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『やまと』 ~戦乙女との現代戦争奮戦記~  作者: Sky Aviation
第6章 ~『好朋友作戦』発動! 台湾の反撃を援護せよ!~
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〔F:Mission 15〕日台潜水艦合流⇒水中の共闘

―TST:PM15:48 台湾澎湖諸島ポンフーチュンダオ白沙郷バイジャー吉貝嶼ジーベイユイ

         北東30海里地点深度140m SSそうりゅう司令室―







「……ん?」


 ふと、台湾海峡水面下を航行中に、ソナー担当である澤口君がつぶやいた。


「どうした? 何か見つけたか?」


「はい。前方12時の方向、距離音6500に音紋1。確認します」


「うむ。……敵でないといいんだがな」


 ……などど、いわゆるフラグというやつに分類されるらしい発言をしてみる。


 なぜ日本の潜水艦であるこのそうりゅうが台湾海峡にいるかというとだ、まあ理由は単純。




 台湾の、反撃援護の一環だ。




 日本政府から、俗に言うアンケート的なアレで直接電文が来て作戦参加の意向を確認されたのだが、まあこの艦の乗員全員がいくといったわけである。

 なお、それには私も入っている。

 親友の危機を助けずしてなにが親友国か。

 戦争を長引かせるのも癪だしな。さっさと終わらせる手助けをさせていただこう。


 そして、それに伴い我々が受けた任務は、この台湾海峡の水中勢力確保である。


 今ここには本艦そうりゅうのほかに、そうりゅう型5隻、そして最新型のひりゅう型2隻もいる。

 ひりゅう型はこのそうりゅう型の拡大発展型で、水中機動性、高速性をあげつつより高い静粛性を実現した最新型の潜水艦だ。

 ひりゅうの名は、あのそうりゅうと同じく第二次大戦当時活躍していた空母の『飛龍』からきている。

 なお、このそうりゅうの元ネタの『蒼龍』とこの『飛龍』、元々は第二次大戦時も二航戦こと『第二航空戦隊』の中心としてコンビを組んで活躍しており、やっぱり潜水艦の艦名としてこれが影響したものと思われる。

『そうりゅう』と『ひりゅう』。艦型かたちは違えど、またこうして同じ役目を負いつつ出会えたのはやはり運命とも言うべきか。


 なお、なぜこんなに潜水艦戦力を投入したかというと、まあ理由は単純。




 台湾の潜水艦戦力が少ないこと少ないこと。




 数年前に退役した『海獅かいしし級』潜水艦2隻を除けば、今台湾で稼動している潜水艦は『海龍かいりゅう級』2隻に、その海獅かいしし級の後継である『海忍かいにん級』2隻、そしてアメリカからバーベル級ディーゼル潜の改良型として受領した『海雄かいゆう級』2隻の、計6隻しかない。

 しかも、そのうち『海龍級』の2隻は1980年代後半の就役で、もうすでに台湾国内でも旧式化している。

 となると、台湾でまともに活動できるのは4隻しかいないということになるのだ。


 ……潜水艦戦力が足りなすぎる。周りが海洋に囲まれてるんだしもう少しあってもいいはずだ。


 ……尤も、だからつい数年前までもう艦齢60年以上になる海獅かいしし級が訓練支援艦として活動してたわけなのだが。


 ゆえに、この反撃にあたりこの潜水艦戦力不足に伴う水上戦力に対する被害拡大を防ぐために、我々日本の潜水艦部隊が送られたというわけだ。



 そして今。

 台湾海峡を敵に悟られないように航行していたら、いきなりほかの潜水艦の反応である。

 ここいら辺に日本の潜水艦が展開するとは聞いていない。まさか中国か?

 そしたら厄介だ。距離も何気に近いし、さっさと攻撃に移って……、


 ……と、その心配は無用だったようだ。


「……音紋解析完了。前方の潜水艦、台湾海軍海忍級『SS-795“海忍”』と合致」


「なに? 台湾のか?」


 台湾の潜水艦がここに出張っていたのか。

 だが、ここはまだ中国の勢力下にあったはず。お世辞にも台湾の潜水艦の静粛性はいいとは言えないはずなのに、我々のように静粛性をうまく使ってここにもぐりこんでいくとは……。

 思ったより性能がいいのか、それとも乗員の度胸がすごいのか。まあ、この際どちらでもいい。


 とりあえず、通信を試みよう。

 水中電話の水中音響通信を使えば普通に意思疎通ができる。

 もちろん、昔のこれとは違う。音響は使うが、その指向性は高くなり、水中拡散性は結構低くなった。


「……えー、台湾海軍『海忍』へ。こちら日本国防海軍潜水艦『そうりゅう』である」


『ッ! 日本海軍か! こちら潜水艦『海忍』です。情報は聞いています。貴軍の援軍に感謝します』


「お構いなく。現在の状況をお教えいただきたいと」


『はい。本艦は現在15ノットで航行中。当海域の対潜哨戒中です』


「了解。では我々も参加します。このままこの海域で警戒活動を……」


 と、そのときであった。


「……ッ! 艦長、ソナーに反応が。反応は2.まっすぐこちらに向かっていますが、こちらに気づいた様子はありません」


「ッ! ……失礼、話をしている暇はないようです。ソナーに」


『こちらでも確認しました。……結構遠く。まだ気づいてませんな』


「そのようです。……いいでしょう」


『?』


「……ここは、一時共闘と行きましょう。どうですかな?」


『……面白い。乗らせていただきますかな』


「ふむ。では作戦はこうです」


 そして向こうに作戦を伝えた後、我々は互いに距離を置いた。


 ……その後、敵潜の正体が発覚する。


「……音紋解析終了。元型潜水艦『遠征30号』『遠征31号』と合致」


「元型……。となると、ディーゼル潜か。速度は少し遅いな。よし、いける」


 私はそう確信すると、すぐに行動に移った。


「面舵45。私の合図ですぐにエンジンを止めろ」


「了解。面舵45」


「同時に、全門に18式装填、急げ」


「了解。全門に18式装填」


 すぐに魚雷準備とともに

 互いに2隻同士。別に単艦で互いに1隻ずつ相手取ってもいいのだが、もし回避されたら速攻で攻撃される可能性がある。

 それをされたらやはり不利だ。ここは仕掛けていく。

 微速で面舵しつつ航行。敵に悟られないよう慎重にだ。


 さらに数分が経つ。

 所定の場所に着くと、私は艦を止めさせた。

 ……よし、どうやらまだ気づかれていないならしい。さすがそうりゅう型の静粛性。


 すると、ソナーに動きがあった。

 澤口君がすぐに報告した。


「……ッ! 海忍に動きです。アクティブソナー音探知。向こうが動き始めました」


「来たか……。敵潜は?」


「今気づきました。機関音増速……、あ! 魚雷発射音探知、海忍から、計4発の魚雷音」


 海忍からの攻撃が始まった。

 それぞれに1発と3発、計4発放たれる。

 片方が1発な理由は後々明らかになる。また、3発撃ったほうは2発撃った後送れて1発放った。

 これで、その後から撃った1発が先発2発から逃げようとする敵潜を後ろから追尾する形になった。

 ディスプレイにもそのソナー音を基にした近海の航行状況が3次元で表示される。

 横に結構至近距離で並んでいた敵潜2隻も、魚雷を探知したのかすぐに回避機動に移った。

 もちろん同じ方向に回避するわけでなく、互いに反対方向に回避し始めた。

 そのうちの1隻……。1発だけ向けられた、向こう側から見て、取り舵で回避してきた艦だった。

 遠征30号らしい。少し取り舵したら、反転してそのまま後ろから回避されるのを嫌ったのか、大体45度あたりでそのまま全速力でかっ飛ばし始めた。

 魚雷は向かって右舷側若干前方から迫ってくる。それを回避するには、やはりこういう斜め方向においてそれを後ろにおいていくのが効果的だ。


 だが……、確かに、その判断は妥当だが、





 それは、こっちにチャンスを与える結果ともなる。





「射線に入りました」


「よし、1番~4番、発射ファイヤ!」


「了解。1番~4番、目標補足シュート発射ファイヤ!」


 攻撃タイミングは見逃がさなかった。


 敵の遠征30号が本艦の前を通り過ぎる直前、4発の18式魚雷を一斉に発射した。

 その距離、大体1000前後という結構な至近距離だった。

 海忍が、こっちには1発しか放たなかったのはこれが理由だ。

 こっちも撃つのに余計な分をもう一方に集中させるためだったのだ。


「魚雷追尾開始。敵潜さらに増速……、あ、間に合いませんねこれ」


 最後のつぶやきは余計ではと心の中でツッコミを入れるが、まあ言ってることは間違ってはいなかった。

 最初の1発を何とか逃げ切れそうと考えたそのときにまた撃たれたのだ。それも、結構な至近距離から。


 もう間に合わなかった。完全に意識が海忍から放たれた魚雷に言っていた遠征30号は、こっちの4発の魚雷になすすべがなかった。


「……ッ! 敵潜から爆発音、魚雷が命中しました」


「何発だ?」


「えっと……、ノイズがひどくてよくわかりませんが、複数です。大体、2,3発当たりかと」


「2,3発か……。どっちにしろ、もうあの艦は持たんな」


 そして、事実そのとおりになった。

 すぐに圧壊音が確認された。徐々に重くなる水圧に耐え切れず徐々に破壊されていく船体の金属音が、重苦しくこのそうりゅう艦内に響く。

 ……その圧壊音が聞こえなくなるのも別段遅くはなかった。

 比較的すぐにその音も消えた。ソナーでも遠征30号を潜水艦として認識されなくなり、ディスプレイ上からも反応が消えた。


 敵潜、遠征30号の撃沈、確認である。


「……敵潜、反応消えました」


「よし……。向こうはどうだ?」


「軽くですが、こちらでも圧壊音です。……海忍の音紋は生きています。どうやら、この音は……」


「……もう1隻の敵潜、遠征31号か。向こうでも、うまくやったようだな」


 結果的には互いに1隻ずつ相手取ることになったが、まあこの方が確実に撃沈できるのでな。

 とにかく、互いに生き残れて何よりだ。


 いったん向こうと合流した後、また水中音響通信ですばやく通信する。


「……海忍さん、無事でしたか」


『そちらこそ。手際が違いますな。さすがは日本といったところです』


「はは、水中戦闘は日本の得意分野ですからな。お任せください」


 尤も、第二次大戦時対潜能力が低すぎてひどい目にあった反動なのだがな。

 というか、あの時代の日本は潜水艦を“ただのもぐれる艦”としか考えておらず、潜水艦に一番必要な静粛性を完全に無視している傾向がある。しかも、その運用方法といったら通商破壊といった潜水艦が大得意の任務ではなく、あくまで本場での戦場での運用を想定していたため、その通商破壊がおろそかになってしまい、敵国アメリカの輸送船になんら被害が出ず国力を少しも減らすことが出来なかったほか、その肝心の本場の戦場でも、一部撃沈例があるとはいえそれは極少数の話で、現実中々思うような戦果が上げられないなどいろいろと散々だったのが実情だった。

 その結果、その潜水艦を大量に通そう破壊に投入して、第二次大戦初期はイギリスの輸送船団を沈めまくり資源量的な意味で干しあがらせるなど、その猛威を遺憾なく発揮させたドイツの出身であるとある武官を「よく今まで生き残ってこれたな」と呆れ返らせるわ、潜水艦勤務が長かった米海軍のニミッツ提督からは「古今東西の戦争史において、主要な兵器がその真の潜在威力を把握理解されずに使用されたという稀有の例を求めるとすれば、それはまさに第二次大戦における日本潜水艦の場合であろう」と酷評される始末である。


 まあ、その結果終戦後はその米海軍の潜水艦などを基にしてより高性能は潜水艦を作ったりその戦術を研究したりした結果、今では対潜戦闘はあの米軍さえもしのぐものとなってしまった。


 ……まあ、過去の経験や失敗から学ぶのが人間であるとはいえ、この反動は中々大きすぎるわな。


「……といかく、では我々はこのまま警戒を続けます」


『了解しました。我々も一時ほかの海域へと向かわせていただきます。……ではそうりゅうさん、御武運を』


「そちらこそ。生きて帰れることを願っています」


 そういって水中音響無線をきると、向こうはそのまま潜航しつつ私たちの元を離れた。


 単艦で残された我々も、すぐに次の行動に移る。


「よし、では現深度を維持しつつ、ほかの海域に向かう。ここはもう用なしだ。後続の味方に任せよう」


「了解」


「取り舵45度。前進微速」


「面舵45度。前進微速」











 そのまま、我々はこの海域を離脱し、また新たな海域の警戒に当たった…………

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