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『やまと』 ~戦乙女との現代戦争奮戦記~  作者: Sky Aviation
第5章 ~反撃開始! 沖縄・南西諸島を奪還せよ!~
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〔F:Mission 13〕この無人機、イカれてるわ(そのまんまの意味で) 1/2

―8月18日 AM10:22 久米島北東17海里地点 『A-1』旗艦DCGやまと艦橋―





「……何にもこない」


 俺は思わずそうつぶやいた。


 反撃翌日。

 沖縄司令部落としてまだ降伏しないので引き続き警戒中の俺らですが、やはり案の定ほとんどきません。

 夜中になんか夜襲しかけてきた爆撃機編隊が来たようだが、ほかの分派隊が落としまくって壊滅させたようです。

 それ以来はこっちにはこない。


 ……おい、味方を助けにこんのか。なんて非情な奴らなんだ(棒。


 なので、とにかく担当海域を周回しつつ警戒中。

 もう朝も過ぎて日中なんだけど、敵の反応はなし。


 もうこれしばらくこないんじゃないかな。もう来てもいいころだろ日中だというのに。


「……全然敵が来ないな。奴ら諦めたか?」


 艦長もこの考察だった。

 さすがにこなさすぎと感じたんだろう。

 ……やっぱりもう沖縄におきすぎたんだろうな。うん。


「しかし、敵がここまで反応がないというのは……。一体何を考えているのでしょうか?」


 副長が聞いた。


「そうはいわれてもなぁ……。しかし、何度も言うが警戒態勢は万全にな」


「わかってますよ。もう昨日みたいな目にはあいたくないですからね」


「うむ、そうだな」


 昨日のこと。

 魚雷奇襲からのハッキングだな。


 ……はは、もうあんなの勘弁だけど、今戦争中だからああいうのがまた来るんだろうな……。


「(……しかし、こうも中々こないのはどういうことだ……?)」


 戦力がないとはいっても、こうも簡単に諦めれるものなのか?

 こんなあっさりなら、一体なぜにこうも執拗に沖縄狙ったのかが意味わからん。

 そこまでしてほしかったものを、こうも簡単に離すか……?


「……まだ、終わらないな」


 まだ来る。時間はたったし、そろそろきてもいいころだ。

 一応、向こうにも警告を……、


 “定期報告お願いします。皆さんどうですか”


 ……と、するまでもないっぽいか。


“こちらいかづち、全然レーダー反応なし”


“了解です。引き続き警戒を”


“ふぶきさんより旗艦へ。対空・対潜反応なし。ぶっちゃけ暇です”


“了解です。あと最後のはいりません”


“いなづまより旗艦、敵さんが出てきてくれませんどうにかしてください”


“無理よ。敵さんに言ってよ”


“あきづきよりやまとさんへ。おそらくそれは私の魅力に惹かれて逃げていってしまったのね”


“それ私に対する報告ではないよね? あとそれ惹かれるじゃなくて引かれるの間違いでしょ? なんで逃げるのよ”


“それは思っていても言わない約束”


“こんごうさんより旗艦やまとへ。……う~んと……、”


“?”



“……えーっと……、ほかに何のネタあったっけ……?”


“無 理 に ボ ケ な く て い い で す”


「 前  言  撤  回 」


 おいこら。あんたらいくら暇だからって慢心乙すぎる。

 そろそろ来るぞ? マジで警戒しておきなさいよあんたら。


“でも、ほんとに全然こないよ? どれだけ目凝らしても鳥の一羽も見えないこの状況……”


“まあ……、そうですね”


“ん~……。ていうかやまと”


“はい?”


“……もう頭大丈夫? ハッキングの後遺症残ってない?”


 こんごうさんらしい心配事である。

 はっきり言おう。あの苦しみようは聞いててトラウマ。

 結構高いわけではないんだがね。むしろ本人曰く周りに心配かけまいと結構声耐えたみたいなんですがね、むしろそれが聞いているうちに地味にきつくなってきましてね。

 途中こんごうさんがこっちに艦を乗り移ってきてやまとの介護したみたいだけど、まあハッキングって言うコンピュータ関連だから艦魂がどうとできるものではないわけで。

 こんごうさんは他の艦だから、やまとのコンピュータにはさすがに干渉できないわけですわ。

 まあ、そのあとカズが神業してくれたおかげで何とか事なきを得たけど、あの後のやまとは結構衰弱してたみたいで。

 俺も心配になって、艦長が俺の表情から向こうの状況を察したらしくて、操舵交代のときに即行であいつの元にいって一緒に介護した。

 ……結局、その日はずっと“主に内部機器的な意味で”疲れてたけど、あのときにほかの物理的攻撃がこなかったのが幸いだな……。

 あんな状態で攻撃されたらさすがにまずい。周りに護衛がいるけど、敵の攻撃によるからな。


 しかし、今ではこんな感じで完全復活だ。とりあえず胸をなでおろすことができる。


“こんごうさんも心配性ですね~。もう大丈夫ですって”


“いや、でも……、相当きつかったように見えたから……”


“……心配してくれてありがとうございます。でも、本当にもう大丈夫ですから”


“そ、そう……。なら、”


“?”


“……わ、私が付きっ切りになってあげても……”


“顔赤くしてるところ申し訳ありませんけど百合は私お断りしてますので”


“あ、あれ~……”


 心配性な彼女である。しかし百合性の疑いが出来てきた。……まあ、おそらく冗談だろうが。そんなのもってるようなのは全然感じ取れんし。

 しかしまあ、普段はさっき見たくこんな戦地でもボケるようなゴーイングマイウェイを発揮するけど、こんな仲間思いの一面もあるからあながち嫌いに離れない。むしろ好みだし好きになれるタイプでもある。


「……やまと、そろそろ敵が来る時間帯だ。警戒よろしく」


“了解です。……といっても、さっきから全然敵がきませんけどね”


「まあな……。ここまでこないのは少し異常だがな」


“ほかの地域に分配するので全然足りないんじゃないですか?”


「ほかのほうにね……」


 そもそも、自分の周りの国に一斉に侵略するなんて戦略的に考えたら愚の骨頂ともいえるものだ。

 だって、兵力がなければ全然戦況不利になるし、兵站の面もある。

 中国は確かにアジア最強とも言える“物量を”誇るけど、だからってこんな超多方面に侵略することなんて想定してないだろう。

 ……もう早くも限界が来たか?


「しかし、まだこっちにある可能性だってある。油断は禁物だ」


“わかってますよ。しっかり空高く、そして海岸線も……”


 と、そういったところで、やまとの口は止まった。


“……あれ?”


「? どうした?」


 俺の問いには答えなかった。

 しかし、感じとることは出来た。


 やまとは今、真剣に海岸線を見ているだろうということは。


 ……なんでかは聞くな。あれだよ。何でか知らんけど電話越しに向こうが青ざめてるの感じ取れたりとかするだろ。ああいう感じだよ。よくあるだろ?


 少しして、確信を持ったらしい。やまとがやっと口を開いた。


 “……今、敵の反応がありました”


「え? ……でもCICから報告ないぞ?」


“一瞬だったから気づいてないのかもしれません。でも、今確かにいました。こんごうさん、そっち何か反応ありましたか?”


“え? ……いや、なにも見てないよ?”


“え……? そ、そんなはずは……”


「……鳥と間違えたんじゃね?」


“今まで鳥見まくりましたけど、明らかにそれとは違います。大樹さん、今すぐ伝えてください。早く!”


「お、おう……」


 その声、うそとか優柔不断とかその類ではないな。

 確信は持っていると見た。いいだろう。それを信じてみることにする。


「艦長、やまとが……」


「うん? 君の彼女がどうかしたのかね?」


「艦長までそのネタいいですk」


「やっぱり彼女だよな!」


「ああ! 文句ないよn」


「ちょっと黙れ!」


「(ショボーン)」


 今そんなことを言ってる暇はないのでな。とにかく報告だ。


「今やまとが知らせてきました。一瞬、何かが見えたと」


「なに? 本当か?」


「はい。鳥とかそういう類の見間違いでは断じてないと。はっきりいってましたので、おそらく自信ないということではないようです」


「ふむ……、しかし、レーダーには何も……」


「あいつ曰く、写ったのは一瞬だからおそらく気づいていない可能性があるかもしれないと。あと、俺としてはおそらくあんまりに小さくてコンピューター処理されたかもしれないと……」


 あんまり小さな反応まで一々表示したり処理していたりするときりがないので、ある程度小さすぎるものはコンピューターが勝手に処理して表示しないようになっている。

 気づかなかったというわけでなかった場合、おそらく考えられるのはこれだろう。


「念のため、FCSレーダーの出力を上げて、より詳しい索敵をすることを申言しま……」


 と、そういいかけたときだった。


“……ッ! み、ミサイル!?”


「ッ!?」


 同時に、艦内無線も突然声を発した。


『艦橋CIC! レーダーに反応! 小型目標多数! 数20! まっすぐ本艦隊に突っ込んでくる!』


 CICから。これはカズの声だった。

 切迫していた。相当いきなりのことだったに違いない。


「なッ!? 対艦ミサイルだと!? いきなりか!?」


 副長も驚愕の表情だった。

 しかし、艦長もすぐに指示を出した。


「CIC艦橋、どこから来る?」


『本艦右舷真横。3時方向より接近。距離65海里マイル、M2,2!』


「えっと……、って、もう3分きってるぞ!?」


「おいおい、航空機すら探知できなかったのか!? 相手はステルスか!?」


『わかりません。とにかく、対空戦闘を開始します。僚艦に警報を』


「了解した。CIC指示の目標で攻撃開始。同時に発射母機の捜索を急げ。……後藤君、すぐに艦隊各艦に警報を出したまえ」


「了解。……旗艦やまとよりA-1各艦へ。対空戦闘開始。対空戦闘開始」


 すぐに行動は起こされた。

 各艦それぞれで対空戦闘準備。やまとの前部VLSからもSM-6がまず放たれた。

 本当はここはSM-2を撃つべきところ。だけど、やまとは米軍で最新鋭の対空ミサイルであるSM-6の技術を譲り受けることに成功して、SM-2の代わりとしている。

 ……つっても、さすがにその技術まるまるくれるわけはなくて、しかも購入制。

 弾道ミサイル迎撃能力を取っ払ったダウングレード版だけど、その分は日本の技術で変わりにSM-2以上の迎撃能力を持たせた。

 ついでに、やまとの対空防御システムと組み合わせた結果、今のところ外れ無しであります。


 ……え? 訓練でESSMとか速射砲とか使ったろって? どんなときにも対応できねばならんのです。

 あれはSM-6が外れた設定なのです。仕方ないのです。


“こんごうさん、慎重に狙ってください。大丈夫です。相手はたったの20発ですから”


“わかってるって。任せといて!”


 今最初に迎撃に当たっているのはやまととこんごうの2隻。

 艦隊防空ミサイルだから、これを放てるのはイージス艦であるこの2隻だけ。


 艦橋に設けられたモニターにも、そのレーダー画面が送られてきた。

 それを見つつ、航海長は時間を数える。

 65海里と結構近かったから、結構すぐに弾着する。


「5……、4……、3……、………弾着」


 その瞬間、モニターのレーダー画面上から一瞬にして敵の空対艦ミサイルはきえた。

 しかし、一部残っている。2発だけ。

 この針路……、どっちもふぶきさんを狙ってやがる!


「2発外れた。ふぶきに向かっているぞ!」


“ふぶき、そっちにいったの外れたわ! すぐに迎撃して!”


“了解! ……って、なんだたったの2発か。大丈夫、これくらいならすぐに落とせる”


 その後はまさに有限実行。

 この時点ですでに弾着1分を切っていたが、ESSMで1発、そして速射砲の連射でもう1発落としたので、被害はこれっぽっちもでることはなかった。


 まあ、そこは最新鋭の汎用駆逐艦か。対空戦闘能力自体はほかの汎用駆逐艦と比べても折り紙つきだな。


“……よーっし! 2発撃墜確認!”


“オーケー! ナイスふぶき!”


“ふっふ~ん、私だって曲がりなりにも最新鋭なんだからね! 2発くらい落とせなくてどうすんのよって話よ”


 うむ。まったくではある。


 ……と、するとそのときだった。


『艦橋CIC、敵航空機の詳細判明。敵は無人攻撃機、『WJ-700“暗剣”』と判明。機数10機』


 CICからだ。敵戦闘機の詳細だった。


『WJ-700“暗剣”』は中国が保有する最新鋭のステルス無人攻撃機で、数年前から正式に配備が進められているものだ。

 中国製といえど、中々ステルス性は抜群のようだ。現に、さっきまであのやまとのレーダー網でさえかいくぐって一瞬移った程度で済ませた。

 それも、写ったとはいってもコンピューター処理させられるほど小さすぎたか、あまりに一瞬だったので見逃したかくらいさせた。

 だが、その弱点として、航続距離と兵器搭載量の少なさがある。

 まず航続距離だけど、がんばって飛んでいっても1000km届くか届かないかしかない。

 もちろん、増槽もつけられるしそれを使って航続距離を伸ばすことも可能だが、当たり前だがその場合は増槽は機外装備となるのでステルス性がもろくそ死んで持ち前の高いステルス性が生かせない。ゆえに、中々装備させることが出来ないのだ。

 また、ステルス性強化のために機体自体を軽量化もかねて小型化したおかげで、現状使える多種多様のミサイルが大量に載らなくなった。

 どれだけがんばっても、対艦ミサイルか対空ミサイル、どちらか2発までしかのせれない。

 尤も、これは今後ミサイル自体の小型化改良でどうにかしていくみたいだけど、今はまだそれは正式には実現していないのが現状だ。

 しかし、俺たちにとってはとても厄介な脅威であることは確かだ。

 事実、今こうやって俺たちに直前まで見つかることなく接近し、そして攻撃を加えることが出来た。

 しっかり迎撃できたのが救いだ。危ない危ない。


「『WJ-700“暗剣”』……。やはり、敵はステルスだったか」


 艦長がいったところを副長が返した。


「しかも、相手は無人機で最新鋭の機体……。厄介なのがきていましたな」


「うむ。だが、あれは多くの対艦ミサイルをつめない。計20発。1機につき2発全弾撃ったとしても、これでもう攻撃をすることはできないだろう」


 事実はそのとおりで、モニターに移っているレーダー上にいる10機の無人機たちは、最初の場所、対艦ミサイルを撃ったらしい場所とされる小型目標が最初に探知された空域あたりでグルグル回って滞空していた。

 しかし、今ここから帰ろうにも、もう航続距離的に無理じゃね?

 この場合どうするんかね? やっぱり海中投棄か?

 でもなぁ、せっかくの最新鋭機こんなところで無駄にしたら向こうとしても結構痛いと思うんだが……。


 まあ、その前に報復という名の迎撃に入りますが。


「とにかく、このまま返すわけにもいかんな。CIC艦橋、目標を変更しろ。対空目標を、敵無人機に設定」


『CIC了解。対空目標を敵無人機に変更し……、ッ!?』


 すると、一瞬向こうの復唱が止まった。

 艦長が状況報告を求めると、それに結構切迫した声で答えた。


『か、艦橋CIC! 敵無人機に新たな動き!』


「動きだと? 撤退でも始めたのか?」


「ま、こんなところから撤退しても途中で海中にポチャンだろうがな」


 思わず航海長が軽口を叩いた。


 ……しかし、


『……いえ、』


 俺たちは、その後の報告に思わず自らの耳を疑うことになる。


『……その逆です。敵無人機が……、』







『全機、反転して全速で本艦隊に突っ込んできます!』










 無人機が、予想外の行動を始めた…………

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