〔F:Mssion 7〕A艦隊護衛航空戦
―AM06:45 A艦隊より南西30海里地点上空10,000ft A艦隊護衛部隊―
《『アマテラス』よりA艦隊護衛部隊全機。敵航空部隊探知。方位2-3-0、距離80海里、高度9,000ft。各機戦闘用意》
E-767AWACS『アマテラス』からの情報が来た。
同時にデータリンク情報も受け取り、レーダーディズプレイ上にも反映。
すぐさま敵情を確認する。
「(どれ、敵機はどれくらい出してきたかな……)」
あの中国だ。おそらく大量に持ってきて……、
……あれ?
「……え? 以外と少ない……」
思ったより反応がなかった。
えっと、内約は……、
「……J-15が20、J-11が15、Su-27が20……、うそん」
計55機。
あの……。もっといたはずでは?
艦載機であるJ-15はまあ今までの戦闘とかでいくらか消耗したのはわかるけど、ほかはこれだけ?
「少ないですね。もっといたはずだと思ったのですが……」
その疑問に答えたのは隊長だ。
《早朝の奇襲爆撃が相当効いたみたいだな。おそらく、これは本土から急いできたやつだ》
「いそいでねぇ……」
その結果がこれである。
つまり、沖縄においているやつは全滅ってことか?
まあ、空襲で基地自体が使い物にならなくなっただろうし、ありえなくはないが、それでやってきた大陸からの援軍がこれだけって……。
なに? 沖縄に置きすぎたの? バカなの? 死ぬの?
《やっぱり、沖縄におきすぎたのかな? だがまあ、それはどうでもいいことですね》
他のパイロットの声だ。
まあ、確かに俺達にとっちゃあどうでもいいことではあるが、もしそうだとしたらいろいろとアホかねこいつら……。
後先考えずにおきまくった結果これである。
《そのとおりだ。とにかく、戦闘準備。目標を随時確認しておけ。データリンクフル》
まあ、向こうの事情など知ったことではありません。
データリンクはリアルタイムで受け取る。『アマテラス』からも目標情報を随時更新。
……敵はまだ動かない。どうやらまだ射程ではないようですな。
だが残念、こっちはもう射程に入ってます。
なので、交戦許可もすぐ入る。
《全機、射程に入った。……借金返済の時間だ。利子つきでお返ししてやれ。交戦開始!》
ジョーク交じりである。
利子つきで借金返済か。こりゃ大量に払わないといけないじゃん。
財布足りるかなこれ。
《IJYA01了解。……隊長機より各機、さっさと借金を返すぞ。取り立て屋を待たせるな!》
「了解!」
勢いよく返事しつつ、僕はそのままハーフロール。
そのまま少し高度を落として、またハーフロールで水平に戻り、スロットルを押して増速した。
編隊に続く。
今ここにいる部隊は僕達IJYA隊のほかにもいっぱいいる。
空軍だけじゃない。在日米空軍まで参加していた。
総勢、68機。
一体どんだけ集めたんねんとツッコまれそうだが、とにかく集めに集めまくった結果これです。
全機F-15JないしMJ、そして米空軍のC。鋼鉄の鷹が勢揃いしております。
《全機へ。目標データを送る。LOALモードに設定しろ》
《了解。全機ミサイル準備。AAM-4Cスタンバイ。LOALモード》
AAM-4Cへ目標情報登録。随時データリンクリアルタイム受信モードに設定。
AAM-4Cは前回使ったAAM-4Bとは違って、さらに射程の延伸、機動性を若干下げた代わりにECCM能力を上げたし電子的機能の向上を図ったミサイルである。
目標は……、発射後ロックオンでもいけるね。
さっき言ったLOALモードがこれで、発射後ある程度は発射母機が誘導した後、目標に近くなったらミサイルシーカーに自分で目標をロックさせる方式。
「スタンバイ……、オールクリア」
AAM-4Cスタンバイ完了。
よし、これで後は隊長からの発射命令を……。
《……ッ! まて! 今敵に動きがあった。若干散会している。発射体制に移行した模様》
「なッ!?」
マジで? まだ射程には入ってなくね?
おいおい、それだとこっちミサイル誘導するのに専念しないといけないのに回避難しいんですけど?
《チッ、アマテラス、どうすれば?》
《急いで設定変更。撃ちっ放しモードに設定。初期、及び中間誘導を我々に委託》
急いで撃ちっ放しに変える。これなら、あくまで撃ったら後はミサイルが勝手に目標に行くからこっちは自由だ。
本来の撃ちっぱなし能力はある程度距離が近かったりと限定的なものだったのに対して、このAAM-4CはAWACSの目標情報をリアルタイムでデータリンクを受けることによって、最大射程でも正確な誘導、及び目標の撃破を行なうことができる。
これはもともとなかった機能だけど、少し前のC型への改良でそれが可能となった。
今回はそれを使う。敵が撃ってこないうちに、先手を打たないと。
モード、撃ちっ放しに設定変更。
目標情報固定。
……よし、いける。
《各機、撃てるものから撃ち始めろ》
《了解。全機、準備できたな? タイミングを合わせるぞ》
準備完了。いつでもいける。
敵はまだ撃ってこない。だが、今にも撃ちそうだ。
さて、では一発かましますか。向こうが撃ってこないうちに。
《いくぞ。……3、……2、……1、……ファイヤ! FOX2!》
タイミングは外しません。
「IJYA02、FOX2!」
AAM-4Cを放った。
胴体下部から2発。距離的にも時間的にも、この第1派で決めるのが理想。
ほかの部隊からも放たれた。AAM-4A/B/Cや、在日米軍からはAMRAAM。
一機から複数撃つのは、これらのミサイルに搭載されている多目標同時攻撃能力によるものだ。
文字通り、複数の目標を同時に攻撃できる。今の場合は弾数の関係もあって4発はいける。
だけど、一気に全部は撃たない。とりあえず2発だ。
相手の機数も考えて、これで十分。
うちらが68機だから、2発ずつ撃っても、かける2で136発……。
……うん。いくら避けられたときの予備を考えたとしても撃ちすぎた。
なんとなくだけどごめんと言いたい。
《ミサイル誘導開始。順調に飛翔中……、ッ!》
そのときだった。
《全機、敵からミサイルが放たれた! 弾種特定、中距離ミサイルR-77!》
アマテラスからだった。切迫した声だ。
同時にミサイルアラートがコックピット内に響く。僕も狙われたみたいだね。
R-77……。ロシアのアムラームスキーか。僕のほうに向かうのは1発確認。
だが、あれは射程は80km。ギリギリいけるとしても長距離での誘導は母機からの指令が必要だったはず。
こんな今すぐ回避するなんてときに撃ったら回避か誘導かに選択肢が分かれるが、この場合はおそらく前者を選ぶだろうし、その場合母機からの指令電波がうまく通らなくなるから、誘導性能はとんでもなく落ちる。
これはチャンスだ。先手を打った甲斐があるってもんだ。
こっちは誘導は途中までAWACS任せで、後々近距離になったらミサイル任せ。対する向こうは途中まで母機の誘導が必要なのにこの時点でうまく誘導されていない。
なら……、
《全機、今すぐ回避だ。ミサイルが誘導し切れていない今の内にとにかくミサイルから離れろ》
ということだね。
よろしい。とにかく逃げ回ればいいんですねわかります。
《各機、聞いたな? 今すぐ散会。とにかく逃げ回れ。ミサイルが誘導し切れていない今のうちにだ》
隊長からもゴーサイン。
それと同時に返事するまでもなく即行で行動に移る。
編隊を崩して各々で散会。僕も右下に旋回してスロットルを前に倒して増速。
ほかの部隊も同じだった。四方八方いたるところに逃げ始める。
ミサイルがうまく誘導されていない隙に、とにかく遠くに逃げる。
少しすると、ミサイルが見えた。
僕のは後方。後ろからミサイルが見える。
だが、僕を探してもう推進力は落ちまくってるはずだ。本来ならこのR-77、一回回避されてもホストレーダーシステムに保存されたターゲット情報を元にもう一回探すんだけど、今の場合それは出来てももう一回攻撃に入るまでの推進力はもうないはずだ。
これ一回。これを逃がせばいける。
あれの終末誘導ははアクティブレーダーホーミング。タイミングよくチャフをばら撒けばいけるかもしれない。
……簡単にだまされるとは思えないけどな。
「(まだ……、もう少し……もう少し……)」
ひきつけて……ひきつけて……。
……よし、今!
「よいしょッ!」
おもいっきり操縦桿をひいていったんスロットルをアイドル。
感覚ではその場に止まったように見える。
そこにチャフをばら撒いて敵ミサイルからみるこっちの機影に重ねた。
敵ミサイルがそのまま直線で来る。
今ごろミサイルの視点は目の前がチャフばっかりだろう。
僕はそこからほとんど動かない。
そして、次の瞬間だ。
僕は一気にA/B点火。真上に向けて一気に増速。
敵は目の前がチャフだらけの中。それを目標と誤認してくれた。
敵ミサイルはそこで爆発。後ろから思わず振動が来る。
レーダーからも、反応が消えた。
「IJYA02、敵ミサイル……、回避ッ!」
僕が宣言すると同時に、隊長からも反応が来た。
《よくやった! 全機、無事だな!?》
全員から反応が来た。
何という幸運。僕達の部隊は全員無事らしい。
だけど、ほかの部隊ではそうも行かなかったようだ。
何機かやられていた。レーダー上でも確認できた。
しかし、見る限り小数だ。それといって損害とはいえない。
……対して、
《……ッ! 敵にミサイル弾着。6割……いや、7割が消えた》
アマテラスからだった。
7割か……。そりゃ3桁ミサイルとんで行ったらそうなるわな。
むしろ7割ですんだんですか。
《敵航空部隊撤退を開始。よくやった。敵を追い返したぞ》
敵が撤退を開始した。
あんまりにもひどい損害に怖気づいたな。まあ、無理もない。
《全機、一時基地に帰頭せよ。今変わりの部隊を呼んだ》
僕達は一回帰ることになるのか。
まあ、後は変わりに任せよう。最初のこれを追い返したし、しばらくは向こうは何も出来ないはずだ。
《了解。IJYA全機、編隊を組め。帰頭するぞ》
隊長からの宣言だ。僕たちは編隊を組み、一路反転して九州の築城に帰頭する。
敵の航空部隊を、まずは追い返すことに成功した…………




