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└ゆう…じょう?



――…一火の悪魔宣言の後、二人は洋館内の魔法陣を使い再び天界へと帰ってきた。

町中を天使や妖精達が行き交う中、二人が最初にいた宮殿を目の前に緒印は恐る恐る切り出してくる。


「あのー。…一火さん、さっきのアレは本気なのデスカ?」

「当たり前だっ」

「……やめておいた方がいいと思いマス」


まだ興奮冷めやらぬといった様子で鼻を鳴らす一火に、緒印はか細い声で忠告を投げかけた。


「魔界はここと違って恐ろしいところデス。ワタクシは悪魔に捕まって火炙りにされかけた事がありマスデス!」


ぶるぶると震えだした緒印は、よっぽどその時の事がトラウマなのか自分の身体を掻き抱いた。


「いきなり羽根を鷲掴みにされたと思ったら、あろうことかその悪魔は『妖精の羽根って焼いたらどんな味するんだろー? おいしーのかなー?』などとぬかしやがったのデスヨーッ!


アアァアアア、悪魔は怖イッ、恐ろし過ぎるのデスゥウウウッ!!」


…一火としては、ヒステリックな声を上げる緒印の顔の方がよっぽど恐ろしかった。背筋が寒くなる勢いだ。


「それにデスヨ一火さん、浪様はあんな事軽くおっしゃってマシタケド、実際悪魔になれるかどうかなんて解らないんデスヨ!?

それこそ魔界を統べる魔王様に会わなければならないかもしれないのデスヨォッ!!」


「…と、とりあえず落ち着けよ」


「これが落ち着いていられマスカァアアッ!?」


「いや、オレに聞かれても…」


ますますヒートアップする緒印だったが、とにかく一火は自分の考えを伝えようと言葉を連ねた。


「…魔王とやらに会わなきゃいけないんだったら、オレは何とかして会おうとすると思う」


「そっ、そんなァ…」


「お前やあの天使長が言う通り、今のオレの見た目は破滅的で犯罪的な容姿だよ。だけどそれは今のオレが天使の姿なのにも原因の一端があるっ!

だからオレは悪魔になって、変わりたいんだ!」


「一火さん…っ!」


悲しげに声を上げる緒印に、一火は膝を折って、視線を合わせる。

そうして彼女の肩に手を置き、力強く言った。



「大丈夫だ。オレは悪魔になっても、お前の事を火炙りになんてしない。今まで通りに接する。


――…約束だ」


…何やらカッコつけてはいるが、要はこのままでは自分が気持ち悪いから悪魔になりたいという事だ。

しかも、そうして容姿を改善して女性にモテたいという願望に僅かに抱いている時点でカッコ良さのカケラも無い。が、ここにはそんなツッコミを入れてくれる人などおらず。

町の人々は奇異の目(もしくは微笑ましいものを見る目)を向けているだけだし、緒印に至ってはこの空気に呑まれているのか感動の涙を流す始末だった。


「うぅ…ひック、…約束デスヨ、一火さん…!!」


「ああ…約束だ…!!」


町のド真ん中でひしっと抱き合う二人。

今ここに、妖精と悪魔志望の天使との間に友情が生まれたのであった――…。




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