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鏡色のデスティニー  作者: 真壁真菜
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29/30

手段

 鬼座頭は元より、小さな鱗魚や灸鼻までも戦っていた。太一は何も出来ない自分に、段々と苛立ち始める。撫羅腑となった納言が腕を振る度、小さな妖怪がその体に取り込まれて行った。


「太一さん……」


 身を乗り出す太一の腕を、綾子が強く掴んだ。


「皆が戦ってるのに」


「私達も戦ってるんです」


 確かに綾子は戦っているが、自分は違うと太一は拳を握り締めた。摩姫羅や蒐羅は、動きを止める事無く戦い、珠霊狐や雷花達も息を付く暇もなく戦い続けていた。


「太一殿、あなたも戦ってるのですよ」


 穏やかな式部の言葉が太一を更に追い込む。


「俺は何もしてないし、何も出来ない……」


「それは、俺も同じだよ」


 俯く太一に藪が声を重ねた。


「藪さん……」


「君だけじゃない、普通の人間は何も出来ないよ。だが、君には”核”が見える……なら、出来る事をするだけだ……多くを望んでる場合じゃない」


「摩姫羅達は今、持っている力以上の力を出しています。それは、あなたのおかげなのです……神将が主以外の為に戦うなんて、有り得ないのです」


 藪の言葉に続き、式部が太一を見た。


「そうですね、聞いた事がありませんね」


 綾子も同じ様な事を言うが、太一には理解出来なかった。


「皆、あなたの事が大好きなのですよ」


 太一の胸に、式部の言葉が突き刺さった。


____________________



 太一の目前で摩姫羅が撫羅腑に捕まる。摩姫羅の身体が、少しづつ闇に包まれて行く。


「摩姫羅!! 約束したよなっ!!」


 力の限り叫ぶと、摩姫羅の身体が光に包まれた。だが、矢継ぎ早に蒐羅も捕まる。


「蒐羅!! しっかりしろ!!」


 思わず叫んだ太一の声に蒐羅の身体も光に包まれる。


「反目!! 二人を!!」


 直ぐに反目が反応すると、二人を闇から助け出した。


「太一の声で、力が湧く……」


 口元を綻ばせた摩姫羅が呟き、蒐羅も続けた。


「そうだな、太一の声で力が出る」


「私も不思議な力が溢れています。姉上達の力以外の……」


 反目も漲る力を受けて、拳を握った。


「全く……おかしな奴だ」


 遠く太一の方を見た摩姫羅は、思わず笑みを零した。


____________________



「式部さん……撫羅腑は意志や思考は存在するのですか?」


 暴れ回るだけの様な撫羅腑の姿を見ながら、藪は質問した。


「意志は次第に消えるでしょう……後に残るのは破壊と殺戮の衝動だけです」


「それが、人間の”悪業”ですか?」


 小さな声で答える式部を見詰めた藪が、静かに言った。


「はい……だからこそ、滅さなくてはなりません」


 顔を上げた式部の声には張りがあった。


「滅せますか?」


「それは……太一殿次第なのです」


「太一君が鍵なのは、本当なんですね?」


「招杜羅の勾玉の選ばれ、神将や妖怪、式神に選ばれ……諾子様に選ばれた……太一殿が鍵になります」


 式部の言葉の中で、諾子にも選ばれたと言う事が気になった藪だったが、直ぐ傍で立ち尽くす普通の青年が不思議と神々しく見えた。


_________________________



「でも、限がないな……幾ら核を破壊しても一向に減らない」


 撫羅腑を見詰めながら呟く太一に向かい、式部が静かに聞いた。


「太一殿、核は何色に見えますか?」


「赤ですけど」


 急に聞かれた太一は、呆気に取られた。


「本当の核は、同じ赤でも少し違うのです。よく見て下さい」


「違うんですか?……」


 太一は目を凝らすが、撫羅腑の身体に無数にある核は皆同じに見えた。だが、一瞬赤い塊の中で一際血の様に赤い核が見えた。そして、その核は高速で撫羅腑の中を動いていた。


「移動してます。それも凄く速く」


「それなら、場所を教えても無駄だな」


 目を見開く太一の傍で、藪が気の無い言葉を吐いた。


「ばあちゃん! どうしたらいいんだ?!」


 明らかに動きの鈍って来た摩姫羅達を見て、思わず太一が大声を上げた。


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