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『やまと』 ~戦乙女との現代戦争奮戦記~  作者: Sky Aviation
第5章 ~反撃開始! 沖縄・南西諸島を奪還せよ!~
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誤算

―CST:PM15:30 中華人民共和国首都北京 中南海共産党本部地下情報管理室―







「林総参謀長、これはどういうことだ!? 思いっきり巻き返されてるではないか!」


 私は思わず彼に怒鳴り込んだ。


 開戦から早6日。


 順調に侵攻していると思ったら、昨日の朝から一気に攻め込まれてきてしまった。

 特に日本は顕著だ。

 衛星が使えないため詳しい状況が、現地からの報告でしかわからない。だが、その報告にも矛盾が少なからずある。現場でも相当混乱しているようだった。

 その報告では、もう沖縄はほぼ奪還されつつあるということだった。

 西部主要都市をほとんど奪還され、今ある部隊も命からがら東部に逃げているということだったが、そっちはそっちで日本の残党がいる。

 見事に、東西から挟まれる形となった。

 しかも、自慢の遼寧機動艦隊は日本の艦隊と戦闘機に壊滅させられ、航空勢力も、早朝のアメリカ軍の爆撃に大半がやられた。

 もう、地上を援護するどころか、もはや手がつけられない状態だった。

 さらに南の離島にも手がつけられ始めた。

 先島諸島にも地上支援艦が赴き、トマホークで対地攻撃を始めた。

 ……というか、元々日本のだぞ? お前らのだぞ? 容赦が全然感じられんがどういうことだ?


 日本だけじゃなかった。

 東南アジア各国にも、米軍の支援が行き届き始め、我が軍の部隊が徐々に押し返されつつあった。

 さらに、面倒なことにインドまで参加し、元々あそこは山脈が高くて侵攻するのを拒んでいたものの、海軍自体を派遣されては厄介だった。

 我が軍に残る空母部隊はあとひとつ。インドは2つの空母をまかなった機動艦隊があるが、おそらく本領土防衛戦力も残さねばならんし、1個機動艦隊しか持ってきてないだろう。


 だが、どっちにしろ厄介なことこの上なかった。

 これを差し向けられては、いろいろと作戦行動に支障が生じてしまう。


「も、申し訳ありません。まさか、ここまで早く行動を一気に起こすとは……」


「それをなぜ想定していなかったんだ!? 十分予測できたことではないか!」


「そ、それは最初の段階で敵部隊を大半破壊した場合でして、これらが生き残るなんて……」


「だから、それも想定に落ちではないのかと聞いているのだ! いったいなにを過小評価している!?」


「も、申し訳ありません!」


 それを最初から考えてなかったのか?

 先見が甘かったとしか思えない。


 だが、確かに予想外の行動をしたのは確かだった。

 当然総出で迎撃してくると思ったが、弾道ミサイルを迎撃したらそそくさと逃げていった。

 最初は怖気づいたのかと思ったが……。そうか、これのためだったのか。

 反撃に使う戦力の温存。我が軍が一点に集まっているその隙を狙って一気にまとめて叩き潰す。


 ……事実、それで沖縄方面の我が軍は壊滅的被害を受け、ほぼ死んだも同然だった。

 もはや、沖縄に対する軍事的影響力は皆無だった。


 今手元には、追加の弾道ミサイルもほとんどない。あるとしたら、せいぜい台湾に向かうものしかなかった。

 だが、これは後々のためにとっておきたかった。射程距離的には十分だが、今使いたくはない。


「……米軍も本格的に参戦した。もう後戻りはできない」


 米軍は思った以上に本腰を入れてきた。


 第7艦隊が総出できているほか、東太平洋にいるはずの第3艦隊まで出張ってきた。

 そちらは東南アジア方面に向かっており、最悪施琅シーラン機動艦隊と戦闘になるが、今のところその報告はない。


「さらに、各国は次々とアジア各国への支持を表明し……、我々は、完全に孤立しています」


「イランといったテロ国家までもか?」


「アジアに貸しを作るつもりなのでしょう。その類の国までアジア支持を……」


「……つまり、孤立無援もいいところだというのか」


 世界各国の中で、我が国を支持する国がこれっぽっちもなかった。

 せめて裏取引でテロ支援国家あたりはいけると思っていたが、全然期待はずれだった。

 それどころか、これに怒りを覚えたらしいEU各国が、軍事介入しない代わりに経済制裁を宣言。

 中心にはイギリス・フランス・ドイツがおり、その3ヶ国の共同宣言に追従する形となった。


 アジアはもちろん、アメリカ、EU、そして中東からも見捨てられた。


 どう考えても、我々だけでやれといわれているようなものである。


 孤立無援では、長期戦になったらどう考えても詰むのは我々だ。


「海・空はやられ、陸ももう持たない……。どうすればいいのだ?」


「弾道ミサイルは使えませんし……。そもそも、使えても日本の持っているのだけで……」


「……計、11隻、だな」


 こんごう型が4隻に、あたご型が4隻(うち2隻が追加発注)、ながと型が2隻、そして、最新鋭のやまと型が1隻……。


 これにアメリカのイージス艦も加わるとなると、もうどれだけの弾道ミサイルが必要なのか。


 もう最初に撃ったのでも少ししか弾着なかったのが何よりの証拠。今いるのより迎撃に使われてたのが少なかったというのに。

 これ以上撃てる弾道ミサイルもなければ、そもそも持ってすらない。


 そう。宇宙空間からの攻撃すらできないのだ。


「……例の電子攻撃はどうしたのだ? ハッキングは?」


「それも防がれました。先遣としてやまとに攻撃したハッキングは、やまと自身が処理してしまい、その報告によって日本国防省に潜ませていたウイルスも……」


「なんだそれは……。すべてがグダグだではないか」


 正直、最悪この発想も辞さない構えであった。

 ハッキングで敵の艦船をのっとれば、周辺の友軍艦に攻撃させれば、相当な大混乱になる。

 だが……、ウイルスの準備が間に合わなかったのと、向こうの行動が早すぎたとはいえ、焦って1隻だけに、しかも最新鋭のやまとに向かわせたのはまずかった。

 最新鋭なのはこういう電子機器もなのだろう。


 もう少しほかのにすべきだったか……。いまさらいっても、まさに後の祭りというやつなのだが。


「とにかく……、この後はどうする気だ?」


「とにかく、現有の戦力でどうにかやりくりするしかありません。今現在の主力は施琅シーラン機動艦隊しかありませんが……」


「北方はどうなんだ? 向こうから戦力南下させれないのか?」


「今第7艦隊の一部が向かっており、すべてを南下させることは不可能です。被害が少なからず出ることが予測され……」


「クソッ……。いろいろと手段が限られてしまっている」


 海からの支援はもう無理か。

 向こうは海洋国。それこそ海からの侵攻と海上戦力が重要となるのだが、これではもう意味をなさないか……。


「もうとりあえず、なけなしの弾道ミサイル使って東京に落とすとか?」


 一人の軍幹部が言った。

 それに反論したのは林総参謀長だった。


「アホか、向こうだってそれくらい想定しているだろう。首都なんて重防備な所に撃ったって効果はない。それに、アメリカもそうではあるが、日本のBMD精度は最大限にまで進化され、迎撃率は90%を超える。初期の弾道ミサイルだって、沖縄に撃ったものは全部落とされた。沖縄に落ちたのは、SM-3の弾数の関係で迎撃されなかったものだ」


「じゃあ……、もういっそのこと、日本の原発にテロを仕掛けて脅すとか?」


「無茶言うな。開戦前から原発周辺は警察組織や軍に包囲され、人間どころかハエ一匹は入れないほどの重防備だ。これをどう突破しろと?」


「……」


「それも……、まるで最初から知っていたかのようですよね? 我々がこうやって侵攻するのを」


「ああ……。タイミングがあからさま過ぎる。どう考えても知っていたとしか思えない」


「でも、日本に諜報組織とかありませんよね?」


「そのはずだ。だが……、念のため調べておく必要があるな」


 日本の諜報組織か。

 だが、あの日本にいちいちこういう機密情報を扱えるとは思えない。今まで何度かアメリカとかから受けた機密関係の情報を漏らしたこともある。

 日本だって、こういう情報はあまり扱いたくないはずだ。


 ……あんまり考えられんな。CIAが支援したわけでもあるまいし。


「とにかく……、現戦力を沖縄に差し向けてとにかく時間を稼げ。向こうに損害を強いて……」


 と、そのときだった。


「主席閣下! 大変です!」


 この部屋の中で情報を収集していた情報幹部が私の元に来た。

 その顔は相当焦っていた。雰囲気からわかる。


「ど、どうした? なにがあったというんだ?」


「そ、それが……」


 その後、



 私は自らの耳を疑った。



「お、沖縄方面司令部より入電で……、」










「沖縄の軍は、本日中国時間PM15:40をもって、全軍日本に降伏する……、と、報告が……」















 沖縄に派遣した部隊が、予想外の行動を起こした…………

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