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『やまと』 ~戦乙女との現代戦争奮戦記~  作者: Sky Aviation
第5章 ~反撃開始! 沖縄・南西諸島を奪還せよ!~
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前線の者たちの意思

―PM16:50 沖縄那覇市北西100海里地点 B艦隊所属DCGやまと会議室―








「まずは……、今回、無事に沖縄が奪還されたことを、大いに喜ぶとともに、君達の、最大限の努力に敬意を表したい。……皆、よくがんばってくれた!」


 その瞬間、この会議室は歓喜に包まれた。

 もちろん、俺も思わず「ヒャッハーッ!」状態となっているのですぜ。

 理由は言わずもがな。



 ついに、沖縄の敵軍が全面降伏したからだ。



 司令部が陥落しても降伏せず、もうこれいつ終わるん?的な状況となりつつも、臨時でたっていたらしいもう一つの司令部が降伏を申し出た。

 おそらく、向こうも向こうで泥沼化を避けたかったんだと思う。


 ともかく、そのおかげで俺たちの沖縄での戦いは終わった。


 たった2日だけの反撃だった。夜通しでの反撃だったが、その苦労が見事に実った。


 航空優勢、海上制圧、陸上猛進軍。


 陸海空がマジで力を合わせた結果だった。


「これ、静かにしたまえ。……とにかく、これでこの沖縄戦も終了だ。各員、ご苦労だったな」


「この戦いで、皆無事にいれたことに、まず喜びたい」


 副長からのねぎらいの言葉である。

 といっても、顔は全然喜んでいるようには見えない。


 ……こんなときぐらいはっちゃけたって別段バチはあたらな……。


「ふくちょー! こんなときぐらいはっちゃけましょうぜ!? ほら、あのときの体験航海の漫才のときみたいにさぁ!」


 カズが俺の考えてたこと代弁しやがった。

 というかお前、もう少し口調をだな……。


「よし副長、また終戦祈念で漫才やるか!」


「航海長は黙っててくれ!」


「今こそ第二位の実力見せましょうぜ!」


「第二位だろ! 沖瀬と新澤組の第一位優勝にかなうか!」


 そう。今まで黙ってたけど、あの漫才なんでか知りませんが優勝してしまいました。

 つっても、俺あのときスパイだかなんだかをぶった押した関係で頭部負傷で、頭に包帯巻いた状態で結果発表にいったけどな。

 その後、実は優勝漫才っつうのか、優勝者はまたネタ披露するんだけど、そのときにこれクソ心配されたけど、カズが機転利かせて、





「ああ、これこいつあまりに喜びすぎて思わず後ろにあった壁にぶっ転がりましってな! ほんと、いくらなんでも喜びすぎってね!」


「ほんとね! 後ろに壁があったの忘れてゴツーンってね!」





 その瞬間大爆笑の渦よ。


 確かに壁にはぶつかりましたよ?

 その代わり、喜んでではないがね。思いっきり殴られてぶち当たったがね。


 ……で、


「……すまんがやまと、」







「ひゃっほーーーーーいッ!!!!」


「俺 の 隣 で 叫 ぶ の や め ー や !」








 さて、そろそろ俺も耳栓が必要かな?

 耳鼻科あたりで検診してもらおう。相当ダメージがひどいはずだしな。


「前世でこれなかった沖縄ですよ! 前世の雪辱はここで晴らされるわけですよ!」


「うん、お前の雪辱が晴れたのはわかった。だからまず声のボリュームを落とそうか?」


「すいませんが、無理な相談ですね」


「だが無理やりにでも聞き入れてもらおう。まずはその口をふさいでやろうか?」


「え、ちょ、むぐぅーー!!」


 俺は思いっきりその口を手でふさいでやった。

 向こうが抵抗しようが関係ないです。というか、艦魂って簡単には霊なのに空気必要なんですね。


「ーーーーッ!! ーーーーーッ!----ッ!!」


 訳:わかりました! わかりましたから離してください!


 ……まあ、もういいか。


「ほれ」


「プハぁッ! ……こ、殺す気ですか大樹さん!?」


「いつ時か俺の腹回りを締め上げてたやつが言う言葉とは思えない」


「ぐぬぬ……」


 そんな会話をしていると、


「お前彼女とイチャつきやがって俺も混ぜろおおーーー!!!」


「無茶言うな! 見えない相手になに言ってんだ!」


「そもそもどうやって混ざるつもりなんです?」


 ほんと同感ですわ。


「うるせぇ! お前だけの一人勝ち状態にはさせんぞおおおーーーーー!!!!」


「知らんわ! あと耳元で騒ぐな! 耳鼻科待った無しになるわ!」


 まあ、すでに手遅れかも知れぬ。


 と、思わず副長も怒鳴ってでも静止にかけた。


「ええい! お前らちょっと黙れ! とにかく、今はそんなことどうでもいいだろ! ……で、諸君を集めたのはもっとほかでの要件でだな……」


 一回咳払いしていった。


「なんです副長、今勝利の余韻で忙しいんですが!」


「余韻で忙しいってなんだよ! あと口を慎め!」


 副長もすっかりツッコミキャラだな。

 胃薬をそろそろ用意してやろう。ちょうどオススメのがあるしな。


「……とにかくだ。今君達を呼んだのはもっとほかの要件なのだよ。では、艦長、後は」


「え、あ、う、うん……。わかった」


 終始苦笑い状態を保っていた艦長はいきなり話を振られて少し戸惑った。

 しかし、すぐに手元のコーヒーを一口した後、こっちを向いていった。


「……実は、ついさっき国防省本部から入電があってな」


「入電? 祝電かなんかですか?」


 一人の乗員が言った。

 とりあえずすっかり落ち着きは取り戻しているが、興奮冷めやらぬ状態ではあった。

 艦長も即答した。


「半分正解だな。一応、その内容もあったにはあった。……だが、」


「?」


「……主内容はそっちではなくてな」


「え?」


 祝電じゃない電文って何だよ。

 なんだ? この後も近海哨戒よろしくってか?


 勘弁してくれよ。もう休みたいんだけど俺。


「じゃあ中身なんなんです?」


「ああ……。まあ、簡単に言えばアンケートだ」


「アンケート?」


 えっと、ここで言えば「沖縄復興に参加するボランティア募集」とか?

 そんで、オーケーだったら艦こと沖縄に言って復興支援か?


 それなら別にいいんだが……。


「復興支援かなんかですか?」


「支援……、か。確かに、支援だな。正確には“援護”だがな」


「え?」


 ……すまん、さっきから何を言っているのかわからんのだが。


 はよ。要件をはよ。さっさと勝利の歓声を上げたいのだよ。


「……そわそわ」


「やまと、何を準備していやがる」


「え? 歓声を上げる準備ですが?」


「なんの歓声を上げるつもりだ」


「ひゃっh」


「やめーや」


 こいつもう準備してやがるし。


 アカン、とめられんからはよ。要件はよ言わんとこいつ暴走してまう。いろんな意味で。


「えっと……、そうだ。援護だ」


「どこの援護ですか?」


「軍事援護ですか? 国防軍なのにそれって大丈夫なんですかね?」


「だから、それも含めてのアンケートだ」


「はぁ……」


「……で、どこに対する援護ですか?」


「うむ……」


 そういって艦長は手元に持っていた紙を見つつ、少し時間を置いていった。


「……君達にいっているとおり、軍事的援護だ」





「……南にいる、“我々の一番の親友の国”だ」





「ッ!」


 ……親友の国。


 ……すまんな、俺はその言葉を聴いて出てくる国は一つしかないんだが。


 あれだろ? あの国だろ?


「……あの相思相愛の国ですか? そういえばあそこの戦況全然聞かなくなりましたけど、どうなってるんでしたっけ?」


「……」


 その質問をされると、艦長は少し顔を曇らせた。


 ……え、なに、そんなにヤバイの向こう?


「……戦況は膠着している。戦線も北西部の河川を境に全然動かず、そこから全然動きがない。はっきり言って、互いに相手を突破できずにいる」


「と、突破できずにって……」


「それを、確か日本語で泥沼化っていうんですよね?」


「まあ、そういうことだな」


 泥沼化か……。


 だが、あの条件や戦力で戦線が膠着しているだけマシか……。


「大樹、向こうの戦力を考えて、これってどうみる?」


 カズが俺に聞いた。


 俺が軍オタだからだろうな。まあ、別にかまわん。


「はっきり言って、これは奇跡に近い。向こうの戦力は中国の比じゃない。悪い意味でな。地形状の問題もあるとはいえ、それが、なんで戦線維持ですむのか……」


「そこいら辺は、やはり向こうの死に物狂いの努力だろうな」


 砲雷長の想像だ。

 どれだけの犠牲が強いられたんだろうか。今も、おそらくそんな状況だろう。


 ……あれ? これマズくね?


「つまり……、ピンチってことですか?」


「だな。向こうとて、そう長くもつわけはない。長期戦になればなるほど、中国側が有利になるだろう」


「時間がない……、ってことですか」


「そうだ。まさに、一刻を争う状況だ」


 時間がない、か。


 確かにな。長期戦となれば、物量で勝る中国が圧倒するに違いない。

 対して、向こうは先の緒戦で海軍壊滅したらしいし、相当不利だ。

 海軍だけじゃない。空軍戦力も、今までの戦闘で大分消耗しているに違いない。

 そして、一番重要な陸軍も、どれだけ戦線をとどめさせられるか……。


「……一国の命運の一刻を争う状況……、ってか?」


「だれがうまいことを言えと。……まあ、とにかくだ」


 艦長は一呼吸置いて、質問に入る。


「……諸君に問いたい。今、かの国はピンチに陥っている。そこで我々は……」







「かの国に、救援に参ろうと思うのだが、どうかな?」








 一瞬にしてその場が静まり返る。

 その顔は、全員艦長に向いていた。


 入電の主内容。


 それが、これだろう。


 ピンチの向こうの国に助けに行くべきか否か。


 確かに、すぐに助けに行かないと後々まずいことになる。

 だが、同時に、そうなるとこっちでも準備があるし、俺たち兵士だって疲労も少なからずたまっている。

 メリット、デメリット、双方ともに見逃せないものだった。


 ……だが、




 スッ




「ッ!」


 俺は、その右手を挙げた。


 周りの視線が、一気に俺に集まる。


 それを見つつ、俺は言った。


「……いきましょう、艦長。……いえ、“行かせてください”」


 俺の純粋な意思だった。

 俺が真っ先に心の中で思ったことだった。ウソはつけない。


「……行ってくれるか?」


「はい」


「……だが、これによるリスクも多々ある。軍事に詳しい君なら、それを知らないはずはなかろう?」


「もちろんです。だからこそ、俺たちは行くべきだと考えます。このままでは、後々あの国は死んでしまいます。……艦長は、」


「?」




「俺たちの親友が死ぬのを見て、明日のメシがうまいですか?」





 艦長はフッと鼻で少し笑っていった。


「……どっかのマンガで見たことあるセリフだな」


「ええ。でも、俺がいいたことはまさしくこれです」


「ふむ。……おそらく、ヨーロッパにあるどこぞの島国の料理よりもまずいだろうな」


 うん。同意だよ。

 同意だけど、こんなときにまでマズイ料理に例えれるないし比較されるブリティッシュフードェ……。


「俺も同じです。どうせならうまいメシを食いたいですよ。……そして、向こうは、そのうまいメシどころか、マズイメシすら食えなくなる可能性もあります」


「確かにな……。では、ほかは?」


 一瞬静まっていたが、すぐに次の手が挙がった。


 見ると、それはカズだった。

 その顔は、真剣そのものだった。


「俺も行かせてください。親友を見捨てる国にはなりたくはないんでね。親友なら、危険を顧みず助けに行くのが礼儀です。それに、向こうには似たような借りがいくつもあるので」


「借りか……。かの東日本大震災や、首都直下地震のとき、一番最初に助けに来てくれたのが、だれでもないあの国だったな」


 東日本大震災と首都直下地震。

 どっちも相当な被害を出した。特に前者に限って言えばもう東北の太平洋沿岸壊滅状態だよ。

 そのとき、一番最初に救援隊が来たのが向こうの国のだし、200億なんていう大量の義捐金をくれたのはあの国だ。

 ほかにも、いろいろと助けてもらった。


 もう、向こうにはどれだけの借りを作ったかわからない。もう作りすぎじゃねってレベルだよ。


「ええ。向こうにはたくさんの借りを作っています。今こそ、それに対する“恩返し”をするべきです」


「恩返しか……」


「艦長!」


 するとまた手が挙がった。


「恩返しなら俺たちの得意分野です! 今すぐに準備しましょう!」


「おい、抜け駆けずりぃぞ! 俺も行かせてください!」


「手助けは俺たち日本人の得意分野ですぜ! 俺も参加します!」


「台湾に友人がいるんで……。俺も参加させていただきますよ」


 そこから、どんどんと意思表示とともに手が挙がりまくった。

 艦長も、それを見て満足したようにニヤッと顔を微笑ませた。

 気づけば、ここにいる人間全員からその声と手が挙がっていた。


 ……そして、人間だけじゃない。


「……で、お前はどうなんだ? やまと」


「え……? いやだ、なんて言うと思ってたんですか?」


「はは……、だろうね。お前ならそういうと思ってた」


「当たり前です。……向こうには、私たちの大切な友人がいるんです。それに、日本から行った方々も……」


「ああ……。向こうでも無事だといいが」


 向こうが海軍力増強するときに日本から引き渡した艦があったな。

 向こうでも無事だろうか。日本製だし、簡単にやられるなんてないと思うけど……。


「だがいいのか? また新たな戦場に向かうことになるぞ?」


「かまいませんよ。もとより、私は軍艦です。そのような危険を犯すことに一々恐怖していたら始まりませんよ。……あと、」


「?」


 すると、向こうはこっちを向いてニコッと笑いつつ言った。


「……あくまで私は艦ですから。その私の乗員の意志に従い、行動するのが、私たち艦の使命です」


「……艦の使命、ね」


 俺たち乗員の意思に従うのが艦の使命ね。

 まあ、俺たちがいないと動けない艦にとっちゃ、あながち間違ったことじゃないかな。


「……艦長」


「?」


 俺は艦長に対して報告した。

 左手の親指を後ろに振りつつ、


「……やまとこいつも、参加するって言ってますよ?」


「……そうか。艦の方の意思も固まったようだな」


 その瞬間、また一段と声が高くなった。


「こいつの彼女だって行きたがってるんです! これは決まりでしょう!」


「ええ。これはもう決まったも同然です。国防省に返答しましょう。“さっさと行かせろ”と!」


 どうやら、もうこの場にいるものは全員満場一致みたいだな。


 もう、一々質問を問う必要もない。


「諸君、静粛に。……そうか。君達の意思はわかった」


 一気に静まり返った後、艦長は、宣言するように言った。


「……よし、では、本艦としての、このアンケートに対する意思をまとめる。本艦は……」







「準備出来次第、すぐに向かわせていただく。……ということで、よろしいな?」








 俺を含め、この場にいた全員が、そのまとめにうなずいた。


 その後、会議に出席した者以外にも、どうするか意思を聞いたが……、













 誰一人として異論を唱えるものはおらず、



 結局国防省に例のまとめ内容が送られることとなった…………

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