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└ものぐさ天使長



そんなこんなで、二人は洋館に入る事にした。

ただ表玄関は先程見た通り人魂が占領している為、緒印が普段使用しているという裏口から入る事となった。


「こっちデスヨ、一火さん」


裏口は表とは違い、しっかりと扉があった。

施錠はしていないようだが、まぁ防犯など考えるような場所ではないだろう(そんな事考え出したら、そもそもの話まず表玄関を何とかしろといいう話にもなる)。

気にせず、一火は先導する緒印の後を追った。


洋館内は外観での雰囲気通り、中も埃っぽく灯りは各所に設置された蝋燭のみ。勿論それだけで通路全体が照らせているわけがなく、蝋燭の火が届かない場所は何も見えなくなる程の闇だった。

緒印は魔法か何か使ったのだろうか、自ら陽光のような光を纏い、一火が見失わないようにしてくれている。


「ここはデスネ。表玄関から大広間、その先の閻魔様の間までしかまともに使われていないのデス」


歩いている間、緒印はこの洋館について説明してくれる。成程それなら部屋どころか通路すらも埃を被っている筈だ。

あちこち曲がりくねった廊下を歩き、やがてひとつの扉の前に行き着く。

扉の隙間から光が漏れ出している。この先が天使長のいる大広間だと緒印は教えてくれた。


「じゃあ、開けマスヨー。…浪様が話を聞いてくれマスヨーニ」


祈るように呟きながら、緒印は大きな扉を押し開けた。

…徐々に視界に入って来る光に、一火は暗闇に慣れた目を反射的に瞑った。

そうして何度も瞬かせながら、光に目を慣らす。


大広間内は、『豪奢』と呼ぶに相応しい内装だった。

部屋中に敷かれたワインレッドのカーペットに、クリスタルのシャンデリア。

壁際に追いやられている、見たことのない鳥を象った金の像も存在感があり、この一室に素晴らしい彩りを加えている。

恐らく閻魔の間に続いているだろう、人魂が列をなして入っていく扉にも宝石が散りばめられており、そういったものに疎い一火でも高級なものだろうと解るくらいだった。


「一火さん、あそこにいらっしゃる方が天使長様デス」


緒印の視線を辿ると、人魂の列を眺めながら手元の書類に何事かを書き留めている一人の天使の姿が目に入った。

背恰好は細身の成人男性といったところだが、緒印から聞いた話によると天使長は創世時代から生きる天使なので、年齢はかなりいっている…らしい。

背丈程もある大きな翼を生やしている。


「うう…それじゃあ、行きマショウカ」

一火は頷き、ふたりで天使長に歩み寄った。



「…あの、浪様」

「………」


返事はない。気付いていないのだろうか?

彼は眉ひとつ動かす事なく、書類に視線を落としている。


「……スミマセン、浪様とお話がしたいという方が」

「……」

「ろ、浪様……っ」


恐々と話しかける緒印の声は回を追う毎に力を失い、相手が全く反応してくれないのもあって、聞いているこっちが哀れに思えてくる程だった。


一火は自分が声をかける事に決めた。そもそも彼に用があるのは自分なのだから、それが道理だろう。


「あんた、天使長様だったっけか」


「……、」


一火の声に、天使長は絶え間なく動かしていた手を一瞬だけ止める。

そうして次の瞬間には何事も無かったかのように再開した。

変わった事はひとつ。ようやく天使長はその口を開いたのだ。



「…誰すか。仕事中なので邪魔しないで欲しいんすけど」


声も背丈の印象通り、若い(と言っても一火よりは年上のものだが)青年のものだ。

横顔から見るに鼻は高く、整った顔立ちもしているが、一火はその軽い口調にいささか驚いた。

声色も気怠げで、これで天使長という高い身分とはとても思えない。




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