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『やまと』 ~戦乙女との現代戦争奮戦記~  作者: Sky Aviation
第6章 ~『好朋友作戦』発動! 台湾の反撃を援護せよ!~
86/168

〔F:Mission 18〕『第3次台湾海峡海戦』 敵のミサイルは通常にあらず 2/3

―TST:PM13:45 台湾海峡 同海域 日台連合艦隊日本艦隊DCGやまと艦橋―







「……こっちに1発!?」


 航海長は思わずそう叫んだ。


 敵ミサイルの目標。


 そのうち1発が、こっちに向かってきていた。


 突出してる1発。


 その目標は、なんでもない俺たちだった。


「こっちにか!? あれを撃ち落せと!?」


 副長が思わず汗をだらだらとかきながら言った。


 ……あのM3,6を落とせってか。無茶なことを言う。

 そりゃやまとの防空能力がぴか一なのはわかるが、ここまでの速度を想定しませんが?

 今までのくれんでもせいぜいM3ジャストまででしたけど? 無理くせくね?


「クソッ! CIC、とにかく迎撃しろ! 弾着まで後何分だ!?」


『後5分です!』


「よし、火器管制はそちらに任せる。とにかく迎撃しろ」


『了解。SM-6は間に合いませんので、とにかくESSMで……、ッ!』


 だが……、







 すぐに、新たな展開を見せる。







『あ、新たな目標探知! USM! 先ほどより北方側から発射された模様!』


「なにッ!?」


 敵ミサイルの新たな反応だった。

 それも、最初の発射地点より俺たち側に近い。


 ……あのさ、いったい何を考えてんだ? 何を狙ってやがる?


 艦橋にもその情報がモニターされた。

 南から迫るM3,6のミサイル3発。うち1発は大きく突出。


 ……そして、そのさらに前のほうにはまた新たに出た1発の敵ミサイル。

 こちらも早い。おそらく同型か。


「最初の発射点に気をとられているうちにほかのを放ったな……? 目標はどこだ?」


「えっと……、ッ! ゆきかぜです! こちらはゆきかぜに向かっています!」


 ゆきかぜ。

 もがみ型の3番艦だ。

 だが、こちらは対潜に力を入れていただけあって、防空能力はいくらか削がれている。

 どこまでやれるか、どこまで耐えれるかわからなかった。


「弾着まで後どれくらいだ?」


「後、1分半かと」


「みじかッ!?」


 しかも、弾着までたったの1分半。

 こっちが最初のに気をとられているうちに本命を放った的な感じだろうが、それめっちゃ近いやん。

 それも、最初と同じくM3,6の化け物。


 ゆきかぜが対空砲火をぶっ放し始めた。


 だが、こっちもこっちでほかの例にもれずぜんぜんあたらない。


 時間だけが過ぎた。その間にも、こっちからESSMが放たれて敵ミサイルに向かっていったが、その前にこっちのゆきかぜのほうでの決着が先になりそうだった。


「敵ミサイル目視!」


 見張り員が叫んだ。

 残り1発。ゆきかぜを狙っていたものだった。

 ちなみにこのゆきかぜも、最前列に並んでいた艦の1隻だった。


 相変わらず迎撃ができないでいた。


 必死に対空砲火をぶっ放すのがよく見えた。


「ゆきかぜ弾着まで後どれくらいだ!?」


「後10秒きります!」


「ダメだ! 今すぐに落とさないとあたるぞ!?」


 副長がそう叫んだ。


 そして、その懸念は俺たち乗員だけにとどまらなかった。



“ゆ、ゆきかぜ速く落として! 私みたいになりたくなかったら!”


“無茶言わないでよ! ここまできて落とせなくていまさらどう落とせと!?”



 艦自身も限界を感じていた。

 もう10秒きった。

 そこからは速射砲のほかにもCIWSまでもが火を噴き始めるが、それでも、ぜんぜんあたらなかった。


 速度にあわせ切れてない。どうやっても弾があたらなかった。

 しかも、今波は荒れている。その大波に船体があおられ、それで船体が上下左右に揺られる中でのこの対空砲火の弾幕展開だ。

 敵ミサイルに合わせないといけないし、そしてそれ以外にも海の波にもあわせないといけない。


 ……無茶もいいところだった。


「今こそお前の幸運を見せろ! お前前世でいろいろやらかしたろ!」


 思わずゆきかぜの前世こと駆逐艦雪風のことを知っている乗員が叫んだ。

 雪風も昔は弾が当たっても不発だったりなんだりと、結構な幸運は見せたが……、


「無茶言うな! いくらゆきかぜでもこれは無理だ!」


 俺はすぐに否定した。

 あの時とは違う。狙われたらまず落とさない限り回避できないこの状況で幸運が働くわけない。


「ダメです! 弾着5秒きりました!」


「まずい、あたるぞ!」


 敵ミサイルが目の前に迫っていた。

 見事なまでのシースキミング。海面を這うとはまさにこれのことをいう。

 しかも、速度もとんでもなく速い。


 もう、迎撃は不可能に近かった。


“ゆきかぜ!”


“くっ……”


 もうだめかと思った。

 いくらゆきかぜでも、これは無理かと思った。



 ……だが、









 ゆきかぜの幸運は、まだ現代でも健在であることを思い知ることになる。









「……ッ!? え!?」


 いきなり爆発が起こった。


 いや、正確には爆発というか“水柱がたった”っていえばいいのだろうか。


 ゆきかぜの目の前で水柱が立った。

 被弾の様子は見えなかった。火柱も黒煙も立っていない。

 そのときの爆発音はこっちまで響き、そして若干ではあるが、その振動がこっちに届き艦橋の窓が少しガタガタと震えた。

 回避のために少し取り舵をしていたゆきかぜの船体も、少し左に傾いた後、すぐにまた復元した。

 見たところ、それといった被害は見えなかった。


 ……どういうことだ? 今のは何があったんだ?

 ゆきかぜにあたってないから、じゃあ自爆か?


 でも、当たり前だがそんな弾着寸前で自爆する必要はないし、いったいなぜ……?


「……いったい何があった?」


「さあ……、誤作動でも起こしたんでしょうか?」


「それならそれでいいが……」


 と、艦長と副長がそんな会話をしていたときだった。


『……こちら駆逐艦ゆきかぜ、旗艦いずもへ』


 向こうからの無線だった。

 無線が生きてるってことは、それほど大きい被害は出ていないことは確実だけど……。


『いずもよりゆきかぜ、状況を報告せよ』


『こちらゆきかぜ、状況報告。……えー』










『敵ミサイルが波かぶって自爆した。こちらに被害はなし』










「『……は?」』


 この場にいた全員がポカンッとした顔をした。


 ……波かぶった? どういうことだ?


『……もう少し詳しく頼む』


『敵ミサイルがシースキミング中、大きくたった波の壁にぶち当たってバランスを崩して海面にぶつかった。その後に自爆したため被弾を回避。以上』


『……』


「……」


 …………。











「『ははああああああああ!!!???」』









 思わず無線の人も叫んだ。

 そして、俺たち艦橋にいたやつ全員も叫んだ。

 同時に大いにざわつき始める。というか、一部はよくわからん事態にパニックである。


 ……波かぶってバランス崩した?

 つまりあれか? 手順を追うと……、



 1.敵ミサイルシースキミング。弾着5秒前

 2.大きな波が敵ミサイルの目の前に。回避できるわけもなくそれにぶち当たる。

 3.時にはコンクリート並みの硬さを発揮する波の壁にぶち当たったおかげでバランス制御崩壊。

 4.運悪くバランス崩した結果目の前に海面

 5.激突

 6.自爆



 ……はははははは。


「……アホかいな」


 幸運どころの話で済ませていけないと思う。

 もう何かしら取り付いてるレベル。

 確かに敵ミサイル側が速度速すぎたし、少しの水の壁なら結構な硬さに感じることもあろうが、でもこんなあからさまなタイミングで波が……?

 今波が大きくて高い波もどころどころで出てたとはいえ、これはなぁ……。


 “ゆ、ゆきかぜ!? 大丈夫!?”


 やまとも思わず叫んだ。

 返答自体はすぐに来た。やっぱり被害自体は少ないようだ。


“だ、だいじょーぶでーす……”


“そう……、よかった……”


“ゆきかぜ……、あんた昔から幸運すぎよね……”


“はは……”


 周りもこんな感じである。

 昔からゆきかぜの幸運は艦の間でも知られていたか。まあ、そりゃそうか。


 一応、こっちは被害がなくて安堵ものだが……、


「……で、問題はこっちか」


 艦長はそういった。


 そう。まだ問題は残ってる。


 こっちに向かってる残り3発の化け物対艦ミサイル。

 うち1発は突出してる上にこっちに突っ込んできていた。

 ……さっきみたく波が出ない限り、こっちに確実にぶち当たるわ。

 いくらやまとの対空砲火をもってしても、これを撃破できるほどのものなのか……?


 だが、とにかく今は回避するしかない。CICからESSMないし速射砲がぶっ放されているが、これも鳴り止まないということは全然あたらないんだろう。


 ……まずい、これじゃ手詰まりだぞ。


「弾着まで後1分弱しかない……。ESSMもあたらないし、後は速射砲とCIWSだけ……」


「あたりますかね……。ここまでやって全然あたらないんじゃ……」


 ここまでやってあたらないのに今さらあたるとは思えない。

 しかも超低空飛行だ。いくらやまとのFCSレーダーでも、あんな低空捕らえるのには結構な負担がいる。

 そんでもって今は波が高いからそれにまぎれてそう簡単には捉えられない。


 ……アカン、詰んだ。

 手詰まりだ、ていうか、もう過去形で詰んだ。


 ……すると、


『……艦橋CIC、聞こえるか?』


「?」


 CICからだった。

 砲雷長の声。おそらく、回避機動指示だろう。


 で、どこに行ってもらいたいんで? でもこれ回避してもどこまで効果があるか……。




 ……だが、


『……艦を、』





 俺は、その後の言葉に耳を疑った。


 なぜって、その指示内容が……、








『……取り舵10度にとった後、艦を緊急停止させてくれ』











 まさかの、艦を止めろという…………

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