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「一也さん……なんで相楽伊織がここにいるんですか!?」
さすがに伊織さんをご招待するとは思っていなかった綾奈さんは、机をぺぺんと叩いて不満をあらわにする。
「いやぁ映画の影響ってやつかな……?」
「そんなことを聞いてるんじゃありませんっ! もうっ! 昨日の今日だというのに、危機感がたりませんっ! 大体、女は皆狼なんですよっ!」
どうやら綾奈さんは女性をほいほい家に招いたことに不満があるようで、凄い剣幕で今回のことをぷりぷりと怒ってくる。
「ふふっ、そういう君こそ一也くんと一緒に住んでるようだけど
、君は狼じゃないのかな?」
しかし、ここで伊織さんが何故か火に油を注ぐような暴挙に出る。
そのせいで綾奈さんの頭からは完全に湯気が立ち昇りだした。
「なっ!? 私は男護官であり警察なんですっ! そこらへんの女と一緒にしないでくださいっ!」
「しかし、一也くんのストーカー被害には警察と男護官がストーカー側についていたらしいじゃないか」
ぬぐぐ……と、なんとも言えない顔をしてこちらを見る綾奈さんと、したり顔の伊織さん。
案外相性はいいように思える。
「まぁとりあえずご飯にしましょうよ。今日は煮込みハンバーグですよ」
逃げ込むようにキッチンへと入って準備を始める。
三十六計逃げるにしかず。
これは今後のために必要な撤退なのだ!
「逃げたな……」
「逃げましたね……」
二人がジト目でこちらを見てくるので、見ないようにして玉ねぎを切っていく。
やっぱり二人の相性は良さそうだ。
あのままあの場にいれると究極のニ択を迫られるのは分かっていたので、さっさと調理に取り掛かって正解だった。
「ふぅ……一也さんが料理をしてくれてるので聞けますが、伊織さんは一也さんのなんなんですか!?」
「もちろんそこそこいい仲と言えるんじゃないかな? メル友だしな」
「メ、メル友……大体、なんで君呼びなんですか!」
「それはもちろんそう呼んでいいって言われたからな。私の方がリードしてるなぁ〜」
「なぁ!? わ、私だって一緒に住んでるし、伊織さん以上にリードしてますぅ!」
「でも手を出さないんでしょ? 男護官兼警察なんでしょ?」
「むぐぐぐ……」
「それに、私は近々一也くんとデートをするんだ。そこで一気に距離を縮めて見せるからな!」
「わ、私だって……必ず一也さんの寵愛を受けてみせます! まだライバルは少ないんですから今がチャンスなんですっ!」
「確かに、私たちはお世辞にも可愛いとは言えないからな……今のうちに一也くんと親密になっておかなけばならない」
「そうですよ! 一也さんってば女全員に優し、イケメンすぎるから」
「そうだな……。普通なら私みたいな女と二人っきりでデートなんかしてくれるか? しかも、一也くんは私とのデートを楽しんでくれてるんだ……こんな奇跡のようなこと一生に一度どころか来世でもないだろう。ライバルが増える前までが勝負だな……」
「必ずや五人の中に入りましょうねっ!」
なにやら二人が小声で話していると思ったら急に堅い握手なんてして、二人は結局仲良くなったみたいだ。
皿にハンバーグをいれていき米をよそいテーブルに並べていく。
二人の目の奥に炎が見える気がするのは気のせいだろうか。
しかし、あんまり美人な二人に見つめられるというのは…なんか心臓を鷲掴みにされてるような、どこか落ち着かない。
「トマトベースに煮込んでみました。口に合えばいいんですが」
煮込みハンバーグ、サラダ、コースポタージュに白米。
それが今回のメニューなのだが、いただきますを済ませるとすぐに二人はハンバーグへと箸がのびる。
俺はコーンポタージュから攻めていく。
「美味しいです!」
「こんなに美味しい料理は初めて食べた!!」
二人の感想を聞いてコーンポタージュを啜る口が歪むが、さすがに初めて食べた言い過ぎな気がする。
「男が作った料理とかいって出させる店もあるけど、そんなところとは比べ物にならないなっ!」
はふっはふっ……と食べ進めてくれるのはうれしいが、そんなに急がなくても消えやしないのに……消化にも悪いし。
「男が料理するとことかあるんですか?」
「まぁ滅多にないし、本当に男が作ってくれてる料理はかなり高い……。安いところは最後の草っぱを添えるくらいしかしてないんだよ」
ずーんと沈んだ空気を出す伊織さんと、それを聞いて遠い目をする綾奈さん。
これは確実に釣られてしまっているようだ。
「行ったんですね……?」
コクリと二人が頷き、小さなため息が漏れ聞こえる。
予想していたとはいえ少し悲しくもある。
「やっぱり男が少しでも携わってるってだけで行きたくなるもんなんですよ。はっ! ひ、引かないでくださいねっ!!」
落ち込んだ表情から急に泣きそうな表情に変わる綾奈さんなのだが、別にそんなことで引いたりはしない。
俺だって美人が美味しい料理を作っていればそこで食べたいし、別に普通なことな気がする。
「別に引きませんよそれくらい。普通のことじゃないですか。」
今にも泣きそうな表情から大輪が咲き誇った。
「うぅ……一也さんは優しすぎます……!」
そんなことはないとは思うのだが、やはりこちらでは夢や漫画とかでしかでてこないほどの理想的男子らしい。
これが普通だと思うので、それを過剰に評価されると少しむず痒い。
「あんまりその優しさを誰かれ構わず振りまいちゃいけないよ? 話しかけられただけでも恋するのが女なんだから」
伊織さんがやたらと大人の余裕を見せつけてきたので、少しだけガラにもない意地悪を仕掛けてみた。
日頃の余裕ある伊織さんの恥ずかしがる顔をみたい一心だった。
「それなら俺の手料理はハートを射止めましたか?」
チラリと流し目で二人を見ると、顔を真っ赤にして口をパクパクと動かして金魚みたいになっている。
「なっ!? そっそれ……ふはぅ……」
伊織さんはよくわからない言葉を発しながらショートしてしまい、綾奈さんもガッチリ固まってしまったので、とりあえず食べ終わった食器を片付けていく。
洗い物が終わっても固まったままの二人のほっぺに、キンキンに冷えたジンジャエールをピタリと付けると、教室で眠る学生の如くビクリと痙攣して覚醒した。
「し、幸せな夢を見ていた気がするっ!」
「わ、私もです…。」
なぜかあの時の、黒歴史の一ページに刻まれた一言は現実のものではなくなったようなので、そのままなかったことにしておく。
やはりガラにもないことをするもんじゃない。
「食後のデザートはプリンと杏仁豆腐とどっちがいいですか?」
「プリンがいいです!」
「私もプリンで」
二人がプリンを所望したので、プリンと飲み物を数種類持っていく。
やっぱりプリンは気取ったものじゃなくて、プッチンしてプルリンを楽しむことも重要だと思う。
そうして皿にプッチンされたプリンは、女子のスイーツ好きの前に一瞬で消え去ることになった。
因みに俺の一番好きなプリンの種類は牛乳プリンだ。
「そうだ……!」
手料理とプリンで幸せに蕩けきっていた伊織さんが唐突に覚醒した。
急に真面目な表情でこちらを見るもんだから、自然と背筋が伸びる。
「一也くん……仕事は何するか決まってきたかな?」
一気に現実に引き戻された気がする。
そろそろ決めなければならない時期になってきてはいるのだが、中々決心というものがつかないものなのだ。
「友達と相談して決めようと思ってるんですよね……」
「ほぉ…その友達…は男だろうけど、何になろうとしてるのかな?」
そうこうしている間に伊織さんがぐいぐいと詰め寄ってくる。
この話題には綾奈さんも興味津々らしく、身を乗り出すようにして話の行く末を見守っている。
「まだわからないんですけど…今度会う約束をしてるので、とりあえずその時にある程度決めようかなぁ……と」
それを聞くやいなや伊織さんは乗り出し気味だった体をもとの位置に戻し、机に手を置いてゆっくりと語り始めた。
「正直に言って男が働くということは、どこで働こうとも特別扱いされるし大した仕事なんてもらえないことを覚悟したほうがいい。もちろん芸能界は別だよ?
ただ、医者や弁護士とか、そういう男を専門にする人になれるというのなら問題はないけれど、一也くんはそうじゃないだろう?」
伊織さんの言葉一つ一つが胸に突き刺さる。
確かに男の上半身とかをおいそれとは見れないから男の医者の需要も高いだろうし、弁護士も同じような理由で需要があるだろう。
しかし、ただの商社に勤めても男であることを利用したやり方や、お茶汲みのような顔のいいだけのOLのようなことをやらされるだろう。
ボランティアだって、それだけを一生やり続けてもなにか違う気がする。
タダで貰ってるお金とボランティア活動の釣り合いがとれなければ、ボランティア活動をしてるのはただの男の気まぐれの暇つぶしに見える。
「悪いことは言わないよ…働きたいなら芸能界しかない。一也くんに医者や弁護士とかになる学力とやる気がないのなら……」
一度は憧れたことはある。
しかし、そういう仕事は人一人の人生を預かる仕事で、それを考えたとき俺はそれを目指すことはやめたのだ。
やはり働くなら腹を括らなければならない……か。
そうして今日のデートは終わり、伊織さんと部屋の前で別れてすぐにやることをやって眠った。
しかし、今日ほど寝付きが悪いのはこの世界にやってきて初めてのことだった。
眠りにつく前に純にメールを送る。
『今度飯を食いにいこう。話したいことがあるから。』
初めての台詞のみ進行をしてみました。
難しくてハゲそう…。
そして最近頭に言葉が生まれてこない…。
難しい言葉や漢字を避け、かつ女子中学生が書くようなものにならないように気をつけているのですが、中々いい塩梅に落ち着きません…。
さて、筋肉筋肉と言ってはいますが、筋肉と言ってもどの程度から筋肉あるなぁ…筋肉ついてきたなぁ…と、自慢できるか…これが重要なのです。
やっぱり筋肉がついてきてアピールしたくない男はいないはずです。
つけすぎれば引かれ、程よくつければ賞賛!
自分の思う筋肉と人から見たときの筋肉。
人に見せて自慢をしたいマッチョを目指している人は、相手から見たときの筋肉量を意識しましょう。
大抵は胸筋は少し薄めで、腹筋と腕があれば女性からの評価は高いでしょう。
私は完全に自己満足の域にまで達してしまいましたが、恐らく自己満足の域に達する人は少ないでしょう。
なので、他人に評価してもらうことの重要性をしっかりと理解しましょう。
モチベに関わります。
追伸
方向性が定まりつつあります。
そろそろ新ヒロイン誕生の予感!?
………と、期待だけさせておくパータン。
さらに追伸
最近スコップというのを覚え、色々まとめサイトなどを駆使して作品発掘に励んでいるのですが、そのときブクマ1000を超えるのはかなり難しいというのを目にしました。
モチベ…上がるよね…!
因みに、自分が面白い!と思う作品が伸びてないのを見ると悲しくなりますね…。




