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『やまと』 ~戦乙女との現代戦争奮戦記~  作者: Sky Aviation
第6章 ~『好朋友作戦』発動! 台湾の反撃を援護せよ!~
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『好朋友作戦』

―8月23日(日) PM13:30 日本国首都東京 首相官邸危機管理センター―






「……と、以上が、今回の作戦内容になります」


 新海国防大臣は一言そういった。


 目の前にはこの国防幹部の面々。今回はだれもがいつも以上に真剣な表情だった。

 もちろん、私もだった。


 その言葉に、私も答えた。


「うむ。内容はよくわかった。……それにしても、」


「?」


「……これはまた、結構な戦力を送るね」


「それを認可したのは総理ですがね」


「……まあな」


 いくら自分が許可したこととはいえ、中々大量の戦力を送ることになるとはな。

 まあ、だがこれくらいしないと向こうを助けることは出来ない。

 相手が相手だ。あの物量チートの国にはこれくらいせねばならない。


「沖縄の状況が安定してくれたのが幸いでした」


「うむ。ついでだが、沖縄のほうは?」


「本島を初めとして、各離島に陸軍兵力を派遣し順次開放に向かっています。米軍艦もうようよしていますので、もう敵が出てくることはないでしょう」


「ふむ……。そうか」


 沖縄方面の解放は順調に事が進んでいた。

 本島はすでに各地域に味方戦力が出回り、それぞれで友軍、ないし地域住民の安全を確保した。

 先島諸島の方面にも、一昨日あたりから手が届き始め、順二敵軍の降伏処理と住民の安全確保を行なっていた。


 沖縄に関しては、もうこれ以上心配する必要はないだろう。


 ……ゆえに、我々は次の段階にいける。


「では、この作戦通り、投入戦力は躊躇無しでいいのだな?」


「はい。先の戦闘で損傷したこんごうは少し遅れますが、すぐに作戦参加が可能になる見込みです」


「そんなに早くできるのか?」


「まあ、結局はSSMがやられた程度で済みましたので、それの取替えと周りの甲板の応急修理さえ済ませればすぐにいけます。問題はありません」


「そうか……」


「しかし、我が軍の損害がそれだけで住んだのは不幸中の幸いですな」


 そのとき口を挟んだのは仲山副首相だった。


 まったくだ。あれだけの戦闘で、よくこれだけの損害ですんだ。


 沈没艦が出てもおかしくないであろうと思ったのに……。


「やはり、最初の内に航空戦力を全部つぶしてしまったのと、空からの援護が十分行き届いていた結果でしょう。電子攻撃や無人攻撃も、何とか避けることが出来ましたので、向こうも躊躇してしまったのかもしれません」


「ふむ……。なるほどな」


「とにかく、これで向こうに多くの戦力を派遣できます。一部、日本に残すものを除いて、すべての艦の出撃準備は、先ほども言ったように今日中に完了し、明日の朝には出撃できる予定です」


「うむ。各部隊に出撃の準備を急がせて置いてくれ。しっかり、明日の出撃に間に合うようにだ」


「はい。すでにそのように」


 はは、行動の早いやつめ。


「それでは……、もう後は言うことはないな?」


「はい。……すべて、手はずどおりに進んでいます。運命の作戦開始は、明日の朝に」


「うむ……。いよいよか」


 一通りの作戦説明と状況の確認を終え、一言言った。


 ついに、動くことができる。


 親友の救出作戦だ。向こうはもう品詞もいいところだしな。


「台湾の状況はどうなっている?」


「……未だに状況は変わりませんが、しかし、よりマズイ状況になりました」


「なに? どういうことだ?」


 新海国防大臣の顔が雲った。

 それだけでもわかった。相当まずいことになっているということが。


「……中国が動き出しました。東南アジア、パラワン諸島沖に展開していた『施琅しろう機動艦隊』が、北上を開始しました」


「なにッ? 向こうは、東南アジアの支援に向かっていたはずではないか?」


 台湾にはあの艦隊はなかったはずだ。

 あっても、そこから分派した艦隊のみ。


 それがなぜ今? 東南アジアを諦めたのか?


「それが、なぜか東南アジアの支援を止めて、すぐに台湾方面に“向かおうとしています”」


「……? 向かおうとしている?」


「はい。正確には、まだ台湾には行き届いていません。また、そこから艦載機が飛んでいった情報もありません」


「どういうことだね? 距離的にすぐいけるはずじゃ?」


 仲山副首相が聞いた。

 いる場所にもよるが、パラワン諸島沖から台湾海峡南方出入り口までは800海里前後はある。

 少々時間はかかるが、かといって大量に時間がかかるというわけでもない。


 進軍が遅れてるということか。誰かが妨害しているのか?


「……援軍で来たインド海軍総勢力と、東南アジア、オーストラリアが連合を組んで、死に物狂いで止めています。結果、各国の海軍戦力は壊滅的被害を受けていますが、それでも、そのおかげで向こうの進軍が遅れてしまっていることも確か」


「待ってくれ。一体なぜそこまで? 我が国ならまだわかるが、東南アジアや、それにインドは台湾に対してそれほど恩を買っているわけでも、すこぶる仲がいいわけでも……」


 山内外務大臣がそういったが、全部言い切る前に、新海国防大臣は言った。


「わかりません。ですが……、やはり、これ以上我が物顔でアジアを破壊しつくされるのに、相当な嫌気が差したのだと思います。そして、台湾が攻められるとなると……、また、自分達だって標的になる。台湾に出来なかったことが、自分達にできるはずがない。だから、今ここで、精一杯止めて言ってるんです。そして……」


「そして?」


「……実は、フィリピン海軍から、一通の電報が届きました。こちらです」


 そういって、彼は手元においてあった一枚の小さな紙を私に差し出した。

 私はその中身を読む。


「……アジアの盟友、日本へ。貴国はおそらく、沖縄を奪還した後、台湾を助けに行くだろう。しかし、その前に立ちはだかる壁は大きい。台湾を失うことに、相当なためらいを感じるのは、日本だけでなく、我々東南アジアも同じだ。だから、我々東南アジア諸国は、同じアジアを構成する“仲間”として、その手助けをさせてもらう……。これって?」


「その内容のとおりです。おそらく、彼らはこの『施琅機動艦隊』の進軍を止めることによって、我々が台湾での援護をする時間を稼ぐつもりでしょう」


「なッ!?」


「事実、東南アジア各国は、この艦隊の進路を塞ぐ形で布陣し、そこからさらに、北上させまいとまさに“嫌がらせ”とも取れる戦術で、南に追い返しています。さすがに、東南アジア諸国が一丸となってしまえば、この艦隊とて簡単には通れません。ゆえに、向こうは全然北上できない」


「……そして、我々が台湾を助ける時間を稼ぎ、最大限この艦隊が台湾に向かわないようにすると?」


「そのとおりです。おそらく、彼等の狙いはそれでしょう」


「クソッ……、なんて無茶なことを……」


 仲山副首相は少し苦い顔で言った。


 まったくだ。確かに時間は稼げるだろう。だが、そのリスクを知らないはずはない。

 台湾を助けるためか。そして、我々が台湾を援護しに行くのを知っているためか。


 ……これはまた、


「……我々の責任は重くなったな。これで失敗したら、彼らに見せる顔がない」


「ええ。ですから、私としても急いだのです。この電報が届いたのは、以前、総理が執務室でこの計画を私に知らせた後でした」


「あの後に?」


「ええ。……向こうも願ってるんです。台湾が、無事独立国として生き残ってくれることを」


「……とあるマンガでありましたね。友達の友達が死ぬのを見て、明日のメシがうまいかって」


 そういったのは山内外務大臣だった。


 ……あのマンガか。アニメ化までされていたな。


 皆、考えることは同じか。台湾も、短い間にすっかり人気者になったものだ。

 日本人として、こうやって受け入れられていることは何よりうれしい限りだ。


「……向こうも、まずいメシはくいたくないんだろう。……彼等の、期待にこたえねばならない」


「ええ。……なので、作戦が発揮された後は、すべてを迅速に進めます。各部隊にも、とにかく迅速な行動を優先せよと、命令を下しておきました」


「そうか……。わかった」


 迅速に、か。


 ある意味、機動的なことは日本人の得意分野だ。我が軍の者たちならお手の物だろう。


「というか、米軍は何してるんだ? 東南アジア諸国ががんばってるのに、まさか傍観してるなんてことはないですよね?」


 一人の幹部が言った。


 まあ、米軍も無限に軍を展開するのは無理だろうが、はたしてこの“助け合い”に参加するかね……?


 あんまり、こういうのは乗り気でないようなイメージはある。アメリカだしな。


「向こうは一応潜水艦戦力を大量に派遣したようです。原潜がこの南シナ海に大量に潜み、東南アジア諸国連合艦隊と連携して、敵艦隊の牽制に大いに活躍していると聞いています」


「……潜水艦だけか?」


「報告では。まあ、向こうもほかにやることがあるのだろうと」


「はぁ……。ケチケチせずにもう少し送ってくれてもいいものを」


「まあまあ。とにかく、今この段階で敵艦隊が足止めを喰らって、時間が稼がれているのは事実です。艦載機も飛んでこないので、空襲とかの危険性もないですしね」


「では、艦載機が飛んでこないのは?」


 これまたほかの一人の幹部が聞いた。

 これにもすぐに彼は答えた。


「おそらく、本土からの補充がこないんでしょう。きても、たぶん艦隊に着く前に落とされてるかと」


「なるほど……。まあ、航空機さえなければ、空母とてただの浮かぶ箱ですしね」


 まあな。空母の真価は、その搭載されている航空機にある。

 それがなくなれば、単体での戦闘能力なんてないし、対空戦闘能力なんてそこいらにいる汎用駆逐艦にすら劣る。

 ……まあ、それを護衛するための艦も大量に要るんだが、今この状況では、それもただの“足手まとい”もいいところの状態だな。


「……では、戦力が整ったらすぐに計画始動だ。直ちにやるぞ」


「ええ。……ああ、それと」


「?」


「……今回の計画を指導するに当たり、計画名を制定させていただきました」


「ほう、どんなもんだね?」


「はい。……この、『台湾救援・反撃援護作戦』を、別名……」







「『好朋友ハオポンヨウ作戦』と、名付けました」








「『好朋友ハオポンヨウ作戦』?」


「はい。好朋友ハオポンヨウです」


「えっと……、すいません、自分中国語わからないんで意味が……」


「ああ、えっと……、正確には台湾語で、意味は……」


「親友」


「え?」







好朋友ハオポンヨウ。台湾語で、“親友”、の意味だろう?」








 思わず私が先に答えてしまった。


 だが、案外好きな言葉だったのでな。


 台湾語で、親友を意味する。


「……親友作戦、ですか」


「ええ、そうです。台湾を助ける、親友が発動する作戦です」


「親友……、か」


 ……いい響きだ。

 作戦名にはピッタリだな。親友作戦か。


 好朋友ハオポンヨウのために、立ち向かう、ということだな。


「なんか……、前の、3.11のときの『トモダチ作戦オペレーション・トモダチ』を思い出しますね」


「米軍の災害救助支援作戦か……。確かに、あれも似たようなものだったな」


 尤も、向こうはただの災害救助支援で、こっちは軍事援護だがな。


 しかし、それでも当時向こうには大いに助けられた。

 当時の自衛隊や消防、警察などで手が届かなかったところに救助支援をしてくれたり、時には空母を使って支援物資を各被災地に届けてくれたりと。

 それぞれの被災地でも、感謝の言葉を送ったものだ。


 ……まあ、中にはどこぞの大手の新聞社が「米軍の存在を認めさせる口実」だとか意味のわからぬことを抜かしていたが、真意は別にして、たとえ形だけだとしてもこうやって支援してくれた相手に対する言葉としてそれはどんなもんだろうか。

 まったく、日本人なのに礼儀がなってないものもいるものである。


「そういえば……、あの時も、一番義援金を大量にくれたり、一番最初に災害救助隊を派遣してくれたのも、だれでもない台湾でしたね」


「ああ……。そうだな」


 あの時、すぐに災害救助隊が日本に到着したのは台湾だった。

 そして、その支援は様々なところに行き通っており、とても我々としても助かった。

 また、その義援金額は200億を超え、世界的に見てもダントツトップ。

 中にはわざわざチャリティーイベントを起こして集めたという話もあった。


 ……台湾には、これほどの借りが出来てしまっていたのだな。


「……今こそ、借りを返すときだな。そうだな。この作戦のテーマは、“恩返し”といったところか」


「いいですね。各部隊にも言っておきましょうか? 今回の作戦のテーマは恩返しだって」


 新海国防大臣が少し笑いながら言った。


 はは、それ言ったら士気向上につながるかな?


「まあ、好きにするといい。どっちにしろ、間違いではないしな」


「じゃ、伝えときます」


「うむ。……では、」


 私は、再び目の前の面々を見ていった。


「……勝負は明日の朝から始まる。日本ここから出撃し、そして、台湾を助けに行く。……各員、おそらく、今までの沖縄戦より苦しい戦いになる。前線で戦うのは彼ら兵士達だが、我々とて、ともに戦っているも同じだ。……全力を尽くそう」










「すべては、台湾しんゆうのために!」














 その瞬間、彼等の威勢のいい返事がこの部屋に響いた…………

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