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『やまと』 ~戦乙女との現代戦争奮戦記~  作者: Sky Aviation
第6章 ~『好朋友作戦』発動! 台湾の反撃を援護せよ!~
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〔F:Mission 18〕『第3次台湾海峡海戦』 敵のミサイルは通常にあらず 1/3

―TST:PM13:35 台湾海峡 彰化しょうか鹿港鎮ろっこうちん北東25海里地点

 日台連合艦隊日本艦隊DCGやまとCIC―








「……どうやら、何とか地上部隊が進軍を再開したみたいだな」


 砲雷長がCICに表示されている戦況マップを見てそうつぶやいた。


 表示されているのは台湾西部沿岸の街『彰化県』。

 そこの上辺り、大体鳥渓うーけいあたりが青く表示されている。これは味方の支配エリア。

 そこから下は赤く表示された敵支配エリアだが、そこに向けてほんの少しずつ青いエリアの味方がなんかを始めていた。

 敵の自軍の損害を伴わない攻撃で橋をぶっ壊されたらしくて、沿岸にいた部隊は少し移動して、川底が浅く幅が狭い船仔頭あたりより東のところから橋を使わず直接川を渡って南方に移った。


 まさかこんな形で足止めを喰らうとは思わなかったが、まあまた進軍が開始されたようで何よりだ。


 とにかく、今は時間をあまりかけずにとにかく進軍しまくってもらいたい。


 援護体制はこっちでも出来てるし、地上援護部隊は今ごろトマホークぶっ放しまくったり速射砲ぶっ放しまくってるころだろう。


 ……で、一方の俺達はこのまま周辺警戒です。

 昨日の朝っぱらの攻撃以降、小規模の航空部隊が来たりしたけど、あんまり積極的な攻撃はしないで、少しミサイルはなったら後はさっさと逃げていきました。

 しかも、そのミサイルもほとんどがより南にいる俺達日本側を無視して台湾側に向かって、そっちも軽々と回避。

 SM-2使うのも惜しくて、全部ESSMと速射砲で落としちゃったほどだった。


 なので、こっちには今のところ被害はなし。


 そして今は、日本側艦隊と台湾側艦隊が南北に分かれて周辺海域の警戒中です。

 日本はより南方を警戒中。だけど、今のところ敵の来る様子はなし。

 ……今のところは。


「とりあえず、このまま地上部隊に合わせて警戒ですかね?」


「しばらくな。だが、空からの攻撃はちまちま出てきている。注意しろ」


「了解」


 そういってレーダー凝視。

 対空FCSレーダーには何の反応もなし。

 1時間前に来たばっかりだし、またそういきなり来るなんてことはないと思うけど……。


 ……でもまあ、


「……台湾、日本がきてから戦況が好調ですね。さっきからずんずん進軍してますよ」


 俺はまた戦況マップを見てそうつぶやいた。

 それに答えるように砲雷長も答える。


「そりゃ、向こうにとっては心待ちにしていた援軍だ。それも親友のな。……士気も上がるというものだ」


「対する日本側もがんばってますしね。……早いとこ解放してくれてほしいものですけど」


「敵さんしだいだな。……まあ、さっきからこっちには全然来ないんだがな」


「ほんと……。支援する気ないんですかねあちらさんは」


「さあな。……それとも、俺達がいきなり来て怖気づいたかなんかか」


「はは……、んなまさか」


 でもまあ、攻撃頻度が低くなったのは事実。


 一体何を考えているやら……。ま、俺達の知ったことではないがな。


「(……はぁ、それでも敵さんがこなけりゃ仕事ないじゃん……)」


 まあ、暇で結構ですけどね。

 無駄な戦闘なんて面倒なだけですけどね。


 ……でもこういうときに限って潜水艦から対艦ミサイルがバーンッて登場したりして……、



 ……あ、



「(……ヤバッ、これふら……)」


 だが、




 気づくのが遅すぎた。




「……ッ! こ、小型目標複数探知! ミサイルです!」


「なッ!?」


 しまった、俺自身が自らフラグを立てちまった。


 だがまってくれ、このミサイルの位置的に今までほかの反応がなかったのはなぜだ?

 距離はそう離れてない。だが、ここから撃つなら航空機だろうが艦船だろうが何かしらの反応あるだろ?

 ……てことはまさか……、


「(……潜水艦発射ミサイル!?)」


 近くに潜んでそこから撃ったってことか?

 だが、この対潜網を潜り抜け、そしてこっちに悟られずに撃つなんて一体どんな離れ業したんだよおい……。


「クソッ! 対空戦闘! 敵のミサイルはどこだ!?」


「本艦隊真正面から来ます!」


「距離的にSM-6はもう間に合わない。目標はどこだ? あと速度は!?」


「今測定してます! ……でました。敵は対艦ミサイル。潜水艦発射型のUSM。弾種はまだです。数は4、目標はすずなみ、てるづき、しきなみの3隻! 各艦からECM展開を確認!」


「どれも艦隊陣形最前線にいる汎用駆逐艦か……ッ!」


 この4隻は警戒に伴い艦隊輪形陣の一番前にいた。

 最前線ゆえに即行で狙われたか。


「速度は!? 速度はまだか!?」


「えっと……」


 でも、中国がもってるUSMって確かそれほど速くなかったはずだ。

 早くてもM1前後。相手は4発。余裕で撃ち落せるはず。


「……あ、今出ました。えっと……、ええッ!?」


 そして、俺はその測定結果を見て思わず目を疑った。


 ……なにこの速度?


「……ま、」








「……M、3,0……?」









 アホみたいな速度だった。


 おかしくね? たかがUSMがこんな速度出すか!? ましてや中国のもってるのでこんな速度出すやつ始めてみたんだが!?


 ……てか、


「(……まだ増えてるし……)」


 M3,1……、M3,2……、M3,3……。


 ……ダメだ! 速度がおかしすぎる!


「なんだこの速度は!? 見たこともないぞ!?」


「こいつとんでもない超低高度シースキミングしてんのになんでこんな速度出すんだよ!? ……あ、今速度確定しました! 最大速度、M3,6!」


 最終的にはM3,6で安定した。これが最高速度か。

 てか、ちょっと待てや。これASM-3の低空での飛翔速度超えるんだが? てことはこれラムジェットか何かか?

 USMでそれって聞いたことないんだが? 俺がいろいろと無知なだけか? なにかあったっけか?


「USMがこんな速度あってたまるか! 一体なんの弾種だ!? 新型か!?」


 と、そのときにナイスなタイミングで対艦ミサイルの弾種が出る。

 向かってくる4発のミサイルのアイコンの


「……ッ! 弾種特定、YJ-8Qと判明!」


 YJ-8Q。

 中国が保有する潜水艦発射対艦ミサイル(USM)。

 中国の潜水艦に多数配備されているはずだ。


 ……だが、


「うそこけ! あれは最高速度M1前後だったはずだろ!? こんな速度だすはずがあるか!」


「でも測定じゃこれで間違いないって……」


「こいつ間違えてんじゃないだろうな!?」


「最新のコンピューターが一々間違えますか!」


 そんなことを言いつつ俺はディスプレイをまた見る。

 速度のデジタルメーターはM3,6。しかも驚くことにこれでシースキミング状態……。


 ……すると、


「……?」


 その赤く表示されている敵ミサイルアイコンの横に出ていた敵弾種を示す『YJ-8Q』の文字が一回消え、また一瞬の間をおいて表示された。

 そこからはまた表示に変わりはなかった。


「(……彼女も迷ってんのかね)」


 でも、こうやってまた直したってことは、やっぱり間違いはなかったってことか。

 だが、これをするあたりやっぱり向こうでも同様が走ってるとみて間違いないだろう。


 ……と、そのときだった。


「ッ! 被目標艦4隻からESSM! 同時に、速射砲射撃開始を確認!」


「だが、この速度だ……。もう1分きるぞ」


 M3,6でこれだ……。距離的にもう近すぎる。

 最初こそ3分あると思ってたけど、後々詳しく速度見たらもうね……。おかしいったりゃありゃしないわ。


「弾着1分をきりました」


「まだ命中は?」


「ありません。敵ミサイル、超低空でシースキミング飛行中」


「レーダーでもうまく捉えられない……。どれだけ低空で飛行してるんだこれは?」


 海面の乱反射で、敵ミサイルがうまく捉えられなかった。

 こんなときに今日の天候は朝っぱらからひどいもので。雨は降ってないけどその代わり曇りがひどいわ波はクソ高いわで、このやまとの巨体も結構揺れている。

 ……台湾海峡ってこんなに荒れるのか? 俺ここの波高状況知らんからよく知らんけど。


 だが、そんなことをしているうちにもう弾着まで時間がなくなってきていた。


 もう30秒もきった。だが、未だに敵ミサイル撃墜の報告も、データリンク情報もない。


 ESSMの死角にはもう入ったから、後は速射砲ないしCIWSしかない。


 ……だが、今まで当てれてないのにこの状況で当てれるのか?

 自艦との距離が近くなるほどこれ狙いにくくなるってのに……。


「弾着、20秒きりました。未だに撃墜なし!」


「クソッ! どうにかして止めれないのか!? あの槍は!?」


「無茶言わないでください! SM-3を弾道ミサイルにぶつけるより難しいですよ! ここまでして落とせないのに今さら落とせるわけがありません!」


「クソッ……!」


 砲雷長も思わず握りこぶしの握る力を強めた。

 そして、その顔はとてつもなく険しかった。


 弾着10秒前。


 だが、ここにきても全然落とせてなかった。


 というか、そもそも速射砲の弾道を見る限り、思いっきり砲弾ないし砲塔側がミサイルの速度についていけてなかった。

 今この時点でダメだとしたら……、ッ!


「弾着5秒前!」


「ダメだ。当たるぞ!」


 もう……、








 迎撃する時間が、残されてはいなかった。








「……ッ!」


 敵ミサイル3発が狙われていた3隻に重なった。

 その瞬間敵ミサイルが消え、その重なった3隻のアイコンが点滅した。




 被弾の表示だった。




「ッ! さ、3発命中! すずなみ、てるづき、しきなみの3隻です!」


「クッ……間に合わなかった……ッ!」


 砲雷長はレーダーディスプレイを睨みつけつつ言った。


 やはり、敵のミサイルの速度がいくらなんでも速すぎた。

 敵の攻撃を全部防ぐことは出来ず、その3発はそれぞれに命中。


 残り1発はまだだ。まだ弾着していない。


 だが、どれくらいの被害が出てることはわからない。


 とはいえ……、ひどいことになってるはずだ。


 砲雷長も確認のためにすぐに艦橋につないだ。


「クソッ! 艦橋CIC! 被害は!? 被害はどうなった!」














 ―艦橋―



「……んなもんCICに送った映像みりゃ一発だろうがよ……」


 俺は目の前に広がる悲惨な光景に呆然としつつ言った。

 ちょうど回避に移ろうとしたときだった。

 それぞれで面舵、取り舵をしていたときに、横っ腹からミサイルをもろに喰らった。

 艦隊最前列にいる3隻からは、大きな黒煙と火炎が立ち上っていた。


 事前に、ここの艦橋からも敵のミサイルを双眼鏡越しに目視で確認していた。


 だが、はっきり言おう。早すぎる(驚愕)。


 測定じゃM3,6なんて出てたじゃないか。一体どうやったらそんなアホみたいな速度が出るんだ。

 しかもシースキミング状態だぞ? ラムジェット積んでてもこんな速度低空で出せるか?

 それも明らかにこれはUSM……。こんないろいろとツッコミどころ満載のUSMを中国が持ってるなんて聞いたことがない。


 これが前々からあったYJ-8Qなわけあるか。なんかの間違いだろ?


「3隻に当たった! 何が被害を受けた!?」


 副長も焦り要素満載で聞いた。

 それに答えたのはほかの艦橋内にいた見張り員だったが、そっちもそっちで結構いきなりのことに焦りを隠しきれていなかった。


「い、一応あそこにいたのは、すずなみ、てるづき、しきなみの3隻です! 火炎と黒煙でよく見えませんが、大破したのは間違いありません!」


「艦隊最前列の艦か……。通信! 向こうからの被害報告は!?」


「ダメです! まだ向こうから通信が来てません!」


「クソッ……」


「あの攻撃だ……。艦橋でもやられたか……?」


 副長が険しい顔をする中、横で艦長もその目線の先にいる3隻を凝視してつぶやいた。


 すると、副長が俺のほうを向いて叫んだ。


 ……というか、指示した。


「……ッ! そうだ! おい、新澤少尉。そっちから艦魂通じて被害報告はできるか?」


「え? え、ええ……向こうから返答があれば……」


「よし、すまんが試してみてくれ。とにかく今は状況が知りたい」


「り、了解」


 艦魂からの被害報告か。たぶん、沖縄戦でのこんごうの件でつかるとふんだな?


 まあいい。とにかく、今は向こうからの返答が可能か確かめるか……。


「やまと、聞こえるか?」


“あ、ひ、大樹さん! み、ミサイルが! いろんな意味で早すぎるミサイルが3隻に!”


「わかっている。状況はこっちでも理解している。向こうの状況はわかるか?」


“ええ、今いずもさんが確認をとってます。……幸い、沈む様子はなさそうです”


「そうか……」


 つまり、一応大破ですんだってことか。

 沈まなかっただけマシだ。あんまりに早すぎて紙装甲同然の船体を突き抜けたりしたのか?

 まあ、理由とかはあんまり考えなくてもいいだろう。とにかく、生き残ってるんならこっちのもんだ。


“……で、ですが……”


「?」


 やまとからのその先の返答がない。

 後は向こうの会話を聞けってことかな? ていうか、そこらへん察せれる自分が怖い。


 とにかく、まあ自分で聞いたほうが早いか。一応距離的には聞こえるか……。






“……こ、こちらいずも! 皆無事!? 返答できるものはすぐに返答して!”


“こ、こちらしきなみ! 一応生きてますけどもういろいろとめちゃくちゃ状態です! 戦闘続行不可能!”


“わかった。詳しい被害は?”


“船体中央に命中! ヘリ格納庫、SSM発射機、そのほか電子機器全壊! あと今の被弾で乗員に死傷者が多数!”


“了解。今こっちでも被弾艦の撤退命令が出た。反転できる?”


“大丈夫です。機関にいくらか損傷が出ましたが、まだ動けます”


“よし、すぐに反転して後退して。乗員の指示に最大限答えて!”


“了解!”






“てるづきーッ! だいじょうぶーッ!? しんでたら返事してーッ!”


“いやお姉ちゃん死んでたら返事できないから! でももう兵装とか電子機器とかそっちは全部死んだよ! 悪いけどさっさと後退させて!”


“まだ動けるの!?”


“一応機関は無事。何とか動ける!”


“りょーかい! すぐに旗艦から指示でるからそれにしたがって!”


“おっけー! ごめんね、先に帰る!”


“はいはい、後はおねえちゃんに任せといて!”


“ごめん! 後はよろしく!”






“さざなみからすずなみ、状況は?”


“残ってるのは船体と艦橋だけってところかしら……。兵装関係は全部ダメ。後ろの後部甲板に命中したからもう戦闘は無理ね。……ごめんね、これ以上は戦えないっぽい”


“大丈夫。後は私が引き継ぐわ。乗員の指示に従って、すぐに後退して。今旗艦から命令が下るわ”


“了解。後はお願い”






 ……と、どこもかしこも地獄じゃん。


「副長、来ましたよ状況」


「おお、やっぱりこっちが早かったか。どうだ?」


「全部同じ感じです。電子機器、ほとんどの兵装、ヘリ格納庫が軒並み全滅。機関と艦橋だけがかろうじて生き残ってます。たぶん、死傷者とかとんでもないことに……」


「やはりそうか……」


「……ま、あんな状況じゃむしろそれでも被害少ないほうとみたほうがいいんかねぇ……」


 航海長が頭をガシガシかきながら、しかし顔は少し引きつった状態で言った。


 ……まあ、あんなキチガイじみたミサイルがぶち当たって兵装とかの装備全滅で“済んだ”んだ……。むしろよく沈まなかったなと褒め称えたい。

 そこらへんは日本の艦船か。ダメコン能力というか、そこらへんは高いほうかな。


「あの敵ミサイルは脅威だな……。USM発射元の潜水艦の撃沈はまだか?」


 艦長がこっちを振り向きつつ険しい顔で言った。

 それに答えたのは通信担当の乗員だった。


「今いずもとひゅうがの哨戒ヘリシーホークが発射点近辺を捜索中ですが、まだ発見の報告すらきていません」


「むぅ……、我々の対潜網を潜り抜け、しかも直前まで気づかれることなくUSMを放つとは……、敵にも相当な腕がいるということか」


 艦長があごに手を当てつつそういった。


 結構有名な話ではあるが、日本の対潜網はとんでもないことになってる。

 というのも、昔の第二次大戦自体の日本の対潜技術はザル以前の問題状態で、アメリカの潜水艦が我が物顔で通商破壊しまくってた。それのおかげで日本が資源が足りなくなって継戦能力が極低下して負けたようなもんなんだけど、まあそもそも日本は潜水艦の運用コンセプトがいろいろと他と比べて違ってたから仕方ないっちゃ仕方ない。

 でも、そのおかげですっかり対潜トラウマになった日本はその反動で対潜技術を大幅にレベルアップさせていき、今では対潜どころか、潜水艦性能まで世界トップクラス。

 度々訓練でアメリカの軍艦に撃沈判定喰らわせるわ、対潜技術だけで言えばあのアメリカを抜いて世界トップレベルになるわで、いろいろとおかしなことになった。

 なお、おかしなことになった、ていうのはもちろん褒め言葉です。


 それを潜り抜けてきたってことは……、まあ、中国にも結構なベテランさんがいるってことか。

 常々中国軍は錬度低い錬度低いって言われてきたけど、そういう奴らはまずこれをみろ。


 十分、中国も強いわ。


「とりあえず、この3隻は撤退だな。揚陸艦隊のほうから日本本土へ戻るための護衛艦が出るはずだから、それに合わせることになろう」


「ですな……」


 そう艦長と副長が言っているうちに、その最前列の3隻が反転してきた。

 でも、最初と違って結構ノロノロ。動いてるのがやっとの状態だと、この目で見てもわかった。


 艦では必死の消火作業が行なわれているのだろう。火災自体はさっきより小さくなったが、それでも、もうこれでは戦闘は不可能だった。


 汎用駆逐艦とはいえ、ここで3隻の損失は痛い……。どうにかして俺達だけでこの3隻分をまかなわないといけないのか。


「とにかく、旗艦からの指示に従って艦隊隊列の再構成だ。通信、旗艦から指示がでるはずだ。絶対に聞き漏らさないよう……」


 ……と、副長がそう指示しようとした時だった。





 ……どうやら、これで終わらせてくれないのが中国らしい。






『……ッ! か、艦橋CIC! 先ほどとほぼ同ポイントからまた小型目標探知! 対艦ミサイルです!』


「なにッ!? またか!?」


 追い討ちとはまさにこれである。


 おいおいちょっと待ってくれ。さっきとほとんど同じところってそれはまずUSMであることには間違いないよな。

 で、そこはさっきから哨戒ヘリシーホーク飛んでるはずなんだが? それでも見つけられなかった?

 どういうことだ? こっちの哨戒網がザルなのか? それとも向こうがキチガイレベルでこの対潜網潜り抜けてるってのか?


 どっちにしろ勘弁してくれ。どうせまた……、


『敵ミサイルは3発。1発だけ大きく突出していますが、すべて同型。速度M3,6でシースキミング飛行中!』


「クソッ、またか!」


 やっぱり、そんなこったろうと思った。


 あれまだストックあったってことかよ。勘弁してくれよマジで。


 一体誰を狙っている? もうこれ以上の損害艦を出すのは御免蒙りたいんだが……。


「被目標艦はどれだ?」


『今測定中です。えっと……、あ、今測定が出ました』


 来たか。

 だが、どうせまた最前列の艦だろう? ここはまだ中心あたりだ。

 となるとまた汎用駆逐艦に被害が……、


『……ッ!? な、こ、これは……ッ!?』


「どうした? どこを狙っている」


 だが、CICからの反応は予想外だった。

 一瞬の絶句である。それほど意外な目標だったのか?

 まさか、中心部ともいえるここを狙ってるわけではあるまいて……、


『……ほ、』


「え?」


 だが……、






 俺達はこの後、自らの耳を大いに疑うことになる。






『……本艦です……』


「……は?」



 その、相手が狙っている目標のうち1隻は……、














『ほ……、本艦です! 突出している1発は本艦に向かっています!!』















 紛れもなく、俺達のほうに狙いを定めていた…………

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