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「一也……なんか変わったね」


「うん……でも、今のお兄ちゃんのほうが好きっ!」


「そりゃ私だってそうよ。今の一也は世の中の男兄弟を持つ女の夢ね……」


 後部座席に座るシスターズからなにやらこしょこしょ話が聞こえてくる。

 なにを話してるかはわからないが、笑い声が聞こえるということはいいことだ。


 仲が良くてお兄ちゃんは安心した。


「う〜ん……どこの寿司屋にいくか」


 母さんがナビをピコピコしながら呟く。


「母さんがよく行く所がいいなぁ〜」


「よく行くっていったら……五郎かしら! むふふ」


 なにやら悪い笑みを浮かべる母さんだったが、ここはあまり深くは触れないでおこう。


 藪をつついてスネークを出す必要はないだろう。


「一也は寿司っていったらまずなにから食べる?」


 姉さんが後部座席に顎を乗せて聞いてくる。


「ん〜カンパチとか白身魚からかなぁ。赤身よりも白身のほうが好きだし」


「えぇぇ!? 寿司はマグロからだよ! お兄ちゃん!」


 明里がぴょこっと跳ね上がりながら運転席の後部座席に顎を乗せて言ってくる。


「明里はまだまだおこちゃまねぇ〜寿司は白身からって決まってんのよっ!」


"なにをぉ〜!"と、睨み合いながら後ろでじゃれ合いが始まってしまった。


「母さんはなにから食べる?」


「……ネギトロ」


 母さんが何から食べるか気になったのできいてみたのだが、顔を紅くさせながら呟く母さんだった。




 それから他愛のない話をしているとすぐに五郎へと到着した。

 車から降り、母さんを先頭にして五郎へと入っていく。


「いらっしゃぁい! ……って、奈美恵じゃない。こんな真っ昼間から今日も寂しく女子会ですか?」


「違うわよぉ〜今日は家族で来てるんだからっ! 個室に案内してね!」


 そう言って奥の方へ進んでいくのだが、大将は女だけで個室を使うこともないだろう……という言葉をすぐに呑み込むことになった。


「なっ!? 誰よこのイケメンっ!」


「自慢の息子よっ!」


 カウンターから身を乗り出してくる大将にドヤ顔を返す母さん。


 ペコリと会釈するとどんどんと顔を紅潮させていき、"カウンターでもいいんじゃないかなっ!"と声を大にして叫ぶ。


「それじゃ家族団欒にならないじゃない」


 しかし、そう言うと母さんはスタスタと個室へと向かって歩き始めてしまった。

 その時の大将の切なそうな表情といったら……。


「で、貴女たちは何をしてるの?」


 体を押し合って何とか一也の隣に座ろうとする姉妹に、母さんは呆れて声をあげた。


 しかし、この争いも母さんの横に座ったことですぐに収まることとなった。


「さぁてっ! じゃんじゃん頼みましょうっ!」


 手をパンっと叩いてニッコリと笑う母さんのために、しっかりと紙の一番上にネギトロの文字を書いてあげた。


 メニューを見ながら一通り食べたい寿司を書いていく。


 ネギトロ、カンパチ、タイ、ヒラメ、アジ、タコ、イクラ、アナゴ……。


 それぞれ2つずつ書き、姉妹が書き終わるのを待つ。


 何故2つずつかと言うと、母さんが"同じの食べるから2つずつねっ!"と言ったからだ。


「できたっ! はいっお兄ちゃん!」


 明里が書き上げた紙をこちらに渡してくる。


 マグロ赤身、ネギトロ、中トロ、大トロ、バチマグロ、エビ、カンパチ、シマアジ、ブリ、タマゴ、イカ、タイ…。


 明らかにマグロ三昧な気がする。

 これはニッコニコな明里チョイスで間違いないだろう。


「んふふ……この紙は直接持っていってあげて、喜ぶから」


 母さんにそう言われ、紙を大将の所へと持っていく。


「すいませ〜ん……これお願いします」


 紙を渡そうと声をかけると、ビクリと体を跳ねさせてこちらに光の速さで振り向く。


「はっ、あっ、ありがとうございます……」


 両手で一也から紙を受け取ると、そこは流石に職人。

 幸せを少しだけ噛み締めると、直ぐ様ネタに向かって握り始める。


 本来、男は個室の扉から紙を置いて呼び鈴を鳴らし、店員はその紙を拾ってオーダーされたものを持っていく。


 これがこの世界での個室での男の注文で、一也のようにわざわざ持ってくることなどありえないのだ。


 それ故に大将は驚き、嬉しさのあまり小躍りしそうになったのたが、仕事中でなければ危なかった。


 紙を渡して戻ると、母さんが"喜んでた?"と聞いてきたので一応頷いておいた。


「五郎にくるの久しぶりだなぁ〜」


 姉さんがしみじみそう言うと、明里もそれに続いて同調してきた。


「ん? 母さんはよく来るんだよね? 会社の人と?」


 疑問に思ったので素直に聞いてみた。


「そうよ〜。うちの社長とか他の会社の社長とか役員とか同僚とかと……ね」


 どうやら仕事とかでよく来るようだ。

 接待なのかどうかまでは分からないが、寿司を食べに来るなんて羨ましい。


「へぇ〜母さんも頑張ってるんだねっ!」


「会社役員も大変なのよぉ!」


 労いの言葉をかけると母さんはひしっと抱きついてきた。


 背中をすりすりと擦っていると、何やら前方から気が飛んで来ている気がする。


 そちらに振り向くとニッコニコ笑顔の姉さんと明里がこちらを見ていただけだった。


 それからすぐに寿司が運ばれてきたので母さんから体を離し、目の前に並ぶ輝かしい寿司を頂いていく。


「うまっ!」


 思わず言葉が出てきてしまうほど美味しかった。


 やっぱりそこら辺の寿司屋とは鮮度が違う!ネタに体温が移ってないのも素晴らしい。


 パクパクと食べ進めていると、すぐに自分のぶんの寿司がなくなってしまったので紙に追加を書き始める。


「うわぁ〜お兄ちゃん食べるの早いねっ!」


 明里がバチマグロを頬張りながら呟く。


「寿司なんてかれこれ年単位で食べてなかったから美味しくてつい……」


 こっちの一也はそこそこ食べてたかもしれないが、向こうでは一年半は確実に食べた記憶はない。


 その久しぶりの寿司がこの美味さなら食べる手を止めるというのは酷というものだ。


「なにか追加したかったら言ってね。書くからさ」


 自分の分をカリカリと書き上げ、半分くらいを食べ終わった皆がそれぞれ食べたいものを言っていった。


「マグロの赤身ぃ〜!」


「シメサバとアカガイで」


「う〜ん……ネギトロとイクラで」


 注文を見て思ったのだが、姉さんが一番大人な注文をしていた。


 動けなくなる一歩手前まで寿司を腹いっぱいに食べ、幸せそうに温かい緑茶をすする。


「ふぅぅ食べたぁ……」


 明里がお腹をすりすりと擦りながら呟く。


「皆いい食いっぷりだったものね。そうなるのも仕方ないわ」


 グデンと倒れ込む姉妹を見て苦笑いを浮かべる奈美恵だったが、その顔はどこか嬉しそうだった。


「さて、次はどこに行く?」


 お茶で口直しをしながら母さんが聞いてきた。


「はいっ! 服を買いにいきたいっ!」


 姉さんがビシッと手を上げて応えるのだが、寝っ転がった状態からなので腕しか見えていない。


「ここからなら……どこらへんがいいかしらね」


「渋谷いこー! 渋谷ー!」


 姉さんから再度リクエストが飛んできたため、渋谷で決定と相成りました。


 とりあえず会計を済ませ、車に乗り込み出発したのだった。



そういえば…筋トレをしているときにもういいやって気持ち切れることない?


あるんだよねー。


この辺って重複だろ…みたいなぁ!?


そういうときは他人の追い込む動画とか…特にボディビルの動画でも見ながらやるわけですが、そういう一押ししてくれるものを作っておくと色々捗りまっせ。


モチベーションが低下しそうになるやいなや見て、自分のボディと比べるだけでも効果は絶大…。


お試しあれ〜。

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