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『やまと』 ~戦乙女との現代戦争奮戦記~  作者: Sky Aviation
第5章 ~反撃開始! 沖縄・南西諸島を奪還せよ!~
68/168

〔F:Mission 13〕この無人機、イカれてるわ(そのまんまの意味で) 2/2

―AM10:38 久米島北北東16海里地点 『A-1』旗艦DCGやまと艦橋―





「つ、突っ込むだと!? どういうことだ!?」


 副長が思わず叫んだ。

 そういっても、もうそれがそのまんま事実なんですがね。


 敵のステルス無人機のミサイル攻撃を迎撃したと思ったら今度は突っ込んでくるとか。

 さっさと帰れないんなら突っ込んでくるんですか。なんつうごり押しである。


「ここからだともう2分きるぞ!?」


「クソッ、仕方ない。各艦個別で迎撃、急げ!」


 行動はすぐに行われた。

 指令はA-1各艦に伝えられ、直ちに迎撃が開始される。

 蓋をされていたやまとの後部VLSがせり上がり、そこからESSMが飛んでいった。

 こっちに向かっているのは……、3機か。

 ステルスだから狙いにくい。しかも、あの暗剣って薄っぺらいからあたりにくい。


 ……まあ、ESSMは上からぶったたくからあんまり意味はなかったりするが。


“各艦ESSM撃った?”


“撃ったよ。もう誘導始めてる”


“こっちも撃ちました”


“うん。じゃあ後はしっかり誘導して。相手はステルスで見えにくいから近接戦闘も視野に”


“りょ~かい!”


 向こうも急がしそうである。

 そのうちに、ESSMが敵機に弾着した。

 ……計2機撃墜。1機まだ残っている。

 もう1分きった。今らじゃESSM間に合わない。


 そして、ここで活躍するのが速射砲です。


 ジリリリッというブザー音とともに、前にある2基の背負い式で載せられている主砲が一斉に右舷を向いた。

 1基は真横90度。もう1基はもう少し前の方向を向いている。大体2時方向あたり。

 すばやい動作である。


「主砲、目標よし、射撃用意よし、方向制御よし」


 見張りからの主砲動作確認報告。

 艦橋からもよく見える位置である。


 弾着50秒前。


 ついに、主砲がそのうなり声を上げた。


「主砲発射確認。動作正常」


 2基の主砲からどんどんとその弾が放たれていった。

 ドンッという音とともに衝撃も伝わってくる。それも連続で。


 だが、モニター見る限り敵もなかなかよけまくる。人はいってないから制約ない関係でもうお構いなしに急制動でよけまくる。

 そして、さらに低空に避退。レーダー網すら逃れる気か。


「どうだやまと、狙えるか?」


“あの動きしつこいんでそれ誰か止めてくれませんかね? うまく狙えないです”


「間に合うか?」


“大丈夫です。動きにパターンがあります。ギリギリになりそうですがなんとか”


 対空迎撃率100%いってるだけあるか。

 ギリギリでもいい。直撃よりはましだ。


 だが、



 敵はまだ手を残していた。



『ッ!? て、敵機より小型目標分離! ミサイルです! 数4!』


「なッ!?」


 敵からミサイルが放たれた。


 ちょっと待ってくれ。あちらさんミサイル2発しか持ってないって話じゃなかったっけ?

 おかしくね? これでもう4発目ですが?


「バカなッ!? 間違いないのか!?」


『間違いありません! うち2発は誘導シーカー派は探知できず、無誘導です! またもう2発は遅れて本艦前方方向に大きく外れます!』


「2発は無誘導? なんだそりゃ? と、とにかく迎撃を!」


 しかし、主砲は今敵機に向いてるからいまさら目標変更は間に合わない。

 少し射程から離れてるけど、すぐにCIWSが起動した。

 艦橋前と、そして右舷にある2基。

 すぐにチェーンソーのような唸り声を上げて弾を連射し始めた。

 すぐに右舷真横から来ていた2発は撃墜。

 弾着まで30秒。このときやっと1機の無人機に速射砲が命中。

 一時方向転換していたほうだ。

 ミサイルも、真横から来ていたものは落とした。


 ……が、


「敵ミサイル、いまだに健在。距離が若干遠すぎます!」


「真横からの敵機は!?」


「そっちも急制動でよけまくってなかなかあたりません! しかもほぼ水平でくるのですこぶる弾があたりにくいんですよ!」


「クソッ! 航海長、そろそろ回避の体制に入るぞ」


「了解」


 迎撃が間に合わない。

 そろそろ回避起動の出番だ。


 ……が、



 ここでまた問題が発生する。



「でもどうするんですか!? このまま全速力でいっても敵ミサイルの未来到達地点にぶつかりますし、このままの速度でいったら敵機の突撃を受けますよ!?」


「取り舵では……、ダメだ。これでも今からではギリギリ敵ミサイルの攻撃予測圏に入る」


「ではどうすれば? 面舵でもするんですか?」


「だが、それだと自ら敵に突っ込むことにも……」


 もろくそ回避方向が限られているということが発覚。

 取り舵とったら右斜め前から来ている敵ミサイルを交わしきれない。CIWS頼みであっても、どうせ無誘導なんだしもっと確実な回避をしたいところ。

 だけど、かといって全速だとギリギリあたりそう。

 面舵だともう下手すれば敵に突っ込むことになる。

 ……え? 減速? 敵にどうぞ狙ってくださいといっているようなものですが何か?


 敵さん、まさか狙ってた? これ狙ってた?


「タイミングはまかせろ。俺が指示したとおりにやれ」


「了解」


 航海長に任せるしかない。

 このままの速度で直進。

 弾着10秒前で、やっと1発を落とす。

 残り1発。しかし、こっちもそれなりに高速出してる関係か、うまく当たらなかった。

 その間に、敵機がどんどん右からせまる。右斜め前からは敵ミサイル。ただし無誘導。そして見事にこっちの進路上にぶち当たる。


 ……さて、どう回避しようか。


 だが、その前に、


「やまと! もう目の前だぞ! 艦首CIWSよく狙え!」


 “大丈夫ですこれもう落ちます!”


「え?」


 その瞬間だった。

 視界右側からきていた敵ミサイルが爆発した。

 やっとCIWSが落ちた。これで敵ミサイルは全部排除。

 残るはステルス……。まだおちんのか?


「速射砲まだおちねえのか!?」


「敵がよけまくってます! 中々あたらな……」


 だけど、そのときだった。


「ッ! 敵機に命中! 機体バランス崩れます!」


 やっと敵機に命中。

 右斜め前方に見えていた敵機が片翼を失い、きりもみ状態で落下……、って、


「ちょ、これこっちにそのまま突っ込むんじゃねえの!?」


 そのまんま慣性の法則の関係で突っ込んできていた。

 ちょ、ま、待ってくれ。このままじゃものの見事に上部建造物に当たるんだが?

 やばい、これどうしよう。


 と、そのとき、


「右後進最大! 左最大、面舵いっぱい急げ!」


 やっと転舵指示が来た。

 敵機が目の前だった。

 スクリューの右側を前進から一転後進させ、反対の左側のスクリューはさらに増速させて最大にする。

 反応は早かった。その瞬間、いきなり左側に体が持っていかれると、艦が一気に右を向き始めた。


 なんとなくだけど、あんまりにも急制動しすぎて船体は耐えたけどものの見事にドリフト軽くささったような感じだった。


 そして、


「よし、いまだ! 右前進最大! 両舷機関最大!」


 今度は前進最大戦速。

 同時に、若干ドリフト仕掛けていた船体を今度は無視やり前方に押し出した。

 その結果、敵機は進路修正が間に合わず……。


“イタッ!? ちょ、あぶなッ!?”


「ッ!?」


 やまとがこの声を言ったあたり、どこかに弾着っぽかったのは確かだった。

 ……だが、


 どうやら、弾着といってもマジでぶつかったわけではないらしい。


「損害報告。どこかにあたったか?」


『ダメコンより艦橋、敵機、後部甲板を“掠りました”。少し傷跡がありますが、最後部のほうなので問題ありません。敵機はそのまま海に落ちました』


「そうか……。了解した。引き続き状況警戒を」


 単に甲板掠った程度で済んだ。


 方向転換した後、一気に前方に増速したのが功を奏したらしい。

 甲板かすったくらいならなんの損害にもならない。というか、損害にするレベルでもない。弾着ってレベルでもない。


 結果、やまとはどうにかして顕在だった。


「よし……、何とかかわしたか。進路修正」


「了解。機関原速。取り舵50度」


「了解。取り舵50度」


 何とか進路修正。そのまま艦隊の隊列に戻る。


 ……ふぅ、何とか巻いたか……。


「……大丈夫か、やまと? 甲板掠ったけど」


“問題なっし! これくらいで何か問題あるとでも?”


「いや、全然?」


“でしょ?”


 今の、でしょ?の声のときドヤ顔してるのが容易に想像できる。

 ま、こんだけ元気なら問題ないでしょ。

 戦闘航行自体にはなんら問題ないわけだし、問題なしなし。


「……ほかでも落としていったみたいですね」


 ほかの艦橋乗員がモニターを見ていった。

 確かに、いたるところに撃墜を示す×印があった。

 えっと、1、2、3、……。


 ……あれ?


 1、2、3、4、……、あれ??


「……1機足りない!?」


 俺は思わず叫んだ。

 敵ミサイル分は数えられていない。それはここには映し出されていない。

 だが、そうなるとここに表示されるべきは敵ステルス機で、それは10機だ。

 だが……、



 モニター上には、9つしか×印がない。



「……ッ!? た、確かに1機たりねえ!」


 ほかも気づき始めた。

 艦長もすぐに行動に移る。


「見張り、今すぐ探せ。右舷からだ」


「了解!」


 それと同時に、俺も思わず叫んだ。


「やまと! もう1機どこにいるんだ!?」


“わかりません! レーダーには全然反応なくて……”


「じゃあ肉眼でいい! すぐに探してくれ!」


“は、はい!”


 すぐに艦橋内に現れたやまとは右舷の露天艦橋に出て行った。

 そこで、見張り員に混じって右舷方向の水平線を見回した。


 艦長はさらに指示を出す。


「艦橋CIC、撃墜数1機足りないぞ? もう1機は?」


『レーダーからロスト。完全に見失いました。現在出力を上げて捜索中!』


「最後に見たのはどこだ?」


『本艦前方。……えっと、モニターに出します』


 すぐに情報は艦橋モニターに転送された。

 敵機の最後の捕捉地点は俺たちより右前方数km地点。……って、ちょいまて。


 この先って確か……。


「……ッ! 敵機見えました! 右舷1時半方向に1機!」


「見えたか。どこに向かっている?」


「えっと……、この先は……、ッ!?」









「こんごうです! 本艦前方のこんごうに向かっています!」









「ッ!? な、なんだと!?」


 目標はこんごうだった。


 マズイ、こんごうはイージス艦だ。

 ここで攻撃されたら痛い戦力低下が起きる!


「こんごうはまだ気づいていないのか!?」


「対空砲火が確認できません!」


「太田! 今すぐ向こうに知らせろ! 急げ!」


「了解! ……旗艦やまとよりこんごう! 右舷より敵機接近! 直ちに迎撃せよ! 繰り返す……!」


 同時に、やまと本人からも警告が言った。


“こんごうさん! 右から敵きてます! 早く迎撃してください!”


“え? ……え!? ちょ、まず!?”


 こんごうさんもまじめに気づいてなかったようだ。

 敵だって、見るからに相当低空をはっている。おまけにステルス。

 こんごうあたりの世代のイージス艦はこういう低空探査に弱い。

 こんごうが乗せているSPYレーダーのSバンドは、遠距離走査性能はすこぶる高いけど、その代わりに低空探査がめっちゃ苦手という弱点を持つ。今回は、見事にそれを突かれた形となった。

 というか……、それを補うためにOPS-28D対水上・低空警戒レーダーがあるはずなんだが、それはいったい何をしていたのか。

 やっぱりそこらへんはもう性能と時代の差かなんかか……?


 同時に、こんごうから対空砲火らしい発射火炎と煙が確認された。

 速射砲とCIWS。この時点で距離的に考えてもう10秒もない。

 ミサイルの発射は確認できなかった。おそらく、もう発射したか、諸事情で撃てないか。そもそも載せてないなんてことはないはずだ。


 必死に対空砲火があげられる。

 だが、低空をマジで張っているため、マジで落ちない。というか、もうあれだ。旧日本軍の一式陸攻の超低空雷撃より低いわ。

 波かぶるんじゃねえのってくらい低い。ある意味こっちも心臓に悪いんですがそこは大丈夫なんですかねぇ……?


「弾着10秒きりました!」


「クソッ! まだ落ちないのか!?」


 副長の問いに答えましょう。さっきから全然落ちないのが見えないので?


 敵も敵で海面を器用に這いつつ回避している。敵のあのパイロット、中々いい腕して嫌がる。まあ、遠隔操作だろうけどな。


 ……すると、


「……ッ!」


 敵機がいきなり急速上昇。

 いきなりの行動に対空砲火も思わず機動が間に合わない。


 これ……、


「(……ほ、ホップアップ!?)」


 対艦ミサイルのホップアップの機動と似ていた。


 だが、あれはいくら目標を耐えやするためとはいえ、対空砲火の撃墜率を上げる結果となるだけで、今では全然使われない機動だ。

 今回だって同じだ。なんでこんな機動を……?


 ……と、その敵機が上昇しきってそこから降下しようとしていたときだった。


「ッ! 敵機に命中弾!」


 対空砲火が敵にぶち当たった。

 両主翼が折れ、これまたきりもみで落ちていく。


 ……が、


「ッ!? ま、マズイ! このままじゃあたるぞ!」


 さっき俺たちが受けたのと似ている。

 慣性の法則で、そのままの速度で今度は落下していった。



 誰でもない、こんごう自身に。



「(……ッ! そうか、これを狙って!?)」


 さっき俺たちがやられた状況を無理やり作ったのか。

 高度を高くすれば、そこで撃墜されても慣性の法則発動で、落下速度のあいまってそのまま距離自体は稼げる。

 そして……、条件がうまく合えば、こんごうのいる場所に落ちていける。

 しかし、これはあくまで条件がそろえばの話。上昇中に落とされたらむしろその場で失速して落ちる。

 それに、燃料とかに引火してそのまま爆発したら意味がない。


“こんごうさん対空砲火とめないで! 撃ち続けて!”


 やまとも思わず叫んだ。

 こんごうは返事してる余裕もないようだ。しきりに対空砲火を放っている。


 だが……、


「弾着3秒前! もう持ちません!」


 今回ばかりは……、







 その賭けは、向こうが勝ち得たといわざるを得なかったらしい。







「……ッ!」


 こんごうに敵機がぶち当たった。

 とたんに火炎があがり、爆発音が小さくだがこっちにも届いた。


 弾着した。敵機を完全にとめることはできなかった。


「こんごうに直撃弾! 敵機が突撃!」


「被害を報告させろ。向こうに被害報告を」


「は、はい! ……こんごう、こちら旗艦やまと。被害報告を。……こんごう聞こえるか? こちら……」


 通信員がしきりに声をかけるが、向こうからの反応が一切こない。


 まさか、艦橋にでもぶち当たったわけじゃないよな? もしそうだったらもうやばいぞ。

 艦橋周りにはイージス艦の主要装備ともいえるSPYレーダーが集中してる。そこが死んだらそれはもうイージス艦じゃなくてただの武装つんだデカイ艦の状態だ。


 でも、案外爆発がもう少し手前からきたように見えた。それに、結構小さめだ。

 火炎の出ている場所から見ても、たぶん艦橋はない。もう少し手前。

 うまくいけば、もしかしたら被害は比較的小さくてすむかもしれない。


“こんごうさん! 聞こえますか? こんごうさん!”


 だが、向こうからの返答はない。

 無線からも、そして、こんごう本人からもだった。


 そろそろ返答が来てもいいはずだ。なぜこない?


「こんごう! 被害を報告せよ! 聞こえないのか!?」


「おい! 向こうからの返答はまだこないのか!?」


「全然きません。向こうはだんまりです」


「クソッ、いったいどうしたんだ……?」


 無線はだんまり。


 そして、


“こんごうさん! 応答してください! こんごうさん!”


“こんごうさん、このふぶきさんの声が聞こえないとか言わせませんよ! 早く応答してください!”


“応答がない……? こちらあきづき、こんごうさん聞こえますか! 応答を!”


 ほかの艦も心配していた。

 だが、向こうはそれを無視安定だった。


 ……あれ? これもしかしてヤヴァイ?


“そ、そんな……、こんごうさん?”


 もうやまとは涙声状態ですよ。

 沈む様子はないが……。なんだ? 相当重傷でも負ったのか?


 マジで勘弁してくれ。今ここで貴重なイージス戦力失いたくないんだが……。


“……こ、”








“こんごうさぁん!!”








 思わず涙声で叫んだときだった。





“……あー、はいはい。さっきからちゃんと聞こえてるからそんな叫ばないでよ……、耳痛い”


“ッ! こ、こんごうさん!”


 やっと向こうから返事があった。どうやら何とか生きていたらしい。


 ふぅ、とりあえずは一安心だ。


“な、なんですぐ返事しなかったんですか!?”


“あれよ、返事したくてもできない的な。体動かせない意味で”


“すいませんよくわかんないです”


“え~……”


 ああ、つまりあれか。俺が前に不審者捕らえようとしたとき思いっきり体強打されて動けなくなって声すら出せないようになったけどああいう感じか?

 それなら仕方ないね。しょうがないね。


「こんごうさん、状況は?」


“あー、その声は新澤さんかな? えっと……、SSMとその周辺装備が全壊して、あとイルミネーター少し傷ついたけど、それ以外は問題なし。今イルミネーター修復しつつ消火中だよ”


「……え? それだけ?」


“? うん、それだけだけど?”


「え、ちょ被害すくな」


 SSMと近くの装備やられてあとイルミネーター修復できる程度に傷ついただけ?

 思ったより被害少ない。突入コースミスったのか?


“なんかうちの艦長さんが機転利かせて一気にタイミングよく増速させて、SSM発射機のところ通るように仕掛けたみたい。あそこ、すきぬけてるでしょ?”


「……あー、確かに」


 今時の大抵の日本艦って、やまとも含めてSSM発射機のところって2基が左右向いて並んでる関係で、そこが左右にすきぬけてる。そして、幅も少しだけどスペースある。相手の無人機は小さめだし、普通に通れるだろう。


 ……なるほど。そうすれば確かに被害はSSMが死ぬだけですむし、それ以外の目立った被害を出さずにすむ。

 それに、SSMなんて普段全然使わないし。壊れてもそれほど痛くないし。

 しかし、イルミネーターが被害受けたのは何で? いくらかそのSSMがある場所から距離あるのに。

 迎撃時に飛び散った破片がうまい具合に当たっちゃった?


 でもまあ、あの攻撃を受けてこれだけの被害ですんだのは幸運かな。


 向こうの艦長さん誰だか走らんが、自分めからナイス判断といわせてもらいます。


 そして、悪いな中国さん。


 今回の賭け勝負、どうやら俺たち、というかこんごうさん側に軍配が上がったようだな。


 一応、艦長にも伝えておこう。


「艦長、艦魂から被害報告報告ですけど……」


「ほう、そっちが早かったか。それで、向こうはなんと言っている?」


「はい。SSMが全壊して、その付近で火災発生。イルミネーターも損傷しましたが、それ以外はなんら問題ないと。どうやら艦長さんが機転を利かせてわざと無人機がSSMのすき抜けを通るように速度調整をしたようです。今火災の消火作業と、イルミネーターの修復をしています」


「そうか、わかった。……向こうもうまい具合によけて被害を最小限に抑えたか。大怪我にならずに何よりだ」


 艦長もほっと胸をなでおろしたようだ。


 ふと、副長が口を挟む。


「……というか、もう被害報告最初っからこっちに頼めばよかったんじゃないか……? いまだに無線はだんまりだし」


「ははは……、まあそういうな」


 でもまあ、一理ないことはない。


 すると、


『……こ……ごう、こちらこんごう。聞こえるか? 誰か応答を!』


 無線がやっと声を発した。

 向こうからの返答だ。遅いってのまったく。


「こちらやまと。よく聞こえる。状況を」


『ああ、やっとつながった。すまない。通信機器に不具合がおきて修復をしていた』


「了解した。それで、被害は?」


『SSM発射機が全壊、付近に火災が発生し、イルミネーターが損傷しましたが、それ以外は被害なし。現在消火作業とイルミネーター修復を行っています。戦闘航行は十分に可能と判断します』


 艦魂からの報告どおりだ。

 やっぱり、被害は結構小さくすんだみたいだ。


「旗艦いずもに指示を仰ぐ。少し待たせろ」


「了解。……こんごうへ。被害報告内容、了解した。旗艦に指示を仰ぐ。指示を待て」


『了解。指示を待つ』


 母艦隊であるA艦隊旗艦のいずもにこんごうの今後の行動の指示を仰ぐことになった。

 今回の作戦の総旗艦はB艦隊の旗艦ジョージ・ワシントンに置かれている日米共同司令部にあるんだけど、この場合はA艦隊に一任です。


 ……なお、その間、


“も~! 全然答えてくれないので死んだとか思いましたよ!?”


“いやいくらなんでもあんなので死んだりはしないから……。やまと心配しすぎ”


“……無駄に心配性なこんごうさんに言われたくないです”


“ギクッ。……あ、あはは……”


 思わずやまともこの不満が聞こえる。

 しかし、とにもかくにも、被害が少なくて一安心だ。

 火災も鎮火しつつあるように見える。おそらく、もう大丈夫だろう。




 その後、旗艦から指示を受け、「とりあえず対艦装備やられただけなら問題ないだろう」ということで、そのまま様子を見ることになった。

 ただし、もし無理がたたったら即行で護衛をつけて引き返させる。


 つまり、とりあえずはそのまま現状維持ということになった。


 ひとまず、こんごうが無事で何よりだ。

















 今後、引き続き警戒を厳にしていかないとな…………

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