〔F:Mission 14〕『第2次台湾海峡海戦』2/2 “最高の”援軍到着
※脳内で某艦隊ゲームの夏のイベント道中神BGMを再生しながら見ると結構かっこよくなったりそうでなかったり。
―AM07:24 同海域 台湾艦隊旗艦DCG『丹陽』FIC―
「に、日本だと!? 間違いないのか!?」
私は思わず聞き返した。
レーダー用に出てきた大艦隊。
そこから受けた入電文。……その中にあった、この最後の一文。
“日本国防軍、台湾の海に参上せり”
この言葉が意味すること。それを考えるのに、一々時間は要らなかった。
だが、信じられなかった。
彼らが、ここに来てくれると言うことが。
自分の国のこともあるのに。この遠征のリスクを知らないはずがないのに。
……それでも、我々を助けに来てくれたことが信じられなかった。
だが、それは紛れもない事実だった。
その瞬間、レーダー上にあった国籍不明艦隊の表示が全艦青色に変わり、そこにさらに所属が判明したらしく出た表示が……、
“Japan Dispatch Taiwan Main Suport Fleet”
日本派遣台湾支援主力艦隊……。
だが、それだけではなかった。
その後方、沿岸部のほうにも……、
“Japan Dispatch Taiwan Landing Fleet”
日本派遣台湾揚陸艦隊……。
「……上陸部隊まで!?」
日本が揚陸艦をまかなったこれまた大規模な艦隊を捕捉した。
もうすでに沿岸部に到着している。
大甲区の沿岸部。もう前線じゃないかそこ。
護衛も大量に要るらしい。揚陸艦は一部米軍のものだが、まさか頭下げて借りてきたか?
……無茶しやがって。ここ前線だぞ?
「ま……間違いありません。来たんです! 日本が、ここにきたんです!」
だが、それ自体は純粋にうれしかった。
私は絶望のふちから手を差し伸べられた気分だった。
救世主とは、まさに彼ら、そして、あの艦たちのことをいうのだろう。
「よっしゃあ!! 日本が助けに来てくれたぞ!!」
思わず私はガッツポーズしながら叫んだ。
それに続くように、このFIC内でも歓声が爆発した。
中には泣くものや隣のやつと抱き合うやつまでいた。
……まあ、かく言う私も半ば泣きそうなのだが。
「司令、やりました! 日本がきてくれれば、これほど頼りになる戦力はありません!」
周りの部下も口々にそういった。
私はそれにうなづきつつ言う。
「ああ……。我々は、まだ諦めるには少し早いようだな」
「しかも……、見たところ、ほとんどが日本で運用されている最新鋭艦が勢ぞろいです! 中には、あの『やまと』も含まれています!」
「やまとか……」
あの、世界が認める最強のミサイル巡洋艦。
高すぎる兵器搭載能力。新型水素燃料エンジンによるより高い速度性・俊敏性の確立。
そして、洗礼された船体、それに施された装甲。
止めに、今までまったくはずしたことがない対空目標。
その迎撃率、実に“100%”というバケモノ。
……どれをとっても、今の世界の海軍が保有する軍艦にひけをとらない、まさに“世界最強”の艦だ。
「(……まさしく、これほどにもない最強の援軍だ)」
と、そのときだった。
「……ッ! 司令! 日本艦隊よりデータリンク要請!」
日本艦隊からだった。
これから戦闘するに当たり、情報を共有したいのだろう。
「やはり来たか……。相互データリンク開始! 日本艦隊に今こっちがもっている情報をすべて提供しろ! 日本と……」
「共闘開始だ!」
「……きてくれた?」
私は後方を見ながらつぶやいた。
そこはまだ晴れかけている霧の白い景色。
しかし、その先には日本艦隊がいるはずだった。
でも、信じられなかった。
向こうって、まだ沖縄の事情すんでなかったんじゃ……。
「……ほんとにきてくれたの?」
思わず何度もつぶやくほどです。
“に、日本が……、日本が来てくれた……ッ”
“ヒャッホーイッ! 最強の援軍とはまさに彼らのことですね! これは燃えてきたあああーー!!”
“……そうだったよ。まだ日本がいたのすっかり忘れてたよ”
周りも結構な喜びようである。
中にはあまりの絶妙なタイミングでの援軍登場になきそうになる娘もいるんだけど、まあ今はそっちにかまってる暇はなくて……。
“ヘッ。おせえんだよ……、私たちの親友。待ちくたびれたぜ”
口は悪いけど、媽祖のその顔自体は笑っていた。
彼女なりのご歓迎ね。
「……旗風さん」
“はい! なんでしょうか!”
母国の登場にすっかりテンションが上がりまくってる彼女に向けていった。
……彼女、元々日本出身だったものね。
「……あなたの国、相当な無茶するわね」
“……それが、日本ですから”
「私たちが親友だから?」
“それもあるかと。でも……、”
「でも?」
“……一番の理由は、やっぱり見てられなかった、てところでしょうね。そのまま傍観する気にはなれなかったんでしょう”
「……それで、この大規模な援護ね……」
“たぶん。まあ、そんな国ですよ。日本という国は。丹陽さんも日本生まれですよね?”
「まあね。でも、日本生まれとは言っても、すぐに台湾に引き渡されたからあんまり知らないんだけどね……。ほんと、いろいろとおかしい国だわ日本って」
かっこ、褒め言葉と付け加えておきましょうか。
悪く言ってお人よし。良く言って仲間、いえ、友達思いというやつかしら?
……でも、こんな島国にまで助けに来てくれるなんて……。
日本って、友人大切にする国なのね。まさか、こんな形で助けを受けるとは……。
「……ん?」
すると、またこっちに日本艦隊からの通信が来る。
……データリンク要請。こっちとの相互共有を図るつもりね。
よし、そうきたらこっちだって遠慮はしないわ。もうとにかく今は日本と共闘して目の前の敵を追っ払うまで!
「各艦、データリンクフル。日本にあるだけ全部の情報を送って」
“もうすでにやってるぜ! おら! どんどん使いな!”
……媽祖すっかりテンションMAXです。
登場があんまりにも絶妙なタイミング過ぎてテンション上がりきってるのね。ほかの例にもれず。
「(……データリンク完了。あとはどうするか……)」
そう考えていた、そのときだった。
『……ッ! 日本艦隊より追加で入電! “我、これより敵航空部隊の迎撃に入る。ここは任されたし。貴軍の弾薬調整に、一役買わせていただく”。以上です』
日本艦隊からの入電だった。
“え~? 撃たないの?”
思わず媽祖がいい投げたけど、私はそれをなだめる。
「そういわないの。こっちだってミサイルそこそこ消費したし……。ここは日本の皆さんに任せましょう」
“あ~いよ。そんじゃ、日本の艦たちの腕前拝見と行くか……”
「そうね」
日本の海軍の錬度や艦の性能はどれも優秀だって聞いたわ。それこそ、あのアメリカでさえもたまに演習で負けるくらいに。
とにかく、ジャミングが消えたがために、ここからは私たちのターン突入。
先ほどから敵航空部隊が私たちのレーダー上に写っていた。
H-6爆撃機を中心に、“少数”の護衛。
……全体的に見たらすこぶる大量ね。そりゃあんだけの対艦ミサイル飛んでくるわけだわ。
でも、そのほとんどはH-6爆撃機。
護衛は、何度も言うけど“少数”。
「ヘッ! あいつら、ジャミングがあるからって護衛ほとんど置いてねぇ! 戦闘機の護衛がこれだけじゃ私たちでも即行で落とせるぜ!」
まったくだわ。
ジャミングに頼りすぎていたのか、それともそもそも戦闘機を出すのを惜しんだのか。
……いずれにしても、これはチャンスね。
護衛がいない爆撃機なんて、ただの的でしかないわ。
“……ッ! 丹陽さん! 日本艦隊から複数の対空ミサイルが発射!”
「ッ! 撃ち始めたわね……」
日本艦隊から大量の対空ミサイルが発射。
SM-2とSM-6。それが、一気に敵航空部隊に向かっていった。
……でも、私たちは知らなかった。
彼らが援軍で来たと言ったのは、あくまで“日本国防軍”だということを。
つまり、誰も“海軍、正確には艦隊だけが援軍にきたなんていっていない”
“……ッ! 姉さん、対空ミサイルがほかのところからも! ……こ、これ日本艦隊からじゃない!”
私のレーダーでも捉えた。
日本艦隊のさらに後方から、複数の、いえ、“大量の”ミサイルを探知。
……全部対空ミサイル。水上からではない。
……ということは、
「ッ! レーダーにはんの……、え!? 日本国防空軍!?」
私はその所属を見てビックリして思わず叫んだ。
レーダー上には複数の戦闘機。全部F-15。……あ、訂正。
正確には、F-15“J”だわ。
……あ、そういえば最初の一撃でもSM-2とSM-6のほかによくわからない空対空ミサイルもあったような……。
なるほど。もうそのときから射程に収めてたのね。
“日本の国防空軍機! 空からも来たの!?”
“戦闘機だけじゃない! 衛星からの画像では、さらにその後方から少し低空を沿岸沿いに飛行するやつもいる! ……これ、JV-22オスプレイですよ!?”
“じ、“J”V? ……Jが付いてるってことは、これって……”
“ええ……。空軍のでも、海軍のでもない!”
“陸軍機です! 日本国防陸軍のJV-22オスプレイの大編隊です!”
はは……、海、空ときて、今度は陸?
揚陸艦に載せてるものだけじゃなかったのね。空から大量輸送ということか。
……ほんと、割と真剣に無茶する国だって言いたいわ……。
“……姉さん、私たち運がいいぜ。日本の陸海空軍が勢ぞろいだ。これはお目にかかれるの一生に一度あるかないかだぜ”
「まったくだわ……。それに、その本島方面のほうにいる大量の大型機はなに……?」
衛星通信が回復したので気になって首都方面のほうもたしかめて見たら、なにやら大型機がわんさかわんさか……。
それも、なにやら空港に向かっている。首都方面にいる2つの大空港。
そこは、今民間人の国外退去に躍起になってるはずだけど……。
『……よし、日本艦隊に連絡してみろ。首都方面にいる大型機はなんだとな』
と、これは私の艦内のFICからだった。
向こうでも気になったみたい。まあ、私がこうやって気づいたんだしその情報は乗員にも届いてて当然だけどね。
少しして、向こうから返答が来た。
『日本艦隊からより返信。“そちらは我が国から飛来した民間のチャーター便である。貴国国民の国外退去の支援に当たっている”……、って』
「『ええ!? 民間機!?』」
思わず無線の人とハモった。
……え? じゃああれは日本の航空会社の民間機? 軍用の輸送機じゃなくて?
え~……(汗。
「……旗風さん。割と本気であなたの国無茶しすぎ」
“……そ、それが日本で……”
「汗かいてるのばれてるよ?」
“……は、はは……”
元々日本出身の旗風さんもこの驚き呆れようである。
……でも、空港からすればほんと大助かりね。民間人避難はあっちに任せるとして……。
“ッ! ミサイル、弾着しました! 爆撃機が落ちていきます!”
日本艦隊、そして日本空軍戦闘機から放たれた対空ミサイルが弾着。
いくらかはフレアなりチャフなりで巻いたみたいだけど、それでも相当数が弾着した。
H-6爆撃機が結構落ちていった。やっぱり、護衛がないとこんなもんなんでしょうね。
「こっちでも確認したわ。……あ~あ、護衛なんてつけないから」
“ヘッ! 今まで散々私たちを痛めつけてた報いだぜ! 慢心お疲れさん!”
もう言いたい放題の妹です。
……まあ、この際もう止めないわよ。心境的には私も似たようなものだし。
「でも、これで爆撃機は大半が落ちたわ。このまま撤退しても……、ッ!?」
でも、
そう簡単に引き下がらないのが、今の中国ね。
「レーダーに反応! 前方12時の方向から複数の艦影!」
SIF、応答なし。
間違いない。敵の艦隊だった。
少数だった。だけど、その概要は中々最新のもそろっている。
中国版イージス艦の蘭州級駆逐艦『蘭州』に、その取り巻きである旅大型駆逐艦『南昌』『桂林』。
フリゲート艦も江衛II型の『宜昌』『楡林』、江凱II型『巣湖』『黄山』『運城』の、総勢8隻。
台湾に置かれている分派艦隊全部ではない。たぶん、そこからさらに派遣されたものだと思う。
“マジ!? あいつらまでこんなところに出張ってたのかよ!?”
「とことんやる気のようね……。いいわ、お相手してあげる」
どうせ今後つかうこともないだろう艦対艦ミサイル。ここでいくらか消費しても問題はなし!
新型の雄風III型対艦ミサイルの威力、彼女らにお見舞いしてあげ……、
「……あれ?」
すると、また無線が聞こえたけど、その内容に少し首をかしげた。
『日本艦隊より入電。……“現在捕捉中の敵艦隊に対する攻撃の必要なし。我が国防空軍の“専門家”がお相手する”……司令、専門家とは?』
『日本国防空軍の専門家って……、すまん、空軍詳しくないのだ』
乗員さんも首をかしげているみたい。
……でも、私も首を傾げざるを得ない。誰のことよ? 専門家って?
日本の戦闘機のことなんだろうけど、私そっち詳しくないし……。
「……旗風さん」
“はい?”
「……なんか、日本艦隊から敵の水上艦隊は専門家に任せるとか来たんだけど……、何の話?」
“えっと、日本の戦闘機で対艦戦闘の専門家……、ッ! ああ!”
「え?」
すると、旗風さんは何かを思い出したように叫んだと思うと、まるで好きなものの前にはしゃいだ子供の如く妹の島風さんに話しかける。
“しまかぜ! 来たよ! アレ来たよ! アレ!”
“対艦番長来たよ!”
“なぬッ!? マジで!?”
“マジマジ! ASM-3ぶっ放すかも!”
“キターーーー!!! これで敵艦隊壊滅間違いなし!”
……と、この2隻はしゃいでるとこわるいんだけど、私は全然それ知らないわけで。
“な、なんだよ?二人とも? 一体何気来るってんだ?”
妹もこんな感じです。
私たち二人は日本生まれではあるけど、日本のこと全然知らないしなぁ……。
でも、この元日本出身の二人がこんだけ喜ぶってことは、相当心強い援軍と見ていいのかしら?
「ねえ、それだけやばいものなの?」
“ヤバイですみませんよ! 対艦戦闘させたたらこれに勝てる戦闘機ありませんんよ? なんたって……”
“M5出す超音速対艦ミサイルを、1機に付き4発もつめるのなんて、今じゃ日本しか持ってませんから”
「……え!? M5が1機につき4つ!?」
冗談でしょ? M5だすってなると大抵はラムジェット推進ってこと?
でもあれ、ミサイル自体大きくなるでしょ? この雄風III型もラムジェット推進だけど、あれ自体も結構大きいし、それにあれでもM3前後が限界なんだけど?
「……ッ! レーダーに新たな反応探知!」
すると、レーダー上で新たな反応。
戦闘機。でも、さっきのF-15J戦闘機より低空を飛行している。
大体10機前後といったところかしら。
「これは……、見たことない戦闘機ね。えっと……、ん? F-2?」
“キターーーー!! やっぱりキターーーーー!!”
“これは敵艦隊壊滅待ったなし! F-2までくるなんて日本奮発しすぎでしょ!?”
で、元日本出身コンビはこのはしゃぎよう。
……これが、1機につき4発の超音速対艦ミサイルをつめる戦闘機?
それほどほかの戦闘機とは違いがなさそうだけど……。
『……ッ! 日本艦隊から通信。“現進路・速度を維持。絶対に変えてはならない。また、途中貴艦隊の対空支援も願うものである”……なんですこれ?』
するとまた日本艦隊から通信。
このまま航行して動くなってこと?
あと、何で対空支援? 相手水上艦艇なのに?
“ッ! 姉さん、例の戦闘機から小型の反応分離”
「こっちでも確認。きっと対艦ミサイル……、え!?」
そして、そのレーダーで捉えたその小型目標の大群を見て、二つほど驚いたことがある。
まず、対艦ミサイルの速度が速すぎる。M5が最高だとはさっき聞いたけど、低空ではさすがに速度が……、と思ったら、その低空でもM3,3ってこれどういうことよ?
対艦ミサイルにしては早すぎるでしょう。どうやったらこんな高速が出るの。
それが1機から4発だから、計40発……。相手の数に比べてオーバーキルじゃないのこれ?
あと……、
「……あれ? 進路的にこっち向かってない!?」
この艦隊にその対艦ミサイルが向かっていた。
まさか私たちを狙うわけじゃないだろうし、その先には確かに敵艦隊が……。
……ていうことは、
“え!? まさかここ通る気か!?”
「ちょ、ちょっと待って。ほかに攻撃位置なかったの!?」
“あ、あー……、ま、まああれじゃね? 台湾海峡狭いし、最短距離でさっさと攻撃したいけど私たちが進路上にいたから仕方なく避けるんじゃね? それならさっきの指示もうなずけるし……”
「え~……(汗」
もう私今日何回「え~……」って言ってるのよ。
無茶する国にだとは聞いたけど、だからってこれはあり?
ほんとに大丈夫? ここ、まぐれ当たり的なアレで私たちに当たったりはしな……。
“え、ASM-3が間近で見られる!?”
“こ、これはチャンス! しっかり目に焼き付けとくのよしまかぜ!”
“わかってるよ姉さん! これは千載一遇のチャンスだよ!”
「二人とも少し落ち着きなさいよ……」
相変わらずテンションが上がりまくってる護衛の元日本出身コンビ。
その対艦ミサイルはすぐに近づいた。
後方から迫る恐怖って結構すさまじいけど、その速度は目を見張るものがあった。
すると、
「……ッ! 敵艦隊から対空ミサイル発射! こっちに向かってくるわ!」
あたかも狙ってたかのように敵から対空ミサイルが放たれた。
そのミサイルは私たちの後ろからくるASM-3に向かっている。……超音速についていけてるようには見えないけど。
でもこれ……、タイミング的に見ると……、
「……これ、ちょうど私たちの近くを通るときに弾着する?」
弾着予測をしたらそう結果が来た。
偶然でしょうけど、まあ私たちの艦隊にいるときに迎撃されたら被害はないとは言えあんまりいい気分は……。
“……はっは~ん、なるほど”
「?」
すると、妹の媽祖が唐突に言った。それも、感心したように。
「どうしたの媽祖?」
“いや、日本の戦闘機隊、最初からこれ狙ってたんだ”
「え?」
……説明を要求する。
“だから、敵がこのタイミングで対空ミサイルはなって、私たちの横を通るときに迎撃ささることを読んでたんだよ。だから、そのときに近くにいる私たちにそのミサイルを迎撃してもらおうってこった。それなら、さっきの対空支援が云々も説明が付く!”
「……あー!」
なるほど。そういうことか。
こっちに向かってるわけじゃないし、私たちに被害が出ないからその点はまず問題なし。
そして、少し難しくはあるけど、近くにいる私たちに飛来した対空ミサイルから対艦ミサイルを守ってもらおうってことなのね。
……中々面白いこと考えるわね。いいわ、やってやろうじゃないの。
「……ッ! 乗員も動き出したわ。全艦! 対空戦闘急いで! ミサイルは使えないから速射砲とCIWSで対応できるだけ対応して!」
といっても、対空ミサイルを対空火器で迎撃なんて前代未聞なんだけど、とにかくやれるだけやってみるしかない。
大丈夫。対空ミサイルとはいえ飛翔目標として捉えられないことはない。やれる。
……それに、
“よっしゃあ! 対艦ミサイル絶対に守るよしまかぜ!”
“あったりまえぃ! 指1本触れさせんですよ!”
……このハイテンションコンビがいるし大丈夫か。
少しして、後方から超低空をその対艦ミサイル、さらに反対の前方真正面の上方からそれを迎撃する対空ミサイルが飛来する。
対艦ミサイルはしっかり艦隊の間を通るようにプログラミングされているようね。対空ミサイルもそれに合わせてる。
……よし、動きが単調。いける!
「……今! 全艦撃ち方はじめ!」
乗員の指示の元にすぐに対空ミサイル迎撃開始。
私も前甲板にある速射砲をすぐに上に向け、誘導砲弾を大量に放つ。
バンッという少し高い音とともに放たれた砲弾は、しっかり対空ミサイルを落としていった。
頻繁に目標を変えつつ、飛来する大量の対空ミサイル迎撃に追われる。
……案外やろうと思えばやれるもんね。相手が対空ミサイルでも。
しかし、それでも、
“チッ、少し残った! 弾着するぞ!”
やはり相手は対空ミサイル。速度はまだいいとしてもあんまりにもほかと比べて小さすぎる。
やっぱり迎撃には限界があった。
5発くらいかしら。残った対空ミサイルは敵の対艦ミサイルに弾着……、
……したものもあった。
「……ッ!? 迎撃成功2発だけ!?」
対艦ミサイル側がすこぶる早すぎたのね。
それによって対空ミサイル側の機動が対艦ミサイルの速度に追いつかずにそのまま海にボチャン。
盛大に水柱をあげてコンタクトロスト。
……わ~お、
「……回避お見事」
“直線突っ走ってただけだがな”
“まるで前世での私ですね”
“お前当時出せるの40ノットだったって言ってたろ。あれそれの比じゃないぞ?”
“ですよねー……”
そういえば、島風さんは前世では40ノットという駆逐艦では異例の速度で突っ走る艦だったわね。あと、重雷装だったとか。
……尤も、私あんまり知らないけど。そもそも、私第二次大戦経験してないし。この現代が艦魂として初めて生まれたし。
「もうすぐ弾着……」
敵に対艦ミサイルが弾着するまでもう10秒をきった。
この間にも、さらに10発ほど迎撃に成功してるけど、まだ計28発も残ってる。
しかも、超音速だからその迎撃が限界で、これ以上は無理。
「……5、……4、……3、………、今」
その瞬間、対艦ミサイルが敵艦隊に弾着した。
一瞬にしてまず『蘭州』『桂林』がレーダー上から消えた。3,4発くらい弾着したから、瞬殺されたんでしょう。
さらに、『南昌』『楡林』『巣湖』がその場で動かなくなり、そして『黄山』の動きがのろくなった。
……あー、これは壊滅どころか全滅判定待ったなしじゃないの。
もうこっちに対する攻撃云々どころじゃないわ……。
“……日本の対艦ミサイルすげっ”
“でしょ? 日本の最強傑作なんだから!”
“それ言うなら最高傑作な……。ま、敵にとっては最強というよりは最凶かな?”
“うまい! 座布団一枚!”
“この艦のどこに敷けと……”
もはや親子同然の会話をしてる媽祖と島風さんの話し声を聞きつつ、私はいった。
「……でも、こんなに持ってきて大丈夫なの?」
“いいんじゃないですか? こんだけ来るってことは日本での戦闘はおわったっぽいですし、大量にいるに越したことはないですし”
「そ、そう……」
でも、大量投入しすぎな気がするのは私だけなのでしょうか。なんか違う意味で怖いです。
……すると、
“……ッ! 丹陽さん、敵が”
「ッ! ……どうやら退くみたいね」
壊滅させられた敵残存航空部隊と敵残存艦隊が、南に進路を変えて引き返し始めた。
これ以上の戦闘は無理と判断したんでしょう。まあ、懸命な判断とも言える。
……と、これでとりあえずはここでの戦闘は終了か……。
「……やっと終わったわ……、これも、日本の支援のおかげね」
“ああ。合流したらたっぷりお礼言っとかないとな”
お礼ね……。口答だけのお礼でいいのかな?
もっとほかのお礼もしたいくらいなんだけど……。なんせ、無理を押してでも私たちの救援に来てくれたんだし。
「……合流が楽しみね。旗風さんにとっては久しぶりの旧友との再会でしょ?」
“はい。……久しぶりに日本の皆さんに会えるとは思いませんでしたしね……”
「そうね……。まあ、こんな形になっちゃったけど」
本当はもっと平和的な再開を果たしたかったでしょうけどね。
まあ、でも再開自体は歓迎すべきでしょう。
少しして、後方からその日本艦隊が見えてきた。
この時間になると太陽も丸い自らの全身を地平線から出したばかりで、東の空から朝日をカンカンと照らしていた。
そして、それに合わせて霧も大分晴れ、晴れてきたその霧の中から、隙間から入ってくる朝日に照らされつつ堂々と航行する日本の大艦隊が見えてきた。
前方から霧をゆっくりとかき分け、そして朝日に照らされつつ向かってくる日本艦隊は、私の目にはとてもかっこよく見えた。
堂々としていた。まさに、『日本参上』とでも言わんばかりに。
“……かっけぇな。日本の艦も”
「ええ……。本物を見るのは初めてではないけど、こうして改めてみるとやっぱり洗礼されてるわね」
尤も、私と妹の媽祖はその日本のイージス艦を元にして台湾風に作られただけなんだけどね。……まあ、台湾風といっても概観ほとんど元ネタと変わらないし、変わったところといったらデータリンク装備を台湾基準にしたのと対艦ミサイルが台湾国産のになっただけって言うね。
「……あれが、日本の最新鋭がそろった大艦隊……」
ふむ、威風堂々、とはまさにこのことを指すのね。勉強になるわ。
……でも、海洋国の海軍艦隊だけに、熟練さ雰囲気的な意味で感じられるのは私だけかな?
とにかく、ここからは向こうと共闘することになるのか……。
今頃、沿岸部では揚陸艦隊が動いてるだろうし……。
「……ここから、私たちのターンになるのか……」
私は堂々と私たちのほうにくる日本艦隊を見ながら確信したようにそういった…………




