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 部屋にインターホンの音が響きモニターを見ると、そこには満面の笑みを浮かべた伊織が立っていた。


 部屋へと案内し、お茶とお菓子を出してすぐに今日呼んだ理由である芸能界について切り出した。


「今日来てもらった理由はメールで伝えたと思うんですけど、早速いいですか?」


 そう言うと、伊織はカバンの中からかなりの厚みのある紙の束を取り出してきた。


「これは一也くんをプロデュースしたいという芸能事務所の、なんていうか……契約書だ」


 まるで、大型プロジェクトの時の書類のような厚みのあるそれを、机の上に置いて広げた。


 芸能事務所の社長の顔写真と所属している事務所の顔たちの顔写真、福利厚生や場所、一也にどういう活動をしてもらいたいかなどが詳細に書かれていた。


「いつぞや一也くんに、あの時テレビに映ったことで芸能事務所が取りたがってることを伝えたと思うだけれど、私が社長やテレビの関係者、友人に声を少しかけただけでこれだ。もし大っぴらに宣言したらこの倍以上はオファーがくるよ?」


 そんなことを笑って言っているのだが、これでも多いと思うのにこれ以上となると捌ききれる自信は一也にはなかった。


「これ、決める上で何かアドバイスとかありますか?」


「そうだな、一也くんがやりたいこととマッチしている所を探すべきかな。もちろん自由にしてもいいってところは論外だよ」


 一也はどうして自由にしていい場所がダメなのかすぐにはわからなかった。

 しかし、少し考えるとその理由がすぐにわかった。


 自由にしていいということは、一也の売り出し方を一也のイケメンであるということだけをフューチャーしているだけで、明確な売り出し方を考えていないということだ。


 中には考えているところもあるだろうが、男の機嫌を損ねたくないという思いで自由をうち出している所も少なくないだろう。


 しかし、そんな機嫌を恐れているような所が明確にこれというようなプランを提示できるだろうか……いや、できないはずだ。

 そうして売り出し方に明確なビジョンがなさそうなものをどんどんと弾いていく。


 中には男を雇っている芸能事務所もあった。

 しかし、男を雇っている所で自由でよいと書いてないところのほうが少なかった。


 そうして絞っていったのだが、まだまだたくさんの資料が目の前に置かれている。

 残留を果たしたのは歌手かアイドル的な、歌をメインに出来るような仕事を考えている事務所だ。


「これなんてどうですか?」


 綾奈が一也に資料を渡す。


 その事務所は一也をアイドルとして売っていきたいらしく、アイドルとしての活動を目指しているようだった。


 しかし、そのアイドル活動の中にゆくゆくは俳優としての活動をと書いてあったので、とりあえずはキープの方向でおいておく。


 事務所のトップアイドルは北条優華というアイドルで女性アイドルの中でも5本の指に入るほど人気がある人に興味はあるが、そんな不純な動機で入るわけではないので、邪な考えは抱かないように選考していく。


 時折2人のおすすめを見ながらキープしたり却下したり、資料を眺めること1時間。


 1つの資料が目についた。


 歌手として売り出すというのだが、歌手活動は柔軟に対応する姿勢で、歌手として売れたあとの活動は要相談。


 3通りほど考えているらしいのだが、意に沿わなければ相談して戦略の変更を加えていくというもので、事務所との連携が1番図れそうな契約内容だった。


 今までの所は自由かガッチリとしたもの、柔軟性がありすぎるかなさすぎるものだったのだが、この事務所は中々好印象だった。


 それに、驚くことに事務所の社長が初老の男性だったのだ。


「ふふふ、一也くん……ついにそれを見つけてしまったな」


 なにやら怪しく笑う伊織に、一也の背筋に冷たい汗が流れる。


 どうしたのかと疑問に思うと、所属タレント一覧の中に相楽伊織の名前が入っていることに気がついた。


「んふふ、そこは私も所属していてね。社長は坂東裕太郎となってはいるが、基本的に指揮を振るっているのは社長夫人の涼子さんだ。涼子さんは社長に男としての考えとかを聞いて今回の資料を用意したそうだよ? どうかな? 中々いいとは思わないか?」


 いい契約内容だなと言っていた綾奈の表情に陰りが見え始め、明らかにここはやめようという言葉が顔に浮き出てきている。


 しかし、社長に男がいるならば、自分の考えている歌手としてのデビューは実現しやすいかもしれないと、一也は乗り気に考えていた。


「社長の意見を取り入れたということは、涼子さんっていう人は結構社長の言うことは聞くんですか?」


「もちろん。社長が右を向けといえば右を向く人さ。流石に事務所に損を与えたりするようなこととかはやらないけれど、得になるのならばどんどんと取り入れていく人だよ」


 それを聞いてこの事務所を暫定第一候補まで引き上げて残りの資料に目を通していく。


 それからは候補となるものはほとんど生まれず、残ったのはたったの2つで、伊織の所属事務所かもう1つの新進気鋭の事務所にするかで迷った。


 もう1つのほうは伊織の所属事務所とほぼほぼ同じ契約内容で、社長は32歳の女性で所属タレントもまだ2人という所だった。


 伊織はもちろん自身の所属事務所を推し、綾奈もこの2択なら伊織に賛同している。


「とりあえずこの事務所に話を聞きにいってみます!」


 が、ここで無駄にフロンティアスピリッツの旺盛で天の邪鬼な気のある一也は、新進気鋭の事務所を選択した。


 2人はこの選択に驚きはしたものの、はっきり言って何処に所属しようが活躍できるのは確定的に明らかだったので、どちらでもよかったはよかったのだ。 


 が、それでも伊織は一也に同じ事務所に来てほしそうにしており、綾奈はそんな伊織を見てニタァと笑っている。


「どうせなら1からやったほうが面白そうですし、事務所と一緒に成長していくのも悪くなさそうじゃないですか?」


 一也がそう言うと伊織は少しだけ苦い顔を浮かべたが、ここで意見をだし過ぎて、せっかくやる気を出してくれたのにそれを削ぐ様なことをするまいと、応援する姿勢に変えた。


「確かに一也くんにはそっちの方がやり甲斐も感じていいかもしれないね」


 伊織の言葉を聞いて一也はすぐに資料に書かれた電話番号を調べ、事務所へと電話をかけた。


「はい、こちらは鮎川プロダクションでございます」


「あの、国東一也というものなんですけど」


 そこまで言うと、電話対応してくれた女性が軽い悲鳴を上げ、大慌てで社長へと電話の引き継ぎを始めた。


 クラシックを聞いて待つこと数秒で社長が電話を引き継いだのだが、あまりにも早い引き継ぎに驚きを隠せない。


「私が鮎川プロダクションの鮎川瑞穂と申します。今回はどういったご用件で?」


「あの、今回オファーを頂いた件で、お話できる時間があればと思いまして電話をかけさせてもらったのですけれど」


 電話のマナーなど全くと言っていいほど分からなかったが、とりあえず失礼のないように慎重に言葉を選んでいく。


「そうですか。それでしたら2日後の19時からなどはどうでしょうか?」


 カレンダーを見て予定を確認すると、その日は全く予定が入っていなかったので了承した。


「それでは場所などが決まりましたらこちらからお電話しますので、よろしければ電話番号のほうを教えていただけますか?」


 言われた通りに電話番号を伝えて電話はおわったのだが、結構肩透かしを食らった感覚を一也は覚えた。


 初めて喋る相手は、どんな人だろうと少しだけ緊張した感じになっていたので、理路整然とした態度には非常に好感が持てた。


 が、鮎川瑞穂は必ずや一也を得たいという思いから、一也の映っていた映像を擦り切れるまで再生していたので、少しだけ耐性がついていただけなのだ。


 もしも一発目から顔合わせで話していたら、脆い仮面はすぐに崩れていただろう。


 そして一也はすぐに面談が決まったことを純にメールで伝えると、純からは、一也に着いていくのだから一也が決めたとこならばどこでもいいよという返信を貰った。


 これで後顧の憂いはすべて無くなった。


 後はボイストレーニングに励むだけだと目標を立て、伊織の指導の下ボイトレを始めた。


「それじゃあ何か歌ってみてくれないかな?」


 伊織にそう言われた一也はこちらと向こうの、双方でリリースされている歌を歌った。


 綾奈は一也の歌を聞いて褒めちぎったのだが、流石にプロからするとまだまだヒヨコが殻を被ってる程度。


 抑揚や心の込め方、高音の安定感などを指摘された。


「芸能事務所に所属すればすぐにボイストレーナーがつくと思うけど、その時までに指摘したところを少しだけでも改善させておきたいな」


 それからは伊織のコーチングの下でボイトレを行い、みっちりと練習を重ねていき、時間を忘れて練習をしていた。


 すると、何やらいい匂いが部屋の中に充満してきた。


「ん? 何やらいい匂いがするね」


「確かに」


 一也たちはその匂いに一気に引き戻され、時計を見ればすでに18時を過ぎており、リビングに戻ると綾奈がせかせかとミートスパゲティを作っていた。


「あっ、練習は終わったんですか? もう少しでできるので、もうちょっとだけ待っててくださいね!」


 木ベラを片手に微笑む姿は天使のようだった。

 いつも晩は一也の担当か外食なので、一也は少し申し訳ない気持ちなったが、綾奈の笑顔を見るとすぐにそんな気持ちは吹き飛んだ。


 しっかりとローリエを入れられて作られたミートスパゲティはとても締まっており、かなり美味しく仕上がっていた。


「綾奈さんは本当に何でもできますよね。出来ないことってあるんですか?」


 欠点らしい欠点のない綾奈をそう褒めると、綾奈は頭から湯気が出るんじゃないかというほど顔を赤くしている。


「やっ……そ、そんなっ! べ、別にこれくらい普通ですよ。だ、男護官は完璧をもとっもとめられましゅからっ!」


『こうなると完璧から遠ざかるな』


 わたわたと慌てる綾奈を見てそう感じたが、こんな完璧な美人が男にはあまり人気がないというのが信じられないし、自身に気がありすぎるほどあるということを考えると一也の顔を赤みを帯びていく。


 なにやらいい雰囲気になっていくのに気づいた伊織は、すぐに一也に芸能界の話題を投げかけて意識を自身に向けると、綾奈に負けじとアピールを始めた。


 すでに一也にとって2人は最高の女性という認識なのだが、そんなことを露ほども知らない2人にとっては一也へのアピールは負けられないのであった。

向こうだけこちらだけしかない歌というのはかなりあります。


男の恋愛ソングは殆どなく、基本的に女の歌ばかりしかありません。


あと朗報?です。


この書き方辛いので前の方に戻しますね。


やっぱり趣味爆発の小説で堅くしてもいいことはないっ!という結論に至りました。


ハッハッハ…!状況描写とか諸々が難し過ぎて辛いっす!!


私の力では及ばないっす!かっこをつけてみたかったんですぅ!!


筋トレして出直すっす!


FF10のキマリの台詞の"かっこをつけるなっ!"という言葉を思い出しだしました。

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