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└悪魔宣言


「浪様。ほら、昨日の夜十一時頃にここへいらっしゃった元人間の方デスヨ。名前は一火さんデス」


「さあ、覚えてないっすねー。こうやって閻魔様の元へ導いている人間は一人二人じゃありませんし。

いちいち名前なんて覚えてられないっすよ」


黙考する事なく即答してみせる。その間も、顔は書類を向いたまま。時折視線を外しても、その目は人魂の方を向いている。


「貴方のような案内役の妖精に渡す資料と、此処で保存する用の書類を作成したら、書いた人間一個人の名前なんて記憶から抹消してます。そうしなきゃやってられないっす」


「う…」


浪の言う事は正論なのだろう。実際、毎日やってくる人間…自分と関わり合いになる可能性も低い人間の名前など覚えても意味はない。得にも損にもならないだろうから。


でもまぁ、一火からしてみれば向こうが自分の事を知っていようがいまいが関係はない。

とにかく、ここに来た理由を話す事にした。



「…ってわけで、オレはどうして自分が天使になっちまったのか知りたい」


「知ってどうするつもりですか?」


「…出来れば別の種族になりたい。この翼の似合わなさは無視出来ねぇ…」


その言葉に何を思ったのか、浪は一瞬だけ一火に視線を向けて。



「…確かに」

そう言って、再び作業を再開する。


「っておい! いくら話しかけてもこっちをちらりとも見なかったクセに、何で今だけ見んだっ!」


「……」


「…って耳ほじってんじゃねぇよ!」


「失礼。小鳥の囀りが少し五月蠅く感じたもので」


「ぐぐ…っ、こいつ…!!」


「あわわわわっ! い、一火さん! 落ち着いてクダサイ! 抑えて抑えてっ」


肩を震わせる一火を宥めようと、緒印が腕を掴む。


「止めるな! 一発殴らせろっ!」

「駄目デスヨ! 相手は天使長様ナンデスカラ〜っ!」


今にも掴み掛からん勢いの一火を緒印は何とか渾身の力を振り絞って抑えている。


「んなもん知るか! オレはむしろこいつ殴って堕天使にでもなってやりてぇ気分だ!

その方が不良っぽい見た目にも合ってんだろっ!!」


「自暴自棄になるのはイケマセンンンーっ!」


「さっきあれだけオレを貶した奴に言われたくねぇえええ!!」


言い争う二人の脇で、変わらず手を動かし続ける浪。

そうして二人が叫び疲れた頃、ふと口を開いた。



「だったら、悪魔にでもなったらどうすか」



――それは、天啓のようだった。


そう思えるくらい、浪の言葉は一火の頭に雷を落とした。


「なっ、な…! 浪様ってば何ヲッ」


「彼にとっては、天使より悪魔の翼の方がいいかもしれないと思っただけですよ」


「そんな…それだけで天使長とされるアナタ様ガ…!」


あまりの衝撃に驚きを隠せない緒印。対して浪は何も考えていないような声色で続けた。


「悪魔になった方が今の犯罪的容姿より遥かにマシですよ、多分」


「てめぇ…言ってくれるじゃねぇか…!!」


「はわわわわわ…っ!」


挑発的な物言いに、一火は浪を強く睨みつけ…――そして、宣言した。



「オレはぜっっったいに! 悪魔になってみせるからな!!」




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