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『やまと』 ~戦乙女との現代戦争奮戦記~  作者: Sky Aviation
第5章 ~反撃開始! 沖縄・南西諸島を奪還せよ!~
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切って落とされた反撃の幕

―AM06:30 奄美大島より北西150海里地点 日米連合Aアルファ艦隊 やまと艦橋―






「……東日が綺麗だな」


 艦長席に座っていた艦長が思わずそうつぶやいた。


 現在時刻6時半。

 見事なる早朝である。

 今日は天気は朝から快晴。雲もほとんどない。

 まさに、反撃の狼煙を上げるには絶好の日和だった。

 この太陽も、まさに俺達の反撃を歓迎しているかのごとくであった。


 こういう日は中々気分がいい。


「まったくですな。天気にも恵まれて、まさに絶好の反撃日和であります」


 そういったのは航海長だ。

 いつも天気で気分が左右されるような人だ。今日はまさに絶好調となる日なんだろう。

 ……まあ、今回ばっかりは大いに同意させていただきますぜ。


「反撃にはもってこいだ。結構早い段階で出れたしな」


 副長も同意である。


 まだ開戦から5日。

 もちろん、反撃開始は早いに越したことはないけど、予想より結構早かったです。

 うちの政府のことだし、いろいろあって一週間くらいかかると思ったらいい意味で裏切ってくれました。

 このような形の裏切りは大歓迎です。いいぞうちらの政府もっとやれ。


「そこらへんは日本政府の努力ですな」


「ああ」


 最近の政府もがんばってますな。

 昔なんて無政府状態ならの無責任政府状態だったからな。

 ……うん。うまいこといったなんて思っていない。思うはずがない。


「CIC艦橋、定期報告。状況はどうだ?」


『問題なし。敵性勢力未だに反応なし。衛星データからの映像でも動きはほとんどありません』


「艦橋了解。データリンクフル継続。何かあったらすぐに報告」


『CIC了解』


 未だに敵は来ないようです。

 まだ早いか。もうすぐ経過するころだと思う。


「……それまで、俺は何もすることないんだよなぁ……」


 何も指示がなければほんと暇なものである。

 前方の障害物監視とかそこらへんはあるけど、それ以外はマジですることない。いまんとこ。


“……じゃあ、旗艦いずもより定期報告要請はいります。皆さん、状況を”


「うん?」


 これは『いずも』さんか。

 艦魂でも状況報告とかするんか。別にこっちでやるのに。


 それに続いてこの艦隊の所属艦の方々の状況報告。

 ほかも問題ないようです。


 と、ここで今この艦隊の内約をすばやく。



【日米連合Aアルファ艦隊(北方進軍おとり艦隊)所属艦概要】

旗艦:いずも型CVL『183“いずも”』

空母:ひゅうが型CVH『181“ひゅうが”』

ミ巡:やまと型『190“やまと”』

ミ逐:あたご型『177“あたご”』

       『178“あしがら”』

   こんごう型『173“こんごう”』

        『174“きりしま”』

   アーレイ・バーグ級『54“カーティス・ウィルバー”』

            『62“フィッツジェラルド”』

汎逐:ふぶき型『123“ふぶき”』

        『124“しらゆき”』

   しきなみ型『119“しきなみ”』

   あきづき型『115“あきづき”』

        『116“てるづき”』

   たかなみ型『113“さざなみ”』

        『114“すずなみ”』

   むらさめ型『101“むらさめ”』

        『103“ゆうだち”』

        『105“いなずま”』

        『107“いかづち”』

※ミ巡=ミサイル巡洋艦

 ミ逐=ミサイル駆逐艦

 汎逐=汎用駆逐艦



 以上の総勢20隻。文句なしの大艦隊。


 在日米軍からも2隻のイージス艦が参加しています。

 異様にイージス艦が多いのも、とにかくこれを主力だって“思い込ませる”ため。

 ……だってこれ、



“おとり”だし。



 ゆえに、いくつか最新鋭の艦も入れてます。

 やまとはもちろん、ふぶき型の2隻にいずもさん、しきなみさんも入っています。

 本当はもう1隻いますが、そっちは本命の主力に入って対潜監視担当です。


 とにかく、大艦隊です。いろいろと敵をだますために。


“こちらやまと、こっちも問題ありません”


 やまともさっさと報告した。


“了解。……あ、空軍の方が到着したみたいね”


「お?」


 そのときである。


『艦橋CIC。空軍の戦闘機部隊が到着しました。本艦隊の上空直掩の護衛に入ります』


 CICからの報告だ。

 どうやら空軍連中が到着したみたいだな。


 ここからは空軍の戦闘機部隊の護衛も受けることが出来る。

 日米混成の、とにかく優秀な戦闘機部隊だ。


「……お、きたな」


 艦長がそうつぶやいたと同時に、外から轟音がとどろいた。

 軍人になってしまってからというもの、よく聞く機会が増えてしまったその甲高い音。


 空軍の、戦闘機部隊が艦隊上空を通過した音だ。


「……お~、いっぱいいるなぁ~」


 艦橋窓から見えた空軍戦闘機群を見て、思わず航海長が声を出した。

 窓から見えただけでもとんでもなく大量な戦闘機の数。

 ざっと見ても50はくだらないと思う。


 どんだけ集めたんだよ空軍。在日米軍のものも入ってるんだろうけど。


「中々壮観な光景だな……。さしずめ、戦姫を護衛する騎士団だな」


 艦長のお言葉です。

 戦姫ね……。でもあいつら、どう見てもどう考えても姫って風貌はない。


“あ、じゃあ私はどこぞの超大国の女王様で……”


「何度でも言う。姫の風貌はない」


“ってええ!? ひどいッ!?”


 どっちかって言うと戦乙女だろお前らは……。


 そんなツッコミをする気力もありませんが。


「艦長、本艦隊の登場する舞台の出演者がそろったところで、改めて確認を取らせてください」


 副長が艦長に言った。


「うむ。いいだろう、なんだね?」


「まず、本艦隊は敵主力艦隊を釣り上げた後、それを撃退。後に沖縄に突入しているB艦隊の援護ですよね?」


 簡単な俺達の任務の流れである。


「うむ。そのとおりだ。……というか、珍しいな。君ならすでに覚えているものと思ったが」


「重要な任務ゆえ。確認をするに越したことはないと」


「ふむ。まあ、かまわんがな」


 確認は重要だね。確認は。


 ついでだから俺達の任務ももう少し詳しく説明すると、


 まず俺達は、未だに沖縄に居座っている敵主力艦隊を〝釣る〟。

 そう。ひきつける、というなの〝釣り〟です。フィッシングです。

 釣るためには魚をだませるほどの魅力的なエサが必要だな? そこで俺達の出番よ。

 最新鋭艦がこんなにいればひきつけられないわけがない。しかも、あちらさんは今衛星が使えません。

 米軍がハッキングして使えなくしたようです。仮にも国営の機密衛星ハックしちゃうとか、怖いよ米帝。割とマジで怖いよ米帝。

 そうなれば向こうは自分の目や耳を頼らざるを得ない。そこでわざと俺達が見つかるわけですよ。

 つまり、


中国「やべぇ、衛星使えないから偵察不利じゃん。とにかく早く見つけないと……」


俺達「ふ~らふ~ら」


中国「キタッ! こいつら結構強さげな艦ばっかり持ってやがる! こいつらに違いねぇ! 皆突撃ーッ!」


 こういうこと。

 それで見事に釣り上げた敵主力は俺達とF-2の対艦攻撃で相手取ります。

 その隙に、南から本当の主力が沖縄に突撃。

 これには揚陸艦を大量動員。とにかく陸上兵力乗せれるやつは全部投入。

 チヌーク、オスプレイ、イコロイ大量投入。とにかく使えるものは全部使います。


 それで今さら敵が気づいても後の祭り。

 とどめはASM-3の朝飯です。

 たらふく食いあげることでしょう。そりゃもう食いすぎて思わず重くなって沈んでしまうほどに。

 ……他意はない。


 後は俺達は援護援護アンド援護。とにかく陸上兵力の進攻を援護しまくる。


 単純明快。しかし互いに息があってないとヤバイ。


 これが作戦概要。一応説明は受けている。


「とりあえず、空は空軍連中に任せて、海は俺達が締め上げよう。我々の庭で勝手に暴れた報いを受けてもらう」


 何気に艦長がニヤリッとした顔で若干威圧かかっています。

 我々の海。つまり、沖縄とその近海である。

 そうですね。人んちの庭で勝手に暴れる子供達にはさっさと出て行ってもらわないとね。

 なお、ただで返すつもりはこれっぽっちもない模様。


「5日たっての、東日に照らされながらの俺達のターンですな。……倍返しといきましょう」


 航海長も中々軽口を叩くお方であります。


 何かされたら倍、ないし十倍、時には百倍で返すのが我が国での礼儀となっております。


「……倍にせず、プライスレスでもいいのだぞ?」


「終わりが見えません」


 なお、プライスレスにしたら虐殺に早変わりしてしまう模様。


「……しかし、いよいよですね。俺達のターン」


 俺は東日を見ながらそういった。


 5日だけだった。だが、5日がこれほど長く感じたことはない。

 大きく遅れをとってしまったのは確かだった。


 だが、ついに俺達は出れる。反撃のときに。


 狼煙を上げれるんだ。反撃の狼煙を。


「ああ……。沖縄の空軍基地で反撃の狼煙が上がったしな。我々はそれを目指すのみだ」


 艦長も返した。

 沖縄の空軍基地で反撃の狼煙。

 早朝に行われた奇襲爆撃だ。

 B-2を使ったステルス性を大いに活用したその奇襲爆撃は、見事に成功した。

 そのときにたったであろう煙。それは、まさにこれから反撃に出るときにでる狼煙にも思えた。


「遅れたぶんは取り返さねばならないだろう。……借金は早いうちに返済しておくに限る」


 借金か。確かに、大分借金しちまったな。


「借金ですか……。では、利子つきで返済ですな」


 副長も言った。


「うむ。礼儀を尽くさねばな」


「だったら、振込先は敵艦隊でいいですか?」


 ほかの航海科員も乗ってきた。


「そうだな。とりあえず、敵をひきつけたらそいつらにまず返済だな。そんでもって、後は陸で沖縄にいる奴らに返済したら借金帳消しだな」


 航海長、帳消しの意味を間違えてる気がするんですがそれは。


 ……と、そんな会話をしていると、


『ッ! 艦橋CIC、敵航空部隊を捕捉しました。敵艦隊の方面から。友軍航空部隊が迎撃に向かいます』


 すると、上に張り付いていた味方の戦闘機部隊が一斉に動き出した。

 旋回していたのが一斉に針路を変え、俺達の進行方向と同じ方向を向いて増速。

 敵航空部隊がいる方面だ。総出で迎撃に向かったに違いない。


「空は戦乙女の護衛の騎士団にお任せだな……」


“ですから私は戦姫とあれほど言えば”


「主にどこが姫なんだよ」


“えっと……、主に外見が”


「うん。乙女だな」


“アレ~……”


 姫になりたいならもう少し大人っぽい外見になることだな。

 それだとどう考えても姫って感じでない。


「……」


 そう思いつつ、俺は西を見る。

 右前方。光り輝く太陽が身を完全に乗り出して朝を告げている。


「……ついに反撃のときか……」


 待ちに待った反撃だ。

 俺達の戦いはこれからだ的なマンガ打ち切りシーンじゃないけど、マジで俺達の本気はこれからですので。


 待ってろよ中国。お前らが今相手にしてるのが俺達の本気だとは思わないことだな。


 本命は……、








「……後々から遅れてやってくるのがお約束なんでな……」











 東からの朝日に照らされつつ、反撃の幕が切って落とされる…………

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