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そういえば…明日香さんが一也くんの部屋に来ているときは、別の人が一也宛ても対応しているので安心してください。
あれから28人の女性が芋づる式に捕まっていった。
強漢未遂や銃刀法違反などなど……多くの女性が捕まったのだが、衝撃的なことに警察側にも数人の内通者がいたのだ。
そのせいで綾奈さんたちの動きが伝わり動けなかったのだが、今回は痺れを切らしたストーカー組の一部の独断専行によって起きたらしい。
その独断専行をしたというのがあの時の娘だったようで、あの娘を筆頭にすべてが暴かれたようだった。
今回のことで警察は謝罪会見を開き大々的に謝罪をしていた。
マスコミも今回の事件を大きく取り上げており、民衆の怒りはとてつもないものとなっていたのだが、俺がマスコミに今回のことについて大事にしないで的な手紙を送るとすぐに民衆の怒りは収まっていった。
男の言葉というのがどれだけの影響を与えるのかがよくわかった事件となったのだった。
「ただでさえ心身ともに深い傷を負ってる一也さんに、こんな事までさせてしまって……本当に申し訳ありません!!」
綾奈さんを筆頭に、警察官のお偉いさん達がベッドに座る一也に頭を下げる。
「いや、別に心身ともに傷ついてはいませんよ? そんなに謝られても……」
「いえいえ! 今回の不手際は私達の責任です! なんなりと処罰を!」
警視総監の橘佳乃さんが頭を地面にぴったりとつけて謝ってくる。
別に処罰もなにも、たった一人の人間が何万という人全てを管理できるわけがないのだ。
それだけ人が集まれば、誰かしら邪な考えを持つ人だって集まってくるものだ。
「それではこれからはこの事件についての謝罪はしなくていいです。別に警察に怒りもなにもないですし。そして、体とかになにも問題ないので早く退院させてください。」
この二つを伝えると、橘さんは目に涙を浮かべて感謝をしてきた。
本来、警察官の不正からこんな事件が起こったとなれば、男が民衆を煽って事を大きくしたならばと警視総監の首が飛ぶほどのことなのだ。
それを一也は警察官を民意から守った上に、一也自身がなんのお咎めなしとしたとなれば、これほど嬉しいことはない。
警視総監の立場からすれば、男の人が私たちのことを守ってくれた!素敵っ!となるのも簡単なことで、すでに橘琴乃の心は一也に一直線である。
「うぅぅそれはありがたい。今後はこのようなことが無いようにしっかりと精神を鍛え上げてもらおう!」
ビシッと敬礼する橘さんはとてもかっこよく見えたのだが、どうしても目が赤くなっているので不格好だ。
しかし、この時の誓いはすぐに果たされることになり、男性関連の事件を担当する警察官は男護官としての資格を持っていないと担当できない事になった。
そして、今年から男護官合格者の半分以上が警察官から輩出されることになったのだった。
それからは橘さんにお願いした通りすぐに退院し、綾奈さんの警護の下でマンションに帰ることとなった。
「それではここまでで……本当に申し訳ありませんでした!」
マンションの前でパトカーを止め、今生の別れのような、悲痛な顔を浮かべる綾奈さんと向き合う。
「今日はサバの味噌煮にしようと思ってるんですけど……待ってますからね」
そう言ってパトカーを降りてマンションへと入っていく。
チラリとパトカーのほうを見ると、綾奈さんがわんわんと泣きながらハンドルに頭をつけていた。
「おかえりなさいっ!」
明日香さんの歓迎を受けてほっこりしながら部屋へと戻った。
部屋に戻ると携帯にメールがかなり溜まっていた。
伊織さんや母さんたちからの心配メールがほとんどで、無事と心身の健康を伝えるとストーカーに対する怒りのメールが飛んできたのだが、皆の怒りをなだめるのには骨が折れた。
皆と直接会う約束を取り付ける事によって話題を逸らすことに成功した。
そして、次のデートのエスコートをよろしくお願いすると、すぐに皆はデートプランを探し始めてくれた。
そうしてやっとこさメールも終わったので、サバの味噌煮を作り始める。
じっくりコトコト作っている間に部屋の掃除をしておく。
掃除が終わってサバの味噌煮も完成し、風呂に入ってだらりとテレビを見て待つ事数時間。
ようやく綾奈さんがやってきたと明日香さんから連絡を受けた。
部屋に綾奈さんを招き入れ、綾奈さんの表情がどこか晴れやかだったので一安心した。
「一也さん……私はこれからは一也さんの男護官として正式に側に居させてくださいっ!」
ペコリと頭を下げる綾奈さんなのだが、警察官としての職務はいいのだろうかと不安になってしまい聞いてみた。
「もちろん警察官兼男護官ですので、逮捕権とか警察と連携できる男護官なんですよ! 警視総監が新設した部署なんですけど、警護官っていうらしいです。」
なんとも行動が早いようで。
警護官は男性専門の事件にあたり、男性は担当警護官を1人指名することができ、指名された人を中心に事件解決に尽力するそうだ。
もちろん男性側が側にいてほしいと願えば、男護官のように側にいて警護にあたることも可能なのだ。
興奮する綾奈さんをリビングに連れて行きテーブルにつかせて料理を並べていく。
「俺も綾奈さんとここで別れたくありませんでしたから! まだまだ綾奈さんには護ってもらいますよ?」
サバの味噌煮を綾奈さんの目の前に置きながらそう言うと、綾奈さんは目に涙を溜めて喜んでくれた。
せっかく仲良くなれた美人な人、しかも少し気になる女性とお別れは流石にこっちも辛い。
しっかりと男というのを最大限利用して縛りつけてみたのだが、それ以上に綾奈さんを拘束してしまったように思えてしまう。
サバの味噌煮はどうやら綾奈さんの大好物らしく、美味しい美味しいと喜んで食べてくれた上に、しっかりとおかわりもしてくれたので料理を作った側からしてもこれほど嬉しいことはない。
「ふぅ……ごちそうさまでした。明日からは朝ごはんは私が作ります。夜と昼は相談して決めましょうね!」
キラキラ笑顔を振りまく綾奈さんなのだが、また一緒に生活するというのだろうか?
いや、嬉しいのだけどもそんなこと言ったかな?
そう思って綾奈さんに聞いてみたのだが、それはもうこの世の終わりみたいな顔をされてしまったので、再度正式に警護してもらうことにした。
しかし、美人とひとつ屋根の下……これはジョニーを抑えつけておくのも苦労するかもしれないな。
とりあえずストーカー事件のときに居てもらった部屋に案内し、そこにこれから生活する上で必要なものを明日運び込むことになった。
俺の寝室には今まで以上に鍵をかけることになったのだが、これは綾奈さん切っての願いだったので反対せずにのんだ。
そして次の日、軽トラを運転して綾奈さんのお宅訪問と相成ったわけなのですが、とてもドキドキしております。
一人暮らしの女の部屋の汚さは男を超えるというのは聞いたことがあり、幻滅するから女の一人暮らしの部屋に行くなら前もって伝えておけとまで厳命されていたほどだ。
しかし、やっぱり女の子の部屋に行くというのはドキワクするもんだ。
「き、汚いのであんまり見ないでくださいよ?」
綾奈さんが俯き上目遣いでそんなことを言ってくるが、別にゴミ屋敷などでなければ引いたりしない。
元々俺がゴリ押して綾奈さんの手伝いをすると着いてきたのに、ここで綾奈さんを泣かせるようなことはしないと誓っている。
綾奈さんの住むマンションについに着いたのだが、よくあるワンルームマンションで、部屋の中からは甘いいい香りがふわりと香ってく。
思いっきりこの空気を味わっていると、綾奈さんが"やめてくださいっ!"と言って止めてきた。
幸せな時間だったのに……。
段ボールを作り上げて綾奈さんの部屋へと置いていく作業を始め、綾奈さんが衣類を入れた段ボールを渡してきた。
もちろんテープがまだされていない状態で渡され、俺がテープをして軽トラに運び込むのだが…隙間からあれから見えてしまっている。
そう、ブラジャーだ……。
ゆっくりとそれを引っ張り出してみる。
E65……ビューティフォー……。
確認を終えるとすぐに戻してテープをして軽トラに運び込むが、頭の中はE65が支配しており、綾奈さんを見るときにその膨らみをどうしても意識してしまう。
煩悩を払うように素数を数え、時にはウルトラマンの怪獣を出現順に言ったりして無我の境地で荷運びを行った。
「ふぅ……これで全部ですね。あとは全部捨てて……って、どうしたんですか?」
綾奈さんに無駄な心配をさせてしまった。
もちろん俺が挙動不審なのがいけないのだが、E65がチラついてチラついて……。
「いや、なんでもないでふよ? もうこれで荷物は終わり?」
少し噛んでしまったがクールに決められたと思っていたけれど、まったく綾奈さんにはクールさが伝わっていなかった。
「お、終わりですけど……それじゃ持っていきましょう!」
無理に切り替えた感が伝わって心涙を流してしまいそうになる。
綾奈さんは家を引き払う手続きをするとのことでここに残ってもらい、俺は軽トラを運転してマンションに荷物を運び込んでおく。
綾奈さんに、男の人がそこまでここまでとやいやい言われることは容易に想像できた。
が、ここで荷物を運び込まないなんて選択できるはずもなく、明日香さんの手伝いもあったとはいえすぐに運び込みは終わった。
まぁ明日香さんが俺を見て手伝わないわけはないと思ってなかったわけではないが……。
そして綾奈さんからの連絡がくるまでE65を弄んで時間を潰した。
とんだ変態だな……。
しかし、世の中の男というものはこういうものなのだ!
パンチーに手を出さなかっただけ褒めて貰いたいというもんだっ!!
大体、こんなこと人前でやろうものなら襲われるのは間違いないし、それは綾奈さんも例外ないだろう。
ならばこのチャンスは生かさなければならないだろう!!
アイマスク代わりにブラジャーを目に当てて寝ていると、携帯が音を立てて震えた。
それにビクリと驚き、ブラジャーを段ボールに直して携帯をとった。
因みにもちろん黒のレースのブラジャーがお気に入りですよ?
「もしもし一也さんですか? 部屋の引き払いが終わったので、今からそちらに向かいますね」
ついにこの至福の時は終わりを告げる。
グッバイ俺の黒ブラジャー……グッバイ俺の夢……。
それからしばらくして戻ってきた綾奈さんは、すぐに部屋へと向かい荷解きを始めたのだが、ここでの手伝いは却下されてしまったので大人しく待つことにした。
途中お昼ごはんを作って綾奈さんと食べたのだが、頭の中にあるのは黒ブラジャーのことばかり。
これではいけないと邪念を払うべく小説を読むことにした。
恋愛小説なのだが、純愛すぎて邪な心がキレイに浄化されていった気がする。
高校生が手を繋ぐか繋がないかの葛藤なんて、汚れ一つないキャンパスのようだ。
そうして時間を消費していると綾奈さんが片づけを終えて部屋から出てきた。
「終わりました!」
「お疲れ様です」
時計を見ると16時になる前くらいだったので、外食を提案してみた。
「ど、どこに行きますか!?」
ふんすと鼻息荒く近づいてくる綾奈さんを抑え、どこに行くかを決める。
後ろでは子供のようにパソコンの画面を覗き込んでくる綾奈さんがおり、中々気になって仕方がない。
「蕎麦とかどうです?」
「いいですね蕎麦! 私蕎麦好きなんですよ!」
これで決まった。
今日の綾奈さんの警護官就任祝いのご飯は蕎麦となり、すぐにタクシーを呼んで調べていた蕎麦屋の所へと向かった。
蕎麦屋の丼物の美味さは神……。
落ち込む綾奈さんにキスしてゴールインも考えましたが、ストーカーエピソードを早くに出しちゃったので少し遅らせます。
ストーカーエピソードは30話前後に入れる予定だったんですがねぇ…。
次回は伊織さん回にする予定でござー。
よろしこ〜。
さて、筋トレがしやすい時期にすっかりなりましたね。
逆にランニングをサボりがちになっているんじゃないですかな?
そんな甘えた気持ちはどこかに直しておきましょう。
この小説を書き始めて数ヶ月…そろそろ筋肉もついてきた頃でしょうな?
筋肉がついてきているあなた!!あなたには言うことはないでしょうが、筋肉がついてきていないあなたはさらに追い込む権利を与えましょう。
腕立て腹筋スクワットなんてすぐにできること…これをやるだけで多少はみれる身体になるというのに…。
いいアドバイスをあげましょう。
自分の身体の前と横の写真を撮りましょう。
それを誰かに見てもらって貴賎のない意見をもらうことです。
するとあなたは必ず筋トレに励むことでしょう。




