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目の前が暗くなっていく……。
腹部からは熱した鉄を押し付けられているような感覚を覚え、そこからは赤い血が止まることなく流れ出している。
女性がなにか言ってはいるが、それが俺の耳にしっかりと伝わることはなかった。
女性の声は聞こえず、聞こえてくるのはゆっくりと脈打つ心臓の音。
自然と心は安らかになっていき、腹部からの痛みなど微塵も感じることはなかった。
掠れる視界には元気な女の子が辛うじて見えた。
俺が庇って助けた少女だ……。
未来ある子供を助けられて死ぬのなら悔いはないか……。
あぁ……太陽の暖かさに風の冷たさ、どれもこれもが気持ちいい……。
綺麗な女性に看取られながら逝くのならば、まぁそれも悪くはないか……。
最後に聞こえてきたのは、少女が呼ぶ声だった……。
2017/02/28
現在、文章の手直しをしております。
いつ終わるかわかりませんが、気長にやっていきますを