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『やまと』 ~戦乙女との現代戦争奮戦記~  作者: Sky Aviation
序章~すべての始まり~
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対空戦闘!

―2020年5月1日(金)PM12:22 三宅島北東25海里地点 DCG『やまと』CIC―




「……そろそろだな」


 CICのディスプレイに設けられているデジタル時計を見ながら、艦長が少しつぶやくように言った。


 モニターは依然として沈黙を保っている。

 ……あ、申し訳ないが今回はあいつの出番はまだなしだ。すまんな。

 しかし、あいつは今頃舵を握っていることだろう。


 このCIC内も、適度の緊張を保っていた。

 ……もうすぐ来るからだ。


 ……予定通りならもうすぐ……、


「……ッ!」


 ……と、うわさをすればなんとやらの法則発動だぜ。

 レーダーに反応。山型に表示されている逆V字の中心から、進行方向を示し短い線が伸びているアイコン。

 そして、それは赤く表示されていた。


 まあ、つまり敵である。


「レーダーに反応。2時半方向より敵航空機複数探知。まっすぐ突っ込んでくる」


 冷静に、静かに現状を報告した。

 それに、艦長もすぐに答えた。


「来たか。総員対空戦闘用意」


「対空戦闘用意!」


「たいくー、せんとーよーいッ!」


 すぐに艦内全区画にアナウンスされ、同時にカーンカーンという警報もなる。

 CIC内でもすぐに各員が持ち場に着いた。

 ……尤も、俺は元からここにいたけどな。

 そして、同時に各隔壁も全閉鎖。

 でないと艦の命にかかわる。あたったときにこの隔壁で浸水制御するからな。


「対空見張りを厳となせ」


「主砲目標よし、射撃用意よし、方向監視員監視よし」


「艦橋CIC、敵ミサイルが来る方向をしっかり見ておけ。いつ来ても良いようにだ」


『艦橋了解』


 周りで指示が飛び交う中、俺はオペレーターとしてさらに任務に入る。


「目標、本艦1時半方向、方位0-4-0、距離15マイル、計6機、無人機です。全機まっすぐ突っ込んできます」


 ここで言うマイルはただのマイルでなくて『海里』を英語にしたときの『ノーチカルマイル』のマイル。

 1海里1852mで、実はこれ覚え方があって、カレンダーで1日があると、その下は順に8日、15日、22日。

 ここから1桁を取り出すとあら不思議。しっかり1852となるわけです。

 俺も訓練生時代こうやって習った。めっちゃわかりやすくてありがたいですわ。


 ……と、今はそんなところではなかったな。


「ほかの方位には?」


 これは砲雷長の声だ。

 俺はそれにもすぐに答えた。


「ありません。方位0-4-0からのものだけです」


「ESSMで迎え撃つ。前部VLS開放、1番、3番開放。それぞれ3発ずつ放て」


「了解。前部VLS、1番・3番開放。各セル発射弾数3発。目標諸元入力」


 火器管制担当がすぐさまVLS操作。

 ミサイル撃つときに爆風とかで支障が出ないように1セル分あけて撃つ。

 でも、今回2セルだけしか使わないのは、ESSM自体が小型でセル内に4発も入るからもう2セル分だけで十分。

 まあ、そのセル内のもの連続で撃つとか昔は出来なかったんだけど、このやまとに搭載してるやつに限ってはそれも可能なわけです。


 CICのディスプレイの一つに表示されている、やまとを上から見た感じの図の前部VLSの2つが、準備中を示す黄色から発射可能を示す緑色に変わった。

 といってもそのマス全部でなくて、ESSMが搭載されてるためさらに4つに区分けされていて、そのうちそれぞれ3つが緑になっただけ。

 残りの一つは発射命令を受けていないって意味を示す黄色。これは準備中と同じ色。

 それを見て、


「ESSM諸元入力完了」


 火器管制員が報告した。

 それにもすぐに答える。


「右対空戦闘、CIC指示の目標、ESSM撃ち方はじめ」


 艦長からの攻撃ゴーサイン。

 それに、砲雷長も答える。


目標番号トラックナンバー4001ヨンマルマルヒト4006ヨンマルマルロク、ESSM撃ち方はじめ」


「ESSM撃ち方はじめ!」


 火器管制員が目の前のパネルの発射スペースを押す。

 すると、ディスプレイ上の緑色で表示された各VLS3区画が発射中を示す点滅に変わり、同時に発射されたときの振動が地味にCICに響いた。

 デモそれも比較的すぐに収まり、その点滅も収まって今度はその各セルが使用していないってことを示す青色に変わった。


 ESSMは全6発。


 全弾、しっかり目標の敵に向けて飛行していった。


「ESSM順調に飛翔中。弾着10秒前……」


 しかし、そのときだった。


「……ッ!?」


 その敵航空機から、小型目標が分離した。

 同じく赤く下に開いている山型に、これまたこっちに向かって短い線を引いているアイコン。

 しかし、そのこっちに向いている線の脇に、2つほど小さな山がある。

 ジェット噴射のときのあの炎を表しているらしい。

 一機につき一発ずつ。

 まあつまり、計6発の……、


「敵航空機から小型目標分離! 計6発、まっすぐ突っ込んでくる!」


 どう考えても対艦ミサイルだった。

 クソッ、落とす前に打たれちまった。

 今からじゃESSM撃っても微妙に間に合わない。


「ちっ、撃ってきたか。主砲で迎え撃つ。主砲1番、2番準備」


「主砲1番、2番準備」


 ここで言う主砲の1番砲と2番砲は、何れも艦橋前の前甲板に置かれてるもので、搭載しているのは最新型のMk.45 mod.6 62口径5インチ単装砲。

 これは元のあたご型とかに乗せられている5インチ砲を独自改良して、対空対艦のほか、付属的に対地攻撃能力も付けた、いわばどこにでも使える万能速射砲。

 やまとにはこの計2つだけ。背負い式で、旧型DDHのくらま型やしらね型と似た感じで設置されている。


 それのうち前甲板にある2つが、敵のミサイル群に砲門をすばやく向けた。


「5……、4……、スタンバイ………、マークインターセプト」


 しかし、その準備をしている間に先にESSMが敵航空機に弾着した。

 少し時間差があったが、それでも、レーダーから全部の航空機がESSMとともに消えた。


「トラックナンバー4001~4006撃墜。トラックナンバー4007ヨンマルマルナナ4012ヨンマルヒトフタ依然として接近中。距離8マイル」


 敵ミサイルは依然としてこっちに突っ込んできていた。

 ディスプレイの前甲板にある主砲2つが緑色に変わった。

 射撃可能を示す表示だ。


「1番、トラックナンバー4007~4009、2番トラックナンバー4010~4012、主砲、うちーかたはじめー」


「うちーかたはじめー!」


 そして主砲射撃担当がピストル型の射撃装置を取り出して射撃ボタンの引き金を引いた。

 その瞬間、その2門の主砲からは弾がどんどんと定められた目標の未来位置に向けて飛んでいく。


 最新のFCS-5CLによって割り出された目標飛翔情報はこれほどにもなく正確無比で、主砲のより確実な撃墜を助けた。

 ゆえに、主砲は少し発砲したらすぐに自動的に止まった。


 見事、全弾撃墜である。


 そして、レーダー上からすべての反応が消えた。


「トラックナンバー4007~4012、撃墜。……レーダークリア。敵全機撃墜を確認」


「新たな目標なし。攻撃やめ」


 砲雷長が攻撃終了を宣言した。

 それを聞いた艦長は、帽子を直しつつ言った。


「よし……、総員戦闘配置解除。訓練ご苦労だった。各員ゆっくり休みたまえ」


 それを聞いて俺は肩の力を抜いて、椅子の背もたれに背中を預けた。

 そして、袖で軽く汗を拭いた。


 今回はマジもんの模擬弾やら無人機やらを使っての実弾演習だった。

 太平洋沖に出ての訓練航海の途中でやるんだけど、それがいつくるかわからないから誰もが航海中緊張しっぱなし。

 ……結局、じらしにじらして帰り道で襲ってきましたよ。まいったねこりゃ。


 そこからは、CIC内でも何人かが立ち上がってここを離れて休憩に入る者からその場にとどまるものまで様々。

 ……まあ、俺は任務上ここに釘刺し状態ですがね……。


「……どうした沖瀬少尉? 疲れるか?」


「?」


 すると、砲雷長に声をかけたれた。

 珍しいな。こういうときに声をかけるとか。


「……集中してるとやっぱり疲れますよ」


「速くなれることだな。この艦が就役してもう数ヶ月立つからな」


「わかってはいますがね……、はぁ……、航海科のあいつがうらやましいですわ……」


「ああ、新澤少尉のことか。……彼も中々タフな男だな」


「まあ……」


「まあ、最初は誰だってそんなものさ」


 すると、会話に入ってくる人がいた。

 本艦の艦長だ。一番えらいけど、こういうコミュニケーションはむしろ向こうからしてくる。


「焦る必要はない。ゆっくり慣れたまえ」


「はい。……そうさせていただきます」


「うむ。……では、私もちょっと休ませてもらおう。もうこの年なのでな。すぐに疲れるのだ」


「……そういって、毎日ラジオ体操やってるの誰ですかね?」


「ぬ……、それはまた別だ。……では島田砲雷長、後は頼む」


「はい。お疲れ様です」


「うむ」


 そういって、艦長はCICを離れた。

 その場にさっきとは違って静かな雰囲気が流れた。


「……君もゆっくり休みたまえ。疲労は蓄積しておくべきじゃない」


「了解。そうさせていただきますよ」


 そう返すと、島田砲雷長は離れた。

 俺も、その場で思いっきり背伸びした。

 さて……、後の帰りは、あいつに任せるかな。





 その後も、やまとはしっかりと横須賀に向けて航行していった…………

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