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└お仲間



――目を覚ました一火は、まず自分の身体に違和感を覚えた。何か…強い圧迫感のような。



「あっ、カレン。彼、目を覚ましたようだよ」


すぐ近くで聴こえたのは、先程酷いタイミングで乱入してきた少年のもの。

ぼんやりとした頭でそれを思い出しながら、一火は目を擦ろうと手を動か。


「!?」


手が動かない。その驚きで一気に頭が冴えた。


「ごめんね。ボクらも止めたんだけど、カレンはここまでしないと気が済まないみたいで」

「はぁ…」


小さな声でそう告げてくる少年は、心底申し訳無さそうに言った。

しかし一火としては何とか止めて欲しかったものである。


…拘束、といえば軽い。縄で身体中をぐるぐる巻きにされ、一火は椅子に縛りつけられていた。

これはあの少女が自らやったのであろう。かなり乱暴に巻かれて、僅かな身動ぎどころか呼吸するだけで身体中に痛みが走る。


「起きましたかこの変態天使! 清らかな乙女の身体に毒を塗るとは…恥を知りなさいっ!」


「いや、それについては悪かったと思ってるよ…って、へ、変態天使だとっ!?」


部屋の奥から闊歩してきた少女は、少年と先程見た女の子を両隣に据えて一火の真正面に立つ。


びしっと指差された一火は彼女の言葉に聞き捨てならないと立ち上が…ろうとしたが、太ももまで椅子に縛りつけられている為それは叶わず。

がたがたと椅子を揺らして音を鳴らす事しか出来なかった。


「変態は訂正しろ変態はっ! あれはどう考えても事故だろうが!!」


「人の胸を触るどころか潰しておいて何言い逃れしようとしているんですか! 私あれかなり痛かったんですよっ!」


「そ、それはオレが悪かったって…ん?」


ふと、一火は目の前の少女をじっと見つめる。

あの時は一瞬で気付かなかったが、彼女の背には蝙蝠のような小さな黒い翼が生えていた。それどころか、悪魔を思わせる尻尾まで。


「何ですか今度は視●ですか。つくづく救いようのない変態天使ですね」

「ちげぇよっ!」


蔑むように見下してくる少女に心外だと声を上げつつ、一火は他の二人にも目を向ける。

黒衣を纏っている少年には翼は無いが、緒印から聞いた吸血鬼かもしれない。女の子の方には真正面の少女と同じ黒々とした翼に尻尾が。


――それらの情報から導き出される結論は、ただひとつ。


「……もしかして、ここは魔界か?」


「…? 今更何を言っているんですか? あなたは界泉を通ってここに…私の上に落ちてきたんでしょう」


少女は訝しげに答える。一火の唐突な問いに戸惑っている様子だ。


「カレン。ここは彼の話を聞いてみようよ」


少年が助け舟を出した事で、一火はようやく自分の潔白(?)とここに来た目的を話す事が出来たのだった。




「…悪魔になりたくて、それで、この魔界にっ…」


――これまでの経緯、魔界にやってきた理由を話し終えると、あからさまに少女は狼狽し始めた。

そんな少女に、橙色の髪を持った女児はにこにこと嬉しそうに言う。


「良かったねカレンちゃん、お仲間さんだよ」


「へ?」


「私は違います! こんな変態視●天使と一緒にしないで下さいっ!」


「もう、ダメだよカレン。落ち着いて、ね。話が進まなくなるから」


「うぅ…っ」


まだ言い足りないのか、少女は口を尖らせる。しかし嫌々ながらも少年に従った。


「で。『お仲間』ってどういう事だよ」


「それはねぇ、カレンちゃんも天使になりたがってる悪魔だからだよ」


「天使になりたがってる、悪魔?」


少女の方に目をやれば、少女は鋭い目で一火を睨みつけてくる。


「悪いですかっ!?」


「誰もそんな事言ってないから、ね。静かにだよ、カレン」


「…」


不満げな少女を尻目に、橙髪の女児は楽しげに説明を再開した。


「そもそもカレンちゃんが界泉の真下にいたのもー、イチビおにーちゃんとおんなじ理由で天界に行こうとしてたからなんだよぉ」


女児の説明に、一火は先程とは逆に少女を睨みつけた。


「だったらやっぱり事故だったじゃねぇか! お前の方こそそれが解ってたクセに、オレだけ責めやがってっ」


「…とにかくですね」


「おいっ、話逸らすな!」


少女は一火を無視して、胸を張る。



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