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『やまと』 ~戦乙女との現代戦争奮戦記~  作者: Sky Aviation
第5章 ~反撃開始! 沖縄・南西諸島を奪還せよ!~
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釣り上げられる艦隊

―AM07:05 沖縄県那覇市から北西140海里地点

                  『遼寧機動艦隊リヤニオン・ジードーンジエンドゥイ』旗艦『遼寧リヤニオン』FIC―





「なに? 航空部隊が壊滅だと?」


 私は情報を持ってきた部下の前で思わず聞き返した。


 沖縄に侵攻して早5日。


 我が軍は好調なすべりだしをしていたと見ていい。

 沖縄本島は1/2を占拠。後は北東の山間部を何とかして越えるのみだった。

 しかし、そこをうまく使って敵は侵攻を阻止している。

 地の利を使ってのものだ。方法としてはそれは有効なものとしては間違いなく、事実我が軍は侵攻を一時寸止めされていた。

 だが、これも後々から来る航空支援で十分対処できるだろう。


 ……と、思っていたのだが、


 今朝方、その肝心航空部隊が基地ごと壊滅。

 生き残ったものたちからの報告では、どうやらステルス性の高い爆撃機に奇襲を仕掛けられたということだった。

 ステルス爆撃機。となると、やはりあのアメリカが運用する忌々しいB-2爆撃機に違いない。

 アメ公め……、こんな肝心なときに爆撃なんぞ……。やはり面倒な奴らだ。


 しかも、それの状況確認をしようと衛星に解析しようとしたら全然反応がこない。

 司令部に問い合わせたら、今度はまたこっちがハッキングを受けて使い物にならなくなったとかどうとか。

 だから一々航空基地に問い合わせにゃならん事態になりやがったもんで、そんで確認したら航空基地は全滅。沖縄方面の航空支援は期待できないときたもんだ。


 ……たった一回の奇襲爆撃で一気にやばくなってしまった。


 まったく、せっかくいいところまで来ていたというのに、またアメリカが……。

 それのおかげで、日本も艦隊を繰り出してきた。

 米軍艦もあるし、最新鋭の艦もいくつかある。中にはあの厄介な『やまと』まで含まれている。

 間違いなく敵の侵攻艦隊だ。いくつか軽めの揚陸艦もある。おそらく、近場の離島に軽めの先遣隊を送り込むつもりに違いない。


 それを阻止するために本艦から防空機、そして大陸から対艦武装した部隊を送ったが、やっぱり少なすぎた。というより、向こうが異常に多かった。

 おもいっきり簡単に叩き落された。

 少しでも減らせれると思ったが、甘い考えだったらしい。


 部下が答えた。


「左様です司令官。派遣した航空部隊は壊滅。本艦の戦闘機も多数やられ、今現在補充分を本土に要請していますが……」


「司令部は何と?」


「……今すぐには無理で、早くても今日の午後になると……」


「午後だと?」


 何を言っている。それでは遅いのだよそれでは。

 敵はもうすぐそこまで来ているというのに。何をのんきにしているのだ司令部は。


「もっと早めてくれと伝えろ」


「それが、私のほうでもそういったのですが、向こうは午後までまての一点張りで……」


「クソッ! 今の戦争は時間に大いに左右されることを知らんのか?」


 まったく、そんなのんきだから今みたいに敵に反撃の隙を与えるのだ。


 とにかく、それもあって今敵艦隊は北から来ている。



 ……しょうがない。それを阻止するためには、我々から出向くしかなさそうだな。



「敵艦隊の位置は?」


「本艦隊より北東200海里の海域です」


「詳細を出せ」


「了解。航空戦開始前に哨戒機及び潜水艦からの情報に基づいたものです」


 すぐに部下は行動を起こし、その下の者たちに指示を出す。

 すると、FICのメインディスプレイに敵艦隊の位置。そして、敵艦隊の大まかな情報が出る。

 ……衛星が付かないから、あくまで大まかだ。


「空母2、大型艦1、中型艦6、小型艦11……。そこそこの規模の艦隊だな」


 尤も、衛星さえ使えればもっと詳しく調べれたのだが。


 ……そして、


「……この大型艦が、例のやまとだな……?」


 一番厄介なものだ。

 この戦争にあたり、私も日本の艦船についてよく調べさせてもらった。

 結果から言おう。本音を言えば、こんなやつと戦闘したくない。

 まず、対空目標の撃墜率がとんでもなさ過ぎる。今まで幾度となく実弾演習をしてきたのに、はずしたものといえば2,3発ぐらい。それも、初期の就役後すぐのことで、それはおそらく初期動作の不具合の類と考えられるから、それを抜かしたら……。



 対空目標の撃墜率、ほぼ100%。



 まあ、元々それをコンセプトにして結構昔から研究されていたとはいえ、これははっきり言って異常だ。

 弾薬の許す限り、それをしとめることなど出来ない。日本の科学技術力の高さを見事に裏付ける艦だ。

 我が国にそんなチートな性能をもつ艦は存在しない。

 しかも、仮にあたっても装甲で数発なら跳ね返す。

 こんなやつと戦闘してどうやったら勝てるのか。

 とにかく弾をうちまくって向こうの弾薬がなくなることを狙うほうが一番だろうが、その前にこっちの弾薬がやられるかそもそも反撃できずに死ぬかの二択だ。

 それに、向こうは単艦じゃない。

 ほかに大量に味方艦がいる。それのサポートを受けつつ、やまとは換わりに絶対的な防空能力を提供する。


 ……はっきり言おう。




 これは、我々が相手取れるような艦ではない。




 さすがかつて世界最強を誇る戦艦の名前を冠するだけはある。尤も、活躍はしなかったが。


 これが入ってるってことは、相当手の込んだ艦隊だろう。

 主力に違いない。とにかく、迎撃をせねば。


「派遣艦隊を編制。とにかく、敵の侵攻を遅らせ、本土からの援軍が到着するまでの時間を稼げ」


「了解。艦隊を編制します」


 とりあえず、派遣艦隊を編制し、敵艦隊を制御にかかる。

 空からの支援は期待できない以上、海からとめに行くしかない。


 奇しくも、現代海戦で艦隊戦が見れることになるとは思わなかった。


 しかし、敵も対艦攻撃部隊を上げてくるだろうから、空対艦になるか、それとも艦対艦になるか。

 ……まあ、この際どっちでもいい。とにかく、時間を稼がねばならない。

 本艦の補充分は来ないにしても、せいぜいほかのところから対艦攻撃部隊は来るはずだ。

 さっきより多くで這ってくるに違いない。それを頼りにせねば。

 ……尤も、本当にきたらの話であるが。


「司令、艦隊編制、完了しました。派遣艦隊旗艦は、江凱ジャンカイII型アルシーン徐州シュイジョウ』に委託します」


徐州シュイジョウ』。江凱ジャンカイII型アルシーンフリゲート艦の2番艦だ。


 江凱ジャンカイII型アルシーンは我が国海軍が運用する準新鋭のフリゲート艦で、本当は最新鋭のものとしてこれの改良型の江凱ジャンカイIII型サンシーンがあるが、これは例の経済危機の問題で建造が進んでいない。今あるのは1番艦の『宿遷スゥチエン』と2番艦の『平涼ピーンリヤーン』しかない。

 後の2隻は建造中で今あるものも全部南海艦隊所属だ。

 1隻くらいこっちに恵んでくれたっていいものを。


「うむ。……こちら、旗艦『遼寧リヤニオン』。『徐州シュイジョウ』、聞こえるか?」


『はっ。司令官閣下。艦長のコーンです。よく聞こえます。』


「君達派遣艦隊の任務は、南下しつつある敵艦隊の侵攻を阻止し、時間を最大限稼ぐことだ。本艦隊もそちらに向けて北上するが、君達が先遣隊として向かってもらいたい。指揮権は依然として本艦にあるが、現場指揮は、君に任せる。できるな?」


『お任せください。必ずや、敵を足止めして見せます』


「よろしく頼む。おそらく、君達が現場に到着するころに、空からの援軍が来ることは期待できない。肝に銘じておいてくれ」


『了解。では、行ってまいります』


 通信がきれ、一部の艦が離脱を開始する。

 その数、18隻。


「派遣艦隊が離脱します。現場指揮、『徐州シュイジョウ』に委託」


 派遣艦隊が離脱するのに、さほど時間はかからなかった。

 全艦が28ノットほどで北上を開始する。


「今から向かってどのくらいで交戦圏に入る?」


「今から向かった場合で、約1時間弱です」


「1時間弱か……」


 それまでに、本土からの援軍は期待できそうにないな。

 今さっききたばっかりだ。本土にいる者だって無限じゃない。

 そもそも、沖縄方面はほとんど沖縄に置きまくって、それは全部基地ごと壊滅。

 ……なんでもっと本土に残しておかなかったんだ。こうなることを予測できなかったのか?


 今さらながら、司令部が〝バカ〟ではないかと思う。


 ……尤も、そんなことは口が裂けても言わないが。


「……とにかく、我々もここの監視を終えたら北上する。30分後だ」


「了解。30分後北上」


 部下がさらに指示を出し、FIC内がにわかにあわただしくなった。


 私はディスプレイを凝視する。


 本艦を中心に、派遣されて北上する艦隊。それに真正面から南下してくる敵艦隊。


 文句なしの敵の主力のはずだ。やまとだっている。


 ……だが、


「(……なんだ……、この嫌な予感は……)」


 何かが私の頭をよぎる。

 はっきりと断定できない。何かが。


 もう一度敵艦隊を見た。


 空母2、大型1、中型6、小型11……。


 一気に全部出してくるなんてことはないはず。最初はこれくらいだろう。


 ……だが、






「……なんだ、この嫌な予感は……」











 なんともいえない予感が私の脳裏を何度もよぎった…………

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