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『やまと』 ~戦乙女との現代戦争奮戦記~  作者: Sky Aviation
第6章 ~『好朋友作戦』発動! 台湾の反撃を援護せよ!~
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台湾遠征

―8月24日(月)AM11:30 臥蛇がじゃ島北西70海里地点 DCGやまとCIC―






「……いかん、期待されてるとなると緊張するな……」


「砲雷長肩ほぐしてくださいよ。向こうに期待されてるからって」


 そんな会話の道中である。


 朝早くから佐世保を出て、ほかの基地から出た艦と合流した俺たちは、艦隊を組んでそのまま台湾へと向かった。

 正確に目指すところは台湾海峡北方入り口。

 艦隊はそこから突撃する。

 到着は明日の早朝あたりになると思われた。

 そのときまでに台湾の戦況がどうなっているかわからんが、なすことをなすだけだ。


 また、一応下に出撃艦隊の詳細をば。


【日本国派遣台湾支援主力艦隊『Japan Dispatch Taiwan Main Suport Fleet』】

旗艦:いずも型CVL『183“いずも”』

空母:ひゅうが型CVH『181“ひゅうが”』

ミ巡:やまと型『190“やまと”』

ミ逐:あたご型『179“たかお”』

       『180“まや”』

ふぶき型『123“ふぶき”』

    『124“しらゆき”』

しきなみ型『119“しきなみ”』

     『121“ゆきかぜ”』

あきづき型『115“あきづき”』

     『116“てるづき”』

たかなみ型『113“さざなみ”』

     『114“すずなみ”』

むらさめ型『105“いなずま”』

     『107“いかづち”』


 以上の15隻。

 うん、前のA艦隊とほとんど変わってません。ハイ。


 旗艦はいつもどおりいずもさん。軽空母であるあの艦からは艦載機であるF-35BJが飛び立ち、とりあえず簡単に上空警戒に当たっています。

 一応沖縄戦は終結したとはいえ、まだ油断ならない状況であることに変わりはなし。

 やまとも含め、各艦から哨戒ヘリ飛ばして対戦警戒もいつもより入念に行っております。




 ……で、その道中。


 俺たちは何してるかって言うとだ。


「……だが、彼女のためにも期待にこたえるとなると肩がな……」


「余計向こうが心配するんでやめてくださいよ。いつもどおりやってたら死にませんて」


 彼女とかっていうのはやまとさんのことであって、実は朝、大樹が俺たちを集めて、本人の許可を得た上でこういった。




「あいつは昔みたいに俺たち乗員が期待にこたえられず死んでしまうことを拒んでいる。俺は、こういうときこそ自分たちの力を発揮して、互いに信じあっていかないといけないと思うんだが、どう思う?」




 文句なしの肯定をさせていただきました。


 ある意味、艦魂である彼女らしいお悩みである。

 考えてみれば、俺たちだって普通にこうやって生きてるが、すべては彼女のおかげなんだな。

 そして、彼女が能力を遺憾なく発揮できる要因として、俺たちが大きくかかわっている。

 ……そうだよ。俺たちが向こうを信じてないと最大限の働きができないかもしれないしな。


 信じようじゃないか。向こうからも期待されてんだし。


 ……で、砲雷長が自分が期待されてることにプレッシャーを感じているそうです。


 いつもどおりでいればいいものを。余計向こうに心配をかける。


「……あいつの彼女のお悩みのことだ。俺たちがしっかり答えてやらねえとな」


「お前それいってたらまたあいつに腹パンあたりされるぞ……?」


 と、俺被害者が申しており。


 ……俺なんてね、何回も面白半分にそんなこといってたら普通に腹パンされて思いっきりしばらくの間動けなかった記憶がががが。

 あれはもうごめんだわ。あいつもあいつだ。少しは見逃してくれてもいいものを。


 ……それにしても、


「(……これから明日の朝までずっとこれかぁ~……)」


 今現在艦隊速度30ノット前後を状況によってうようよしている。

 今のままの速度でいった場合、つくといったら明日の朝。一応予定通りではある。

 だが……、さっきから敵潜水艦の報告を受けているし、もしかしたらまた奇襲されるなんてこともある……。

 まあ、いつどきかの神回避のとき以来よりいっそう対潜網は濃くなったし、そうめったなことがない限り見つからないなんてことはないだろうが……。


「……ずっとこれだと気疲れするなぁ~」


 そんなことを思いつつディスプレイをみる。


 レーダーには何も反応はないし、しばらく暇ではあるが……。


「……誰か軽食くれませんかね。握り飯でいいんで」


「おいおい……、こんなときに何を言って……」


 と、ちょうどそのときである。


「お、なんだ、握り飯が食いたいのか?」


「え? ……あ、艦長」


 いきなり艦長のご登場。しかもなんか手は小さめのトレイを持っている。

 すぐに立ち上がって敬礼をする。

 俺だけでなく、周りにいた全員。

 艦長も返し、すぐに敬礼を解く。


「ちょうどいい。今まさに握り飯を配ってたところでな」


「艦長がですか? ……ま、まことにありがたいですが、そんなの衛生科に任せればいいものを……」


「私とて一応何もすることがないのだよ。……ほれ、沖瀬君、軽食」


「ハッ、ありがとうございます」


 と、そういって手に持っていたトレイから一つ取り出して渡されたのは少し大きめの三角おにぎり。手持ちの部分にはご丁寧にもしっかりのりが付けられております。

 やっぱり言ってみるもんですな。

 しかも艦長が直々にもってくるとは。これはこれはありがたいことですわ。


 どれ、では一口……。


「……お、うまい。しかもシャケ入り」


 俺の大好物が入ってやがったし。

 シャケ入り握り飯か。うますうます。


 周りもそれに合わせて食い始めた。


「ほほう……、シャケですか」


「やっぱり船乗りの主食といったら魚だよ砲雷長。どうだい、久しぶりだろう?」


「まあ、考えてみればここ最近握り飯なんて食ってなかったですね……。いつ以来だっけな……」


「1ヶ月くらいまえでは?」


「ほう、もうそんな前なのか」


 そういえばここ最近握り飯出てなかったな。

 しかも、出たとしてもシャケじゃなかった。中何にも入ってなかった記憶がある。


 ……こんなときにシャケ入りが食えるとは何たるラッキー。これはうます。うん、うます。


「しかし、艦長はお食べにならないので?」


「私はもう食ったさ」


「は、はやいですね」


「腹が減っては戦は出来ぬ、てやつだよ。……今のうちにたらふく食べておきなさい。ここから先は、満足なメシにすらありつけんかもしれんからな」


「ハッ、お心遣い、感謝いたします」


 とかそういう会話を聞きつつ俺はもう握り飯を食い終わった。


 ……シャケうます。


「って、沖瀬少尉もう食い終わったのか?」


「シャケうます」


「お、おう……」


「ははは、なに、食欲があるのはいいことだ。健康な証拠だよ」


「そうですよ砲雷長、ほら、もっと食べなはれ」


「食べなはれってお前なぁ……」


 そういいつつしっかり握り飯は食う砲雷長。

 ちゃっかり食いまくってますね。わかってますよ俺は。砲雷長は実は結構な大食漢だってことを。


「俺むしろお前だろ」


「あれ~……?」


 俺はそんなに大食漢な記憶はございませんな。ハハッ。


「どれ、では艦橋にも運んでくるよ」


「はい、お疲れ様です」


「うむ。警戒は頼むぞ砲雷長」


「ハッ、お任せを」


 そういうと艦長はCICを後にした。


 しばらく周りの乗員はもらった握り飯をほおばる。


「……シャケうまいな」


「ですよね」


「うむ……。まあ、たまには英気を養っておくのも悪くはないだろう」


「固くならずにうまいって素直にいいましょうよ」


「別にいいだろうどういったって……」


 そんな会話をしつつ、俺はそのまま未だに沈黙を保っているレーダーディスプレイを凝視する……。











 ―艦橋―



「……あ、シャケじゃん。これうめ」


 俺は右手に持っている握り飯を見つつそういった。


 艦長がなにやらご好意で自ら握り飯を持ってきてくれたようで、ありがたくそれをいただいたらまさかのシャケ入りというご褒美付きである。


 やっぱ船乗りなら握り飯の中身はシャケだよな。船乗りだけに魚で海つながりになるしな。


「やっぱりうめ~。……艦長もお一つどうです?」


「いや、私はすでに食べたのでな」


「ありゃ、そりゃ失礼」


 航海長がそう提案するもあっさり先手を打たれて残念がりつつやっぱり握り飯をほおばる。


「英気は今のうちに養っておかねばな。……やはり握り飯はシャケに限る」


 副長も満足しながら握り飯を食いまくる。


 ……てか、


「……副長、案外その見た目して食い方かわいいんですね」


 航海長が俺の思ってたこと先に言ってくれた。


「は? 何がだ?」


「いや……、だって、」


「?」







「……握り飯、両手で持って一口がちいさいんですもん。一気に一口で食えない女の子かってなりますよ」







「……は? これが普通でないのか?」


「オウ……」


 それ、女の子流ですよ? いったい親は何を教えたんですか彼に。

 せっかくの威厳のある結構ないかついキャラが台無しですよ。どうしてくれるんですか。




 訴訟。




「なぜそんなことで訴えられねばならんのか」


「俺のイメージ返してください」


「知るか」


「……」


 くそう、俺は言ったこれから副長をどう見てやればいいのか……。


 ……あと、







「……(ジー」


「……やまと、その目線はやめてくれないか」






 俺の目の前にある操舵機器越しに見えるこいつの顔がめっちゃ気になる。

 もはや顔がエサをまって「はっはっはっはっ」て過呼吸してる犬みたいじゃないか。頭に犬耳つけたらまさにそれだぞ。


「……悪いけど、あげようにもお前食えないだろ」


「わかったますって。私の食べるものといったら決まって燃料ですから」


「しかも取り扱い注意の水素な」


 水素燃料って少しでも扱い間違えば即行で大爆発だからな。

 ある意味、普通の燃料よりひどいことになりそうなのだが、まあそこらへんは日本の技術。

 しっかり管理法も確立させております。


「……」


 しかし、めっちゃ気になるこいつの欲求視線。

 自分でも食えないってわかってるくせに……、仕方ない。


「……(スッ」


「ッ!」


 とりあえずシャケのカケラをこいつの顔の前においてみる。


 以後、観察。


「……」


 最初5秒。黙って見る。


「……」


 手を伸ばしてみると、やっぱり透ける。いったん諦める。


「……」


 もう一回手を伸ばして左右にも振ってみる。だが透ける。


「……」


 イライラしているかのごとくムスッとした顔を浮かばせる。かわいい。

 懲りずに何度もやってみるも案の定中々うまくいかず。イライラし始める。


「……」


 さらにムッと少し顔をしかめる。おもろい顔である。


「……」


 そして、とうとうギリギリと歯軋りまで仕出す。どこまで食いたいのかこいつは。


「……~~ッ」


 少しうなり声を上げ始める。しかしそんなことをしても状況は代わるはずがない。


「……~~~~ッ」


 唸りがます。しかし、意味はない。


「~~~~~~~ッ!!」


 イライラもあって唸りが加速。しかし、無慈悲な現実である。


「……ブチッ」







「むが~~~~~!!!」


「お 前 は 猫 か よ !」






 まるで何かを手で引っかこうとするも何も出来ないときにイライラした猫のようである。かわいい(確信)。


「……諦めなって。お前にはたべれっこねえっての」


 そういっておいていたシャケをつまんでさっさと食っちまおうとしたときだった。


「あ……」


「ん?」


 思わずやまとがシャケを見つめる。

 まるで「まって……いかないで……」とでも言わんばかりである。


「……」


「あ……ああ……」


「……」


 無言でそのシャケのカケラを持った右手を左右に振ってみる。

 するとやまとの右手がそれを追った。普通に問答無用でつかもうとしている。ついでに目線も追っていた。

 しかしつかまれないように左右にタイミングよく振る。やまと、振り回される。


「……」


「……」


 ……傍から見ればなんともシュールな光景であるに違いない。

 しかも俺以外はこいつが見えてないからいったい何をしてるのかまでは想像付くだろうがそこから先はうまく脳内保管できない現実。


 しばらくするとやまとも疲れたのだろう。そのまま目の前の操舵機器に前のめりにへたり込んで「ズ~ン……」とかいう効果音付きで軽く泣き始める。

 泣きはじめる、とはいってもマンガで言うところの「しくしく」という効果音が付く程度のものである。


 ……うん。


「……かわいい」


 かわいい(確信)。


「……ごめん、容易に想像できた。萌える」


「なあ、後で俺にもやらせてくんね?」


「あ、俺も俺も」


「おいお前ら」


 この変態共め。目に見えないやつ相手にできるかっての。

 ……いや、これをかわいいとかって思ってしまった俺も大概なのだろうか。いや、それでもこんな変態共と同類は勘弁してくれ。いや、割と本気で。

 俺のただのツッコミキャラが台無しである。頼むからそっちとは違うということで一つ。


「……ほれ、そろそろ戻ったほうがいいんでねの? 今一応は戦闘航海中やし」


「うう……シャケ……」


「いい加減諦めんんしゃい……」


 いらんところで諦めが悪い……。


 ……仕方がない。


「……あ、雲の中からヘルキャット」


「え!? どこですか!?」


「冗談だよ馬鹿野郎」


 と、ちょっとけらけらと笑ってやる。


「……」


「……え?」


 すると、元には戻ったが今度はジト目である。見事に目が据わって口をかすかに尖がらせてムスッとしている。


「ジト~……」


「……What?」


 ……あの、何事でしょうか?


「……私のトラウマをえぐるとは卑怯なり。後で腹締めしていいですか?」


「おいちょっとまてなぜそうなる!?」


 待ってくれ。あれだけは勘弁してくれ。割とマジで冗談にならないくらい痛いから。アレの後割りと真面目に腹の調子悪くしたから。


「……ダメですか?」


「本当にすいませんでした」


 彼女に向かって直角90度の謝罪礼である。

 立場逆転の瞬間。やっぱり相手が艦魂とはいえ女性が強い社会というのはここでも適用されるんですね。男にとっては誠に悲しい社会であります。


「はぁ……、まあいいです。でもいいですね~シャケとか食べれて」


「仕方ないだろ。そもそもお前ら味覚とか備わってんの?」


「燃料以外食べたことも飲んだこともないのであってもわかんないかと」


「じゃあその歯はいったい何のために……」


 ……あ、声の調整のためには必要か。発音とかで歯結構使うしね。


「……あー、じゃあそろそろ私はこれで。少し昼寝に入ります」


「昼寝って、こんなときにか?」


「わりと艦魂わたしたちの間では普通ですよ。ご安心を。戦闘航海にはなんら支障はございませんゆえ」


「お、おう……」


 そういうとやまとはその場で青白い光を出しつつ消えた。

 艦に戻ったか。今頃グテーっとして寝始めているころだろうか。


「……あ、ご馳走様でした」


 そんなことを言ってたらもういつの間にか握り飯を食い終わっていた。

 とりあえず艦長にお礼をいいつつ、また操舵の任務につく。


「うむ。英気はしっかり養っておきたまえよ。……では、私はトレイを戻してくる」


「あ、それなら私が」


 と、副長が名乗り出るがそれをさえぎるかのように、しかしやんわりと止める。


「いや、私が持ってきたんだし最後も私が責任を持ってもっていくよ。君はここにいたまえ」


「は、はあ……、それは失礼」


 そういうと艦長は艦橋を降りていった。


 軽いメシを食い終わった俺達はまた自らの任務に戻る。


 天候は若干曇り。


 台湾むこうの天気がどうなのかはわからないけど……、











 台湾まではもう少しかかりそうであった…………

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