響きわたった。


 現代日本に生きている男として、無職という現実は受け入れられるものではなく、お金を貰い続けるというのには抵抗を覚えるので職を探していたのだが、全く見つからなかった。


 厳密にはあったのだが、俳優やアイドルなんてものはやる気……というかやりたくなかったので度外視したのだ。


「どうしたもんかなぁ……」


 とりあえず、パソコンをポチポチしながら考えていたが結局なにも思い浮かぶことはなかった。


 テレビを見れば容姿がまぁまぁかっこいいかなぁくらいの男性アイドルが歌っているが、これがこの世界のレベルなのかと思ってしまう。


 女性のレベルがびっくりするほど高いのに比べ、どうして男のレベルは高くならないのかと不思議に思う。


 パソコンを弄るのをやめ、無駄にでかいソファに寝転びテレビを見ながらぼんやりとする。


 ふと目に映ったテレビでは、美人な女芸人たちがビキニで押すな押すなをやっているのだが、やっぱり美人がやってもあんまり面白くないんだなと思った。


 こちらではこれが当たり前なのかもしれないが、やはりキレッキレの男芸人たちのボケやツッコミが恋しくなってしまう。


 頭のなかにお笑い芸人かっ!


 などというバカな考えが浮かんできたが、お笑い芸人なんて覚悟なくなるものではないと直ぐ様頭から消し去さり目を閉じた。




 目を覚ますとそこはいつもの布団の中で、見慣れた天井がお出迎えしてくれる……そんなことは全くなかった。


 いくらふかふかのソファとはいえ、慣れない体勢で寝たおかげで疲れもとれず体もばっきばきだった。


 現実というのは小説より奇なりとはこういうものを言うのかな……などとすこし詩人的なことを考えもしてみたが、早く起きろと言わんばかりの腹音に引っ張られるように冷蔵庫へと向かった。


 とりあえず冷蔵庫の中にあったレモン・バジルソーセージを煮詰め、賞味期限が1日過ぎたパンを焼く。


 朝は和食派なので、今日は米やみそなどを買いにいこうと決めた瞬間だった。


 そして、今日も相変わらずテレビでは女性の性犯罪が報道されており、微妙な男性アイドルに黄色い声援が飛んでいる。


 俺もアイドルに……。


 そんな考えが再度頭をよぎるが、身の程を知る一也にとってその選択は瞬時にかきけされた。


 一也にとっての純粋な知り合いはたったの二人で、綾奈さんと明日香さんだけだった。


「どうすっかなぁ……」


 半ば諦めに近い声が漏れたときだった……携帯がバイブレーションし始め、画面には笹川の文字が浮かび上がっていた。


「だれだ……?」


 その名前に記憶はなく、笹川という知り合いなどいたことはない。

 そして、恐る恐る携帯を手に取った。


「もしもし……」


「あっ一也? 今日これから遊びにいかない?」


 電話越しに聞こえた声は中性的で、男か女かの判断に困る声だった。

 おそらくは男なのだろうが。


「遊び……どこいく?」


 急に知らない人から呼び捨てにされて衝撃を受けるが、呼び捨てにしてくるということは仲の良い友人ということだろう。


 ここは数少ないであろう男の友達というのを確認しておきたいし、できれば仲良くしておくのにこしたことはない。


「行ってくれるの?! やった! じゃあじゃあTDLいこっ!」


 なんで男二人でTDLなのか……頭を抱えそうになるが、ここでどう受け答えをしていいものかわからなかったので、とりあえず了承しておいた。


 どうやら待ち合わせは舞浜駅らしいのだが、そこまで来たのならチケット売り場辺りでいいのでは……?


 そう思ったが口にはせずにそのまま相槌を打つ機械となっていた。


『しかしこれはラッキーだな。こうしてこの世界の国東一也の友人と仲良くしていって、ゆっくりと交遊関係を広げていこうじゃないか』


 着ていく服を選びながらそんなことを考えていた。


 選んだ服はザ・安牌のジーンズにニューヨークの風景のイラストの入った白シャツ、七分丈のジャケットにスニーカーを合わせるというなんの冒険もなく、クラッチバックを持つだけというスタイルだ。


「よしっ! いくかっ!」


 元の日本でもこういう安牌な纏めかたをしていた一也に、今以上のファッションセンスを求めるのは酷というものだろう。


 エントランスホールに降りるとすでに明日香さんが受け付けに立っていた。


「おほっ……きょ、今日はまた格別に薄着ですね……」


 明日香さんが鼻と口を手で覆いながらそんなことを言ってきた。


「そうですかね……? この時期ならこんなもんじゃないですか?」


「そ、そうですね……それではいっいってらっしゃいませっ!」


 様子のおかしい明日香さんに見送られてマンションを出ていく。


『快晴にそこそこ涼しい風……今日は外に出る日だなぁ』


 そんなことを思いながらテクテクと武蔵小杉駅に向かって歩いているのだが、やはり道行く女性からじっとりと視線をもらってしまっている。


『あれか……巨乳の人とか外人さんはこういう感覚なわけか……』


 美人な女性からの容赦のない視線に対して、そんなのんきなことを考えているのであった。


『さすがに人……というか女の子が多いな』


 駅のなかはもちろん女性が沢山おり、石鹸やらシャンプーのいい香りが漂いまくっていた。


『しかし、道を歩いていたとき以上の視線を感じるな……』


それもそのはずで、何百という女性が目の前を通っているのだ……見られないわけがなかった。


 しかし、一也はまだ油断していた。

 

 この世界の女性の男性に対する餓えを……一也の外見は元の世界でもそこそこイケメンに分類される上に、この世界にはめったにいない上玉であることを知らなかった。



 男性専用車両というものを完全に失念していた一也は、普通に電車に乗ってしまった。


 女性のいい匂いを堪能できると思っていた。

 現に堪能できているのだが、そんな幸福のときはすぐに終わりを告げた。


 鍛え上げられ引き締まった身体は、女性たちの理性を蕩けさせるには十分であり、運良く一也の後ろに着いた女性からガッチリ視姦されてしまっている。


 周りから聞こえる吐息に、ようやく一也は自分のおかれた状況に気づいてしまった。


『これは……猛獣の群れのなかに飛び込んでしまった!!』


 確信したときにはお尻にさわっ……という感触を感じ、はぁはぁという声が聞こえてくる。


 その痴女が一人ならまだよかったのだが、尻を触る感触は明らかに多数で、胸や臀部までに手が伸びてきている。


 助けを求めようと目の前の女性を見ると、目を血走らせており、手を出そうかやめようかのせめぎあいをしていた。


『神は死んだっ!!』


 心のなかでそう叫ぶが、助けなんてあるあずがなかった。


 今この電車のなかで正常な判断をくだせるものはおらず、皆が皆この空気に当てられてしまっていた。




 身体をいいようにまさぐられる中、ジョニーだけはなんとか死守することに成功した。


 乗り換えで電車の扉が開くやいなや飛び出して、乗り換え電車の男性専用車両へと半泣きで飛び込んだ。


「はぁはぁ……もう絶対男性専用車両しかのらねぇ!」


 心身ともに疲れきった一也は座席に勢いよく腰かけてリラックスする。


 そこからは安全に舞浜まで向かうことができた。

 さすがに舞浜に着くと本当に僅かだがカップルを見ることができた。


 まぁたった一組だけなのだが……。

 そして、そんな幸せそうなカップルに対して羨ましそうに見つめる女性陣の顔は……言わないでおこう。


「さてと、笹川とやらはどこにいんのかな」


 きょろきょろと辺りを見渡していると、不意に肩を叩かれた。


「一也っ!」


 振り向くとまるで女の子のような少年が立っていた。


「笹川……?」


「もうっ! なんで疑問系なのさっ!」


 ぷりぷりしている笹川はどうみても少年が駄々をこねているようにしか見えなかった。


「それに純でしょ! 急に苗字で呼ぶなんて」


 すぐに心配そうな目でこちらを見つめてくる笹川だったが、すぐに自分のミスを消すべく慌ててフォローした。


「いやぁ……たまには苗字で呼んでみようかとおもったんだが、やっぱり純のほうがしっくりくるな」


「そりゃそうでしょ……中学から名前呼びなんだし」


 呆れたとでも言わんばかりにやれやれムーヴをする純だったが、中学からの付き合いとは思わなんだ。


「まぁ今日は頼むよ純……どこを回っていくか調べてるんだろ?」


「もちろんだよっ! さぁいこう!」


 どうやら予想は当たっていたようで、時間よりも少しはやく着いても先に到着していたことや、話し方などからこういうときは計画的な行動をするタイプと考えたのだ。


 TDL行きの電車に乗るとすぐに純から女性に対する愚鈍がこぼれてきた。


「もう! ほんとに嫌になるよ……どうして女性はああもデリカシーってやつがないんだろうねっ!」


 どうやら女性になにかしらをされたらしいのだが、確かに痴女にあった一也からすると同意したくなってしまった。


「まぁもう慣れたよ。そういう生き物なんだよ女性は……」


 そういうと純はとても驚いたようでこちらを凝視してきた。


「まさか一也からそんなこと聞くとは思わなかったよ。前までは《女ってやつはなんであんなに品がないのかぁ!》って言ってたのに……」


『そ、そんなことを言っていたのか……』


「ま、まぁ俺たちも二十代だしな……そろそろアレ考えるだろ? 前向きに向き合っていこうと思ってな……」


「そうなんだ……やっぱり一也って大人だね。僕はまだ踏ん切りがつかないよ……」


 苦し紛れとはいえ、なんとか煙に巻くことができて安堵した。



 そんなこんなでTDLに到着したのだが、純のテンションは目に見えて上がってきている。


「はやくいこっ! はやくっ!」


 苦笑いを浮かべながら急かしてくる純の後を着いていった。




おねしゃー。


やっぱり元の一也と今の一也のギャップとかも書きたいよね。


ここから始まる一也に合わせてっ!

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