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『やまと』 ~戦乙女との現代戦争奮戦記~  作者: Sky Aviation
第5章 ~反撃開始! 沖縄・南西諸島を奪還せよ!~
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沖縄本島上陸

―AM09:30 沖縄県那覇市 那覇空軍基地司令室 沖縄方面侵攻部隊全体司令部―





「なにッ!? 上陸を許しただと!?」


 私は思わずそう叫んだ。


 早朝から敵軍の反撃的攻勢が激しくなった。それも一気に。

 それを食い止めるべく我々は奮戦しているが、忌々しい小日本どもとそれに呼応する鬼畜米帝のおかげでそれがうまくいかずにいた。


 だが、上陸だけはさせまいと思ったが、どうやらそれは無理な相談だったらしい。

 第一、やはり航空支援がない以上何も出来ないのだ。一体本土は何をやっている?

 確かに空軍基地は全壊してしまい、もはや使い物にすらならんが、それでも少しばかり防空戦闘機を送ってくれるくらい出来ないのか。

 せめて少しの間だけでも空に味方がいれば、我が陸軍の精神的な安定も保たれるというのに、さっきから飛んでくるといえば敵軍の偵察に来たらしい各種ヘリとその護衛の戦闘機だけ。

 味方の赤い星の戦闘機は一向に来ない。


 我々に対する援護は一体どこへ行ったのだ?


「間違いありません! 先遣隊と思われる少数の部隊が、南の米須海岸に上陸。現在哨戒活動を行なっているものと思われます」


「思われますだと? もっと確実な情報はないのかッ!?」


「も、申し訳ありません。これ以上は、そもそも空からの偵察が出来ず、陸からの情報のみですのでこれ以上は……」


「クソッ! ……せめて衛星さえ使えればいいものを……」


 空からの偵察が出来ない以上、せめて衛星からの画像さえあれば状況自体は整理できるというのに、あの米帝にハッキングされたらしく、朝から衛星は使い物にならない……。


 クソッ……さっきからうっとおしい輩だ……。正義を自称してる偽善者めが……ッ!


「とにかく、もっと正確な情報をもってこい」


「は、はい!」


 その報告を持ってきた部下はそそくさと立ち去った。

 同時に、さらに指示を出す。


「とにかく、まずは迎撃だ。今近くにいる部隊は?」


「上陸地点から一番近いのは、第12集団軍所属の第179歩兵旅団です」


 第179歩兵旅団……。『臨汾旅リンフェンルゥ』の愛称で知られ、国共内戦の時代から戦い続けてきた歴戦の部隊だ。

 旅団に縮小されてからもその実寮は衰えることを知らない。


 そうか。確かこの部隊は今このときその区域近くにいたはずだな。


 ではそいつらに偵察に向かわせよう。


「よし、直ちにその部隊を上陸地点に向かわせ、敵情の報告をさせるんだ。急げ」


「了解」


 部下があわただしく動き出した。

 指示が飛び交い、にわかにあわただしくなる。


 ……だが、私の一番の気がかりは……、


「……で、空と海からの支援は期待できないのか?」


「もうどっちも壊滅しましたし……、追加の戦力投下もなければ、海からの対地支援も……」


「なんだそれは……。つまり我々は孤立無援ではないか……」


 使えない空軍と海軍め……。じゃあ我々は一体どうしろというのだ?

 海からの揚陸艦での上陸部隊を輸送しようにも、今その揚陸艦は艦隊が壊滅したと同時に保全のためにその残存艦と合流して本土に避退した。

 海からダメならせめて空からということで大量の輸送機を使って兵員輸送を行なおうにも、それだけでは大きな戦車とかを持っていくには少し時間がかかる。

 というか、第一それらが降り立つ空軍基地はもう壊滅して使い物にならない。

 ……となると、もうすでに戦力増強のための輸送手段がないではないか。

 そんでもって、ではせめて支援をしてもらおうにも、その肝心の空・海戦力は何れも壊滅。

 空軍は元より、海軍も先ほど、日本のF-2戦闘機による対艦攻撃で主力艦をほとんどやられ壊滅的被害を受けたとの報告の後一切の無線が来ない。

 呼びかけても応答がない。向こうでも混乱のさなかか。


 ……となると、見事なまでに我々は孤立無援……。


 ……どうしろというんだ?

 ここから我々は我々だけでどうやって戦えというんだ?

 はっきり行ってこの状態で戦闘をするということは死ねといっているようなものなのだが?


 せめて防空戦闘機の少しも送ってこんのか?


「如何なさいますか司令? これでは、我々では到底……」


「そんなことはわかっている! だが……、かといって、支援がなければ、今は防げても時間とともに劣勢になることは確かだ」


 空の支援がないということは、つまりそれは空からの航空支援の主導権を向こうに譲るということ。

 それはすなわち、我が軍の壊滅的被害が約束されてしまったも同然のことであった。

 敵とて我々を見つけて殺すことなどたやすいことのはずだ。電子的な分野は、明らかに向こうが勝っているのだからな。

 陸を進める前に、ある程度は空から、そして海から戦力を減らしてくるはずだ。いや、むしろ今の時代の上陸戦はそんなもんだ。

 それを防ぐ手立ては、我々にはない。


 奴らの、好き勝手にできるということだ。


「このままでは、どうやっても我々の壊滅的被害の続出は免れん……。戦力を送ったところで、おそらく空・海の支援攻撃で極限までひらされるぞ」


「で、ではとにかく戦力を送ってその進撃を遅らせるだけでも……。時間さえたてば、本土からの支援が……」


「貴様はいつ来るかわからない援軍のために限りある戦力を〝大量に〟投入するのか? いつ来るかもわからないのに?」


「うっ……、そ、それは……」


「……高望みをするな。この場合、どう考えてももうしばらく来ない未来しか見えんのだよ」


 今さっき艦隊防空に行ったらしい戦闘機が援軍で来てものの見事に追い返されたばかりだ。もうしばらくはこないだろう。

 そんなことのために、一々戦力を投入するのは素人のやることだ。

 その結果、援軍が来ないどころかむしろ戦力を無駄にすることになれば取り返しが付かない。


 後先を考えろ。とにかく、今は戦力を無駄にするわけにはいかん。


 投入しないとは言わないが、大量には投入するわけにはいかないんだ。


「ヘリでも何でもいい。とにかく支援に飛ばせるのはいないか? 少数でもかまわん」


「そ、そうはいっても今稼動できるのは極少数の武直ウージー10しかありません。それも、戦闘機は全滅ですので護衛無しで行くことになりますが……」


 武直ウージー10……。攻撃ヘリか。

 まあいい。ないよりはマシだ。


「よし、すぐにこれを支援に向かわせろ。とにかく、早急に時間を稼げ」


「し、しかしすでに近隣空域は敵戦闘機や戦闘ヘリが……」


「クッ……、だが、ないよりはマシなんだ。これに関しては温存していたって始まらない」


 陸上戦力はまだいくらかあるが、戦闘ヘリはもうない。

 だが、いずれ投入しなければならない。遅かれ早かれだ。


 空軍の支援を待っている暇はない。時間はないのだ。


「彼らだけでは不安のはずだ。せめているだけでも心強いことに変わりはない。とにかく送れ」


「は、はい。では、直ちに残存の戦闘ヘリ部隊に支援に当たらせます」


「うむ」


 だが……、どこまで粘れるか。

 おそらく、長くはもつまい。敵戦闘機がうようよしている中を突っ込むのは自殺行為に等しい。

 だが、どの道これしかない……。遅かれ早かれ、投入しなければならんのだ。


 彼らには申し訳ないが……、できる限り援護してやってくれ。


「次に……、今ここにいる長距離砲撃部隊を全部前線に向かわせろ」


「長距離砲撃部隊ですか?」


「そうだ。今迎えるものをすべて射程距離最大を維持して配置。最大射程で攻撃できるようにさせろ」


「了解」


 今ここで使える長距離砲といったら、すでにここからでも十分射程圏内の『PLL-01 155mm榴弾砲(WA-021)』、『66式152mm榴弾砲(D-20)』などがある。

 これなら数はある。とにかくうちまくって、敵のいる区域を制圧射撃する。

 敵はまだ大規模な攻勢には出ていない。これを使って少しでも戦力を減らす。


 今使えるのはすべて使おう。上陸地点はわかってるのだからな。


「ほかに使えるものといったら……」


「地雷とか、敵軍の進路上にばら撒くとか?」


「いや、今さら設置する余裕はない。第一、その設置部隊は今北東の最前線ではないか」


 今さらそこから呼び戻したって間に合うはずがない。

 地雷戦は無理だ。それに、設置したところで存在がばれたら撤去なり爆破処理されるなりして終わり。陸がダメなら空からと輸送ヘリをさらに前線に送ってそこで下ろすなりするはずだ。

 はっきりいって、時間稼ぎにもならない。


「機甲部隊は前進させますよね?」


「それはもちろんだ。歩兵の援護をさせる。近くにいるのは第12集団軍の第2装甲師団を向かわせる」


 第2装甲師団は戦車をまかなった機甲部隊であり、今現在一番近い機甲部隊でもある。

 これに歩兵の援護をしてもらう。もちろん、後方から増援の機甲部隊や歩兵部隊といった“適度な戦力を”投入する。

 しかし、投入し過ぎない。しまくって無駄に減らしたらこっちの防備が薄くなる。


「偵察にでたヘリからの情報はないか?」


 一応沿岸警備にでていた海軍に頼んで偵察にヘリを出してもらったが、そろそろ報告が来てもいいころだ。

 敵が今何をしているのか知りたい。


「今届きました。敵艦隊の詳細はわかりませんでしたが、とにかく大艦隊だそうです。今、揚陸艦から各種輸送ヘリが発艦中。おそらく、兵力輸送をしているものと。また、上空には揚陸艦からのものではないらしい同じく各種輸送ヘリも確認されています」


「とにかく空輸しまくる気か……」


 となると、オスプレイとかそこら辺か。

 米軍のことだ。日本にもいくらかおいていたことだし、それらを総動員したか。

 日本にもオスプレイ自体は未だに少数ながらあったはずだ。

 空を埋め尽くさんとするばかりであろう……。あの輸送能力は馬鹿に出来ん。

 ……オスプレイといったら、なぜか日本では事故が多いから配備するなとの声があったな。

 私にとってはあくまで配備されては困るたという程度でぶっちゃけどうでもいいと思っていたが、やはりあの国は理解できんな。

 調べてみたら事故率低いじゃないか。一体どこの馬鹿が言ってるんだあんなことは?


 ……と、これはどちらかというと私が言うべき言葉ではないな。


「これをとめる戦闘機がありませんので、これらの上陸をとめるすべはないです……。上陸させてからが勝負となります」


「だな……。とにかく、海岸線でできる限りとめろ。今北方から援軍を呼んでいる。それらが来るまでで切る限り侵攻を……」


 ……だが、そのときであった。


「し、司令官! 大変です!」


「ッ!? ど、どうした!?」


 いきなり部屋に幹部がはいってきた。

 情報担当。彼のその顔は汗がびっしょりであり、相当急いできたものと思われた。


 彼は私の目の前に来ると、すぐに報告した。


「今、偵察にいった海軍ヘリからの報告で、揚陸艦から……」







「もう……LCACが出て沿岸を目指していると……」







「な、なにッ!? 早くないか!?」


 バカな。揚陸艦が上陸行動を展開するにはまだ時間は早いはずだ。

 沿岸にいくらか近づいているとはいえ、こんなにも早く上陸行動を始めるのか?


 ……こっちはまだ全部部隊が展開しきれていないんだぞ?


「そんなバカな。もうLCACが行動を起こしたとでも言うのか?」


「そのようです。もうすでに沿岸に近づいており、あと5分もしないうちに沿岸に……」


「馬鹿野郎ッ! なんでその報告をもっと早くしなかったんだ!」


「そ、そうは言われても海軍ヘリからの報告はついさっききたばかりで……」


「もっと早く報告するよう言わなかったのか!?」


「いったにはいいましたが、向こうは最善の努力をするの一点張りで中々報告をしてこなくて……」


「クソがッ! どこまで足を引っ張る気だ海軍め!」


 思わず目の前のテーブルをこぶしで殴ってしまった。

 ふざけるな……ッ! そんな重要な報告をなぜ今さらするんだ!?

 ヘリの展開が間に合わなかったなどといつもりか?

 それでも、まだ海軍には哨戒に使えるヘリはいくらでもあるという話ではなかったのか?

 これではどう考えてもこっちの偵察戦力足りませんといっているようなものではないか。話が全然違う。


 ……どいつもこいつも役に立たないやつばっかりだ!


「はぁ……、もはや海・空の支援は当てにならん。俺達だけでやるぞ」


「し、しかし支援がなければ……」


「んなことはわかってる! だが、迎撃しないわけにもいかん。とにかく、今現在迎撃指示を出した部隊を急がせろ。あと、前線にいる部隊をすぐに呼び戻せ!」


「は、はい! すぐに!」


 ほかの部下に指示を出すと、彼は部屋を出て行った。

 残された私たちも、直ちに行動に移る。


「まずは敵戦力の確認を急げ。まだ例の哨戒のヘリはいるのか?」


「それが、その報告を最後に通信が途切れまして……。おそらく、撃墜されたものと……」


「……」


 ……撃墜されたこと自体を憎む気にはなれんが、そろそろ堪忍袋の緒が切れそうだ。


 ……いや、今そんなことを言ってはいられない。


「……わかった。では、偵察にヘリを向かわせろ。沿岸にだ」


「了解。……ということは、上陸は……」


「……悔しいが、上陸はさせる。まずは敵戦力を確かめねばならん。何度も言うが、地上部隊には海・空からの支援は期待するなと伝えろ。もはやあいつらは当てにはならんとな」


「り、了解」


 その報告を持ってきた幹部も部屋を出て行く。

 周りにも指示を出し、大いにあわただしくなった。


 ……そんな中、私は考えにふけった。


「(……ついに敵が本気を出してきたか……)」


 しかも、こんな不利な状況にまでもっていかれるとは……。

 海・空からの支援も期待出来ない。増援もこない。


 孤立無援とはまさにこのことを指す。


 ……どうすればいい?



 ここから、我々は……、










「……どうやって戦えばいいというのだ……?」













 私は今までの人生で、これほど頭を抱えたことはなかった…………

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