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『やまと』 ~戦乙女との現代戦争奮戦記~  作者: Sky Aviation
第5章 ~反撃開始! 沖縄・南西諸島を奪還せよ!~
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〔F:Mission 12〕電脳世界の攻防

―PM13:40 粟国島西南西8海里地点 警戒分派部隊第1分隊 旗艦やまとCIC―





「担当の警戒海域到達。各自、対潜・対空警戒を厳に」


 砲雷長の指示が入った。

 対空レーダー再確認。しかし案の定これぽっちも反応なし。

 周りも似たようなもの。各々で確認するけどまったく変わったことはなかったようです。


 まさかの魚雷奇襲からの神回避から約1時間後。


 大樹と、あと実質俺との奇策で何とか回避した俺たちは、そのままいくつかの分隊に分かれて各海域に赴き陸に対する攻撃の警戒をしていた。


 ちなみに、その分派した艦隊の一つである俺たちはこんな感じ。


【A艦隊近海警戒分派艦隊第1分隊『A-1アルファ・ワン』】

旗艦:やまと型DCG『190“やまと”』

ミ逐:こんごう型『173“こんごう”』

汎逐:ふぶき型『123“ふぶき”』

あきづき型『115“あきづき”』

むらさめ型『105“いかづち”』

      『107“いなずま”』


 以上、6隻。


 こんな感じの規模の部隊がいくつかに分かれています。


 そんで、今俺たちはその担当海域でその警戒に当たることになりました。

 何かあったら即報告。……といっても、来るといっても空軍戦力でしょうな。

 まさか壊滅状態の海軍が出てくるわけあるまいて。


「よし……、ほかの艦も付いてきているな?」


「ぴったりと。ストーカーの如く」


「やめたまえ。というか一応我が艦が中心にいるんだがどうみたらストーカーになるのかね?」


「むしろ取り囲まれたか弱い女の子」


「何を言っているんだ君は」


 横で変な漫才が行なわれているが、俺はそんなには無視させていただこうかね。

 俺は忙しいのだよ。オペ担当だからレーダーとか凝視してないといけないのでな。


 ……さっき魚雷避けるときいろいろ魚雷機動コース測定とか増速タイミング計算とかいろいろやりまくった関係ですでに疲れてるんだがね。


「……そろそろ空からのお出ましが来てもいいころか……」


 砲雷長が言った。


「そうですね。時間的にもそろそろ第2派来てもいいころですし、たぶんまた攻撃機じゃないですかね?」


「攻撃機ねぇ……。それをこの鉄壁に封鎖された沖縄本島に送り込むのか? どれほど現実的に考えても無駄にしかならんと思うが」


「まあ、承知の上でしょう……。やらないわけにはいかないでしょうし」


「ふむ……。まあ、成り行きに任せるか」


 とりあえず、今後の展開はそのときの状況に任せるか。


 すべては自然の流れに。

 すべてを神の定めた道に。

 我の身を、この世の真理の流れに任せよう。


 ……いきなり何を言っているんだろうか自分は。


「……にしても、ほんと何もこないな」


 レーダーにはさっきから味方以外何にもいない。

 沖縄本島のほうも、今頃那覇市に突入して司令部突貫でもしてるんだろうが、その上にもいるのといったら味方の戦闘機とヘリだけ。


 ……おい、こっち何も来ないぞ。潜水艦すらいないんだが?

 さっきの魚雷攻撃のおかげでソナー感度上げたり、あと哨戒の対潜ヘリシーホークもソノブイを追加で大量投下してもう隙間がなくなってるはずなんだがな。


 ……ここまで来るとなると、もうここいら辺にはいないと見て間違いないかな?

 しかし、油断は禁物。その結果さっきみたいになったわけだし……。


「(……さて、そんじゃこのまま警戒を続けて……)」


 そう思いつつ、目の前のディスプレイを見たときだった。


「……ッ!」


 いきなりディスプレイ上に表示が出た。

 警告音もでる。けたましく。


 その表示には……、






“WARNING!! Invasion Unknown Virus”


 警告、不明のアクセス感知……。








 ……え?


「……不明のアクセス?」


 俺は一瞬頭がハテナでいっぱいになった。

 不明のアクセス? Virusウイルス


 ……ちょっとまて。これってまさか……。


「これは……、まさか、ハッキングか!?」


 砲雷長が叫んだ。


 マジでか? 軍艦に対してハッキング? 一体何を考えている?


「まずい! このままではやまとのメインコンピューターがいかれるぞ!」


「ここCICだぞ!? 簡単にはいれるもんなのか!?」


「んなの知るか! 沖瀬、対処できるか?」


「了解。やってみます」


 すぐに目の前に薄型のキーボードを引き出し、タイピングしまくってコンピューター操作。

 ディスプレイも、すぐにレーダー画面から切り替わり、ハッキング……、正確にはクラッキングだけど、それ関係の情報が映し出される。


 ……おいおい、もうCICのコンピューターの中に侵入してるぞ!?

 どういうことだ? いくらなんでも行動が早すぎる!


「もうCICもメインコンピューターに入ってる。今ウイルスの所在を確認中です」


「このときはどうすればいいんだ? コンピューター任せか?」


 砲雷長、こういうタイプの事態弱かったっけ? 知らんけど。


 その間にもキーボードをうちまくって敵の侵入を妨害する。

 各メインサーバーに防壁を大量に敷けるだけ敷き、ウイルスの侵入を遅らせる。

 防壁解凍。擬似エントリーも展開。これは仮に回線を物理的に切断できない場合、侵入したウイルスを惑わせることができる。

 といっても、これはあくまで時間稼ぎ。ハッカー側、今で言う俺が状況を確認するのに使う。


 うまくいった。擬似エントリーが大量に展開され、ウイルスの侵攻が遅くなる。今のうちだ。


 さて、どこに向かおうとしている。あと、こいつの正体はなんだ?


 逆算をする。このウイルスの来た道をたどれば……、


「……よし、いった。……、ッ!? こ、これは……」


 そのディスプレイの表示に出た内容に、俺たちは驚愕することになる。


 これ……、












“Ministry of Defence′s Date Link”






 国防省戦略データリンク……。













「こ、国防省ッ!?」


 ンなアホな!? 向こうとデータリンクをつなぐデータベースにウイルスが仕込まれてたってのか!?


「国防省だと……ッ!? サーバーに仕込まれてたのか? 一体なぜ?」


「わかりません。しかし、とりあえず旗艦と、国防省に伝えといてください」


「わ、わかった。……艦橋! 情報はそっちにもモニターがいってるはずだ。旗艦いずもと国防省に……」


 砲雷長がディスプレイを凝視しつつすぐに艦橋に伝えた。


 その間にも、今度は敵ウイルスの侵入先を予測する。

 動きが単純だ。ウイルスの足跡を追えば、大体予測は付く。


 えっと……、ッ! こ、これは……ッ!


「ま、マズイ! こいつ、射撃管制装置のメインプロセッサに向かってやがる!」


「し、射撃管制装置!?」


 やまとにのせられている射撃管制装置。

 やまとでは、その制御をCICに任せている。

 コンピューターもここにある。


 それに侵入するということは……、


「ま、まずいぞ。射撃管制装置を乗っ取られたら……」


「ええ。……わかりましたよ。あいつらの目的」


 射撃管制装置を狙う目的は一つしかない。

 ……これしかないんだろう。


「なに? どういうことだ?」


「犯人が中国なのはまず間違いないでしょう。国防省にも、事前にウイルスを仕込んであって、やまととデータリンクを取っているときにその通信経路を使って侵入する仕組みになっていたのかもしれません。……そして、」


「?」


「……あえて、最新鋭艦の射撃管制を乗っ取ろうとしている。つまり……、自分達の海軍が壊滅したなら、“敵を利用する”」


「ッ! と、ということは……」


「ええ。おそらく……」









「やまとを利用する気でしょう。射撃管制を乗っ取って、“自分の味方を攻撃させる”つもりです」










「なッ!?」


「そ、そんなことできるのかよ!?」


 CIC内が一瞬にしてパニックになった。

 だが、無理もない。これしか考えられないしな。


 このときはまずは……、


「とりあえず、CICと通信機器を結ぶ回線メインケーブルを切断するしかありません」


「回線って、CICとのか?」


「おそらく、外部からの侵入でしょうし、まず通信を切れば……、」


「では、すぐに切断しろ」


「今やってます」


 すぐにキーボードを操作し、通信機器との回線を切断する。

 よし、これで何とか……、


「……ッ!? こ、効果なし!?」


 ウイルスの動きが止まらなかった。

 どういうことだ!? 回線切断したのにウイルスが活動を停止しない。もう通信機器は用をなしていないのか?

 つまり、自立して行動している?


「? どういうことだ?」


「おそらく、もう遅かったということでしょうか。……あー、あと今その回線の流通情報の履歴を見てみましたが、その中には何の異常もありません。もうウイルスは侵入しきっています。それに、通信コマンドも確認できません」


 回線を切断すれば、外部からの侵入は不可能になる。

 基本、ハッキングを受けたときはこれを即行でするんだけど、今回はもうそれは遅いらしい。

 ウイルスに複数性が確認できない。おそらく、単体だ。

 今さら回線切断しても、こっちに乗り移ってるから生き残ってて意味ない。


「どういうことだ? 外部からの通信は拒絶されているということか?」


「そういうことになります」


「では、ウイルスはどうやって今この行動を……」


「じゃあ、とりあえず物理的にでも……」


「ですから、今からやっても遅いですって。それに、今ここで通信機器の回線切ったら、ほかとのデータリンクすらできないですし……」


「じゃあもういっそのことCICの電源切ったらどうだ?」


「この戦地でCIC電源切ったら自殺するのと一緒ですよ? 戦闘できないですし」


「うッ……」


「……では、どうすればいい?」


 砲雷長が聞いてきた。


 いや、そんなの俺に聞くか……?


『……あー、CIC艦橋、聞こえるか?』


「? なんだ? こっちは忙しいから要件は5秒で頼む」


『いや、無理ですって……』


 でもマジで要件は手短くな。こっちは忙しいのでな。


『まさかと思って念のためにお伝えしておきたいと。……新澤少尉がいっていたのですが、艦魂の方、さっきから……』







『頭が少し痛いってうめいてるらしいんですが、これってもしかして……』







「……はぁ!? なにそれ!?」


 おいちょっとまて。この状況から見て、この場合の頭痛ってどう考えてもハッキングの影響だよな?

 なに、艦魂にもその影響入るの!? それなんて悪堕ちフラグだよ!?

 しかも対象が対象だけに全然笑えないんですけど!?


「おいおい、こんなときに俺の大好きな悪堕ちフラグだされてもうれしくねえぞ!?」


「お前好きだったのかよ!? いや、今はそんなことどうでもいい!」


 とにかく、ウイルスを早くとめないといけない。

 ウイルスは徐々に防壁を突破しつつある。防壁の構成コードのパターンを学習し始めたか?

 だが、国防省側からの通信がされていない以上、このウイルスが自立的にやっていることになる。こいつ、単体なのになんつう演算能力もってやがるんだ?

 クソがッ、ふざけてんじゃねえぞ中国め!


「今防壁と擬似エントリーを展開しているけど、このままじゃ確実に遅かれ早かれ乗っ取られる。どこかでウイルスを処理するか、まず捕まえるしかない」


「だがどうやってやるんだ? お前、その技術あったか?」


「……フフッ」


「え?」


 おいおい……、そういえばいってなかったっけ?


「いってませんでしたっけ? ……俺の親父、『ハッカー』なんすよ。国防省勤務の」


「……え!?」


「あれ? マジでいってませんでしたっけ?」


「初耳情報だが?」


「あ、そうでしたか。まあでもそういうことですんで。後は察してください」


「お、おう……」


 俺の親父、ハッカーでいろいろと活躍してたからな。

 あと、ハッカーって聞いてネガティブな発想をするやつが多いが、むしろそれはクラッカーの類だから。

 ハッカーって元々はいい方面の言葉だから。

 その関係か、たまにハッキング関係についていろいろ聞いていたからな。あと、そのおかげで独学でハッキング能力もらっちまったし。


 ……もちろん、悪用する気はない。する勇気もないし、俺にとってのする対象もない。


「……艦橋につないでください。後、大樹出してください、大樹を」


「え? 新澤少尉をか?」


「そうです。早く」


「あ、ああ……」


 とりあえず、あいつにつないで無線とのやり取りができる体制をとる。

 即行であいつはでた。あいつの声が無線機に響く。


『どうしたカズ? なんかようか?』


「ああ。艦魂さんに、少し協力を要請してくれ。できるか?」


『あいつにか? ……できないことはないが、向こうそれなりに苦しそうなんだが……』


「どんくらい?」


『例えるなら、アイスクリーム頭痛がしばらく続いてる感じ』


「なにそれキツイ」


 そりゃ遠まわしにまずいって言ってるようなもんじゃん。


 ……時間がないな。


「とにかく、向こうに協力してもらいたいんだ。できるか?」


『………。今回答来たぜ。中身によるって』


「中身か……」


 これできるかな……。コンピューター関与するんだが……。


 ……いや、迷ってる暇はない。


「艦魂ってさ、確か武器の制御掌握できたよな?」


『ああ。コンピューター経由だが』


「つまり、やろうと思えばコンピューターの制御のっとれるって事だよな?」


『それが何だ?』


「……簡単なことだ」









「こっちのタイミングに合わせて、防壁と擬似エントリー全部下ろしてくれ」








『……え!? 全部!?』


「ち、ちょっとまて! 今下ろしたらウイルスが射撃管制装置のメインプロセッサに……」


「それを使うんですよ」


「え?」


 それこそ、こっちの思う壺というやつだ。

 むしろ、狙いはそれだ。


『……説明を要求する。どういうことだ?』


「説明の時間がない。艦魂さんも聞いてる?」


『聞いてるも何も、艦内無線さっきからききっぱだよ』


「ならいい。向こうに直接話す」


 とりあえず、俺は見えるはずもない艦魂さんに伝えるような口調で言った。

 聞いていることを祈る。まあ、大樹が言うんだし間違いはないはずだ。


「いいですか? 艦魂であるやまとさんはコンピューターを独自に制御できます。それを使わせてください。俺が指示するタイミングで、その防壁と、擬似エントリーすべてを下ろしてください。そして、射撃管制装置のメインプロセッサとの直結経路を丸裸にするんです」


『……目的聞いてるぞ?』


「簡単な事です。罠を仕掛けます」


『罠?』


「ああ。ウイルスの動きは単純です。おそらく、射撃管制装置を乗っ取るという命令以外受けていないので、このときの複雑な動きが出来ないんでしょう。艦であるあなたが理解するのには少し難しい話かも知れませんが、とにかく、単純な動きしか出来ないんです」


「で……、だからなんだというんだ?」


「ですから……、その進路上に、いわゆる“落とし穴と上から落ちる落下格子”を仕掛けるんです。今から急いで作成しますが、それにウイルスを閉じ込めます」


「つまり、エサに飛びついたところを捕獲するということか」


「そういうことです砲雷長」


「だが、お前のほうで下ろしたりしないのか?」


「ウイルスに悟られる可能性があります。最悪、その時の指令コードに乗って一気にメインプロセッサに侵入される可能性も。それだと、罠も作動しません」


「なるほどな……。予期せぬ操作をさせることによって、ウイルスの行動を限定化するのか」


「そういうことです。……どうです? できますか?」


『……』


 少しの沈黙。

 おそらく、向こうに聞いているんだろう。


 ……どうだろうか? 難しい仕事ではないはずだが、人間の感覚が通用するとは限らない。

 ハッキングされて今少し苦しい状況だ。どうなるか?


『……カズ』


「?」








『……やってやるってさ。お前に託すぞ?』








「……ヘッ、そう来るのを待っていた!」


 大樹の言ったとおり、中々強いお方だ。

 さすがだぜ。それでこそ艦魂だ! 艦魂のこと何もわからんがな!


「よし、なら俺のタイミングをしっかり聞いて置くようにいっておいてくれ」


『……了解だってさ。頼んだぜ』


「まかせろ。ここからは俺の得意分野だ!」


 無線が切れる。


 よ~っし、ここからは俺のターンとさせていただこう。


 勝手に人んとこの艦に入ってきやがって、いやらしいことをしやがる。


 さっさと処理せねばならんな。“処理”をな。


「擬似エントリー、防壁間に大量の各種トラップ作成。偽造防壁コマンド偽装流出。……単体だけど、できるだけ広範囲に……」


 わざわざ防壁コマンドをウイルス側に流したのは、ここで作ってるのがあくまで追加の防壁だと勘違いさせるため。

 向こうに悟らせてはいけない。やれることはすべてやる。

 単体だからといって場所を絞ってたら、いざ回避されたときマズイ。

 チャンスは一回だけだ。これにかけるしかない。


「……よし、トラップ作成完了。動作確認。擬似コード投下」


 ためしにそのトラップのところにウイルスに似せたコードを送り込んで動作確認。

 ……成功。よし、ちゃんと動く。


「準備完了……。やります」


「……いけるか?」


「いけるか、でなくて、やらないとまずいんです。俺と……、やまとこいつを信じてください」


「……わかった。頼むぞ」


 準備はすべて整った。


 いったん深呼吸。


 ウイルスは依然として防壁を突破しつつ射撃管制装置のメインプロセッサを目指していた。

 ……やはり、動きが単純だ。やれる。


「(……ちゃんと聞いてるよなやまとさん……)」


 こっちのタイミングに合わせてくれないと面倒だからな……。


 ……頼む、聞いててくれ!


「……今です! お願いします!」


 俺がそういった。

 その瞬間だった。









“お願いします! 託しますからね!!”










「? 声?」


 一瞬誰かの声がした。女の人?


 だが、その思考もすぐに途切れる。


「……ッ! 擬似エントリー、防壁消失! ウイルス行動再開!」


 やっぱり、聞いてやがったぜ!

 サンキューやまとさん! これで後はこっちのもんだ!


 やっぱり、ウイルスは直結経路を通ってきやがった。

 単純……、単純すぎる!


「よしきた……。そのまま……、そのまま……」


 トラップはその先。そのまま直線でいってくれよ……。


 そのまま……、そのまま……。


 ……よし、キタァ!


「エリア侵入! トラップ発動、ダミーウォール展開!」


 すぐにウイルスの周りに壁を作り出し、ウイルスを閉じ込める。

 さらに上からどんどんと大量に防壁を作成。分厚い壁を作成し、完全にウイルスを動けなくした。


 ウイルス検出確認。動作停止。


 ……よし、これでいい。

 俺は若干息遣いを荒くしていった。


「……ウイルス……、捕獲成功。これで、後は煮るなり焼くなり、好きに料理できますぜ!」


「ヒャッホウッ! やったぜ!」


 CIC内が歓声に包まれた。

 無線からも、艦橋が歓声に包まれてるのが確認できた。というか、まだ繋がってたのか。俺切ったはずだったんだがな。

 ……もしや、聞かせたかったのかやまとさん? 艦橋も声を。


 はは、まあ、別にいいけどな。


「後は……、もう大丈夫なんだな?」


「大丈夫です。完全に閉じ込めました。今ウイルスのデリート処理をしています」


 ウイルスは今現在廃棄中です。

 え? さっき煮るなり焼くなり好きに料理っていっただろって? すまんな。あれはうそだ。

 こんなの料理して食いたくないのでな。クソまずいだろこんなの。イギリス料理じゃないんだしさ。

 ……イギリス料理の批判はやめろって? あれ味なくて微妙だろ。


「……よっし、ウイルス完全に排除デリート。これでもう大丈夫です」


 俺はそういって背もたれに思いっきり寄りかかって背中を伸ばした。

 ……ふぃ~、疲れたぜぇ~。


「よくやったぞ沖瀬少尉。お手柄だ」


「……この艦を救うのは大樹あいつだけじゃないってね。へヘッ」


 あいつは俺が一部支援したとはいえ、即行で思いついた発想をすぐに行動に移したしな。

 俺だってそんな感じのことはできるってことだ。これでやまとさんの生存にも貢献できたぜ。


「大樹、聞こえるか? 艦魂さんにサンキューっていっといてくれ」


『あいよ。……というか、』


「?」


『……今頃お前の隣にいると思うぞ? なんかさっきからそっちにいっちゃったみたいでさ。そんじゃ』


「え!? マジ!?」


 向こうからの通信が切れる中、おれは思わず周りを振り向く。

 しかしまあ、もちろん見えるわけはなく。


 ……だが、いてくれてるのか。なんとなく、神のご加護がすぐそばにというか、なんとなく守られてる感があるな。


 ……俺も大樹に毒されたか? はは、だがまあ、不思議と悪い気分はしねえわ。


「……やまとさん、そこにいてくれてるなら、一言言わせてください。……ありがとう」


 見えるはずもないものに対して礼を言った。なんとも不思議な感覚だ。

 ……まあ、いったところで返事もくれるわけないんだがな。


「とりあえず、この後はどうするべきか……」


 砲雷長が言った。


「とりあえず、旗艦からはそのままで行動しろといわれてますし、作戦は続行ですね」


「ふむ……。なあ沖瀬、本当にもうコンピューターはいいんだよな?」


「心配性だなぁ。大丈夫ですって。今コンピューター全体をクリーニングしてますけど、全然反応ないです。それももうすぐ終わりますし、大丈夫でしょう。仮に今から反応が出たとしても、ここまでやって出てこなかったやつなんですしたいしたことはありません。今からでも十分対処できるレベルです」


「そ、そうか……。よし、では警戒を続ける。各員、再び対空・対潜警戒を厳に」


「了解」


 そして、再び静けさを取り戻して警戒を続けた。


 ちょうどそのタイミングでコンピューター内のクリーニングも完了。結局なんの不明分子反応もでなかったから、もう完全に排除されたと見ていいな。


 ……ふぅ、これで何とか一件落着か……。


 しかし、国防省のコンピュータに忍び込ませるとは……、敵さんも中々考える。

 確かに、そこからなら何の問題もなく侵入できる。わざわざこっちだけを狙ったのも、おそらくあんまり多くのウイルスを忍び込ませると、向こうにばれるからだろう。

 単体だったのがその証拠。どれに侵入させるかに関しては、事前にやまとにって決めていたに違いない。

 この艦を乗っ取ったら、それこそ最強の艦を手に入れたことになるからな。

 ……だが、その侵入する対象の艦を間違えたな。俺を舐めてもらっては困る。


 しかし、今の電子戦はやはり怖いな。こんなことも仕掛けてくるのか……。

 おそらく、今回のことはほかの艦にも伝わったはずだ。各々で事前防護がされるはずだし、もうウイルスが簡単に侵入することはできないだろう。


「……とりあえず、」








「多方面で警戒をしとかないとな……」












 俺はディスプレイのモードを切り替え、再びいつもの任務に戻った…………

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