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あなたが僕に恋をしてくれたら

挿絵(By みてみん)


―-彼の話。








 救急車に乗ってからの記憶がほとんどない。気を失うほどの傷でも無かったから、ずっと張り詰めていた気が抜けたせいだろうとも思う。ずっと亜子は付き添ってくれていたらしく、後から聞けば家族がやるような手続きは全部亜子がやってくれたという。

 俺は麻酔して縫合手術を受けた後は、意識がないまま病室へ押し込まれ眠っていた。気が付いたのは明け方、麻酔が切れて傷が痛みだしたからだ。


「起きたか」


 楽な体勢は無いかと寝返りを打ったら声をかけられた。


「……亜子は?」

「悪かったな、ここにいるのが俺で」


 瀬下は舌打ちをしてベッドの横の椅子にかけた。そこでやっとここが病室だと気付いた。


「亜子ちゃんは帰ったよ。また朝来るってさ」

「そっか……」


 すぐに亜子に会いたいけれど、仕方がないか。明日来てくれるというだけでかなり嬉しい。


「その傷、聞いたら経過はいいってさ。血を流してうずくまった時はどうしようかと思ったけどな」

「そう。どれくらいで退院できそう?」

「一週間で具合見て抜糸、後は自宅療養で充分だと」


 良かった、それくらいがちょうどいい。あまり長いと退屈しそうだ。


「……お前なあ、部屋に入院用に荷物つくってんじゃねーよ」


 深夜の静かな病室に、無遠慮な瀬下の声が響く。ちらりとまわりを見てみると、どうやらここは一人部屋のようだ。


「なに……取りに行ったの?」

「感謝しろよ。ちなみにここ一人部屋取ったのも俺」


 瀬下は威張るが、それは確かに偉い。


「ん、ありがと」


 瀬下がいなければ、俺はどうしていたというのだろう。面倒でうるさい大人だが、感謝はしてる。


「真田は警察に?」

「ああ、後処理は色々あるが、概ね問題ない。後は俺がやっとく。警察がお前や亜子ちゃんにうるさく言うこともない」


 聞きたいことを聞いておく。瀬下もそれがわかってるようで、淀みなく答えた。仕事の方は無事に終わりそうだ。それならそれでいい。会話は途切れて、部屋はシンと静まる。


「……お前さ、自分で自分の腹を切ったろ」

「………………」


 指摘する瀬下の目は笑っていない。それをちらりと見て、鼻で笑う。


「だったら?」


 咎められる覚えはない。これを含めての計画であったと報告しておけば、全部吹っ飛ぶほど真田を捕らえた成果は大きいはずだ。


「俺はお前にそこまでさせる気はなかった」

「別に、俺の手柄にするつもりはないけど?」

「わかってないな、お前は……手柄とか出世とかじゃなくて!」


 珍しく瀬下が声を荒げた。


「ケガなんかさせたくないだろ」


 シンプルな話だ。そうか、瀬下は俺にケガさせたくなかったのか。


「……なんか、ごめん」


 呆気に取られて、それしか言えなかった。この傷は必要なものだったし、これがあったこそ仕事も無事あるべきところへ着地することになったという確信もあるが、心配してるなんて言われてしまっては謝るしかなかった。


「今後一切こういうことは許さない。反省しろよ」


 そういえば、拗ねたりキレたりはよくあるが、叱られたことなど一度もない。不思議な気がした。




 瀬下は、これから家に帰るよりもここにいた方がいいと、個室で勝手に一泊していった。こちらは傷の痛みで眠りが浅いと言うのに、瀬下はバカみたいにソファーで高いびきをかくから腹が立った。


「あーよく寝た」


 あくびをしながら天パの上に寝癖のついた頭を掻く瀬下を見て、無性に苛立つ。


「ここホテルじゃないから」

「そりゃそーだ」


 皮肉を言っても通じない。ムカつく。顔を洗いに行ってコーヒーを買ってきた瀬下は、当然看護婦に見咎められた。




 朝食も済んだ頃、ノックされた。看護婦か何かだと思い、「どうぞ」と招き入れる。


「おや、おはよう」


 何を言わなくてもドアを開けに行った瀬下が、来客にあいさつをしてる。その感じだと、顔見知りのようだ。


「……おはようございます」


 その声に、ピンと耳が立つ。


「亜子?」


 瀬下が邪魔で見えないけれど、あの声は亜子だ。


「おはよう、目が覚めてるんだね」


 すると、亜子がデカイ図体の瀬下の影からこちらを覗いてる。その仕草が可愛すぎる。


「おお、悪い。入って、亜子ちゃん」


 やっと自分の邪魔さに気付いた瀬下が、亜子へ道を譲った。亜子が病室に入ると、ぐるりと病室を一周見回していた。昨日瀬下が病室を変えたと行っていたから、付き添ってくれていた亜子でもこの個室には初めて入ったのかもしれない。


「亜子、色々ありがとう。気を失ってる間にお世話になったみたいで」


 改めて礼を言う。


「そんな、なにもしてないよ」

「まあまあ。亜子ちゃん座ったら?ほら」


 慌てて首を振っている亜子に、瀬下がベッドサイドのイスを勧めた。それはいいが、昨日顔を会わせただけのはずなのに、瀬下が異様に亜子に馴れ馴れしいのが気に食わない。


「あ、すみません。ありがとうございます」

「……なんか腹立つよね」


 率直に瀬下への不満を口にした。


「顔付きがいやらしい」

「この男前つかまえて何言いやがる」

「亜子にあまり近付かないでよ、猥褻だから」

「お前俺の両親に謝れよ!」


 なんというか、亜子に色目を使ってる気がする。ダンディーで男前気取りでもするつもりかもしれないが、それは阻止しておかなければ。


「全く、失礼だな。色々やったってのに」

「その点では感謝してるよ、でも亜子には近付かないでくれる」


 俺の悪態に恩を振りかざしてくるが、この際関係ない。

 そんなやり取りを見ていた亜子は、会話が途切れた隙に疑問を口にする。


「えーと、あの。二人はどういう……?」


 改めて問われると、答えづらい。それに、この場面で仕事の関係だと説明したくない。なんとなく瀬下を見ると、目が合った。


「俺がお前の恩人、というのが適切な表現か?」

「逆じゃない」


 こいつ、この期に及んでまだ言うか。


「気にしなくていいよ、亜子。その人は顔のうるさい通行人だと思ってもらえれば。強いて言うなら、昔からの知り合い、かな」


 全然説明しない訳にもいかなかったので、この場はなあなあに終わらせることにした。ほとぼりが冷めて瀬下のことを話す機会が出たら、そのときに改めて本当のことを言えばいい。


「さて……亜子ちゃんも来たことだし、残りの後始末に行ってくるかな」


 やっと空気を読んだ瀬下が席を外す気になったらしい。そもそも、仕事は山積しているはずで、油を売ってていいわけがない。


「よろしく」

「おうおう、貸し一つにしてやるよ。じゃあね、亜子ちゃん」


 瀬下は亜子へヘラヘラと手を振って出ていった。


「優しい人?みたいだね」

「あれで一応ね」


 ここで瀬下の悪い印象を吹聴してもよかったが、それにしたって瀬下の話で時間を使うのはもったいなかったので肯定しておいた。病室はいきなり静かになった。


「傷はどう?痛む?」


 沈黙をとぎらせたのは亜子だった。


「今朝、麻酔が切れて目が覚めたよ」

「そうなの?ずっと痛む?」


 亜子に心配されるというのは悪くない。いや、ずっと気分がいい。


「動くとわりとね。でも、傷は浅いって聞いたよ。筋肉までしか傷付いてないから、一週間入院して抜糸したら退院だって」


 今朝がたから瀬下と看護婦に立て続けて受けた通りの説明をすると、亜子は安堵したようだった。


「あの……本当にごめんなさい。私を庇ってこんな傷を……」


 そう、亜子からすれば、俺が亜子を庇って真田に刺されたように見えただろう。まさか俺が自分で凶器を取り出して自分で腹を切ったとは思わないはずだ。


「どうして謝るの?俺は良かったよ、間に合って。亜子がケガしてたら、それがもし大きな傷だったら……そう考えた方がずっと怖い」


 素知らぬ顔で亜子の頭を撫でた。


「でも、私少しでもお礼がしたくて……迷惑でなければ、身の回りのことをするけれど」

「えっ本当?」


 それは思ってもみない申し出だった。頻繁にお見舞いに来てくれるんじゃないかという希望はあったけど、まさか亜子が俺のお世話をしてくれるとは。


「なんだ、じゃあ逆にラッキーだな。刺されてラッキー」

「そんなわけないよ」


 俺のリアクションに、亜子は苦笑していた。


「今日ね、お母さんがお見舞いに来るって。仕事半休もらうって言ってたから、夕方前にはここに来ると思うけど」

「佑利子さんが?なんか悪いなあ」

「お母さんが来るとちょっと騒がしいかもしれないけど」


 わざわざ半休を取らせてしまったなら悪いことをした。俺も抜けるし、サニーマートのシフトはカツカツになるだろう。


「あの、そう言えば悠人君のご家族は?」

「?家族?」


 唐突な質問だと思った。気は早いかもしれないが、亜子を他とするなら佑利子さんは既に義理の母のつもりでいるけど、そんな話をしているわけでもなさそうだ。


「お母さんとか、息子が急に入院してたらびっくりするでしょう。私もお詫びとお礼をしなきゃ」

「あ、ああ。家族」


 そういうことか。家族、血の繋がった親とか、そういうことか。


「いいよ、気にしなくて。というか、俺も連絡先知らないし、連絡の取りようがないから」


 まだきっとあのマンションで暮らしているんだろうな、ぐらいしかわからない。家を出てから顔も見ていない。


「連絡先を知らない、のか……」


 亜子には不思議そうだけど、俺はもう出た家のことなんてどうでもよかった。


「じゃあ、また今度にも、お詫びにうかがわせて」

「……何もそんなに亜子が気を使うことないのに。刺したのは別のヤツなんだから」

「それはそうかもしれないけど」


 挨拶とか詫びとか、俺の知らない作法の話だ。そんなことより、あの汚い女を亜子に会わせるわけにはいかない。


「それより、亜子は毎日来てくれるの?」

「うん。一週間はバイト休ませてもらったから。出来ることがあれば手伝うよ」


 話を逸らして聞いてみると、思った以上に色好い返事だった。あの亜子がバイトを休むなんて、あまり無い話だ。嬉しい。


「私、入院とかしたことなくて気が付かないかもしれないけど、困ったことあったら言ってね。着替えとか洗濯とか、あとは……ちょっと思い付かないけど……本当、何でもするから」

「……………………」


 亜子は可愛すぎる。何でもする、なんて迂闊に言わない方がいいのに。じゃあ性欲処理を頼んだりしたらどういう反応を見せるんだろう。本当にやってくれたりして。


「……あの、悠人君?」

「あ、ああ、ごめん。ちょっといけないお手伝いを想像した」

「えー!?」


 亜子はここで怒り出したりしないから心が広いと思う。


「いや、でも、それは置いといたとしても……お願いするよ。困ったら亜子に甘えることにする」

「うん」


 いやらしいことは抜きにしても、手伝ってくれるというのは助かるし嬉しい。だって、まるで夫婦みたいじゃないか。


「じゃあ、何しようか。着替えとかはある?アパートに取りに行こうか」

「ううん。それは瀬下が持ってきたから」

「誰か、連絡取らなきゃいけない人はいるかな。サニーマートの方はお母さんにお願いしてるけど、もう一つのバイトの方には報告しなくていい?」

「ううん。瀬下がそっちのバイト先の人間だから。任せておけばいいよ」

「えーと、そうだな。そう言えば、昨日のことは事件になるだろうし、書類上のこととかあったら手伝うよ。保険とか、慰謝料とか、必要があれば調べるし」

「いいよ。そういう面倒なことは全部瀬下に任せるから。亜子も警察からの聴取は無いから、安心してて」


 亜子は本当に色々考えてくれてるみたいだけど、どれも瀬下が先回りしてた。


「じゃ、じゃあ、食べたいものがあったりしたら言ってくれればコンビニに走って行くよ」

「何も走らなくても。でも、ありがとう。亜子の気持ちがうれしい」


 亜子は何かをしようという気概に満ちていたけれど、それだけで胸がいっぱいになる。なにもやることがなくて落ち着かなくなった亜子に、亜子にだけしかできないことをお願いすることにした。


「……ねえ、一つ、お願いがあるのだけど」

「え?なにかな」


 右手を差し出す。


「手、繋いでて」

「いいけど……暑くない?」


 亜子はきょとんとしてる。さっきまでなんでもやるばかりにしてたのに、これはダメなのか?


「だったら冷房下げる」


 意地になる。もう絶対に亜子の手を握ってやる。


「そこまでしなくても……」


 苦笑しながら、亜子は俺の手を取った。暖かくて安心する。なにより、あの亜子が俺の手を握ってる。それが嬉しくて、ドキドキして、幸せだ。


「しばらく眠ったら?必要な時は起こすよ」


 そんな優しい声で優しい笑顔で優しいことを言われたら、顔が赤くなる。


「亜子がいるのに、寝るなんてもったいない」

「あはは」


 亜子が笑った。


「私は逃げないから、横になってて」


 まさかこれは夢で俺は死ぬんじゃないだろうか。好きな人がそこにいる。ダメだ、これ以上亜子に甘やかされると照れてしまう。


「うーん……」


 顔が赤いのを誤魔化すように、布団の中に潜り込む。だって今さらこんな顔しても、かっこわるいじゃないか。


「……………………」


 ちらり、と亜子を見る。亜子はこちらを見ていない。それがちょっと残念でもあるけれど、でも、目が合わないならずっと見つめていられる。


「…………」

「…………………………」


 亜子は、可愛い。いや、もう美人と形容した方が良いのだろうか。好きな人が優しくて、俺のそばで俺の手を握ってくれてる。今日がずっと続けばいいのに。


「…………寝ないの?」


 ちらりとこちらを見た亜子が、視線を逸らして尋ねる。もったいない気がするけれど、朝方から眠れてなくてそろそろ眠いのも事実だ。


「うーん………………うん」


 まどろんできたけれど、まだ寝たくない。しばらく葛藤したけれど、結局まぶたが重くて目を閉じた。ただ目を閉じるだけ、と思っていたのに、意識が遠くなっていく。


「おやすみなさい」


 そう聞こえた気がして、少しだけ手に力をこめた。




 目を開けた。歌が聞こえる。ベッドの脇に座っている亜子が、本を読みながら囁くような小さな声でメロディを唄う。その横顔がきれいで、ずっと見ていたかった。無防備で、飾らない、ありのままの亜子のような気がしたから。起き出すのがもったいなくて、しばらくこっそり見ていたけれど、亜子が気付く様子はなかった。

 やっぱり、俺は亜子が好きだ。亜子のそばにいたいし、亜子にそばにいてほしい。何度拒絶されても、何度嫌われても、俺には亜子しかいない。亜子しか、きれいなものを知らない。許されなくて間違ってる恋だとしても……手を伸ばさずにはいられない。だって、俺は生きているから。


「亜子って、歌いながら本読むんだね」


 声をかけてみると、亜子はビクッと顔を上げた。


「!お、おはよう……」


 ちょっと照れている様子だ。歌を聞かれたのが恥ずかしかったのかもしれない。


「今はお昼過ぎてて、時間は……」

「亜子、答えを下さい」


 遮って、俺は亜子へ問う。


「俺が要るか、要らないか」


 病室は、ひどく静かだった。


「………………」


 何を尋ねられたのかわかった亜子の表情は曇った。


「……色々あった後だし、先に延ばさない?」

「俺はそのつもりはないよ」


 亜子の手を取った。そのまま引き寄せて、ベッドに押し倒した。無理に力を入れたりすると、傷に響く。切った時と似た痛みが走った。


「ゆ、悠人くん!?」


 痛くて普通の顔をしてられない。亜子の上でしばらく痛みをやり過ごす。


「……今、答えをちょうだい。そうでないともう待てないんだ。もう、これ以上報われないとも知れないまま君を好きで居続けるのはつらい」


 息がかかるくらい近くで亜子へ囁いた。亜子は、どうしたらいいのかわからないようで、動かない。


「……断ってくれていいんだよ?俺は何をしたって亜子が欲しいし、正直亜子がそばにいてくれるならそれが愛とかじゃなくて、同情や罪悪感とかでも構わないんだ。でも、亜子はそれでいいの?」


 傷が痛んで、急に汗が出てきた。息も切れる。それも気にせず、俺は亜子の体に手を這わせて、首筋にキスをする。亜子は反射的に身を縮めた。


「……!悠人君、傷、開くよ……」

「いいよ、開いたって」


 頬へ手を添えて、見詰める。もう、目を逸らされないように、視線を視線で縫い止める。


「亜子が俺を要らないなら、俺も俺が要らない」

「なに、言って……」


 亜子の目が、ぐらぐらしてる。


「死ねばいいんだよ。亜子、君に選ばれない俺なんて、死ねばいい。死んだ方が簡単だよ、亜子がいないままなんて生きていけない。それに、死ねばもう亜子に迷惑もかけない。そうだろ?」


 まっくろな瞳はみるみる曇った。そして、亜子の目尻から、一筋こぼれる。びっくりした。泣かれてしまうとは、思っても見なかった。


「……なんで、君が泣くの?」


 俺の問いに、亜子はふるふると首を横に振った。


「もうつきまとわない、って、そういう意味だったの……?」

「そうだよ、あの時から、ダメだったら死ぬつもりだった」


 亜子のおでこにキスをした。


「でもね、俺は狡いんだ。俺が死ねば、亜子はきっと一生俺を忘れられなくなる。それでもいいか、なんて思う」


 泣いていた亜子が、俺を見て固まった。そう、俺は二択を迫っている。俺を受け入れるか、俺を見殺しにするか。


「ねえ、亜子。俺は幸福だ、俺は不幸だ。こうなってしまったのは亜子のせいだし、こうなることができたのは亜子のおかげだ。

なるべくしてなったと思う。君のことが愛しくて、俺は生きてきたんだ。

 ねえ、亜子。俺は狂ってる。みじめで愚かだ。美しいものを何一つ持たない俺でも、亜子のためなら何にでもなれる。何でも与えてあげる。望むもの全て差し出すよ。何に変えてでも、何に引き換えても。

 ねえ、亜子。だから、どうか、俺を――」


 愛してくれないか。


「……悠人君は、悲しいことを言うね」


 亜子の手が、俺の頬に伸びた。何かと思ったら、俺も涙を流していたようだ。


「亜子……愛してる」


 鼻先が触れ合う。


「受け入れてくれるなら、キス、しよう」


 目を閉じて、俺はくちびるを寄せた。

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